1ミリも役に立たない!動物から学ぶモテないオスの戦略。

2023.03.14

突然ですが、私はモテたいです。ですがモテません。

私がモテないのと同様、動物の世界にも擬人的な表現をするとモテるモテないは存在しているように見えます。

体格の大きなオスが他のオスとのケンカに勝利することで、群れのメスを独占することができる、といった自然界の厳しいストーリーはよく聞かれることです。

動物界において「モテる」=「メスとの性的接触の回数」と考えるならば、体格が大きくケンカに強いオスはモテるオスだと言えます。

それではモテないオス、先ほどの例で言うと体格が小さくケンカにも負けるオスは、いそいそと負けを認めてそのまま何もせずに死んでいくのでしょうか?

そんなことはありません。自分がモテないと言う事実を知っていてもなお足掻き続けている私と同様に、動物たちもモテないからといってシュンとなってへこたれているわけではないのです。

では、動物たちはどうしているのか。私たち人間はそこから何か学びを得ることができるのでしょうか。いくつか事例を紹介したいと思います。

代替戦略

代わりの戦略という意味で、代替戦略です。

王道の"女性へのアプローチ"ってありますよね。声をかけて、食事に誘って、デートして、プレゼントして、壁ドンして、といったようなことです。

ですが、モテない男が王道のアプローチをとってもうまくいかないことがある・・というのは想像に難くないと思います。 声をかけると怖がられ、壁ドンなんかした日には通報される。悲しいですがそういうことだってありえます。

じゃあどうすればいいのか。例えば友達にお願いして意中の女性に自分の武勇伝を伝えてもらうとか、彼氏と別れて精神的に弱っている時を狙うとか、そんな小細工していく戦略もありますよね。

そういった王道ではなく小細工をしていく戦略を代替戦略だと思ってください。

サケの事例

サケの産卵の様子をテレビなどで見たことがあるでしょうか。

サケが海から川の上流・中流域まで体をボロボロにしながら遡上していきます。

そして、いい感じのところまで遡上してきたら、メスが尾ビレを使って卵を産みつけるために川底を掘ります。

その間オスはメスの周りを縄張りとして他のオスと戦うわけです。この女は俺のもんだ、近づくなという感じですね。

で、メスが準備OKになると縄張り争いを乗り越えた強いオス=モテ男と一緒に、メスは卵を、オスは精子をバァーっと出して、体外受精し一件落着。

これが王道の繁殖行動です。

 

では、オス同士の戦いに負けるような弱い小さいオスはどうするか。

 

弱いオスは縄張り争いの時に「僕は繁殖に興味ありません〜敵じゃないですよ〜。」みたいな顔をして近くを泳ぎます。

そしていざ産卵となってメスが卵を出した瞬間、突然サッと横から出てきてバッと精子かけてビュっと逃げる

 

これが彼らの代替戦略です。

どうでしょう、参考になります…かね?

バラタナゴの事例

バラタナゴという淡水魚がいます。ニホンバラタナゴやタイリクバラタナゴといった亜種を含む淡水魚です。

バラタナゴはこんな魚です。

 

彼らは産卵する場所が特徴的で、特定の二枚貝のエラに卵を産み付けます。

二枚貝は水を吸う管と出す管を二つ持っているのですが、バラタナゴのメスは水を出す方の管に産卵管を差し込んで、二枚貝の体内のエラに産み付けるのです。

ではオスはどうするのかというと、二枚貝の水を吸う方の管に向けて放精して精子を吸ってもらい、二枚貝の体内で受精するという繁殖行動を取ります。これが彼らの王道です。

さぁモテないオス、困りました。

モテるオスは産卵に適した二枚貝を縄張りとして常に見張っています。 縄張り争いに負けるモテないオスは自分の縄張りを持てず、フラフラするしかありません。

サケであれば浅い穴を掘ってるところに精子かければいいから隙だらけでした。 しかし今回は二枚貝の水を吸う管というかなり狭い範囲に放精しなければなりません。隙が少ない!

ではどうするかというと。

モテるオスは自分の縄張りとする二枚貝にメスが近づいてくると、そのメスを自分の縄張りに引き寄せるためにエスコートしに行きます。その瞬間!モテないオスはさっと二枚貝に近づき、貝の吸水管に先に精子を出しておくのです!

どうでしょう?次こそ参考になります…か?

ハネカクシの事例

いやいやそもそも俺たち人間は体外受精じゃないから、参考にならないからって思った方。安心してください。

次は体内受精なのできっと参考になります。コスタリカに住む、ハネカクシという昆虫の一種(Leistotrophus versicolor)の事例です。

このハネカクシは哺乳類などの糞を食べる昆虫なのですが、良い糞を見つけると体が大きくて強いモテるオスが縄張りとし、弱いオスが近づくのを追い払って独占します。 もちろん、メスは追い払いません。糞におびき寄せられた多くのメスをも独占するのです。

では体の小さい、ケンカに負けるモテないオスはどうするかというと、メスのふりをするのです。具体的には、通常だとメスしかしないような行動を取るようになるのです。

モテるオスはそれに騙されてしまうようで、メスのふりをしたモテないオスに交尾を仕掛けたりするほどだとか。もちろんメスのふりをしたオスはその求愛から逃げ回ります。

そしてメスのふりをしたモテないオスは、本当のメスが近くにやってきた瞬間、急にメスのふりをやめてパッとメスに乗り掛かりババッと交尾をして、モテるオスに追い出される前にサッと飛んで逃げていきます。

 

メスのふりをして接近する。これはどうでしょう。参考になりますか…?

 

オランウータンの事例

最後に、人間に近い類人猿であるオランウータンの事例を見てみましょう。

オランウータンのオスの一部は下の画像のような顔をしています。顔の横と下に大きなひだがありますが、これをフランジと言います。フランジがあるオスをフランジオス、ないオスをアンフランジオスと言います。

フランジオスは大きなヒダがある

 

このフランジはオスに特徴的な第二次性徴なのですが、このフランジが出るタイミングがおもしろいのです。

人間であれば成長と共にその時が来たら勝手に第二次性徴が出てきますが、オランウータンのフランジは周辺に住んでいるのオスの中で、自分が優位なオスだと自覚した時にフランジが出てくるのです。

人間っぽく言えば、男としての自信がついてきたら、といったところでしょうか。

当然モテるのはフランジオスの方で、基本的にはフランジオスが縄張り内のメスを独占します。

 

では、モテないアンフランジオスはどうするか。

それは、モテないメスを急に襲う、です。モテないメスというのは、オランウータン世界では出産を経験していないメスなのだとか。

・・・これはいうまでもなく、参考になりませんね。

 

動物の行動は参考にならない

以上、モテない動物たちの戦略をいくつか見てきましたが、参考になりましたか?

ここまで読んでいただいた方はお気づきかもしれませんが、動物たちの行動は人間の参考にならないことが多いです。なぜなら、人間も他の動物も異なる生き物だからです。

もちろん、さまざまな動物に共通する原理のようなものはあると考えられています。

ですが「この動物が〇〇だから、人間も〇〇である。」と言ったような安易な当てはめは誤りであることが多いだけでなく、有害な場合も多いのです。よく言われている例だと、「アリ社会が〇〇だから、人間社会も〇〇であるべき。」というような。本当にそうでしょうか…?

ということで、私は動物からモテる方法を学べなかったことに失望しながら、人間としていくつもの代替戦略を考えていこうと思います。

「ゆる生態学ラジオの生き物あっぱれ!」シリーズ

【著者紹介】よしのぶ

生き物が好きな人。オーディション企画「ゆる学徒ハウス」から誕生したYouTube及びPodcast番組「ゆる生態学ラジオ」に出演中。生き物の凄さ・可愛さ・面白さをゆるく楽しく紹介します。

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