質量保存の法則(しつりょうほぞんのほうそく)とは?わかりやすく例をもとに解説

2023.02.02

中学理科で学習する「質量保存の法則」は以降の理科・化学分野での学習の基礎となる最重要項目の一つです。覚えなくてはいけないことは必ずしも多くありませんが、正しい理解を深めておかないと、以降の学習が難しくなってしまいます。しっかりと苦手意識をなくしておきましょう。

質量保存の法則とは?

『質量保存の法則』は、その名の通り「物質はその状態が変化しても、その総質量が保存される」という法則です。

例えば、体重を測ることをイメージしてみましょう。
服を着て体重を測るときと、その服を脱いで手に持った状態で体重を測るのでは、重さは同じになります。これは、直感的に分かるのではないでしょうか。
また、裸で体重計に乗って得られる体重と服の重さをそれぞれ別に測って足し合わせれば、服を着た状態で体重を測ったときと同じ体重になる、というのも想像しやすいでしょう。

これと同じように、例えば『二酸化炭素の分子が1つある状態』と『炭素原子が1つ、酸素原子が2つある状態』では、同じ重さになると考えられます。
これが、質量保存の法則の基本的な考え方です。

中学理科では『質量保存の法則』を通して、「化学反応の前後で、原子の組み合わせは変わっても、原子の数や種類は変わらない」ということを学習します。
「クラス替えをすればクラスメイトは変わるが、同じ学年にいる同級生の顔触れが変わらない」のと同じと考えてもいいかもしれません。

質量保存の法則では、
・外部と物質のやり取りが発生しない
・巨大なエネルギーの出入りがない
という2つが重要です。

 

①外部と物質のやり取りが発生しない
2番目に挙げたクラス替えの例で考えましょう。
転校生がいた場合は、クラス替えの前後で学年全体の構成が変わってしまいます。
ですから、質量保存の法則を考えるときは「クラス替えのときに、転校してくる人も、転校していく人もいない」というのが重要な条件になります。
反応の前後で、測定する原子の種類や数を変えてはいけません。

 

②巨大なエネルギーの出入りがない
核反応のように巨大なエネルギーが生み出される場合などでは、物質の一部がエネルギーに変換されてしまい、質量保存の法則が適用できなくなってしまうことがあります。
一般的なレベルの化学反応や、中学理科の学習範囲で教わる化学反応では、化学反応に伴うエネルギーの出入りは無視できるほど小さいため、この点については考えなくても大丈夫です。

こうした例外があるということだけ頭に入れておくと、高校や大学で化学を勉強するときに役立つかもしれません。

質量保存の法則の例

では、実際に質量保存の法則を、水素分子と酸素分子から水ができる化学反応で説明します。

水素分子は、酸素分子は、水分子はとそれぞれ表されます。

水素分子は水素原子が2つ組み合わさって出来ています。
酸素分子も同様に、酸素原子が2つ組み合わされています。
水分子は、水素原子が2つと酸素原子1つから出来ています。

まず、水素分子1つと酸素分子1つを反応させて水を作ることを考えてみます。
質量保存の法則より、反応の前後で原子の総数が同じにならなくてはいけないので、
のように、酸素原子が1つ余ってしまいました。
この1つの酸素原子も水に変換するためには、水素原子が2つ必要となります。
そのため、
と考えることができます。
これで、すべての水素分子と酸素分子から、水分子を作ることができました。

これを簡潔にまとめて、下のように表します。

この化学反応式であれば、反応の前後で水素原子が4つ、酸素原子が2つとなっているため、質量保存の法則がしっかりと守られています。

質量保存の法則をもとに出される例題

【例題1】基礎問題
127gの銅粉末を実験室の環境で加熱した。すると、143gの黒色の粉末が得られた。次の問いに答えよ。
①得られた物質は何か。
②このときの化学反応式を答えよ。

【解答1】
①酸素が十分にある環境で銅を加熱した結果、黒く変色した、という実験結果です。このことから、得られた物質は酸化銅(Ⅱ)と考えられます。

知識を問われる問題ですので、知らないと答えることはできないでしょう。

②黒色の酸化銅は、銅原子1つと酸素原子1つが結びついている物質です。
基本的な反応の方向性は、となりますが、これでは、反応前と反応後で酸素の数が合いません。
反応後に余ってしまうことになる酸素原子も酸化銅にすることを考えて、反応前の銅原子の数を2に調整しましょう。

 

 

【例題2】基本問題
実験室において、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを反応させて、アンモニア、塩化カルシウム、水を得た。この実験で起きた化学反応式を示せ。
ただし、それぞれの物質の化学式は、以下の通りである。

【解答2】
授業で習っていないような化学物質であっても、化学式と化学反応の前後の物質が分かれば、化学反応式を書けるようにトレーニングしておきましょう。
まずは問題文から、おおまかに下のような反応であったことが分かります。

ここで、反応前後のそれぞれの原子の数を合わせるために、以下のように計算してみましょう。

「数学みたいで苦手だ」と思う人もいるかもしれませんが、下のような表を書けば、パズルみたいに解くことができます。

この反応前、反応後が等しくなるように、計算をしていきましょう。
理想は、a~eの中で1を代入できるものを探すことですが、慣れないうちはすぐには見つけにくいと思います。
もし探せなかった場合は、一つの文字だけで表現できる数の元素(今回の例であれば水素以外)を1として計算をはじめてもOKです。

例えば、窒素の数を1として計算すると、下の表のようになります。

結果、a・c・eが1、b・dが0.5であることが分かりました。
化学反応式はすべての分子が最小の自然数で表せるように記述するというルールがあるので、すべてを2倍して、a・c・eを2、b・dを1として、下のように解答します。

今回の例題のように化学式が与えられている場合は簡単に解けますが、化学式が与えられておらず、かつ覚えていないときは、答えるのがかなり難しくなります。
授業で習った化合物の化学式は正確に書けるように、何度も練習しておくことをおすすめします。

 

【例題3】発展問題
炭酸水素ナトリウム84gを試験管に入れて加熱し、このときに発生した気体を水上置換で回収するという実験を行った。加熱後の試験管には、白色の固体52gが残っていた。また、加熱した試験管の口付近には、液体が付いていた。次の問いに答えよ。
①水上置換で得られる気体を石灰水にくぐらせたところ、白く濁った。この気体の化学式を示せ。
②試験管に残った液体を塩化コバルト紙に付けると、青色から赤色に変色した。この液体の化学式を示せ。
③試験管に残った白色固体をフェノールフタレイン溶液に溶かすと、濃い赤色を示した。この固体の化学式を示せ。
④炭酸水素ナトリウムを加熱したときに起こった化学反応式を示せ。
⑤同じ実験を、炭酸水素ナトリウム168gで行うとき、白色の固体は何g残ることが期待できるか。

【解答3】
中学化学における、有名な「差のつく問題」です。

①水上置換は、水に溶けにくい気体を集めるときに便利な集気法です。今回の問題文では、石灰水を白く濁らせる特徴を持つ気体ということが分かりました。これは、二酸化炭素であることが考えられます。二酸化炭素の化学式はです。

②塩化コバルト紙は、水に反応して赤に変色する試薬です。そのため、この液体はであると考えられます。水の化学式はです。

③炭酸水素ナトリウムを加熱して残る固体は、炭酸ナトリウムです。この固体は強いアルカリ性を示すため、フェノールフタレイン溶液は濃い赤色に変色します。

炭酸ナトリウムの化学式はです。これは知らないと答えるのは難しいでしょう。

④ここまでの結果から、以下のような化学反応式が立てられます。

⑤まずは、上の化学反応式を確認してください。
この実験では、2つの炭酸水素ナトリウムから1つの炭酸ナトリウムが発生しています。
2個の炭酸水素ナトリウムが84gだとすると、炭酸ナトリウムは1個で52gある、という風に考えることができます。
ここで、168gの炭酸水素ナトリウムが何個に相当するのかを考えましょう。炭酸水素ナトリウム84gが2個なのですから、168÷84=2から、2個の2倍、つまり4個の炭酸水素ナトリウムが発生する、と考えられます。
4個の炭酸水素ナトリウムから作られる炭酸ナトリウムは、2個です。
2個の炭酸ナトリウムの重さは、52g×2個=104gです。
よって、168gの炭酸水素ナトリウムから得られる炭酸ナトリウムは104gであると考えられます。

解答の最初にも書いた通り、炭酸水素ナトリウムを加熱する問題は「出題されやすい難問」です。
基本的な問題が解けるようになったら、一度は触れておきたいところです。

まとめ

中学理科で学習する『質量保存の法則』では、「化学反応の前後で原子の種類や、それぞれの数が変わらない」という点をマスターしましょう。
解法のテクニックだけで対応しようとするのではなく、この点をしっかり頭に入れておくことで、簡単なミスを防ぎやすくなります。
質量保存の法則を使った問題は、単元テストや定期テストはもちろん、高校入試でも高確率で出題される重要問題です。
応用問題を解く前に、まずは必ず基礎問題をクリアして、正しい理解を身につけてください。

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