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突然ですが、皆さん知っていますか?「ピロリ菌」と「エイリアン」に共通点があることを。どちらも実際に見たことがない人がほとんどでしょうからピンと来ないと思いますが、いわゆる「お腹イタくなるアレ」といわゆる「宇宙人的なアレ」の共通点の話をしていきます。
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ピロリ菌は胃に寄生し、胃潰瘍や胃がんといった様々な胃に関する疾患を引き起こす厄介な細菌です。ピロリ菌が寄生している場合、除菌をすると一部の病気が改善されるという報告もあります。
一方「エイリアン」というとラテン語のaliēnus(「他人の~」「異邦の~」)を語源とし、一般的に通じる語としては「宇宙人・地球外生命」を指します。リドリー・スコット監督の映画『エイリアン』のなかでは、人の腹部から誕生し、人間を殺戮していく恐ろしい生き物です。

↑ピロリ菌 ↓エイリアン

このように、”ピロリ菌”と”エイリアン”は腹部に生息し、人類に危害がある点では共通しているように思われますが、今回紹介したい共通点は別にあります。
それは、検査や調査に同位体を用いる点です。
まず同位体の説明からします。皆さんご存知の通りこの世界は原子で構成されています。
原子は中心に原子核、その周りを電子が周回している状態で構成されています。また原子核は陽子と中性子で存在しています。原子の性質は陽子の数で決まり、重さは原子核内の陽子と中性子の総数で決まります。
同位体とは「陽子の数は同じだが中性子の数が異なるため、性質は同じだが重さが違う原子」のことで、「12C」のように表記し「炭素12」や「カーボン12」のように読みます。炭素Cを例に挙げると、地球上に多い順に12C(99%)、13C(1%)、そしてごくわずかに14Cが存在します。(※元素記号Cの前にある数字は原子の重さを表す質量数です。)

炭素の同位体
このような同位体の重さと存在量の違いを利用して、ピロリ菌とエイリアンは発見されます。
ピロリ菌は呼気尿素検査法という方法で調べます。
検査方法としては、人工的につくった炭素同位体13Cで合成された尿素(検査薬)を服用します。13Cは地球上に通常1%程度しか存在していないのでここでは「レア炭素」としましょう。尿素はピロリ菌が胃に寄生している場合のみ二酸化炭素に分解されます。この二酸化炭素は服用した尿素を構成しているレア炭素13Cがたくさん含まれている13CO2です。一方で、ピロリ菌が寄生していない人は尿素が尿素のまま、二酸化炭素には分解されませんので日常的に人間が呼吸で吐き出す二酸化炭素を吐くだけです。この二酸化炭素は、地球上に99%ある普通炭素12Cで構成されている12CO2です。
人間の日常的な呼吸が普通炭素12Cで行なわれていることに注目して、検査薬服用後の呼気中にレア炭素13Cが通常より多く含まれていることが検査で判明すれば、ピロリ菌が寄生していることが分かります。
さて、ここからはエイリアンの見つけ方について説明をします。さすがに映画『エイリアン』に登場するエイリアンは怖すぎて架空のものと思いたいので、同じ調査方法で見つけられるかどうかは分かりませんが、この記事では、実際に行われている微生物ほどの小さな地球外生命体を調査するときに用いるやり方を紹介します。
方法としては、地球上にほんの僅かしかない同位体である超レア炭素14Cで合成された生物の栄養源になる物質を作り、調査対象の惑星で散布します。生物がいる場合には、この栄養は生物に吸収され生体内に残ります。散布した栄養分が十分に拡散されて周囲からなくなったタイミングで散布された区画を加熱し、そこに存在する有機物を全て分解します。もしそこに生命が存在すれば、本来は拡散されているはずの超レア炭素14Cが「まとまった状態」で回収することができるため、地球外生命体”Alien”の存在が観測できます。
とはいえ・・もしそこに生命体がいたとして、惑星外からやってきた生物に急に炭素を散布され、最終的には"焼き尽くされる"というのは・・・いったいどっちがエイリアンなんだという話ですよね。
ここまでで、レアな同位体13Cと14Cと、たくさんある12Cとの重さの違いを使って小さな生き物を発見する方法を書いてきました。ただ、この同位体の「重さの違い」はほんのわずかしかないのです。どのくらいわずかかと言うと、地球の重さを基準にして考えてみた場合、12Cと13C同位体の重さの違いは半径10 cmの鉄球の重さの違いしかありません。このため、この重さの違いを天秤で調べるのはかなりむずかしいのです。
では、実際にこの重さの違いをどう調べるか?それは、電気の力を使うのです!!!
電気の力(クーロン定数)は重さの力(万有引力定数)に比べて約1.5垓も大きいです。この巨大な電気の力を使って原子1つ1つの重さを正確に測定する装置を質量分析装置といいます。
質量分析装置を用いて、原子・分子の重さを調べる応用例はたくさんあります。例えば、化石や美術品の年代測定があります。生きている生物の体内では普通炭素12Cとレア炭素14Cの割合は一定です。しかし、遺骸における同位体の割合は時間とともに変化します。この割合を調べることでこの化石の生きた時代が判明します。また、美術品ではキャンバスや材料の時代から贋作の判定もできます。
こうした分析技術は私たちの生活を豊かにするうえでの土台となる技術です。今回は「ピロリ菌」と「エイリアン」を質量分析装置を用いて探す方法について解説しましたが、今後もこういった技術の応用例や基礎知識を紹介していきたいと思っています。
日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会 著 H. pylori 感染の診断と治療のガイドライン 2009 改訂版
大塚製薬 ピロリ菌の検査と除菌治療 ピロリ菌の検査と除菌治療|大塚製薬 (otsuka.co.jp)
小出 良幸著 生命起源に関する研究動向 地学雑誌 108(5) 509-536 199 _pdf (jst.go.jp)