アンモニア酸化古細菌が暗闇でも酸素を生成する事が判明!窒素循環に影響も?

2022.01.26

みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!

今回のお話は、暗闇で酸素を生成する能力を持つ微生物のお話だよ!

酸素を生成すると言えば光合成が思いつくけど、この微生物は光合成に頼らず酸素を生成するよ!酸素の量自体はわずかだけど、こういう反応がある事はとても重要なんだよ!それを解説するね!

生物が “欠かせない” 窒素の循環

地球の際立った特徴として、無数の生き物がいるという点が挙げられるよね?全ての生き物は何かしらの手段で生きていて、自分自身と同じ生き物を複製し、そして寿命を迎えれば死を迎えるよ。

生き物は外界から物質を摂取し、排泄や死で物質を外界へと放出するという過程を繰り返しているよ。このような有機的な物質循環は、地球以外には今のところ見つかっていないよ!

窒素循環

生物による窒素循環の図だよ。3~4文字のアルファベットは、反応を触媒する主な酵素を表しているよ。様々な生物が関わる事で、化学反応に乏しくて利用できない二窒素や、死骸の分解で発生する有害なアンモニアが、生物の利用可能な形に変化するんだよ!

生物が関わる物質循環で、重要なものの1つは窒素循環だよ。

窒素はタンパク質などの構成部品として欠かせないけど、大気中にある窒素の大部分は二窒素 (普通の窒素分子の事) で、化学反応に乏しいから、普通の生き物は利用できないよ。

この、普段は手を付けられない二窒素を、生物が利用可能な化合物へと変換する過程には、膨大な種類の生物が関与しているよ。

そしてその大部分は、真正細菌や古細菌と言った原核生物が担当しているよ。中でも、その量が膨大だから、古細菌は窒素循環で大きな役割を果たしていると推定されているよ。

ただ、微生物の生態を観察するのには、その種を人工的に培養し、数を増やす事が重要になるよ。

ところが、古細菌は人工培養の条件が不明な種がほとんどで、だから研究が進んでいないという現状もあるんだよ。

研究がしやすいけど重要な古細菌

こういった背景の中で、珍しく研究が進んでいるのがニトロソプミルス・マリティムス (Nitrosopumilus maritimus) と呼ばれる古細菌だよ。

ニトロソプミルス・マリティムスは2005年に発見され、その後培養条件の確立や全ゲノム配列の解読がされているという、とても希少な存在だよ。

そして何より存在量が膨大で、沖に出ててきとーに海水を汲むと、5番目に多い細胞がニトロソプミルス・マリティムス、と例えられるくらいだよ!

ニトロソプミルス・マリティムスはアンモニア酸化古細菌に属しているよ。これは文字通りアンモニアを酸化し、そこから発生するエネルギーを利用して生きているよ。

この反応は、正確には以下の2段階の反応式を経由しているよ。

まず、AMO (アンモニアモノオキシゲナーゼ) という酵素を触媒とし、アンモニアと二酸素 (普通の酸素分子の事) の反応でヒドロキシルアミンが生成するよ。

次にCu-P460という酵素を触媒とし、ヒドロキシルアミンから亜硝酸イオンが生成するよ。

このような酵素を生成する遺伝子を持つ、ニトロソプミルス・マリティムスと似た古細菌は土壌中にも見つかっているよ。

そしてその量は、アンモニア酸化をする真正細菌の10倍から100倍もいると推定されているよ!

だから、地球全体の窒素循環に対して、ニトロソプミルス・マリティムスとその仲間の存在がとても大きな影響を与えている、と考えられているよ!

酸素はけっこー珍しい!

ニトロソプミルス・マリティムスの謎

ニトロソプミルス・マリティムスは、光が少なくて二酸素に乏しい深海でも豊富に生息しているよ。アンモニア酸化で生きている事を考えると、これは矛盾しているよ!
画像引用元: "Nitrosopumilus maritimus SCM1". U.S. Department of Energy Joint Genome Institute.

ここで重要なのは、アンモニアの酸化に二酸素が必要な事だよ。え、当たり前?いやこれが重要なんだよね!

二酸素はかなり反応性が高く、自然界では生物の関与しない無機的化学反応で生成する機会が少ないよ。

地球の大気を初め、今ある二酸素のほとんどは有機的、つまり葉緑素を持つ生物が光合成で作り出したものだよ。

重要な点はここ。二酸素を生み出すには光合成が必要で、光合成が起きるには光が必要、という事は、深海のように光がほとんど届かない環境では、二酸素を生成する有機的手段がないという事だよ!

(実際には、暗闇で光合成をせずに二酸素を生み出す生物もいなくはないよ。ただしそれは非常に少数の種類で、生息地も限られているから、無視して差し支えないよ。)

深海が二酸素に乏しいなら、二酸素が必要になるアンモニア酸化が進まず、従ってアンモニア酸化で生きるニトロソプミルス・マリティムスが大量にいるはずがない、と言うのが普通の考え方だよね。

ところが実際には、ニトロソプミルス・マリティムスは光が届かない深海の海水中でも豊富に見つかっているよ。という事は、誰かが二酸素を供給している事になるけど、それはいったい何者なんだろうね?

色々無い場所で、自力で何とかする

ニトロソプミルス・マリティムスは二酸素を生み出す

今回の研究で、二酸素はニトロソプミルス・マリティムス自身が自ら生成している事が分かったよ!光合成に頼らず二酸素を生成する能力のある生物としては、極めて豊富に生息するという点でとても珍しい発見だよ!
画像引用元: "Nitrosopumilus maritimus SCM1". U.S. Department of Energy Joint Genome Institute.

南デンマーク大学などの研究チームが出した結論は実にシンプル!二酸素はニトロソプミルス・マリティムス自身が生み出しているというものだよ!

といっても、その答えそのものがかなり驚きだよ。先に結論を言っちゃったけど、行った実験について説明するね。

研究では、ニトロソプミルス・マリティムスのみを純粋培養した海水を用意して、光を遮断したよ。そして二酸素が不足している深海の状況を再現し、酸素レベルを測定したよ。

この時、単に海水の酸素濃度を測るのではなく、ニトロソプミルス・マリティムスのごく近くと、それ以外の場所で比較計測をしたよ。

そして仮に酸素レベルの変動があった場合には、ニトロソプミルス・マリティムスの活動と関連しているのかを観たんだよ。

これに加えて、与えるアンモニアの同位体を15Nで標識する事で、ニトロソプミルス・マリティムスの活動で窒素が動くかどうかも合わせてみたんだよ。

すると驚くべき事に、酸素レベルが下がった数分後、再び酸素レベルが上昇した事が観測されたんだよ!

量はわずか、それでも重要!

発生する二酸素の量はかなり少なくて、ニトロソプミルス・マリティムス自身が再びアンモニア酸化に消費してしまって消えてしまうくらいだよ。

だから、この反応が二酸素を供給する主体になる事はできないよ。それでも、この結果はとても重要だよ。

まず、ニトロソプミルス・マリティムス自身が二酸素を放出する事によって、深海のように酸素レベルが低いところでも十分にアンモニア酸化を継続する事ができると分かったんだよ。

また、放出されるものとして、二酸素だけでなく、二窒素も検出されたんだよ。窒素循環にはいろんな原核生物が絡んでいるとは説明したよね。

この窒素循環、特に最初の段階である二窒素を、利用可能な化合物に変換できる生物はとても少ないから、深海のような環境では利用できずに逃げていく窒素としてカウントされてしまうよ。

だから、この窒素は生物が利用できないものとしてカウントできるよ。

そして何より、ニトロソプミルス・マリティムスは海水中に極めて膨大な量が生息するから、酸素レベルに乏しいところへの適応と、それに伴う利用できない窒素の増大は、地球全体の窒素循環を考える上でとても重大な影響があるを意味しているよ!

まだまだ謎は残されている!

今のところ、ニトロソプミルス・マリティムスがどうやって二酸素と二窒素を生み出しているのかは不明だよ。

さっき書いた通り、ニトロソプミルス・マリティムスはアンモニア酸化でヒドロキシルアミンを生成、次にヒドロキシルアミンから亜硝酸イオンを生成するよ。

この後の反応としては、亜硝酸イオンから一酸化窒素を生成する反応があるよ。そして恐らくは、その一酸化窒素を元に二酸素と亜酸化窒素を生成、そして亜酸化窒素から二酸素と二窒素を生成する…という流れが予想されているよ!

ただしこれはあくまで予想だよ。亜硝酸イオンから一酸化窒素を生成するのはNIR (亜硝酸還元酵素) という酵素が触媒として関与している事は分かっているけど、その後についてはどんな酵素が関与しているのか、そもそもこの反応経路で本当に正しいのかは不明だよ。この辺は更に研究が必要だよ!

今回の研究結果は深海の中を再現したものだけど、世界には似たような酸素が欠乏している深海は無数にあるよ。ニトロソプミルス・マリティムスは低濃度のアンモニアだけでなく、低濃度の酸素環境にも適応できるという訳だね!

また、土壌中にはニトロソプミルス・マリティムスと似た種類のゲノムを持つ古細菌が見つかっているから、これらの生態を詳しく調べる事は、今まで推定されていた窒素循環が全然書き変わっている可能性も出てくるわけだよ!これからが楽しみだね!

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文献情報

[原著論文]

  • Beate Kraft, Nico Jehmlich, Morten Larsen, Lura A. Bristow, Martin Könneke, Bo Thamdrup & Donald E. Canfield. "Oxygen and nitrogen production by an ammonia-oxidizing archaeon". Science, 2022; 375 (6576) 97-100. DOI: 10.1126/science.abe6733

[参考文献]

  • Birgitte Svennevi. (Jan 6, 2022) "Microbes produce oxygen in the dark". University of Southern Denmark.
  • "Nitrosopumilus maritimus SCM1". U.S. Department of Energy Joint Genome Institute.
  • Martin Könneke, Anne E. Bernhard, José R. de la Torre, Christopher B. Walker, John B. Waterbury & David A. Stahl. "Isolation of an autotrophic ammonia-oxidizing marine archaeon". Nature, 2005; 437, 543-546. DOI: 10.1038/nature03911
  • Phyllis Lam & Marcel M.M. Kuypers. "Microbial Nitrogen Cycling Processes in Oxygen Minimum Zones". Annual Review of Marine Science, 2011; 3, 317-345. DOI: 10.1146/annurev-marine-120709-142814
  • Jörg Simon & Martin G. Klotz. "Diversity and evolution of bioenergetic systems involved in microbial nitrogen compound transformations". Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Bioenergetics, 2013; 1827 (2) 114-135. DOI: 10.1016/j.bbabio.2012.07.005
  • Jonathan D. Caranto, Avery C. Vilbert & Kyle M. Lancaster. "Nitrosomonas europaea cytochrome P460 is a direct link between nitrification and nitrous oxide emission". Proceedings of the National Academy of Sciences. 2016; 113 (51) 14704-14709. DOI: 10.1073/pnas.1611051113
彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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