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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回の解説は、みんな大好き (?) ブラックホールについて、新しい理論研究の結果に関するお話だよ!
なんと、ブラックホールは宇宙に向かってプレッシャーを与えているという報告だよ!
CONTENTS

ブラックホールの想像図
画像引用元: Jeremy Schnittman. "Black Hole Accretion Disk Visualization". NASA’s Goddard Space Flight Center. (Public Domain)
遠くから見たブラックホールの想像図だよ。時空の歪みが激しいせいで、本来は裏側にあり見えないはずの部分が見えてたりするよ。
ブラックホールという天体について、みんなはどんなイメージを抱いてる?真っ黒の天体で、強い重力を持ち、何でも吸い込み、光でも逃げ出せない、とてつもなく奇妙な天体、というイメージを持っている人が多いんじゃないかな?
ブラックホールは実はとても単純。質量・電荷・角運動量の3つのパラメータで全てを表せるんだよ。これは構成物質とか形とか色とか、無限とも思えるパラメータがある他の天体と比べたらよほど単純だね。
これは、ブラックホールが一般相対性理論の方程式を解くと現れる天体である事と関連しているよ。
たった3つのパラメータしかないという事から、一般相対性理論の視点からブラックホールを見た場合には、理論的に多くの事が予測されて、実際の観測と照らし合わせる事ができるから、結構いろんな事が分かっているんだよ。
あまりに物理量という "毛" がない事を差して、これは「ブラックホール脱毛定理」、「ブラックホール無毛定理」、あるいは「ブラックホールには毛が (3本しか) ない」なんて言われているよ。

ブラックホール周辺の時空の様子
画像引用元: Andrew Hamilton. "The Schwarzschild waterfall". JILA - University of Colorado Boulder. (Public Domain)
ブラックホールとは、特異点に向かって時空が流れる速さが、光の速さを超えている領域だよ。その境界線は目には見えないよ。
また、ブラックホールをSF映画や科学番組でよく見る真っ黒い球体でイメージする人も多いと思うけど、あれは背景に星々のような明かりがあるからそう見えているだけだよ。
実際のブラックホールは、質量の全てが集合した、大きさゼロ・密度と重力が無限大の特異点が中心にあるだけだよ。
ブラックホールが "ブラック" に見えるのは、重力が強すぎて光の速度でも逃げ出せない領域が特異点から一定の範囲内にあるからで、この領域の境界を事象の地平面と言うよ。
ただ、事象の地平面は分かりやすい境界線とか看板とかは無くて、実際に入り込んで逃げ出せなくなったと分かるまでは外側の宇宙となんら違いを感じないよ。
ただ、ここまで語ってきたのはブラックホールの一般相対性理論の視点だよ。ブラックホールは量子力学の視点から見ると、まだまだ基本的な所も分かっていないんだよ。
一般相対性理論はマクロな世界を記述する理論なのに対して、量子力学はミクロな世界を記述する理論だけど、一般相対性理論はミクロの世界を、量子力学はマクロの世界を記述する事がうまくいかないんだよ。
ブラックホールは一般相対性理論から導かれる天体だから、量子力学でブラックホールを描くのは不完全なんだよ。また、ブラックホールの中心である特異点は、一般相対性理論が適用できない場所でもあるから、特異点の性質を知るには量子力学と一般相対性理論を統合した量子重力理論が必要となるよ。
だから、量子力学の効果を踏まえてブラックホールを考えると、新しい発見があるんだよ。
代表的なのが「ホーキング放射」だよ。これは、何も放出しないはずのブラックホールが、実際にはわずかながら熱を放射しているというものだよ!イメージとは正反対で、意外だよね!?
詳しい説明は割愛するけど、ざっくり言うとこんな感じだよ。量子力学では、量子の位置と運動量は、必ず最低限の不確定さを持っている性質があるよ。この効果により、物質もエネルギーも全くない真空でも、仮想光子という仮想的な光の粒が生成されては消滅する、を繰り返しているよ。
これはブラックホールの近くでも起きていて、ブラックホールから光の速度でも逃げられなくなる境界である事象の地平面では、重力によってブラックホールの中心である特異点へと引っ張られ加速される力が働くよ。
この力、つまりエネルギーを与えられると、仮想光子は実在の光子となり、消滅せずに空間を移動するようになるよ。事象の地平面の内側で生成した光子は特異点へと落ちるしかないけど、外側では逃げ出す事が可能なんだよ。
ところで、 "There ain't no such thing as a free lunch (無料の昼食なんてあるわけないだろう)" と言う格言があるように、仮想光子が実在の光子となるにはエネルギーが必要で、そのエネルギーは、本を正せばブラックホール自体から与えられたものだから、遠目から見ると、ブラックホールが事象の地平面から一定の温度でエネルギーを放射をしているように見えるんだよ。
これがホーキング放射だよ。この効果はとてつもなく弱いものではあるけど、けどゼロではない温度で宇宙に放射している、と言う点が重要だよ。また、ブラックホール脱毛定理により、ホーキング放射はブラックホール自体やブラックホールに落ちた物質とは独立している事が予想されるよ。
では、ホーキング放射以外にはブラックホールが外の世界へと影響を与える事はないのかな?どうやらそうではないらしい、と言うのが今回サセックス大学のXavier CalmetとFolkert KuipersがPhysical Review Dに投稿した論文だよ。
2氏は量子重力理論について研究していて、研究の一環で事象の地平面に働く重力と量子力学的効果の関係性について理論計算を行っていたよ。さっき、量子重力理論は一般相対性理論と量子力学を統合したものって言ったけど、今のところ基礎の基礎すら未完成と言えるほど極めて難しい課題で、普通にやったのでは全く太刀打ちできないよ。
今回の論文でも、いくつかのパラメータについて、ある程度 "こうなるだろう" という予想を立てての統合理論の構築となっているよ。
CalmetとKuipersは、シュワルツシルトブラックホールの表面エントロピーの量子重力補正に関する理解のために、ワルト・エントロピー方程式を解く試みをしていたよ。
といっても、これは何のこっちゃだよね。かいつまんで言うとこうなるよ。ブラックホールに落ち込んだ物質の量子情報は、ブラックホールの性質からそのほとんどが失われ、逃げ出す事ができなくなるよ。
ところが、こういう量子情報は決して失われず保存されなければならないという物理学の大原則とは反するから、これが一般相対性理論と量子力学の統合を難しくする難点の1つなんだよ。
これを解決する事が統合理論を構築する大きなステップであって、解決の試みの1つが、何も出さないはずのブラックホールは、実は情報が外へと逃げていく、それがホーキング放射である、と言うものだったんだよ。
今回の理論計算で算出された値は、負の値を持つ圧力である事が分かったよ。これは、ホーキング放射以外にもブラックホールが外向きにエネルギーを放出している事を示しているよ!
ところが、CalmetとKuipersがいくつかの条件を前提として二次元でのワルト・エントロピー方程式を解いて、サブセットを使用して三次元に補正してみると、それまで出会った事の無かった値に遭遇したよ。
この値が何を意味するのか、2氏はかなり悩んだよ。そして数ヶ月後、この値が負の圧力を意味している事を突然ひらめいたんだよ!

負の圧力の式
今回の理論計算で算出された圧力を算出する式だよ。頭にマイナスが付いており、圧力が負の値である事を示しているよ。
この圧力はとてつもなく小さなもので、例えば太陽と同じ質量を持つブラックホールの場合、その値は2×10⁻⁴¹Pa、地球大気圧の5正分の1 (1兆分の1の1兆分の1の1兆分の1の50億分の1) という値だよ。
ただ、この値が純粋にゼロではなく、小さいにしても値を持つ事は重要な意味を持つよ。また、負の圧力という事は、ブラックホールが宇宙に向かって圧力をかけている事、つまりブラックホールから外向きに何らかの形でエネルギーが漏れ出ている事を意味しているんだよ!
ブラックホールからエネルギーが放出されるというのはホーキング放射とそっくりだけど、今回見つかった負の圧力がホーキング放射と関係しているのかは現時点では不明で、ホーキング放射とは全く無関係の現象か、あるいはホーキング放射を別の方向から算出したものである可能性があるよ。

ブラックホールの温度と量子状態の式
今回の理論研究が正しい場合、ブラックホールの温度がブラックホールの量子状態を示す指標など、ブラックホールに関する新たな側面が浮かび上がってくるよ!例えばこの式は、プランク質量のブラックホールの温度に関して、今回の理論が古典的な計算結果とほぼ一致している事を示しているよ。
ブラックホールが熱だけでなく圧力も放射しているらしいという結果は、ブラックホールには毛がないなんて言ってたのに、実際にはもっと複雑である事を意味しているね。
もしこの結果が正しい場合、例えばブラックホールの放射がブラックホールの量子状態を示す指標である事を示すなど、謎多きブラックホールの新たな側面を描き出しているよ。
そしてこれは、ブラックホールという "それなりに単純" な天体が、一般相対性理論と量子力学の統合の入り口であるという、中々味わい深いものである事を示しているんだよ!
[論文]
Xavier Calmet & Folkert Kuipers. "Quantum gravitational corrections to the entropy of a Schwarzschild black hole". Physical Review D. 2021; 104 (6) 066012. DOI: 10.1103/PhysRevD.104.066012;arXiv: 2108.06824v1
[参考文献]
Neil Vowles. (10 Sep, 2021) "Physicists discover black holes exert a pressure in serendipitous scientific first". University of Sussex.
MICHELLE STARR. (13 Sep, 2021) "Physicists Just Accidentally Made a New Discovery About Black Holes". science alert.