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AkaiKKRは、合金や半導体などをはじめとする、不規則系の計算が得意な第一原理計算・バンド計算ソフトウェア・パッケージです。このパッケージは株式会社アカデメイアに所属する赤井久純博士(大阪大学 大学院工学研究科 招聘教授/元 東京大学 物性研究所)が1970年代から継続的に開発してきたもので、現在も様々な開発者によって開発が進められています。
AkaiKKRは今に至ってもなお研究・産業の最先端で活躍しており、2022年からは赤井博士の他、アカデメイア物性部門の研究員らによって開発・研究・機能拡張が行われています。
不規則系、つまり原子の並びの周期性などの規則性が崩れた複雑な物質の計算は通常、非常に重いコストが必要です。このコストの重さにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その点、AkaiKKRは原子配置のランダム性を確率的に扱い、小さな空間の中で計算を完結させられる「コヒーレントポテンシャル近似(CPA)」を組み込むことで、不規則系に対する非常に高速な計算を可能にしました。
このためAkaiKKRは通常の規則結晶だけでなく、従来ならば膨大な計算量を必要とする不純物系や不規則置換合金、混晶といった不規則系の電子状態の計算を高速に、高精度に、コンパクトに行うことができます。
AkaiKKRで用いているKKRグリーン関数法は高速、高精度、コンパクト性などの特徴を持つ全電子計算手法です。安定に電子状態を計算することが可能で、平面波カットオフなどのパラメータに悩むようなこともありません。AkaiKKRはこのグリーン関数法とCPAを組み合わせたKKR-CPA法を使った計算ができる世界初のソフトウェアであり、公開されているコードとしては唯一の存在であることから、開発から数十年が経つ今も不規則系の計算で用いられる貴重な存在であり続けています。
ここからはAkaiKKRの特徴について詳しく述べてゆきます。AkaiKKRのご利用をお急ぎの方は、ページ下部のダウンロードリンクより入手いただけます(無料・要登録)。
規則性のないものを計算するのは、大変なことです。原子の並びに周期性がない系を計算するためのオーソドックスな手法としては、スーパーセル(数百くらいの原子数の結晶)を作る方法があります。
スーパーセルの中の原子をある程度ランダム化するなどして計算を実行すれば、かなり時間はかかりますが一応計算結果を得ることができます。しかし、これを行ってみると、たとえばワークステーションで1週間の計算を行って得られた結果が1つの物質にしか適用できないなど、計算コストと得られる結果が見合っていないのでは……というような感想を抱くのではないでしょうか。
一方、AkaiKKRでは原子配置のランダム性を確率的に扱い、小さい空間の中で計算します。CPA法では1つの原子のまわりに不規則物質の不規則性を押し込めて近似計算を行うので、複雑な対象について他よりも軽い計算が可能なのです。この方法は電子の到達確率(被散乱確率)を求めるKKR法と相性がよく、両者を組み合わせたKKR-CPA法を用いることで高速・かつ高精度の計算を実現しています。
同じサイトに対して異なる原子を割合に応じて指定することが可能で、異なる原子を配置したセルを並べたスーパーセルの計算を行う必要がないため、不規則系に対して小さなセルで高速に計算することができます。このように、従来では実現できなかった不規則系の計算コストの大幅な削減を可能にするのがAkaiKKRの特徴です。
話はすこし変わりますが、物理学の仮定には「絶対零度である」という仮定も存在します。しかし、たとえば電気抵抗や磁化について、意味のある値を得ようとすると絶対零度ではなく有限温度の挙動が知りたいはずです。
そこで私たちは不規則性から来る残留抵抗だけでなく、有限温度で重要になるフォノン散乱やマグノン散乱による抵抗を含む電気抵抗、ハイゼンベルクモデルへのマッピングから計算した磁化の温度変化などの拡張機能(有料)を作っています。
ハイゼンベルクモデルへのマッピングなどは、これを利用してたとえば古典的な計算(モンテカルロ・シミュレーションなど)も行われており(例:磁石のための物質開発などにおける物性と材料特性の結びつけなど)、データ駆動の物質開発に有用であると考えています。
AkaiKKRは十分に高速な計算を提供していますが、それはあくまでk-空間(波数空間)の話でした。実は、AkaiKKRには実空間で計算できる追加機能も存在します。
実空間で計算する優位性とは何でしょうか。k-空間での計算は形状や結晶的な規則性を仮定しています。しかし、実空間で計算すれば、分子やアモルファス、クラスタ(分子の集合)についてもより詳細な検討が可能です。
そこで心配になるのが計算量です。普通に考えればk-空間を使っていた利点がなくなってしまいます。実空間で計算した場合、1つの電子について空間の全ての電子との相互作用を計算することになるはずです。その計算量は膨大になってしまうでしょう。これは全く実行不可能です。
このような場合、密度行列を用いて遠いところをカットオフする近似によって計算量を小さくすることができます。AkaiKKRでは、上で述べたような手法とは全く異なった、より優れた手法(遮蔽変換)を導入した拡張機能(有料)が存在します。これは1つの電子について考えたとき、その近傍の電子だけを考えれば良いという変換です。その結果、計算量を少なくできる可能性が出てきます(Order-N法)。通常、オーダを小さくしようとすると近似がどこかで入ってしまうものです。ところが、KKR法におけるOrder-N法は近似なしにこの計算を実現することができるのです。
AkaiKKR導入版のダウンロードは以下より行うことが可能です!
無料版では以下の計算や解釈をすることが可能です。
それぞれのプログラムはFORTRAN77で書かれています。ライブラリを追加したりする必要はなく、AkaiKKR単体で使用することができ、小さなノートパソコンから大きなスーパーコンピュータまで様々な環境で同じように動きます。FORTRANコンパイラが入っているものならば、UNIX、Linux、Mac、Windowsといったあらゆるプラットホーム上で使用できます。Makefileも整備されておりビルドも簡単です。
以上のように、AkaiKKRは使い方さえ分かればとても便利なソフトウェアです。しかし、皆様の研究や事業に当てはめたとき、「本当にAkaiKKRが必要なのか」「ソフトウェアの使い方がわかりにくい」「自分の計算はあっているのだろうか?」「自分たちは計算とどのように付き合っていったらいいのだろうか?」「計算結果が理論や実験と合わないがどうしたものか…」「事業や研究に最適な手法とはなんだろうか?」といった疑問が出てくることもあるかと思います。
そのようなとき開発者である赤井博士や株式会社アカデメイアの研究員たちが皆様の相談相手となり、皆様の研究にあわせた使い方のレクチャーや、計算方法やその解釈について皆様と一緒に検討、など種々のサポートを行うサービスなどを提供しております。
先にご説明申し上げた拡張機能とともに、下部ボタンよりお問い合わせいただければと存じます。
・AkaiKKR利用講習のご提供
・計算サポート
・受託計算
・代替手段の提案
・計算結果の解釈
・実験データと計算結果の乖離に関する相談
・計算機マテリアルズデザイン支援
・電気伝導度
久保-Greenwood公式に基づいた、有限温度でのフォノン及びマグノンによる電子散乱を含む電気伝導率等の計算ができます。
・磁気相互作用
マグノンを含む形の(有限温度における)ハイゼンベルグモデル内のJij計算およびキュリー温度の計算ができます。強磁性状態とLMD(Local Moment Disorder)状態の全エネルギーの差からキュリー温度を見積もる方法に比べ、統計力学的な基礎づけが明らかです。
・遮蔽KKR
実空間の電子状態計算で、近似なしのOrder-N法を実行できます。層状の化合物、エピタキシャル成長などの計算に有効です。
有料メニューにご興味のある方は、ボタンのリンクからお気軽にご相談ください。
アカデメイアでは今後、ユーザ同士のコミュニティなど質問や開発要求がしやすい環境を整備することや、GUIによるAkaiKKRの実行といったユーザビリティに注力して行く予定です。
皆様にご参加いただき、計算物質科学の世界を共に切り拓いて行くことができれば大変嬉しく思います。