LINE公式アカウントから最新記事の情報を受け取ろう!
CONTENTS
世の中には何気なく発した言葉がフラグとなり、大いなるチカラによってそのフラグが回収されることがある。
――事の発端は2023年8月5日に遡る。この日、マンボウ研究者である私は、マンボウに所縁のあるVTuberのチュムノート(ChumuNote)さんを対談相手に迎え、アズワン株式会社(アズワンさん)に企画を立ててもらい、大阪のトーク・ライブハウスLoft PlusOne Westで、『マンボウの都市伝説流行10年祭』というイベントを行った(このイベントの詳細は過去記事を参照)。このイベントのラストの方で、チュムノートさんはふと「マンボウを食べてみたいですね」と発言され、それに対して私とアズワンさんは「それじゃあ、来年はマンボウを食べるイベントでもやりますか!」とその場の軽いノリで言葉を返し、イベントは幕を閉じた。この時チュムノートさんが立てたフラグを実際に回収することになろうとは……一体現場にいた何人の人が想像しただろうか? 少なくとも私は本気でできると思っていた……。
年が変わって、2024年2月。チュムノートさんにマンボウを食べるイベントに興味があるか実際に聞いてみたところ、食べてみたい!との返事が返って来た。これはやらねばならないなと思ったが、この時はお互いに都合が合わず、企画は一旦保留になった。
そして、新年度が始まった2024年5月ゴールデンウィーク明け。私はやはりマンボウを食べるイベントをしたいなと強く思うようになった。チュムノートさんの立てたフラグを回収してあげたい。そう思い立った私は、早速アズワンさんにその旨を伝えたのであるが……新年度になり、人事異動や部署移動が起き、担当者が変わってしまっていた! つまり、去年初めて手探りで行ったイベントを、新しい担当の方と一緒にもう一度手探りの状態で行うこととなり、加えて今年はマンボウ料理をお客さんに振舞うというもう一段階ハードルの高い作業を行う必要があった。
今年はイベント開催は難しそうかなと察した私は「イベント無理そうならしなくても大丈夫です」と新しい担当者の方に何度か伝えていたのだが、「私としてもこういうイベントはやっていきたいと思っております」との返事を頂き、一旦イベント案は保留になりつつも、新部署で何度も検討して頂いた。そして時は数ヶ月が過ぎ、そろそろイベントをやるなら話を進めないとヤバいんじゃないかと思い出した7月頃に再度アズワンさんに話を聞くと、イベントは行う方針で進められるとの話になった。そこで私は事の発端であるチュムノートさんを再度誘い、マンボウ料理は私が何度か取材させてもらっている「まんぼう家」さんにイベントでマンボウ料理を出すことは可能か打診した。その結果、両者ともOKとの返事をもらったので、企画進行をアズワンさんに任せ、私はプレゼン資料を作り、今回のイベントを開催するに至ったのである。 チュムノートさんも本サイトであるラボブレインズで記事を書くことになり、 私とのラボブレインズライター同士のコラボという形でイベントに参加することになった。

私はイベントを行うなら台風など自然災害の心配が比較的少ない秋が良いと考えていた。関係者で相談し合った結果、11月9日に決定したが、夜枠は既に他のイベントが入っており、昼枠でしか予約が取れなかった。一応休日であるがお酒を飲みながら話を聞けるイベントに、果たして何人の人が昼から来てくれるだろうか?という懸念があった。そして、すべての準備が整って、イベント告知を行えることになった日が、2024年10月19日……イベントの3週間前だった!理想を言えば、一ヶ月前には告知をしたかった。早速、みんなで広報に徹したが……2024年10月30日時点では予約者数は6名だった。
イベント開催まであと12日しかない!時間が無い!ヤバい!と思った私はXで必死に興味ありそうな人に拡散してくれるよう呼び掛けた。マンボウを食べるイベントなんて早々できるものではない。然るべき人に届けばイベントに参加してくれるはずだと私は信じていた。そして、1度目の奇跡が起きた。興味を抱いてくれたXユーザーの協力により、2600以上リポストされ、それまで以上に多くの人にこのイベントの告知が拡散されたのである。チュムノートさんの方でもYouTube配信の中でイベントの告知を積極的にして頂いた効果で、予約が増えていることを願った。
2024年11月2日……イベントが行われる1週間前で6名→37名に予約が増えていることが判明!予約が増えていることにみんなで喜んだが、予約席は最大100席いけるとのことだった。まだその半分にも満たない……せっかくイベントをやるなら満席にしたい……そういう想いが関係者全員にあった。三連休が終わり、私にとって衝撃の事態が判明。マンボウ料理を付けられる席は発注の関係で2024年11月6日お昼の12時までだという。イベントに参加するなら是非マンボウ料理も食べて欲しいと思った私はさらに必死にこのイベントを広めてくれるようXユーザーに呼び掛けた。そして、二度目の奇跡が起きたのである。今度は前回を上回り、なんと5300以上リポストされた。チュムノートさんにも、さらに配信での告知に力を入れて頂き、マンボウ料理が食べられるタイムリミットがあった効果か、予約サイトがアクセス制限のかかる事態にも見舞われつつも……見事満席を超えた会場席111名、配信3名の予約が入ったのである!

後からこのイベントの事を知り、マンボウ料理席の予約ができなかった方も出てしまったのであるが、見事満員御礼を達成でき、私は非常に嬉しかった。イベント開催前の1週間は、ハラハラした日々であった。
そして迎えたイベント当日、2024年11月9日。天気にも恵まれた!予約満席で再びこの場所に来ることができて本当に良かった。


イベント会場が開くと同時に中に入り、チュムノートさんとの配信のセッティングはアズワンさんに任せ、私はスーツケースいっぱいに詰め込んだマンボウグッズを設営した。

最初、会場席は余裕のあるスペースで設置されていたが、それでは足りず、椅子が大量に投入され、結構ギチギチ状態に……。しかし、満席超えのこの光景を私は見たかった!
セッティングや打ち合わせをしているうちにあっという間に開場時間になる。11時半になり開場すると、続々と人が入って来る!すぐに前回の来場者数を超えてしまった。会場席はどの席でも自由に座ることができる、早い者勝ちシステムだった。私はイベントが始まるまで自分で並べたグッズの後ろに座って売り子に徹していた。ギリギリの間隔でツメツメ状態に座るお客さんの光景を見て、嬉しいやら申し訳ないやら。当日券で入ることもでき、立ち見が出る可能性もあると店のオーナーが言っていたが……なんとか全員座って頂けた。たくさん来てくださって本当に感謝の言葉しかない。

12時半になり、チュムノートさんも画面に出現して、いよいよイベントが始まった!チュムノートさんは個人から企業VTuberになったり、3D化したり、パワーアップしての登場だ。今回は「マンボウを食べること」がメインテーマのイベントである。マンボウ料理付き席を予約して下さった方はマンボウ料理が会場で食べられるのだが……料理や配送の都合で、イベント30分ほど経過した頃に運ばれてくることになった。その時はイベントを一時中断して、マンボウ料理を店の人に配ってもらうことになっていた。実際、30分くらい経った頃にマンボウ料理が運ばれてきた!

それがこちらである。この3種のマンボウ料理の名は、左から「マンボウの肝和え」、「マンボウの煮付け」、「マンボウの湯引き」である。つ、ついに!『まんぼう家』さんでまだ食べたことがなかったマンボウの肝和えが!!マンボウの肝和えは『まんぼう家』さんでも稀にしか食べることができない料理である!だから、今回会場で食べることができた皆さんは非常にラッキーだ!このマンボウ料理はチュムノートさんにもデリバリーされていて、会場で食べるタイミングに合わせて一緒に食べてもらうことになっていた。これこそバーチャルでありながらリアルのものも食せる2.5次元イベント!
今回もイベント独自のハッシュタグを決めていて、イベント冒頭で紹介。X上で「#マンボウ食集会2024」で検索すると、イベントの様子を垣間見ることができるので、気になった方は是非見てみてほしい(ちなみに去年のハッシュタグは「#マンボウ都市伝説10年祭」)。今回人生で初めてマンボウを食べるお客さんがほとんどで、率直な感想をたくさん書いて頂いた。私も見ていて楽しい。この3種の料理はすべてマンボウの筋肉の部位なのだが、料理法によって味や食感が結構変わっていた。
マンボウ肉はやっぱり鶏肉ぽいという感想が多かった。食感的に結構弾力があるのだ。魚を食べているという感じはあまりしない。3種の料理のうち、マンボウの肝和えと煮付けはしっかり火が通っているので、肉から水分もたくさん出ていると思われ、食感も硬め。一方、湯引きはさっとお湯を通す感じなので、まだマンボウの肉には水分が保たれており、ぷりぷりした食感を感じられる。マンボウの肉自体にはあまり味が無く、さっぱりした淡白な感じなので、味が濃いものとの相性がいい。味がよく染みる。刺身の状態はさらに水分が多いので、また違った食感が楽しめる。機会があれば是非食べてみてほしい。私はマンボウの生肉を炒めようと油を引いたフライパンにそのままぶち込んで炒めていたら、マンボウの肉から水分が出まくっていつの間にか鍋になっていた経験がある。マンボウ肉の水分含量は約80%と魚類の中でも多めだ。『まんぼう家』さんの料理の仕方が上手く、魚的な生臭さは全く感じられず、3種とも非常に美味しかった。お客さんのポストを見ても大好評だ。チュムノートさんも今回初めてマンボウ料理を食べ、美味しいとお気に召されたようだ。しかしながら、こんなに美味しいマンボウ料理を食べてしまった後では、スーパーで売っているマンボウの刺身を食べた日には……あれ?全然味が無いと驚くことは避けられないだろう。
こんな感じで、イベントでは多くのお客さんにマンボウを食べてもらいながら、マンボウの仲間の味の違い、食べる地域、値段、毒の有無(マンボウの仲間は無毒)、解剖写真を見ての可食部位の説明、漁獲方法、売られ方、料理方法、歴史、伝承、漢方としての用途、寄生虫の種類などなどについて解説し、ただ珍しいマンボウ料理を食べるだけではなく、マンボウの食に関する知識も増やして頂いた。楽しく食して楽しく学ぶ! それが今回のイベントの理想の形であったが、お客さんの反応を見る限り満足度は高い感じだったので達成できたように思う。

マンボウの食についていろいろと解説していく中で、チュムノートさんは釣りが好きという話になり、「マンボウを釣ってみたいですね」と危険なワードをぽろっと言ってしまった。これは……またフラグを立てられたか。私もマンボウは釣ったことがない。むしろ私が釣りたい。マンボウ類は沖縄近海のカジキ釣りでカジキと間違われて釣り上げられた事例が数件あるにはあるが、その確率は著しく低い。狙って釣れる類いの魚ではない。竿で釣るのはかなり難しいが、漁獲という大きなカテゴリーで考えると、定置網の漁船でマンボウが漁獲される現場を見てもらうことは頑張ればできる。しかし、その場合、どうやって配信するのか……? リアルタイム配信では漁師さんの邪魔になりそうだし……事前録画して編集する……? うーむ、このフラグはなかなか回収が難しそうだ。誰かこのフラグを回収できそうな読者はいないだろうか?
フラグと言えば、2回目のポストの大規模拡散の中で、思わぬマンボウ情報を入手することができた。その情報提供者は今回のイベントにも来て下さり、今回のイベントがきっかけで、間接的に新たな論文が誕生するかもしれない。後は私の裁量次第だ。ちなみに私が今年出版した論文は参考文献に一覧にしてリンクを貼っているので、もし良かったら読んで頂けると私は嬉しい。
チュムノートさんのYouTube限定配信の方でも70人ほど視聴があったようで、私はひたすら解説していたのでコメントを読む余裕は全くなかったが、アズワンさんとチュムノートさんが適宜コメントを拾ってくれたので、配信で見ている方にも少し反応を返すことができた。しかしながら、次回は配信で見ている方のコメントにももっと反応できるよう、もう少し時間と心の余裕を持ちたいところである。今回のスライドは前回より少し少なくしたものの、食事の時間もあり、お客さんからの質疑応答の時間を確保することができなかった。これは私の反省点である。
今回のイベントは始終アットホームな感じのまったり雰囲気でとても楽しかった。もし可能ならまた来年も同じ秋頃に開催できればいいなと思っている。来年、2025年はウシマンボウの和名命名15周年にあたるので、ウシマンボウをテーマにしたイベントをしたい。ちなみに、2026年は私が新しい商用の本を出版する予定なのでその出版記念イベントを。2027年はカクレマンボウの新種記載10周年になるので、カクレマンボウをテーマにしたイベントを……やれたらいいな。
イベントが終わると、参加者みんなと集合写真をパシャリ。チュムノートさんが光り輝くシルエット姿になってしまったが……良い記念写真ができた。その後、私はすぐに自分の持って来たマンボウグッズを売るコーナーに移動した。たくさんの人にグッズを買って頂き、帰りは荷物が軽くなって嬉しかった。しかし、100人クラスになると、お客さんが次から次へと現れるので忙しく、あまりひとりひとりと、ゆっくり話をすることができなかったのが少々悔やまれた。

今回、お客さん全員にルーズリーフを配り、任意でマンボウの絵を描いて欲しいとお願いした。結果63人もの人がマンボウの絵や今回のイベントの感想を添えて置いていってくれた。私はとても嬉しかった。これは私がイベントをやったという想い出になる宝物だ。家に帰ってから床に広げると、大体畳2枚分の広さになった。こんなにも手書きの感想や絵を頂けたのは、結構すごいことではないかと私は思っている(拡大写真はXにも上げている)。

今回のイベントは本当にギリギリだったが、最後の最後に逆転して無事満席!大盛況かつ大成功に終わったと私は思っている。イベント関係者、参加してくださった方々、Xでの拡散に協力して下さったすべての皆様に感謝だ!
マンボウの
料理のチカラ
とくと見た
満員御礼
イベント成功
【参考文献】
澤井悦郎・相原岳弘.2024a.静岡県大瀬崎におけるマンボウ属の出現状況. Nature of Kagoshima, 50: 127-130.
澤井悦郎・相原岳弘.2024b.静岡県大瀬崎で観察されたマンボウとシラコダイの掃除共生.Nature of Kagoshima, 50: 131-134.
澤井悦郎・相原岳弘.2024c.マンボウ属の掃除魚の再検討:静岡県大瀬崎で確認された新しい掃除魚.Nature of Kagoshima, 50: 135-139.
澤井悦郎.2024a.小笠原諸島から得られた日本最小記録を更新するウシマンボウ.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 41: 13-16.
澤井悦郎・池田瑛真.2024.打ち上げられたマンボウ死骸の自然下での腐敗・移動の観察.Nature of Kagoshima, 50: 177-180.
澤井悦郎・大池明.2024a.写真に基づく中ノ島(隠岐諸島)から得られたマンボウの確かな記録.Nature of Kagoshima, 51: 15-18.
澤井悦郎.2024b.三重県沖で新たに漁獲されたウシマンボウとそのマスメディア報道について.Nature of Kagoshima, 51: 35-38.
澤井悦郎・大池明.2024b.中ノ島(島根県・隠岐諸島)からのマンボウの追加記録.Nature of Kagoshima, 51: 39-40.
澤井悦郎.2024c.写真に基づく北木島(笠岡諸島,岡山県)から得られたマンボウの確かな記録.Nature of Kagoshima, 51: 55-58.
澤井悦郎.2024d.写真に基づく佐賀県からのヤリマンボウの確かな記録.Nature of Kagoshima, 51: 145-148.
澤井悦郎.2024e.写真に基づく大阪府からのマンボウの確かな記録.Nature of Kagoshima, 51: 163-166.