【正月太り撲滅シリーズ〜食事編〜】薬の研究者に聞いた!”食べても太りにくくなる薬”と、”肥満解消の救世主?”

2022.12.31

皆さん、こんにちは。俳優・サイエンスコミュニケーターの佐伯恵太です。人前に出るお仕事をしているので体型管理には人一倍気を遣っているのですが、この時期怖いのが「正月太り」。どうにかして「正月太らず」で切り抜けたい!!そこで、科学的な裏付けのある「正月太りを避ける方法」について、教えていただくことにしました。

★★【本日の先生】★★

樋口 聖(ひぐち せい)先生

福岡県生まれ。城西大学薬学部製薬学科卒業。同年、薬剤師免許を取得。城西大学大学院薬学研究科修士課程修了。福岡大学薬学研究科博士号取得。
学位取得後'15年まで京都大学医学部博士研究者として、マクロファージの炎症抑制、肝臓の糖新生の研究を行う。'15年から'22年までコロンビア大学医学部で博士研究員として、腸内脂質環境と肥満の研究に従事。'22年9月からニューヨーク州クィーンズ区のセント・ジョーンズ大学薬学部教授。ニューヨーク野口英世記念奨学金受賞、キーストンシンポジア(Keystone Symposia)などの国際学会でSelected Talk,Invited Talkおよび優秀賞など受賞歴多数。
'22年からはニューヨーク野口英世記念奨学金の選考委員長も務める。

★★★★★★★★★★★


佐伯:では樋口先生、よろしくお願いします!

樋口:よろしくお願いしま〜す!

飲むだけで痩せる薬!?

佐伯:まずは肥満予防などについて幅広く教えていただけたら嬉しいです。いつも飲むだけで太らなくなる薬があったらなぁ〜とか妄想してしまうのですが、今回は科学的に・・

樋口:ありますよ、食べても太りにくくなる薬

佐伯:えっ!?

樋口:正確には、食事で摂取した脂肪の分解・吸収を止めて、便からそのまま排泄するという、肥満の治療に使える薬です。

佐伯:そんな魔法のようなお薬が!?

樋口:あるんです。オルリスタットっていうアメリカで承認されている薬です。ただ副作用もあって、脂肪便になっちゃうんですよ。その便が漏れてしまうことも。

佐伯:なるほど。やっぱり良いことだけじゃないんですね。

樋口:まぁこの薬を飲んだ後に脂っこいものを食べなければ、脂肪便にはならないですよ。

佐伯:(それができる人はそもそも薬いらない気がするぅ〜)

樋口:薬を飲んだとしても、いくらでも食べて良いわけじゃないってことですね。それに脂の吸収を抑えるだけで糖分は普通に吸収されますし。日本では来年3月頃に承認される見込みで、医師の処方箋なしで薬局で買えるようになると思いますよ!

[人間だけでなくマウスも脂っこいものが好きだそうです]

 

樋口:薬でいえば、食欲を止める薬というのもあります。

佐伯:また強そうな薬!こっちは脂肪便みたいな副作用もなくて良さそうです!

樋口:それがですね、頭に働きかけて食欲を抑える薬っていうのはリスクも結構大きくて。神経伝達物質を調節するような薬って、精神作用と切り離すことが難しいんです。飲むと食欲を抑えられると同時に、精神的に問題が出てしまったりっていう。

佐伯:二択なら太っても心は健康でいたい。。 

樋口:使い方次第ではありますけどね。あと最近出てきたのはインクレチン製剤。腸管から出るホルモンに働きかける薬で、適切に使用すれば比較的デメリットも少ないと言われています(日本では保険適用外)。

[アメリカではたくさんの抗肥満薬が承認されています(画像クリックで参照ページへ)]

食事で気をつけるポイントは?

佐伯:いろんなお薬があって驚きました。薬に頼らない、肥満対策についても教えていただきたいのですが、お正月ってどうして太っちゃうのでしょうか?

樋口:佐伯さん、お正月って普段と比べて運動する量はどうなりますか?

佐伯:減ります。家に籠ってます。基本コタツの中です。

樋口:寝る時間はどうですか?

佐伯:増えます。テレビを観ながらご飯を食べて、あとは寝ます。

樋口:食事の量はどうですか?

佐伯:増えます。間食も増えて、お酒も飲んで、飲んだらまた食べます。あ、先生!


樋口:それと、肥満には原因がたくさんあるという点が重要。遺伝的に太りやすい体質の方もいらっしゃいます。食事に限定して言えば、まず早食いはNG。満腹中枢が満腹だと感じる前に必要以上の量を食べ切ってしまうので。

佐伯:大晦日の23時58分くらいに「うわ!年越し蕎麦を食べてない!」って気づいて慌ててかき込んだりしない方が良いってことですね!

樋口:いや蕎麦はたぶんセーフ。

佐伯:あとお正月って逆にダラダラとずっと食べてるような印象もあるのですが、それも良くないのでしょうか?

樋口:そうですね。ダラダラ食べるとか、深夜まで起きて昼過ぎまで寝たりとか、全体的に生活のリズムが不規則になりますよね。そうなると自律神経のバランスが乱れて太りやすくなるということがあり得ます。

佐伯:ずっと家にいるとしても食事の時間は決めておいたり、深夜のテレビは録画して観るとか、色々できることはありそうですね!

樋口:あと食べる順番も大事です。ご飯など炭水化物を最初に食べると血糖値が急激に上がりやすく、膵臓への負担がかかります。食物繊維を先に食べると体への負担も減らせます。

佐伯:お正月なら、お餅いく前にごぼうですね!

 

強力な相棒!?

佐伯:一番大事なのはやっぱり食べ過ぎないことなのかなと思いました。でもついつい欲に負けて食べてしまうこともありますよね。敵は己の心・・・

樋口:そんな佐伯さんにオススメの相棒を紹介しましょう!

佐伯:な、なぜニシキヘビ!?

樋口:実はニシキヘビって、一度エサを食べたら一年くらい食べなくても平気なこともあります。

佐伯:一年ですか!?それはすごい。ニシキヘビと一緒に暮らせば、摂生できそうですね。あとよくみるとかわいい。。

樋口:こうやって飼っているだけじゃなくて、実はコロンビア大学時代に研究もしていて、ヘビの腸内環境を調節している胆汁酸っていう物質がすごい特殊な構造を持っていることがわかったんです。それが、一年くらい食べなくても平気なことと、どう関わっているのかを研究するのが今後の研究課題なんです!

佐伯:将来的には人間の肥満を解消することに繋がるかもしれないということですね!

樋口:そうですね。ヘビの胆汁酸の前駆体と同じものをヒトも持っているので、ヒトの胆汁酸を体の中で修飾してヘビに近づけるようなことができれば、ヘビの能力を私たちがうまく使えるかもしれないと考えています

セルフメディケーションの意識

樋口:色々お話しましたが、私が大切にしてほしいのは、体のしくみや薬の知識を持って、自分の健康を自分で守る「セルフメディケーション」です!食品とか市販の風邪薬にしても、パッケージの商品名や謳い文句だけじゃなくて、成分まで見てみたりしてほしいです。

佐伯:知ろうとすることが健康の第一歩なんですね!

樋口:そう!最初はわからなかったとしても、わからないことは調べられる。でも知らないことは調べられないですからね。例えば僕はヘビが一年間ご飯を食べないということを知っているから調べられるけど、ほとんどの人は知らないから、疑問も湧かないし調べない。

佐伯:興味を持つことが大事ですよね!

樋口:じゃあ最後にこんな質問です。お正月ってお酒もよく飲みますよね。例えばビールって炭酸入ってますけど、それって食欲にどう作用すると思います?

佐伯:えーと、炭酸ってお腹が張るイメージがあるので、満腹感が得られて、食欲は減る?

樋口:実はですね、ビールの炭酸ガスやホップの成分って、胃壁を刺激することより食欲増進効果があると言われてるんですよ

佐伯:それは知らなかったです。ビール飲み始めたら食べ過ぎには気をつけよう。。お正月は時間もありますし、色々調べてみたいと思います。樋口先生、ありがとうございました!

樋口:ありがとうございました〜!

あとがき

「正月太りを避ける方法」について色々教わりましたが、ヒトの体には「恒常性」があって、ある状態を維持しようとする力が働くそうです。三が日に食べ過ぎたとしても、それだけで急には太りません。正月明けに食事を極端に減らしたり、いきなりハードな運動を始めるのではなく、食べ過ぎや不規則な生活が続かないよう心がけるのが良さそうです。

これを機に、僕も自分で色々調べようと思いました。皆さんもぜひ色々な情報に触れて、わからないことを調べてみてください!

(著:佐伯恵太)

 

【著者紹介】佐伯 恵太

俳優 / サイエンスコミュニケーター。
1987年5月30日生。京都出身。京都大学大学院理学研究科で修士号を取得し、日本学術振興会特別研究員(DC1)として同大学院博士後期課程に進学。1年間の研究活動の後、俳優に転身した異色の経歴の持ち主。現在は、科学とエンターテイメントの架け橋になるべく、俳優・サイエンスコミュニケーターとして活動中。
【出演ドラマ】BS時代劇「大富豪同心」シリーズ / 「ABEMAヒルズ」コメンテーター / 日本科学振興協会(JAAS)正会員 / 「エンタメ×科学」のプロ集団「asym-line(アシムライン)」代表
プロデューサー・監督・出演者として、YouTube科学番組「らぶラボきゅ〜(※)」を手がけている。
※「東京応化科学技術振興財団」助成事業

「佐伯恵太のオススメ科学スポット」記事一覧