pHとは?pHの基礎知識を、測定の原理なども交えてわかりやすく解説!

2021.08.15

pHという言葉をご存知でしょうか。例えば、肌のpHや土壌のpHなど、様々な分野でpHは使用されています。リトマス試験紙を使ったpHの実験を思い出す方も多いでしょう。本記事では、pH計・水質計を手掛ける堀場アドバンスドテクノ様の監修による、pHの基礎に関する知識をお届け致します。

pHとは?

■pHとは水溶液の性質を示すために用いられる単位
pHとは、水溶液の性質を示すための単位です。例えば、長さを示すために「m」(メートル)という単位が用いられるように、水溶液の性質を示すためにpHという単位を使います。では、pHが示す具体的な水溶液の性質とは何でしょうか。

■酸性とアルカリ性
レモンのしぼり汁の味は「すっぱい」ですよね。せっけん水はぬめりがあり、口に入れたことがある方は「苦い」と感じたでしょう。リトマス試験紙をそれぞれの溶液に浸してみると、レモンのしぼり汁では青色試験紙は赤色に、せっけん水では赤色試験紙は青色になります。試験紙が赤くなったレモンのしぼり汁は酸性であるのに対し、試験紙が青くなったせっけん水はアルカリ性であることが分かります。このようにpHとは、酸性やアルカリ性といった、水溶液の性質を示すための単位になります。
下の図では、水溶液の酸性またはアルカリ性の強さを示しています。中性がpH7になり、pH7より低い範囲が酸性、高い範囲がアルカリ性であることを示しています。

 

酸性、アルカリ性の概念

■水素イオン濃度
水溶液の性質(酸性あるいはアルカリ性)には、何が、関係しているのでしょうか。
実は、水溶液の酸性・アルカリ性は、水溶液中の「水素イオンの濃度」によって決まります。
水はH2Oという分子式で示され、多くが非常に安定しているH2Oの分子の形で存在しています。
ただ、水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)に電離したものが、ごくわずかに存在しています。
水溶液の酸性やアルカリ性を決定するのは、この電離した水素イオンと水酸化物イオンのバランスです。
水素イオンが多いと酸性、水酸化物イオンが多いと、アルカリ性となります。

 

■セーレンセンの定義
水素イオン濃度[H+]と水酸化物イオン濃度[OH-]の積である[H+][OH-]は、温度が一定であれば常に一定となります。
水のイオン積 Kw=[H+][OH-]=10-14(=一定) (25℃のとき)
Kwは「水の解離定数」とも呼ばれます。
中性のときは、[H+]=[OH-]なので、以下の式で表すことができます。
[H+]=[OH-]=√(Kw)=√10-14=10-7
[H+]か[OH-]のいずれかの値を求めることができれば、一方の値も知ることができるため、pHは[H+](水素イオンの濃度)を目安に決定されています。

水素イオン濃度[H+]が0.000001と非常に低い水溶液の場合に、小数点以下が非常に多くなり、煩雑で分かりにくくなります。
そのため、デンマークの化学者のセーレンセンが、以下のように定義した式を提案しました。
pH=-log10[H+]
中性の溶液のときは[H+]=10-7となり、pHは7になります。

■pH定義の見直し
その後の研究で、pHは水素イオンの濃度ではなく、水素イオンの「活量」に関係することが分かりました。
そこで、1920年にpHの定義は以下のように変更されました。
aH+ = f × [H+]
aH+:水素イオン活量
f:活量係数
[H+]:水素イオン濃度

 

ガラス電極によるpH測定

■pH計の測定原理
ガラス電極法とは、「pHガラス電極」と「比較電極」の電極の間に生じた電位差によって、溶液のpHを測定する手法です。
薄膜の内側・外側に、pHの異なる液があることにより、pHガラス応答膜に、pHの差に比例する「起電力」が生じます。
通常pH7の液体をpHガラス電極の内部液として用います。pHガラス応答膜の起電力を測定すると測定物のpH値がわかります。
pHガラス応答膜の起電力を測定するためには、もう1本の電極である「比較電極」が必要となります。

■各部の名称と役割
・検出部(ガラス電極、比較電極、温度補償電極、複合電極)
検出部は、ガラス電極・比較電極・温度補償電極に分類されます。複合電極は、これらを一体化したものです。
・指示部
ガラス電極と比較電極の組み合わせは、内部抵抗の高い電池と考えることができます。このままの状態で、普通の電位差計に接続したところで、その電位差を正確には測定できず、高入力インピーダンスの増幅器が必要となります。この増幅器に様々な調整用の抵抗等を追加したものがpH計の「指示部」です。
・標準液
pH測定を行う際、標準液によるpH計の校正が必要となります。

■ガラス電極
ガラス電極は、pH応答性のガラス膜・高絶縁の支持管・ガラス電極内部液・内部電極・リード線・ガラス電極端子等から構成されています。
最も重要なガラス膜には以下の点が求められます。
①水溶液のpHによく対応した電位を発生することが必要。
②酸やアルカリに侵されてはならない。
③膜そのものの電気抵抗が大き過ぎてはいけない。
④内部液と同じ溶液の中に電極を浸したときに、液の間で大きな電位差を発生してはいけない。
⑤ショックや薬品に対する耐性等の面で優れたガラス膜であること。
また内部電極には、銀・塩化銀電極が一般的に使用されています。内部液としては、通常pH7付近に調整し、pH緩衝力を付加した「塩化カリウム水溶液」が使用されます。

■比較電極
ガラス電極に発生した電位差を測定するために、比較電極はガラス電極とともに使用されます。水溶液のpHとは関係なく、比較電極は一定の電位を示します。
比較電極は、液絡部、補充口、内部液、比較電極支持管、比較電極内部液、内部電極および電極リード線等で構成されます。多くの場合、内部電極には銀・塩化銀電極が使用され、内部液には塩化カリウム溶液が使用されます。
内部液とサンプルが接する部分を「液絡部」と言います。比較電力は、電位が極めて安定した電極である必要があるため、「液絡部」にはピンホール型・スリーブ型・セラミック型・ファイバー型等があります。直径数10 μmの穴が開いているピンホール型には、内部液の流出が少ないというメリットがある一方で、液間電位を発生しやすいデメリットがあります。すり合わせ面をもつ、はかまをはいたスリーブ型は、洗浄が簡単である一方、内部液の流出が多いというデメリットがあります。異種の物質を合わせたセラミック型やファイバー型は、内部液の流出は少なくて良いのですが、サンプルの吸着が発生やすい傾向があります。これらを補うべく組み合わせたのがダブルジャンクション型になります。

■温度補償電極
水溶液の温度によって、ガラス電極に発生する起電力は変化します。
「温度補償」とは、温度による起電力の変化を補償するものです。注意すべき点は、温度によるpH値の変化と温度補償は関係がないということです。
よってpHを測定する際、自動温度補償方式のpH計を使用しても、pH値と一緒に、そのときの測定物の温度を記録しなければ、測定結果が意味のないものになってしまう可能性があります。

 

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本記事を監修頂いた堀場アドバンスドテクノ様では、「やさしいpH・水質の話」という形で、pHや導電率など、液体の性質を示す指標を測定している方、あるいはこれから学ばれる方のために、水質のやさしい話から実際の測定を行う上での手順やコツまで一冊にまとめた資料を提供しています。
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