地球の「内核」表面は融けて変形している! 観測的証拠を発見

2025.02.14

内核の変形 サムネ

(画像引用元番号①)

 

みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!

 

今回の解説の主題は、地球の中心部にある「内核」の表面が融けており、変形しているという観測的証拠を見つけた、という発見だよ。この変化は数年ごとに変化するほどかなり時間的に激しい現象で、静的なイメージの強い内核としてはびっくりな性質だよ!

 

内核表面の変形が全くの予想外だった、というわけではないんだけど、これ以前の研究で判明していた内核の自転速度の変化と、内核表面の変形が両方とも起きているというのは予想外で、結構大きな発見なんだよね!これは内核だけでなく、それより上にある表面にまで影響を影響を与えうる発見だよ!

 

地球の中心部にある金属の塊「内核」

地球の内部構造

地球は岩石惑星だけど、その中心部は岩石ではなく金属でできているよ。温度と圧力の関係で、外側は液体、内側は固体の金属でできているんだよね。 (画像引用元番号②)

 

地球の内部は、表面を構成する地殻から、中心部にある核まで多層構造となっているよ。大雑把には卵にたとえることができて、殻は地殻、白身はマントル、黄身は核、と表現することができるけど、もちろん卵も地球も、実際には3層ではなく、もっと細かく分けることができるよ。

 

特に中心部の核は面白いと言えるかもね、地殻とマントルは大雑把には同じ“固体の岩石”だと言えなくもないけど、核は鉄とニッケルを主成分とする金属の塊なんだよね!しかも、外側の「外核」は液体、中心部の「内核」は固体と、物理的な性質も全く違うという特徴があるよ。

 

地球は中心部に行けば行くほど、その上に積み重なっている物質によって押されているので、温度と圧力が上昇するんだよね。物質が融けるかどうかは温度と圧力のバランスで決まるので、中心部は外側よりも高温であるにも関わらず、圧力が高すぎて液体になることができない、というのが外核と内核の違いとして表れているよ。

 

さて、さっきまで「核は金属でできている」とか分かっているかのように書いているけど、実物としてはまだマントルすら掘っていないのよね。ではなんで分かるのかと言えば、いくつかの手法があるけど、地震波の性質を利用した解析方法を主に上げることができるよ。

 

地震波は地球と言う物質を通る波であり、その波にもいくつかの種類があるよ。そして物質を通る波は、その物質が液体か固体か、温度・密度・結晶構造はどんなものかによって速度が決まるので、地球の内部を通ると屈折や反射をしたり、そもそも通過できない場合もあるんだよね。

 

なので、地球の裏側まで届くような大きな地震 (核爆発を含む) を地球のあちこちで計測し、そのデータを比較することによって、地球の内部にはいったい何があるのか?というのを知ることができるよ。核の固体液体の性質も、この地震波の解析によって明らかにされたんだよね。

 

地球内部の“天体”には多くの謎がある

内核の逆回転

地球の奥深くにある内核の性質はよく分かっていなくて、例えばここ数年の研究でも、内核の回転速度はかなり短い時間スケールでフラフラ変動していることが分かったよ。 (画像引用元番号③)

 

ただ、内核は地球の最も深い場所にあるだけに、最も謎が多いんだよね。温度も圧力も高すぎるため、実験室でも簡単には再現できない環境で、コンピューターシミュレーションをするのも難しいから、どういう性質をしているのかがはっきりと分かってない点もたくさんあるよ。

 

内核は直径約2440kmと、冥王星より大きく月より小さいくらい上に、外側は液体金属でできた外核なので、マントルや地殻とは固定されていないよ。その関係上、内核は地球の中にある別の“天体”とみなせるようなふるまいをしていて、近年では内核は地球の表面とは異なる速度で自転していることが分かってきているよ。

 

もちろん、固定されていないとはいえ外核を通して外側と繋がっているので、内核の自転速度の変化は地球全体の様々な性質に影響を与えていると考えられているよ。ただし、地球の表面で観察される自転速度の変化と、内核の自転速度の変化は、一度は関連性が指摘されたけど、その後否定されるなど、混沌としているんだよね。

 

これらの様々な影響から、研究者は内核の詳細を知りたいとなるんだよね。そのために地震波を解析し、結果として内核の自転速度のふらつきという現象を発見したんだけど、もちろん異論がないわけじゃないよ。何しろ46億年間回り続けたものが未だに年単位でふらふらしている、というのが信じがたいというのがあるからね。

 

自転速度のふらつきを見つけた研究者の側も、どうしてふらつくのかの原因については謎のままなんだよね。何しろ天体サイズの鉄の塊を年単位で加速・減速させる原動力が謎なので、その原因が分からないことにはモヤモヤしっぱなしだからね。内核の自転速度は支持・批判双方から関心を持たれてきたよ。

 

内核の表面は融けて変形していることが判明!

南カリフォルニア大学のJohn E. Vidale氏などの研究チームは、内核の自転速度がふらついていること、特に減速していること (地面から見れば逆回転と見ることもできる) を発見した研究者の1人だよ。ただしその原因の調査ができていないので、地震波のデータを更に分析し、原動力の正体を探ろうとしたよ。

 

今回分析したのは、南アメリカ大陸と南極大陸の間にあるサウスサンドウィッチ諸島の近辺で発生した巨大地震だよ。これを遠く離れたアメリカ・アラスカ州のイールソンと、カナダ・ノースウエスト準州のイエローナイフに設置された地震計でとらえ、地震波の性質の違いから、地球中心部の様子を詳しく探ったんだよね。

 

内核表面を通る地震波の性質

今回、内核表面を通過する地震波は数年という短い時間スケールで性質の変化があると分かったよ。 (画像引用元番号④⑤)

 

地震の発生場所と観測場所が遠いため、1991年から2023年にかけて記録された121回の地震波は、内核を通過したものだと判断されたよ。同じ地震を比較しているので、通常ならばこれらの地震波の特性は一致するはずで、実際にほとんどの地震波の特性は一致するペアの関係を組めたよ。

 

しかし、2004年から2008年にかけては、2ヶ所で記録された地震波の特性が一致しないことが分かったんだよね!より具体的には、イールソンで計測された地震波はその前後の期間と特性が一致した一方で、イエローナイフは変化したことから、これらに不一致が生じたんだよね。

 

30年分のデータを網羅していれば、たとえ内核の自転速度が変化していたとしても、地震波が内核を通過した位置が同じであるデータもあるので、この不一致は起きないはずだよ。そこでさらに調べて見ると、不一致が起きた地震波は、ちょうど内核の表面[注1]をかするように通過したことが分かったんだよね!

 

表面をかするように通過した地震波に変化が見られるなら、それは内核の表面付近で、自転速度の変化以外の何らかの変化が起きていることを示唆するよね?ということでVidale氏らは、この変化は「内核の表面が部分的に融けてデコボコの変形をしたことが、地震波に影響を与えた」と解釈したよ。

 

内核の表面が部分的に融けていて変形しているというのは、内核はあまり大きく変化しない堅牢な存在とする長年の解釈からすると逆だよね?しかも数十年の計測データで判明するという、地球の歴史からすればあまりに短い時間で起きている変化ということから、実際の内核は非常に活動的であることを示しているよ!

 

もっとも、このような内核表面の変化を予測した人がいないというわけじゃないよ。ただ、これは「内核の自転にふらつきがある」という地震波の解釈に対する反論として提示された別の解釈として提示されたものであり、まさか両方の解釈が両方とも正しいという結論は予想外だったわけ。

 

内核表面の変形の理由探索が次の目標

内核の変形

今回の研究を含め、ここ数年の研究により、内核のイメージはだいぶ変わってきたよ! (画像引用元番号①)

 

しかし、文字通り鉄の塊である内核の表面を融かして変形させる原動力ってなんだろうね?もちろんこの謎はこれから解かねばならない話だけど、Vidale氏らは、内核表面の変形は内核の内部にあるのではなく、内核の表面付近で起こる外部作用が原因であると考えているんだよね。

 

いくら全体が鉄の塊と言っても、内核と外核の境目はちょっとした環境の変化で融けるような不安定な状態であると考えられるよ。とはいえ、数年単位で変化するほど激しい変化がおこることが予想外なので、変化の乏しい内核より、変化の激しい外側に原因を求めるのはおかしくないよね。

 

そうはいっても、内核の表面を変形させるのはものすごい力が必要なので、Vidale氏らは2つの可能性を考えているよ。1つ目の考えは、下部マントルの内部にある塊の引力が、下部マントルと外核の境界部が歪むので、それにつられて内核の表面も引っ張られている、という可能性だよ。

 

もう1つの可能性は、外核の対流そのものが力強いせいで、内核の表面が押されたり引っ張られたりすることによる変形だ、と言う考えだよ。このどちらが正しいか、あるいは複合的なのか、それとも全く違う理由なのかは、これから調べてみるしかないね。

 

地球の内核は、ある意味で深宇宙よりも謎の多い存在。そして私たちの住む地球の特性を決定づける重要な要素なので、この謎ときは地球をより深く理解するための重要な情報を与えてくれるはずだよ!

注釈

[注1] 内核の表面
外核と内核との境界層であるため「内核境界 (ICB; Inner-core boundary)」とも呼ばれます。  本文に戻る

文献情報

<原著論文>

  • John E. Vidale, et al.“Annual-scale variability in both the rotation rate and near surface of Earth’s inner core”. Nature Geoscience, 2025. DOI: 10.1038/s41561-025-01642-2

       

      <参考文献>

       

      <画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)

      1. 今回の研究成果の概要: プレスリリースの画像より (Author: USC Graphic & Edward Sotelo)
      2. 地球の内部構造: プレスリリースの映像よりキャプチャー
      3. 内核の回転速度の変化: 2024年の研究プレスリリースの画像より (Author: USC Graphic & Edward Sotelo)
      4. 内核付近を通る地震波の軌道: 原著論文Fig5より
      5. 今回観測された地震の位置と観測場所の位置: 原著論文Fig1より

         

        彩恵 りり(さいえ りり)

        「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
        本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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