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皆さん、こんにちは。福岡工業大学の赤木紀之です。多くの大学生にとって、プレゼンテーションは身につけておくべき重要なスキルです。特に理系の分野では、実験の進捗状況や学会での口頭発表など、プレゼンを行う機会が頻繁にあります。
しかし、プレゼンは単に資料を作って話すだけではありません。伝えたい内容を分かりやすく、効果的に相手に届けるためのスキルが求められます。この記事では、普段私が学生たちに伝えている「プレゼンのコツ」を紹介します。私自身も発表の際にはこのコツを常に心がけています。
大学の授業や研究発表だけでなく、就職活動や将来のキャリアにも役立つと思います。ぜひ参考にしてみてください。
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まず、これだけは強くお伝えしたいと思います。プレゼンファイルに限らず、作成中の卒業論文や修士論文のファイルは、必ずバックアップをとってください。今はクラウドに保存するのが主流かもしれませんが、まだPCのハードディスクやUSBにのみ保存しているケースもあります。万が一、思わぬトラブルでファイルをすべて失わないよう、複数の場所にバックアップをとることを強くお勧めします。
さらに、作成中のファイルをバージョンごとに残しておくのもお勧めです。「すでに消してしまったけど、この前書いた文章や作成した図が、ここで使えたかもしれない...」という状況はよくあります。パワーポイントの場合は、スライドを複製して、その複製したスライドに修正を加えるという方法も便利です。こうしたちょっとした工夫が、後になって大きな助けになることがあります。
お笑いの世界で「つかみはOK」という表現がありますが、プレゼンテーションでも最初に聴衆の関心を引く工夫はとても重要です。せっかく時間をかけてプレゼン資料を作成したのに、聴衆が興味を示さずスマホをいじり始めてしまったら、プレゼンの価値が失われてしまいます。
プレゼンの冒頭で「これから私が話す内容は、あなたにとって非常に価値がある情報なのだ」と伝えることが大切です。特に最初の1分で、自分のプレゼンの要点や魅力をしっかりと伝えることが、成功へのカギとなります。
聴衆の専門性や背景は、発表会ごとに異なります。自分の専門領域に近い人たちが集まる発表会と、異なる分野の専門家や一般の方が多く参加する発表会では、話す内容や使う言葉を慎重に使い分ける必要があります。まず「どんな層が聴衆なのか」を意識することで、「最初の1分」の導入も大きく変わります。同じプレゼン資料を使い回すのではなく、毎回聴衆に合わせたプレゼン資料を準備することも重要です。
また、「自分が伝えたいこと」と「聴衆が知りたいこと」は必ずしも一致しません。自分の研究成果を隅から隅まですべて説明したくなる気持ちは理解できます。しかしそれは、専門的な学術論文で行えばよいことです。プレゼンでは「今日の聴衆は何を知りたいのか?」を考え、優先順位をつけて内容を構成しましょう。たとえば、技術的な手法に興味がある聴衆にはその部分を丁寧に説明する必要がありますが、結果を重視する場合には手法に重点を置く必要はありません。聴衆が最も求めていることを中心にプレゼンを組み立てましょう。
残念ながらこれは、一夜漬けでどうにかなるものではありません。プレゼンに備えて、関連分野をしっかりと勉強する必要があります。「1を学んで1を発表する」のではなく、「10を学んで1を発表する」くらいの準備が必要です。前者だと質疑応答に対応できなくなってしまいますが、後者なら質問にも自信を持って答えられるはずです。
研究の背景や他の研究結果との関連を勉強しておくことで、想定外の質問にも対応することができます。聴衆は、演者がどれほど真摯に自分の研究に向き合っているか、質疑応答を通じて感じ取ります。
「そんな基本的なことを今さら?」と思うかもしれませんが、実はそうでもありません。「マイクがあるから大丈夫」と油断して、声が小さくなったり、ボソボソ話してしまったりすることは意外に多いのです。
小学校の先生に「お腹から声を出しなさい」と言われた記憶がありませんか?それは大人になっても同じです。素晴らしい内容の発表をしても、声が届かず聴衆に伝わらなければ、その価値が半減してしまいます。
一方で、マイクの感度が高すぎると音が割れてしまうこともあります。その場合は、声のボリュームを調整したり、少しマイクを離したりするなど、臨機応変に対応することが大切です。聞き取りやすい声を出し、聴衆に明確にメッセージを届けましょう。

レポートや報告書などの文章と同様に、プレゼンでも「句点(。)」を意識することが大切です。緊張していると、「これはaaaaで、bbbbがccccなんですが、ddddについてはeeeeしてみたところ…」と、途切れなく話し続けてしまうことがあります。このように長い文章が続くと、聴衆は忙しなく感じてしまい、内容が頭に入ってきません。聴衆の注意を引き続けるためには、内容ごとに区切りをつけ、一呼吸おくことが重要です。
句点を意識することで、演者自身も落ち着いて話すことができます。落ち着いたペースで話すことで、聴衆もリラックスし、内容に集中できるようになります。重要なポイントを述べた後や新しいトピックに移る際には、あえて数秒間の間を空けるなど短い休止を入れることで、聴衆がその情報を整理する時間を与えることも効果的です。
プレゼンの練習を見ていると、パワーポイントの「ノート」にセリフを記入し、発表者ツールを使って原稿を棒読みする人や、原稿を完璧に暗記して一言一句そのまま話す人がいます。プレゼン初心者が原稿を手元に置きたくなったり、丸暗記したりする気持ちはよく理解できます。しかし、聴衆には「原稿を読んでいるだけだな」とか「丸暗記しているな」というのはすぐに伝わってしまいます。
ぜひ、「自分の言葉で話す」ことを心がけましょう。スライドごとに話すべきポイントを2~3個決めて、その要点だけを覚えておきましょう。自然に語ることで、聴衆は安心して話に集中できます。棒読みや丸暗記だと、ぎこちない印象を与え、内容よりもプレゼンスキルばかりが気になってしまいます。聴衆の方に顔を向け、自分の言葉で話せるように、何度も何度も練習を繰り返しましょう。
研究発表のプレゼンでは、ストーリー性を持たせることが非常に大切です。数年かけて行った実験について、実施した順番通りに、時系列に沿って話す必要は全くありません。事実に基づいて、話す順番やデータを示す順番を入れ替えることも時には必要です。
また、自分の結論をより魅力的にするための、研究背景の設定や紹介の仕方の工夫も発表戦略の1つです。どういう「物語」に仕上げるかは自分次第。「試薬Aを、細胞に処理して、細胞死が観察された。そんな『試薬Aが抗がん剤になる可能性』の物語」といった具合に、独創的なストーリーを生み出すことで、聴衆はより引き込まれてゆきます。
プレゼン発表の際には、冒頭で全体の流れを示しましょう。いわゆる「目次」や「roadmap」です。自分がどのような順序で、何を発表し、最終的にどこへ向かっているのかを予め伝えておくことで、聴衆の理解を助けることができます。最終ゴールを明確にすることで、聴衆は自分がどこにいるのかを把握しやすくなります。
また、発表中に話題が転換するたびに再度、全体の流れを示すのも大切です。「今ここにいますよ」と聴衆に呼びかけることで、聴衆の注意を再度、引きつけることができます。たとえ10分程度の短い発表であっても、この工夫は非常に効果的です。
「背景」と「目的」は、「これまで何が分かっていて、何が分かっていないのか」、そして「だから、自分はここを解明しようとしているのだ」と伝える項目です。まれに「どこまでが先行研究」で「どこからが今回の新しい知見」なのか、という境界があいまいなことがあります。背景の項目ではこれを明確に区別しましょう。
また学生さんの発表を聴いていると、研究の目的があやふやで、不明確なことがあります。例えば、試薬Aの細胞に対する「作用機序の解明」が目的なのか、「効果的な濃度設定」が目的なのかで、発表全体の焦点が大きく変わります。
図やグラフを説明する際には、まずその内容を明確に伝えることが重要です。いきなり「見て分かるように・・・」と話し始めてはいけません。「これは細胞の増殖能を示したグラフです」といった形で、何を表しているのかを最初に説明しましょう。
次に、具体的な説明に進みます。「このグラフの横軸はxxxxで、縦軸はyyyyを表しています」と、各軸の意味を丁寧に解説します。この際、データの単位なども触れることを忘れてはいけません。さらに、グラフ中に示されているデータを一つずつ説明し、特に「どこ」と「どこ」を比較したいのかを示すことが大切です。
論文でもプレゼンでも、データの「結果」とその「解釈」を明確に区別して述べましょう。たとえば、「xxxx処理で、酵素活性が下がった」というのは、実験の結果を示しています。一方、「この酵素活性が下がったということは、細胞の増殖が低下したことを示唆する」というのは、得られたデータに基づく解釈です。
このように、「結果」と「解釈」は異なるものであり、発表する際にはこの違いを意識して説明する必要があります。
言い換えれば、いきなり解釈を述べてはいけません。つまり今の文脈でいうと「xxxx処理で、細胞の増殖が低下した」と述べてしまうと、結果と解釈を混ぜて説明していることになり、事実を客観的に伝えていないことになります。「結果」と「解釈」をしっかりと区別することで、聴衆に正確なメッセージを伝えることができます。
プレゼンの最後には、必ず「まとめ」を示しましょう。ここは、単に「xxxxをやった」という事実を述べる項目ではありません。「xxxxを通じて、yyyyを明らかにした」という形で、研究を通じて解明された成果や新しい発見を強調することが大切です。また文字だけではなく、可能であれば模式図を使うと視覚的に理解しやすくなります。
さらに、最後には端的に「結論」を述べましょう。ここで気をつけ欲しいのは、結論が「結果の繰り返し」にならないことです。「結果」はデータそのものを示し、「結論」はそのデータから導き出される新しい知見や解釈です。この「結論」こそが、実は発表のタイトルに直結することも多々あります。タイトルとの一貫性を意識して結論づけることが重要です。
私たちの生活において、「時間を守る」というのは、とても大切な「約束」です。それはプレゼンも同じで、ほとんどの人が限られた時間の中で端的に発表を行います。「10分では自分の壮大なストーリーを語り切れない」と思うかもしれませんが、上手な人はその10分で非常に魅力的なプレゼンを行います。
これは、若い学生やポスドクだけでなく、経験豊富なシニアの方々にも心に留めておいてほしい部分です。シニアな研究者は、つい時間を超えてまで熱い想いを語りたくなることがあります。しかし、シニアな方であれば周りは「そろそろ時間ですよ」とは言いにくいものです。ルールはルール。どの年齢やキャリアの人であっても、時間内に収めるのがプロフェッショナルな姿勢だと私は思います。

プレゼンを聴く側にも大切な作法があります。演者は発表のために多くの時間を費やし、準備を重ねてきたはずです。その努力に対してどう敬意を表すか?それは「質問をすること」です。
発表が終わった後に会場が静まり返り、誰も何も反応しないのは、演者にとって非常に失礼なことです。疑問に思ったことや興味を持った部分が必ずあるはずです。それを質問として表すことで、演者に関心を示し、コミュニケーションを図ることができます。質問をする際には、内容をきちんと整理し、相手に敬意を持った言い方を心がけましょう。「素人質問で恐縮」する必要もないでしょう。
当然、聴衆も遅刻は厳禁です。「コツ2」で紹介したように、演者は最初の1分に最大限の力を注いでプレゼンの準備をしています。その大切な冒頭で着席していなかったり、バタバタ遅刻したりするのは、演者の発表に対する想いを台無しにする行為です。遅刻は絶対にいけません。
今日は15選とまとめてみましたが、恐らくこの15選以外にも、もっとたくさんのコツがあると思います。みんなでコツを見つけて、シェアしてゆけば、きっと新しい発見もあるでしょう。
ところで「面白いプレゼン」とは、どういうプレゼンだと思いますか?ジョークやユーモアを交えて、笑いを誘うプレゼンもそうかもしれません。しかし私が「面白い」と感じたプレゼンは、実は「理解できた」プレゼンだと思います。
たとえ自分の専門外であっても、「そうか!これまで〇〇が不明だったのが、この研究で□□が解明されたのか!」と理解できると、とたんに人は「面白い」と感じるのだと思います。ぜひ、この15選を参考に「面白いプレゼン」を準備してください。
さぁ、プレゼンだ!