免疫調節機能は、こうも複雑だ|IL-23を例に(6月12日 Nature オンライン掲載論文)

2024.07.02

IL-23 は2種類の分子が複合したサイトカインで、そのうち p40 は IL-12 と共通で、p19 が IL-23 特異的という、複雑なサイトカインで、シグナルも IL-12 とオーバーラップするところもあるが、特に腸管の炎症性疾患のメディエーターとして、治療にも利用されている。

 

本日紹介する論文

今日紹介する米国コーネル大学からの論文は、IL-23 によって腸管で起こる細胞変化を調べることで、自然リンパ球の中の、その一部はパイエルバンなど免疫組織の発生に関わり、我々も現役時代に研究していた ILC3 を刺激し、免疫抑制型に変化させることを明らかにした研究で、6月12日 Nature にオンライン掲載された。

 

タイトルは「CTLA-4-expressing ILC3s restrain interleukin-23-mediated inflammation(CTLA-4 発現 ILC3 が IL-23 に媒介される炎症を抑制する)」だ。

 

解説と考察

この研究では IL-23 受容体 ( IL-23R ) 陽性細胞を蛍光でラベルしたマウスを用い、IL-23 により様々な細胞で起こる変化をモニターしている。

 

大体6種類の IL-23R 陽性細胞が特定できるが、リンパ組織誘導細胞以外の ILC3 でチェックポイント分子の一つ CTLA4 が発現し、この現象はT細胞のない Rag ノックアウトマウスでも起こることを発見する。

 

この予想外の発見がこの研究の全てで、single cell RNA sequencing も特定の分子に絞って見直すことで、これまで見落としてきたことが発見できることを示している。当然次の課題は、IL-23 により誘導された CTLA-4 がチェックポイント分子として働くかになる。

 

これまで IL-23 は腸管への細菌感染で誘導されることが知られているが、この点を確認し、無菌マウスや抗生物質投与マウスでは、IL-23 が誘導されず、その結果 ILC3 の CTLA-4 発現も起こらないことを明らかにしている。すなわち、腸の細菌叢が IL-23 を誘導し、その結果 ILC3 が CTLA4 を発現する。

 

次に ILC3 が発現する CTLA-4 の機能だが、NKp46 発現 ILC3 で CTLA-4 をノックアウトする実験で、細菌に対する T 細胞反応を抑える抑制性 T 細胞の減少が見られることを発見する。

 

すなわち、ILC3 は抑制性 T 細胞と同じように CTLA-4 を発現し、同時に抑制性 T 細胞を誘導することで炎症の拡大を抑えていることがわかる。

 

同じ実験を T 細胞のない Rag ノックアウトマウスで行うと、感染による IL-23 により自然炎症は普通に誘導されることから、ILC3 の CTLA-4 発現はもっぱら同時に起こる T 細胞の反応を制限することに向けられていることがわかる。

 

さらに CTLA-4 と反応する白血球上の CD80、CD86 の量が低下することで、PD-L1 が T 細胞に利用しやすくなり、この結果さらに強い免疫抑制を誘導することがわかる。

 

以上のマウスの結果を、人の炎症性腸炎で調べ、IL-23 上昇により、人の大腸でも ILC3 が CTLA-4 を発現し、同時に白血球で PD-L1 が発現して、炎症を抑えようとしていることを明らかにしている。

 

まとめと感想

以上、ILC3 は lymptoxin 発現により免疫組織の発生の誘導に関わるように、ILC3 の一部のサブセットは細菌性の炎症へのT細胞反応を調節するオーガナイザーとして働いていることがわかった。いずれにせよ、免疫システムの調節の複雑さがまた明らかになった。

 

実際チェックポイント治療で腸炎は重大な副作用だが、自己免疫性の反応だけでなく、炎症抑えるオーガナイザーの役割まで抑えることで症状を重くしていると考えられる。今後の臨床にも重要な発見だと思う。

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著者紹介:西川 伸一

京都大学名誉教授。医学博士であり、熊本大学教授、京都大学教授、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長などを歴任した生命科学分野の第一人者である。現在はNPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン (AASJ) 代表理事を務めながら、1日1報、最新の専門論文を紹介する「論文ウォッチ」を連載している。

【主な活動場所】 AASJ(オールアバウトサイエンスジャパン)
オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。

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