秋葉原で発見! マンボウの塩辛!

2024.02.13

 

 202310月、いつものようにX(旧Twitter)で、マンボウについて検索を掛けて適当にポストを眺めていた。

すると、秋葉原で「マンボウの塩辛」を食べたという非常に気になるポストが投稿されていた。マンボウの塩辛? 今まで聞いたことが無い……どんな味なのだろう??

気になる!

 

 

情報収集開始

 早速、インターネットで検索を掛けてみる。しかし、マンボウの塩辛に関する情報が全然ヒットしない……どこでマンボウの塩辛を食べられるのか……この時は気になりつつも、結局、それ以上の情報を掴むことを諦めた。

 そして、月日は少し流れ、20231229日。コミケに向けて出発の準備をする中で、ふと秋葉原でマンボウの塩辛を食べられる店があったことを思い出した。せっかく都内に行くのだから、マンボウの塩辛を食べてみたい。前回中途半端に調べたことを思い出し、今度は改めてXでマンボウの塩辛について、検索を掛けてみた。

 すると……『駿河屋賀兵衛』がマンボウの塩辛についてポストしているのを発見! ネットで調べると、この店は秋葉原で有名な塩辛専門店のようで、マンボウの塩辛が食べられるのはこの店で間違いないはずだと確信した。

秋葉原にある塩辛専門店

 20231230日。夜行バスから降り、少し時間つぶしをした後、私は秋葉原に向かった。私が向かった店は、『駿河屋賀兵衛 秋葉原ちゃばら店』。店の場所はJR秋葉原駅の電気街口から徒歩1分の位置にあるらしい。早速スマホの地図を見ながら歩いていく。すると、あっさり通り過ぎた。おかしいと再確認すると、ちゃばらという施設の一角に店があることが判明。一店舗のお店ではなかったのだ。ちゃばらは、JR秋葉原駅の電気街口から出て、直進数分の場所にあり、確かにアクセスしやすかった。

 

施設が11時に開くのを待っていると、後ろにも人が並び出す。これは急いで店に入らないと……!と思ったが、何とか一番に店に入ることができた! 

 

 店の方にXのポストでマンボウの塩辛を食べられるか聞いた本人であることを説明し、早速、マンボウの塩辛を注文。せっかくだから他の塩辛も食べようと思い、たこ梅塩辛とほたて塩辛の2種、ご飯も欲しくなると思ったので、ご飯も頼んだ。店の内観はこのような感じである。以前、記事に書いた「大阪・天神橋のまんぼう家」を彷彿させるような小さなお店だ。

 

この店舗では35種の塩辛を売りにしているが、オンラインショップでは60種以上の塩辛を扱っている。店名に駿河と名がつくように、本社は静岡にあり、塩辛だけでなく、静岡おでんなどの静岡料理も食べられる。しかし、私は今回、塩辛を食べることにこだわった。

 

いざ、実食

 まず、たこ梅塩辛とほたて塩辛、ご飯が届いた。食べようとしたら、箸がめちゃくちゃ特徴的で、先端がかなり先細りしていた。これは……塩辛が摘まみやすい形状なのだろうか? ちょっとしか摘めないが、もしかしたら、塩辛を一気に食べないように工夫されているのかもしれない。

 

 下の写真の左にある赤いものがたこ梅塩辛で、右の白いものがほたて塩辛だ。たこ梅塩辛はコリコリとした食感で、塩辛さはほぼ感じず、梅の味が強かった。美味しい。一方、ほたて塩辛は貝ひもの部分だけで、タコとはまた違ったコリコリ食感で美味。こちらは甘辛味だったが、甘みが強いように感じた。どちらもご飯が進む。もっといろんな種類の塩辛を食べたくなった。

 

 そして、最後に来たのが、今回の大本命である待望のマンボウの塩辛だ! マンボウの塩辛は、ほんのりピンクみがかった肌色だった。店の方が腸の部分を使ったと言っていた。実際に食べてみて、確かに食感的にも弾力的にも腸だった。この時私が食べた中では、タコに近いコリコリ食感で、非常に美味であった。

 

 味は…これぞザ塩辛という塩辛らしい味だった。イカの塩辛に似た味と食感と言えば分かりやすいだろうか。しかし、マンボウ独特の味もちゃんと感じることができた!

 このマンボウの味を他に例えることは難しいのだが、素材の味が残ったまま塩辛になっていて、本当に驚いた。店の方はクセの強い塩辛だから、万人受けはしない味と評価していたが、私はどこか懐かしさを感じる好みの味であった。クセがあると言えど、決して食べられない臭みではない。私的にはまさに理想的なマンボウの塩辛の味であった!

マンボウの塩辛の作り方

 店の方に作り方を聞いてみると、作り方は至ってシンプルで、マンボウの腸を丁寧に掃除し、天日塩をまぶして寝かせた後、塩麹と少量の味噌、柚子皮と共に、時々混ぜながら3ヶ月ほど発酵熟成させたとのことだった。結構手間がかかって出来ているこの店オリジナルの手作り塩辛だ。

石毛(1986)や藤井(2011)によると、魚介物の塩辛の発酵 ・熟成期間は、時代や地域によって大きく異なり、仕込みから数日で食べるものもあれば、数年漬け込むものもあり、ある意味、作り手の匙加減が試される。

 店の方曰く、このマンボウの塩辛はお試し的に作ったもので、まだ納得はいっていないとのこと。次は肝臓も加えたマンボウの塩辛を作りたいとのことであった。肝臓を加えると、より濃厚な味になりそうだ。改良版も楽しみである。

このマンボウの塩辛は、オンラインショップには出ていないため、店でしか食べられず、在庫がなくなったら、一旦終了との話だった。

しかし、またマンボウが入手され次第、塩辛は作られるようである。私もまた食べたいと思う。マンボウの塩辛もご飯がよく進む代物であった。実際、マンボウの塩辛を食べた他のお客さんの間でも人気は高いみたいだ。

 ちなみに、この店ではいろんな塩辛を作ってみようというコンセプトで、他では食べられないオリジナルの塩辛を提供しており、今回は私の予算足らずで食べられなかったが、変わり種としては、アンコウの塩辛やアワビの塩辛などがあった!

 メインメニューに無い変わり種の塩辛は、店の壁にメニューが貼っているので、店の壁も要チェックしよう!

実食を終えて 

今回、マンボウ料理のさらなる可能性を見出した。マンボウはまだまだ一般的ではない食材だが、それゆえに開発の余地も多いにある!

 伝統的なマンボウ料理もいいが、新しいマンボウ料理に挑むのも可能性を広げる上で大切なことだろう。動物の研究は究極的には食に繋がる。マンボウと食の可能性も、生態研究と合わせて、今後も追求していきたい!

 

 

 

 

今日の一首

 マンボウの
  塩辛食せる
   店あるよ
    アキバのちゃばら
     新たな挑戦

【著者情報】澤井 悦郎

海とくらしの史料館の「特任マンボウ研究員」である牛マンボウ博士。この連載は、マンボウ類だけを研究し続けていつまで生きられるかを問うた男の、マンボウへの愛を綴る科学エッセイである。

このライターの記事一覧

参考文献

石毛直道.1986.東アジアの魚醤――魚の発酵製品の研究(1)――.国立民族学博物館研究報告,11(1): 1-41

藤井建夫.2011.発酵と腐敗を分けるもの一くさや,塩辛,ふなずしについて一.日本醸造協会誌,106(4): 174-182.