LINE公式アカウントから最新記事の情報を受け取ろう!
ポケットベル(通称ポケベル)を覚えている、あるいは知っているだろうか? ポケベルとは、携帯電話(ガラケー)が普及する前の、平成初期(1980年代後半~1990年前半)に普及した小型無線受信端末のことである。アラフォー世代以降では、懐かしいと感じる方も多いことだろう。
私もポケベルの存在は知っていたのだが、流行ったのは子供の頃だったので、実は触ったことがなかった。なので、ポケベルとマンボウの間に関わりがあったことを最近まで知らなかった。そこで、今回はポケベルとマンボウにまつわる話をしようと思う。
CONTENTS
事の発端は、2023年9月。ポケベルを再現したボールチェーンマスコットがガチャガチャで販売されたことによる。再現されたポケベルは、なんとマンボウをモチーフにした形状だというのだ! このガチャガチャは全国で販売されているようなので、早速、近場の大型スーパーに足を運んだ。たくさんあるガチャガチャをじっくり確認していると……それらしいものを見付けた!!!
1回500円! リッチなガチャガチャだが、ここはやるしかない。ガチャるとピンク色のカプセルが出てきた。周りに簡単な説明が書いてある。それによると、このポケベルは「mola」という機種で、「マンボウのような形状で愛されていた」と書かれているではないか!! molaはマンボウの学名であることからも、このポケベルがマンボウをモチーフにしていたことが伺える。
中を開けてみた。このガチャガチャシリーズを紹介した紙、ボールチェーンマスコット本体、ボールチェーンマスコットの取り扱い説明書が入っていた。チェーンでカバンなどに装着でき、ボタンを押すと音が鳴り振動するようだ。大きさは縦横5cm 前後。私は当時触っていないので分からないが、この音は当時の着信音なのだろうか?
私が出た色はピンク色だった。他には黒、白、青色がある。シークレットは無いようだ。私はコレクションに加えるので封を切っていないが、この形状がマンボウを模しているという。かなりデフォルメされているが、確かにマンボウ型の形状はしている。
このボールチェーンマスコットは、ポケベルを提供していた東京テレメッセージが監修しているので、その再現度は高いものと思われる。今回ボールチェーンマスコット化されたものはmolaという機種であるが、ポケベル自体はそれ以外にも様々な形状の機種がかつて販売されていた。数ある機種の中から、この機種をガチャガチャにしてくれたことを、私は嬉しく思う。
しかし、私はポケベルのことは詳しくないので、調べてみた。八田(2010)によると、ポケベルは通信文化史の一ページを刻むほど当時重要なアイテムだったようだ。
ポケベルは受信しかできない一方通行の無線呼び出しサービスで、送信は公衆電話などの電話機で数字を打ち込むことによってメッセージを送ることができた。このサービス自体は1968年から開始されていたが、初期のポケベルは音が鳴るのみで、外回りの営業マンはポケベルが鳴ると、近くの公衆電話から会社に電話をして連絡を取っていたという。
1987年にNTTがディスプレイ型ポケベルのサービスを開始すると、画面に数字を表示できるようになり、ビジネスマン以外にも普及するようになっていった。「4649(よろしく)」や「14106(あいしてる)」など数字を使った語呂合わせが、女子中学生や高校生の間で流行ったという。
公衆電話や固定電話という、特定の場所からしか連絡できなかったものが、だんだん外を歩いていても連絡できるようになり、ビジネスマンから個人利用へと普及したことで、ポケベルは生活の発展に大きく寄与したと言える。過去には「ポケベルが鳴らなくて」というドラマもあったようだ。
また、1994年に東京テレメッセージが、今回ガチャガチャになった機種でもある、カタカナやアルファベットの文章が表示できるポケベル mola を発売すると、爆発的人気が出て、普及も大規模に進んだという(ポケベル画面に文字が表示されるだけで、メッセージの送信は電話機から特定の意味を持った数字の組み合わせ(例えば、11=ア、12=イ)を打たなければならない)。
しかし、ポケベルは1996年をピークに、PHSや携帯電話の登場によって徐々に衰退していくことになり、2019年9月30日で国内最後のサービスは終了した。今ではもうポケベルは新しいメッセージを受信することはできない。
ポケベルの歴史に関する分かりやすい動画がyoutube上にあったので、気になった方はこちらも参照して欲しい。
私的には何故マンボウの形のポケベルを作ったのかということが気になるが、残念ながら、その理由を書いた資料は見付けることができなかった。ポケベルが流行っていた当時の若者である今の40代~50代の人達にとって、このマンボウ型ポケベルは印象深いアイテムだったことと思う。このポケベルもある意味、未来では人とマンボウとの関わりを間接的に示す貴重な民俗学的アイテムになることだろう。
今日の一首
ポケベルの
人気爆発
機種モーラ
人とマンボウ
繋ぐ民俗
八田正信.2010.電話の史的展開とケータイ文化.流通経済大学社会学部論叢,20 (2): 103-118.