BSフジ「ガリレオX」出演の舞台裏を語る!

2023.08.13

 2023年8月13日、BSフジ「ガリレオX」で本サイトLab BRAINSについての話が取り上げられ、放送された! ご覧になられた方はいただろうか? 番組の中で、私はLab BRAINSに寄稿しているライターの一人として、活動を続けているマンボウ研究に関する話を紹介していただいた。放送では厳選された約8分間の映像であったが、実際、撮影には3時間ほど、移動も含めると丸一日かかっている。今回は「ガリレオX」で紹介されなかった私に関連する舞台裏について、本記事で語りたいと思う。

 

 

ガリレオXからのオファー

 「ガリレオX」は2011年からBSフジで毎週日曜日に放送している30分の科学ドキュメンタリーで、1998年からTOKYO MXで放送されてきた「ガリレオチャンネル」の後継番組である。「ガリレオチャンネル」の頃から合わせると、今年でちょうど25年目を迎える老舗のテレビ番組だ。

 

 Lab BRAINSの担当の方から「ガリレオX」に出演可能か?とのメールが来たのは6月中旬。私がOKと返すと、その週のうちに「ガリレオX」制作者の方と打ち合わせをすることになった。

 

 私は無職なので、基本的に論文執筆や研究活動等は家で行っているのだが、海とくらしの史料館(海くら)の「特任マンボウ研究員」の肩書も持っている。打ち合わせの中で、大きなマンボウの剥製などの資料がある海くらで撮影するのが良いだろうという話になり、海くらの館長からも了承の連絡をもらえたので、そちらで撮影を行うことに決まった。順調に話は進み、撮影日は海くらの休館日である2週間後の6月27日になった。話の始まりから2週間後に撮影を行うのは、なかなか早いスケジュールではないだろうか。

 

 

海くらへ出発

 関西から海くらのある鳥取県境港市に行く機会はあまり無いかもしれないが、便利な移動手段を知っているので、ここに記しておきたい。日本交通株式会社が運営する高速バスで、大阪の主要な駅(私はなんばOCATから乗った)から米子駅まで直通で行くことができる。

 

 チケットはオンラインで予約することができるが、発券は現地になる。しかし、夜行便など販売窓口が閉まっていて発券ができないような場合は、運転手に直接代金を支払う形でOK! その場で領収書ももらえるのでなかなか便利だ。乗車時間は大体4~5時間ほどで、2時間後くらいに一度トイレ休憩があるが、バス自体にトイレが付いているので安心だ。

 

 今回は初めて夜行便を使った。夜行便は寝ている間に現地に着くことができるので、非常に便利なのだが、4~5時間の運転では夜明け前に現地に到着する。この時は予定時刻より速く着いて、4時半に米子駅前に到着した。

 

 コンビニ以外の店はまだ開いていない。撮影時間は13時頃からだったので、始発の電車で米子駅から境港駅まで向かっても到着が早過ぎる……。

ここでふと『米子駅から海くらまで歩いて行けないか?』 と思った。Google地図で調べると距離にして約18 km。計算上は4時間ほど歩き続けたら着くようである。この日は撮影以外に特にやることがなかったので、この地域の探索がてら時間つぶしも兼ねて歩いてみるのもいいなと思った。

 

米子駅から海くらまで歩いてみる

 今まで電車で移動していたので、米子⇔境港間の景色はよく知らなかった。弓ヶ浜が有名な海岸なのだが、電車は半島の中央らへんを走っているので、見たことがなかった。今回、歩いて向かっている途中でようやく弓ヶ浜を見ることができた。白い砂浜がキレイだ。



 歩いているうちに日はどんどん高くなり、暑くなってくる。セミの鳴き声はまだ聞こえなかったが、夏らしい雰囲気だ。海と山が視界に入って、心も何だか浮かれてくるような感じがした。熱中症にならないように途中からタオルを被って歩いていたが、自撮りをすると結構怪しい人物だった。



 途中、地元の大型スーパーに寄り道して昼飯を食べたりし、なんとか目的地の海くらに着いた。足はガタガタ状態だ。しばらく海くらの入口にある長椅子で横になり、館長が到着すると、事務所に入れてもらって中で涼んだ。

 

 

撮影開始

 番組スタッフが予定時間通りに到着した。まず館内を軽く見て回り、撮影イメージを膨らませてから、撮影に入った。スタッフは二人と少人数で少しビックリした。

 

 まずは海くらの大きな目玉である、日本一大きなマンボウの剥製「チョボリン」を使って、マンボウの形態などについて解説する。マン帽子も一応持って行っていたのだが、装着OKとのことだったので、装着して撮影にのぞんだ。

 

 撮影は基本的にスタッフの一人が考えてきていた質問に対して、私が答えるという形式で、一人で何かしゃべって下さいと放置されるよりやりやすかった。

私が知る限り、大型マンボウ属の剥製がこのように手の届く位置に吊り下げられているのは、海くら以外に見たことがない。多くの博物館では、触られないように天井から吊り下げられている。剥製を目の前にして撮影をできるのは海くらの大きな魅力である。

 

 続いては、もう少し小型のマンボウの剥製を使っての撮影に移る。マンボウの大型個体と小型個体の形態の違いなどについて解説した。

 

 2階に上がって、江戸時代のマンボウの解説パネルが展示されているエリアで、以前、ラボブレインズで記事を書いた「査魚志」の絵に関する解説を行った。マンボウの古文献が展示されている博物館は非常に少ないので、貴重である。また、このエリアにはマンボウの骨格標本も展示されているので、一般的な魚類との骨格的な違いについても解説を行った。

 

 ここまでで45分ほど撮影時間が経過していた。再び一階のマンボウの大型剥製の前に戻り、今度はマイクを付けて、インタビュー形式で本格的な撮影に入る。何回か水を飲む小休憩を挟み45分ほどひたすらしゃべっていたように思う。マンボウ研究の難しさ、現在明らかにされている生態、現代人の持つマンボウのイメージ、今後の課題など、カットされた部分も含めてたっぷり語らせて頂いた。

 

 私の収録はここまでで、後は番組スタッフの方二人が改めて館内を見て回り、映像として欲しいエリアをまた45分くらい掛けてじっくりあちこち撮影されていた。長年科学ドキュメンタリーの撮影を続けているだけあって、クイズ番組のように変にオーバーなリアクションを取る必要もなく、自然にマンボウについて語ることができたように思う。

 

 海くらは様々な水産生物の剥製があるとのことで、番組スタッフに興味を持ってもらえた。マイナーな地方の博物館であるが、是非多くの人に足を運んでもらいたいと私は思う。いつか海くらに焦点を当てて、改めて番組を作ってもらうのもいいかもしれない。

 

 最後に全員で記念撮影をした。左が海くら館長、マスクをしているのが筆者。右の二人が番組スタッフである。スムーズに楽しく撮影して頂いた。また機会があればお願いしたい。

 

 

最後に

 今回は放送されたテレビの裏側として、どうやって番組が作られたのかということに焦点を当てたが、こういう研究成果と直接関係ない記録も残しておくと意外に後で役に立ったりする。

実は、「ガリレオX」と本サイトLab BRAINSは縁があり、私が『次世代型飛行機開発にマンボウの骨格のデータが用いられている話の記事』を書いた時に、記事の参考として、「ガリレオX」が以前放映した回のyoutube版を引用させていただいていたのだ。まさかその後、今度は自分がその番組に出演することになるなんて、記事を書いた時は全く思ってもみなかった。世の中何がどこで繋がるかわからないと改めて思った次第である。

 

今日の一首

 マンボウと
  Lab BRAINS
   記事繋ぎ
    ガリレオXも
     繋がる縁

【著者情報】澤井 悦郎

海とくらしの史料館の「特任マンボウ研究員」である牛マンボウ博士。この連載は、マンボウ類だけを研究し続けていつまで生きられるかを問うた男の、マンボウへの愛を綴る科学エッセイである。

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参考文献

澤井悦郎.2017.マンボウのひみつ.岩波書店.東京,208pp.