【細菌学クイズ5】細菌ってヒト細胞とどう違うの?② 4つのクイズで楽しく細菌について学ぼう!

2023.08.04

こんにちは!細菌が好きすぎて気がついたら博士号をとっていたさいぼうです!そんなわたしがつくる、楽しく学べる細菌学クイズ!今日は細菌とヒトの細胞の違いについて第2弾!

第1弾ではおもに細菌とヒト細胞の似ている点に着目しました。

本日は趣向を変えて、まったく違う点について紹介します♪

今回もクイズに答えて楽しく細菌について学びましょう!

クイズ1: べん毛とせん毛の違いについて

細菌の動きに関与する構造として、べん毛とせん毛があります。これらの違いを以下の選択肢から選んでください。

a) べん毛は細菌の周囲を回転運動することで動きますが、せん毛は押し出すような波動運動で動きます。
b) べん毛は細菌の一部から突出した細長い構造であり、せん毛は細菌表面全体に分布する毛状の構造です。
c) べん毛は感染を引き起こすために使われ、せん毛は栄養を吸収するために使われます。
d) べん毛とせん毛は機能的には同じであり、名前の違いだけがあります。

  • 正解: b) べん毛は細胞の一部から突出した細長い構造であり、せん毛は細菌表面全体に分布する毛状の構造です。

 

~解説~

染色体は細菌の中にある遺伝子情報を含んだ構造。細菌の染色体は一本鎖のDNAで構成されており、細菌の遺伝情報をコードしています。

名前はヒト細胞でも細菌でも同じ「染色体」ですが、中身は全然ちがいます!

 

主な違い

べん毛はヒト細胞にはなく、細菌特有の構造物です。

役割は細菌が運動するため。べん毛は回転運動と直進運動の切り替えを行い、この運動パターンによって細菌は効率的に進むことができます。

細菌はべん毛(Fllagellum)と呼ばれる構造を利用して運動します。

 

回転運動と直進運動

べん毛は一般に回転運動を行います。この回転運動によって、細菌は周囲の環境を感知し、目標に向かって進むことができます。しかし、時には進む方向が変える必要がありますよね。その際、べん毛の回転方向を逆にすることで、細菌は一時的に直進するのを止め、その場で回転する「タンブリング」を行います。タンブリング後に回転運動を元に戻すことで再度、直進運動をします。

また、べん毛の配置によって単極性べん毛、群毛性べん毛、双極性べん毛、周毛性べん毛に分類されます。

単極性べん毛(Monotrichous)、群毛性べん毛(Lophotrichous )、双極性べん毛(Anphitrichous)、周毛性べん毛(Peritrichous)

 

単極性べん毛:
単極性べん毛は、細菌の1つの極(通常は細胞の一方の端)にのみ存在します。単極性べん毛を持つ細菌は、一つの方向に向かって直進運動を行います。その方向を変えるためには、べん毛の回転方向を変えてタンブリングする必要があります。

群毛性べん毛:
群毛性べん毛は、細菌の一つの極または細胞表面全体に存在します。複数のべん毛が集まっているため、これらのべん毛は一斉に同じ方向に動くことができます。

双極性べん毛:
双極性べん毛は、細菌の両極(細胞の両端)に存在します。この配置により、細菌は両端に向かって進むことができます。双極性べん毛を持つ細菌は、直線的な運動を行い、比較的迅速に移動することができます。

周毛性べん毛:
周毛性べん毛は、細菌の細胞表面全体に均等に分布しています。周毛性べん毛を持つ細菌は、自由に方向を変えることができ、環境中を比較的自由に移動することができます。周毛性べん毛を持つ細菌は、環境中でより広範囲にわたって栄養源を探し回ることが可能になります。

ちなみに「せん毛」も細菌特有の構造物です。せん毛は主に細菌の表面への付着や環境への適応に関与します。物質や他の細胞表面に付着することで、細菌が環境中を移動することが可能になります。一部の細菌ではせん毛によって運動することもありますが、これは一般的な特徴ではありません。

すなわち、べん毛もせん毛も病原性に関与することになります。

 

クイズ2: 莢膜について

莢膜(きょうまく)は特定の細菌に見られる特殊な構造です。莢膜の特徴として正しいものを選んでください。

a) 莢膜は細菌の細胞壁の外側に存在し、細菌を保護する役割を持ちます。
b) 莢膜は動き回ることで細菌を移動させるのに役立ちます。
c) 莢膜は光合成を行うための特殊な構造です。
d) 莢膜は細菌の核を包み込んでいる膜です。

  • 正解:a) 莢膜は細菌の細胞壁の外側に存在し、細菌を保護する役割を持ちます。

 

解説

莢膜は、一部の細菌に見られる粘り気のある外層で、細菌の細胞壁の外側に存在します。

莢膜(Capsule)は細菌の膜構造の中で最も外装に位置します。

 

肺炎を引き起こす桿菌Klebsiella pneumoniaeなどの一部の病原性細菌は莢膜を持っていることで知られています。

Klebsiella pneumoniae(イメージ)

 

莢膜は、免疫系による攻撃を逃れるために非常に有効な防御機構として機能します。具体的には以下のようなメカニズムが挙げられます。

免疫逃避:
莢膜は細菌の細胞壁の外側に存在し、その特性によって免疫細胞や抗体による攻撃を回避します。莢膜は抗体による認識を阻害し、細菌を「偽装」する効果があります。このため、免疫系の攻撃から莢膜を保護し、感染症を引き起こす能力が高まります。

抗原変化:
莢膜を持つ細菌は、その莢膜の表面構造を変化させる場合があります。これにより、免疫系が一度認識した莢膜に対して新しい抗体を生成する必要が生じ、細菌が新たな免疫攻撃から逃れることができます。この抗原変化によって、細菌は再感染や慢性感染を繰り返すことが可能となります。

ファゴサイトーシスの回避:
ファゴサイトーシスは、免疫細胞の持つ機能の一部であり、異物や細菌を飲み込んで分解する働きを持つ細胞(ファゴサイト)によって行われる過程です。莢膜を持つ細菌は、莢膜の表面に特定の物質を発現することによって、ファゴサイトーシスを回避することがあります。これにより、細菌は免疫細胞による消化を免れ、感染を持続させることが可能となります。

細菌がファゴサイトに貪食されて細胞外に排除される過程(イメージ)

クイズ3: プラスミドについて

プラスミドは細菌が持つ特有の構造です。プラスミドについての正しい説明を選んでください。

a) プラスミドは細菌の核に存在する主要な遺伝情報を含むDNAです。
b) プラスミドは細菌の核に存在する主要な遺伝情報を含むDNAです。
c) プラスミドは細菌が抗生物質耐性を獲得するのに関与しています。
d) プラスミドは細菌の細胞壁の一部として機能します。

  • 正解:c) プラスミドは細菌が抗生物質耐性を獲得するのに関与しています。

解説

プラスミドは細菌が持つ遺伝情報を含む小さな円環状のDNAです。プラスミドには細菌の生存に比較的重要ではない遺伝子が含まれており、抗生物質耐性や毒素産生などの特殊な性質を提供することがあります。

DNAとプラスミド(Plasmid)

 

抗生物質への耐性やヒトに対する毒素は細菌が自然界で生きていくためには必要のないものですからね。

細菌の持つプラスミドと染色体に含まれる遺伝子を分けてみましょう。

染色体に含まれる遺伝子

細胞膜の合成:
細胞膜の合成に関連する遺伝子は通常染色体に含まれます。細胞膜は細菌の外部環境との間の境界を形成し、栄養取り込みや物質の排出を担当しています。

エネルギー合成:
細菌のエネルギー合成に必要な遺伝子は通常染色体に含まれます。エネルギー合成は細菌の生存に不可欠なプロセスであり、代謝反応を通じてATPを生成するための遺伝子が染色体に存在します。

細胞壁合成:
細胞壁合成に関連する遺伝子は通常染色体に含まれます。細胞壁は細菌の形態を保持し、外部の環境から細菌を保護する重要な構造です。

DNA合成:
細菌のDNA合成に必要な遺伝子は通常染色体に含まれます。DNA合成は細菌の成長と増殖に不可欠なプロセスであり、細胞分裂時に複製されます。

プラスミドに含まれることがある遺伝子(プラスミドに保存されていた以下の遺伝子が染色体に転移した細菌も多くいる)

べん毛の形成:
べん毛の形成に関連する遺伝子は一部の細菌のプラスミドに存在します。べん毛は細菌の運動性に重要な役割を果たしており、プラスミドに含まれるべん毛形成遺伝子は、べん毛の構造と運動性に関与しています。

莢膜の合成:
 莢膜の合成に関連する遺伝子は一部の細菌のプラスミドに存在します。莢膜は免疫回避や環境適応に重要な役割を果たしており、プラスミドに含まれる莢膜合成遺伝子は、その形成と機能に関与しています。

毒素の産生:
毒素の産生に関連する遺伝子は一部の細菌のプラスミドに存在します。これらの遺伝子により、細菌は宿主細胞に対して毒性を持つことができます。

抗生物質耐性:
抗生物質耐性に関連する遺伝子は一部の細菌のプラスミドに存在します。これらの遺伝子により、細菌は抗生物質に対して耐性を獲得し、治療が難しくなることがあります。

 

クイズ4: プラスミドにはF因子が含まれますが、F因子とは何でしょう?

a) 細菌の莢膜を形成する遺伝子要素
b) 細菌の性別に関連する遺伝子要素
c) 細菌のべん毛を形成する遺伝子要素
d) 細菌のDNA合成を担当する遺伝子要素

  • 正解:b) 細菌の性別に関連する遺伝子要素

解説

細菌にも実は性別が存在するのです。性別を決定するのがF因子!

F因子(Fプラスミドまたはフェルトファクター)は、細菌において性別に関連する遺伝子要素です。このプラスミドは、特定の細菌細胞が他の細菌細胞に対してDNAを転送する機能を持っています。

F因子を持つ細菌は、Fプラスミドを細胞外に伸ばすことができる特殊な構造を持つ「性毛」(Sex pilus)と呼ばれる構造を形成します。性毛は、周囲の細菌に接触し、その接触した細菌にFプラスミドを転送する役割を果たします。

F因子は、その機能によって細菌を2つのカテゴリに分けることができます:

Fプラス細菌(Fプラス菌):Fプラス細菌は、Fプラスミドを持っており、性毛を形成して他の細菌にFプラスミドを転送できる能力を持っています。このプラスミドの転送は、細菌の性別に関連して行われるため、「性因子」として知られています。

Fマイナス細菌(Fマイナス菌):Fマイナス細菌はFプラスミドを持っていません。したがって、性毛を形成して他の細菌にFプラスミドを転送する能力を持ちません。これらの細菌はF因子を欠くため、「性因子」を持っていないと言われます。

Fプラスミドの転送はFプラス菌同士だけでなく、Fマイナス菌(F因子を持っていない細菌)に対しても起こります。Fプラス菌は性毛を形成し、Fプラスミドを持つか持たないかに関係なく、周囲のFマイナス菌にFプラスミドを転送することができます。このプロセスは、細菌間の遺伝子情報の交換を可能にします。

具体的には、Fプラス菌は性毛を伸ばして周囲のFマイナス菌に接触します。その後、接触したFマイナス菌にFプラスミドが転送されます。このプロセスを「接触依存的DNA転移」と呼びます。

Fプラスミドの転移

 

Fプラスミドの転送によって、細菌間で遺伝子情報が交換されることがあります。この遺伝子情報の転送によって、抗生物質耐性遺伝子やその他の有益な遺伝子が広まることがあります。F因子の存在は、細菌の遺伝子多様性を増加させ、環境変化に対する適応性を高めるのに役立っています。

 

  • まとめ

  • 今回のクイズでは、細菌特有の構造やDNAの転移について学びました。

    細菌の生存能力や進化には驚かされるばかりですね!

    これからも一緒に、クイズを通して細菌学への理解を深めていければと思います。
    それではまた次回の細菌学クイズでお会いしましょう!

【著者紹介】さいぼう

北里大学卒業。獣医学博士。現アメリカメンサ会員。専門は微生物学。博士取得後アメリカ・マサチューセッツ州で博士研究員として働く。趣味は書籍の執筆。最近は実験のかたわら、大学院を目指す方に向けたエッセイ小説を書いている。Twitter space「日曜夜だからってしょげないでよ大学院生!」のメインキャスト。日曜夜7:30から絶賛ライブ配信中!

【主な活動場所】
Twitter

このライターの記事一覧