ハニーアントの「アリミツ」は抗菌性!?

2023.08.04

 唐突ですがみなさん、ハニーアントって知っていますか?

 有名なのはミツツボアリでしょうか!

 彼らの仲間は働きアリ、兵隊アリのような感じで蜜アリという役割があり、お腹にハチミツならぬアリミツを貯める独特な生態を持っているのです!

 そんな彼らの仲間、オーストラリアに生息するCamponotus inflatusの研究で面白い事実がわかったのでハニーアントについても含めてご紹介しますね!


そもそもハニーアントとは?

ハニーアントの仲間

 

 本文に入る前に軽く説明をします。

 ハニーアントはミツツボアリをはじめとした働きアリの中にRepletes(蜜アリ)という役割を持つ子がいるアリの総称ですね!

 

 そもそも一般的にアリは素嚢(そのう)と呼ばれる器官に甘露などの蜜を蓄えることができます。また外でのごはん探しの旅を経て蓄えた蜜を自分で消費するだけではなく、他のアリに分け与えることもあります!

 

 そんなアリの中でもハニーアントの蜜アリの役割は蓄えることに特化することで仲間に貢献しています。

 

 自分で探索に行くことはせず仲間が採ってきた蜜を素嚢に貯めることによってコロニーが1年中食べ物に困らないように……いわば「生きた冷蔵庫」のような役割をしているんです!

 なんでも羽化直後の個体がめいっぱいエサを貰うとお腹が大きくなるらしいですよ!

ハチミツとマヌカの花

 

 今回の研究もそんなハニーアントに蓄えられたアリミツについての研究なのですが、本文中に比較対象としてマヌカハニーとジャラハニーというハチミツが登場します。なのでこちらにも軽く触れておきましょう!

 

 マヌカハニーとは大部分をマヌカの木Leptospermum scopariumの花から作られたハチミツのことで抗菌活性のあるメチルグリオキサールを非常に多く含んでいます

 対してジャラハニーはジャラの木Eucalyptus marginataからのものであり、こちらは過酸化水素を多く含むための抗菌活性とされています。

 なお通常のハチミツも抗菌ペプチドとしてBee Defensin-1という物質を含んでいて抗菌性が見込められるんですね!

 

今回の研究!

画像はイメージです

 

 さて、オーストラリアに生息するハニーアントのCamponotus inflatusは先住民たちに乾燥した環境での天然の甘味として、さらに喉の痛みや風邪の治療のために使われてきました

 しかし、詳しい科学的な研究は行われてきませんでした。

 

 そこで今回!

 研究者らはC. inflatusからのアリミツと人工的に作成したハチミツ、ジャラハニー及びマヌカハニーとともにその抗菌性をいくつかの細菌と真菌、カビによってテストしました。

 その結果としてC. inflatusのアリミツは黄色ブドウ球菌という細菌及び、アスペルギルス属及びクリプトコッカス属というふたつの真菌に対しての抗菌性がハチミツよりも優れていることが明らかになりました!

 

 しかし、その他の微生物に対しての抗菌性はハチミツよりも低い活性を示すか、もしくは一切の活性を示さないことも判明したんです。

 これはすなわち、アリミツはハチミツとは異なった独特な抗菌の仕組みを有していることを示唆しているんですね!

 

 この研究を始めとしてC. inflatusのアリミツの研究が進むことにより、新たな治療などにも応用できるような抗菌薬を作り出すための手掛かりになるかもしれないのです!

 オーストラリアの先住民の方々がミツアリC. inflatusの効能を伝統的に理解していたことと、現在の科学的な研究がもたらした素晴らしい発見ですね!

 

 もちろん、なぜこの3つの微生物の仲間に対して強い抗菌性を持っているのかが明確に判明しているわけではありません。上で紹介したハチミツと違って研究が進んでおらず、どの成分が抗菌性を有しているのかは不明なのです。

 ただ、その中で真菌に対する抗菌性を持っている理由については考察されています!

 

 C. inflatusの生息する非常に乾燥した砂漠のような土壌にはアスペルギルス属の真菌類がほぼすべてと言っていい場所に多く存在しています。

 また、クリプトコッカス属は腐った木材や土壌で繁殖するのでアリを含むさまざまな生き物によって広がっていくんです。

 

 それらのことからC. inflatusは生活において接触する可能性の高い病原体に対しての耐性を持つように進化してきたのではないか!? という説明がなされます!

 進化の過程によって磨き上げられた生き物の技術や能力は人類の未踏のところで、それらの発見はいつも驚かせてくれますね!

 

まとめ

画像はイメージです

 

 今回はハニーアントCamponotus inflatusのアリミツへの研究でしたね。

 アリミツはハチミツとは別の仕組みによって黄色ブドウ球菌と真菌2種に対しての優れた抗菌性が発見されました!

 これは新たな抗菌薬などを作り出すためのヒントになるのかもしれません!

 

 しかし彼らは生き物であり、上記したように蜜アリはアリのコロニーにおいて「生きた冷蔵庫」という重要な役割を担っているため、当然のこと採取できる数は限られています

 ゆっくりながらも着実に研究が進んでいけば嬉しいですね!

 

 これからも自然界の驚くべき発見に注目していきましょう!

 

 最後に雑学!

Camponotus inflatusの約50パーセントは蜜アリ!」

 

 それではまた!

<論文>

ong AZ, Cokcetin N, Carter DA, Fernandes KE. 2023. Unique antimicrobial activity in honey from the Australian honeypot ant (Camponotus inflatus). PeerJ 11:e15645


<参考文献>

・Sojka M, Valachova I, Bucekova M, and Majtan J. 2016. Antibiofilm efficacy of honey and bee-derived defensin-1 on multi-species wound biofilm. J. Med. Microbiol.

・Sci news. 2023. Honey from Australian Honeypot Ants Has Unique Antimicrobial Properties.

・The guardian. 2023. Honey produced by Australian ant has highly effective antibacterial properties, researchers say.

・BBC science focus. 2022. What is a honeypot ant?

 

【著者紹介】三日月 あかり(みかげ あかり)

生き物大好きなあかり君。生き物の情報を求めて日夜ネットの海を漂っている人。動物の研究について紹介して、みんなが少しでも興味を持ってくれるといいな。

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