地下水の汲み上げすぎで地軸が動いた!? 地下水汲み上げ量を初めて間接測定

2023.06.23

地下水の汲み上げで地軸移動 サムネみなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説は、地下水の汲み上げによる影響で17年間で地軸が約80cm動いた、という研究に関する解説だよ!

 

なんだかとんでもない話に聞こえるけれど、これにはちゃんとした理由があり、そして直接測ることが難しい地球の水分布を推定する重要な直接証拠を与える研究でもあるよ!

 

 

地球の回転は結構ブレる!

地球は自転という回転運動をしており、その回転軸である「地軸 (自転軸)」は北極と南極にある、というのはよく知られているけど、実は自転というのは永久に安定した回転ではないよ。

 

地球の表面は海洋が7割、陸地が3割で、場所場所によってその割合は異なるよ。そして海水は液体なので動きやすいことから、地球はいわば形の悪い球体のコマのような物体と例えることができるよ。

 

形の悪いコマがそうであるように、地球の地軸もこの形状の非対称性によって長期的には動くことになるよ。更に、地球やマントルや外核が対流しているので、これによっても地軸が動くよ!

 

そして、地球の回転を正確に測定できるようになると、これ以外の原因でも地軸が動かされていることが分かってきたよ。特に大きいのは、陸地にある氷である氷床や氷河の影響だよ。

 

氷床や氷河は普段は陸地に固定されているけど、近年の気候変動は氷を溶かし、陸から海への水の移動を起こしたよ。これによって陸が軽く、海が重くなり、地軸のブレに影響することになるよ。

 

この効果はバカにならないことが知られており、2016年には氷の融解によって地軸が移動していることを計測することに成功したよ!これは間接的に氷の融けた量、つまり海面上昇を測ることにも応用できるよ!

 

日々の潮の満ち引きや気圧による上下によっても変化する海面変動に対して、氷の融解による海面上昇だけを取り出して測るのは困難だけど、地軸の動きによって、間接的ではあるけど推定によらない測定が可能なんだよ!

 

2兆トンの地下水の汲み上げは地軸に影響する?

地軸移動の要因と疑問

地球の地軸 (自転軸) の移動は、地球表面の大陸と海洋が非対称な分布をしていることや、地球内部のマントルや核の回転によって起こるよ。そして近年の気候変動は陸地の氷である氷床や氷河を融かし、海を重くすることによって更に地軸を動かすよ。では、同じく陸地の水である地下水は影響を与えるのかな?

 

さて、ソウル大学校のKi-Weon Seo氏らの研究チームは、この種の研究の応用例として「地下水の汲み上げ量を計測する」という手法に適用できないか、と考えたよ。

 

世界人口の増加、生活水準の上昇、それに伴う農業や産業での需要により、地下水の汲み上げ量は世界的に上昇していて、1993年から2010年だけでも2兆1500億トン[注1]もの地下水が汲み上げられたと言われているよ!

 

地下水は長い時間をかけて地下へと溜まったものだから、汲み上げ後の地下水は、最終的にほとんど全てが海に流れると見なせるよ。つまり、氷床や氷河が融けた結果とほぼ同じであると見なせるよ!

 

これまで、地下水の汲み上げ量を直接測る方法は存在せず、推定に頼るところが多かったので、この2兆1500億トンという推定が妥当なのかどうか、直接測る方法として地軸の移動が使えると考えたわけ!

 

とはいえ、これは簡単な話じゃないよ。まず、地下水の分布と、その汲み上げ量は偏っているため、これを正しく推定しないと意図した結果は得られないよ。

 

また、陸の重さが変わる因子があれば、地下水流入で海が重くなった効果をある程度は打ち消すよ。これには地下水よりも浅い土壌に含まれる水分、そして人為的に水を貯めるダムが関係してくるよ。

 

地軸に対する地下水の影響を推察

研究では、地下水を含む6つの因子を調べた上で、地下水の汲み上げに関する正確な分布も調べてみたよ。その結果、大量に汲み上げられるインド北西部と北米西部を除き、ほとんどの地域で海面が上昇しているのがモデル化されたよ! (画像引用元: 原著論文 Fig1 & Fig2)

 

そこで今回は、南極氷床グリーンランド氷床山岳氷河土壌の水分ダム湖、そして地下水の6つの因子の影響を検討し、特に地下水がある場合とない場合で地軸の移動をどの程度正しく推定できるのかを調べたよ。

 

まず、最初の3つの因子は、氷の融解なのでよく調べられているよ。土壌の水分は季節ごとの降水量に大きく依存するため、1年の中での変動は大きいけど、長期的にはほとんど変化していないと予測されたよ。

 

ダム湖の水の量については、世界中の7320のダムで、合計7000km3 (7兆トン) だと推定し、ダム湖の底から土壌へと少しずつ染み込む水の量も考慮して計算を行ったよ。

 

更に、海という巨大な水の塊が、地盤を変形させ、自らの重力で周りの水を引き寄せる効果[注2]も考慮するなど、正確な推定が行えるおよそ全ての因子を考慮して計算を行ったよ。

 

地軸に対する地下水の影響はとても大きい!

地下水を考慮すると地軸移動が判明!

検証の結果、地下水の汲み上げによって、地軸は東経64.16度の方向に1年あたり4.36cmも移動していたことが分かったよ!これは検証した6つの因子の中で2番目に大きな影響であり、それによって地軸の移動方向がまるっきり変わったことが明らかにされたよ! (画像引用元: 原著論文 Fig4)

 

その結果、1993年から2010年までの17年間の地下水の汲み上げを考慮したモデルが、現状の地軸移動を正確に予測できたことが明らかになったよ!地下水を考慮しない場合、地軸の移動方向が全く違うものとなったよ。

 

もし地下水を考慮しない場合、17年間の地軸の移動方向はグリーンランド中央部を通ることになるけど、地下水を考慮した場合はグリーンランド東岸方向に偏っていて、これは実際の計測結果とよく一致するよ!

 

これにより、17年間の地下水の汲み上げによる影響だけで、地軸は東経64.16度の方向に引き寄せられ、1年あたり4.36cm、合計で78.48cmも移動したことが明らかにされたよ!

 

特に、今回検討した6つの因子の中で、地下水の汲み上げはグリーンランド氷床の融解に次いで2番目に大きな影響を与えることが推定されたので、地軸移動を調べるのに絶対無視できないものとなったわけだよ!

 

これほど影響があるのは、地下水の汲み上げが多かったのはインド北西部と北米西部であったことも関係してくるよ。どちらも中緯度地域であるために、軽くなった分だけ地球の回転運動に影響を与えたことになるよ。

 

今回の研究結果は、17年間の地下水の汲み上げ量が約2兆1500億トンであり、それにより平均的な海面が6.24mm上昇した、という推定を裏付ける強力な直接証拠となったわけだよ!

 

過去の地球の水分布も研究できるかもしれない?

一応、地下水の汲み上げが与える影響が1年に数センチなのに対し、最初に述べた地球表面や内部の影響は地軸を1年に何メートルも動かすことから、これ自体が直ちに季節変動などに発展するとは研究者も考えてないよ。

 

それでも、地下水の汲み上げすぎや使いすぎは、地盤沈下や塩害などの地域的な影響をもたらすし、世界的に枯渇している淡水をめぐっての争いを招きかねないなど、地軸なんかよりもっと心配することが無数にあるよ。

 

地下水の汲み上げ量を直接測定できたという研究は、環境問題を考える際に推定によらない着実なデータとして強く主張できる、という点で影響の大きい研究だと言えるよ。

 

また、ポジティブに言うなら、地軸の移動から過去の地球環境、特に見ることが難しい大陸の水分量の変化を復元するのに使える、という別の応用例も浮かぶよ。

 

地軸の位置データは19世紀末にはすでに正確な測定が始まっているので、ここ100年間の地軸の移動から、過去の水分量変化を復元できるかもしれないという点でとても大きな手掛かりだよ!

 

ただしそのためには、水位計が未整備なせいでデータが不足し、因子として今回分析することのできなかった自然湖の影響を考えるなど、もっと研究を進める必要があるよ。

 

今回の研究は、単にちょっとだけタイトル的インパクトのある研究であるに留まらず、過去や未来の地球環境を見るための1つの手段として使える可能性を秘めているともいえるよ!

この記事が面白いと思ったら

ぜひ、バックナンバーもお読みください!
彩恵りりのニュース解説!一覧

文献情報

[原著論文]

  • Ki-Weon Seo, et.al. "Drift of Earth's Pole Confirms Groundwater Depletion as a Significant Contributor to Global Sea Level Rise 1993–2010". Geophysical Research Letters, 2023; 50 (12) e2023GL103509. DOI: 10.1029/2023GL103509

 

[参考文献]

 

脚注

[注1] 2兆1500億トン ↩︎
体積にして2150km3、琵琶湖の約80倍に相当する。

[注2] 海という巨大な水の塊が、地盤を変形させ、自らの重力で周りの水を引き寄せる効果 ↩︎
専門用語でself-attraction and loading (SAL) 効果という。より厳密に言えば、地球のジオイドからズレた水の塊、つまり平均的な重力を基準とした高さからズレた位置にある水の塊の影響を考慮する。水が多く集まった場所はその重さで地盤が凹み、重力によって水を引き寄せる傾向にある。主に潮汐を正確にモデル化する際に考慮される効果である。

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

このライターの記事一覧

彩恵りりの科学ニュース解説!の他の記事