植物由来物質でできたプラスチックのような材料「E-SCL」「E-PCL」を合成

2023.03.17

みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説は、プラスチックに代わるかもしれない新たな材料「E-SCL」と「E-PCL」に関する解説だよ!

 

最近、プラスチック製のストローに代わる材料として、紙や金属といった色々な材料のストローが提案されているけれども、これはプラスチックとは異なる難点があるよ。

 

今回開発されたE-SCLやE-PCLは、生分解性を持つのはもちろん、強度や防水がプラスチックのように優れていて、原材料や製造面でも環境負荷が少ないと、色々な点が優れているよ!

 

E-SCL&E-PCL サムネ

(ストローの画像引用元: プレスリリース)

難点の多いプラスチック代替ストロー

プラスチック製ストロー」は、プラスチックが環境にもたらす悪影響が注目されるに従って、プラスチック以外の物質に置き換えることが注目された製品の1つだよね。

 

プラスチックとその代替材料の難点

プラスチックに代わる材料で作ったストローは、様々な点で問題があるよ。それほどプラスチックは優れた材料であり、だからこそ置き換えが難しいという問題があったよ。

 

最も多く普及しているのは、環境負荷が少なく製造もしやすい紙ストローだよね?ただ、私もそうだけど、紙ストローに良い思い出を持つ人はそう多くはないと思うよ。

 

紙は水につければふやけて脆くなり、形が崩れるし、口に不快な触感を与え、時には味も悪くする原因となるよね。また、気泡が発生するので炭酸飲料には適さないという問題もあるよ。

 

紙に水をはじくコーティングを与えればある程度改善するけど、これは製造コストを上げるし、コーティング剤の材料が新たな環境負荷の原因となる恐れもあるよ。

 

次に考えられるのは金属製ストローだね。プラスチックや紙と違い、洗って何回も使えるし、紙のようにふやけないし、プラスチックよりも耐久性があるよ。

 

ところがそのイメージに反して、金属製ストローはプラスチック製よりもずっと環境負荷が高いんだよ。例えばステンレス製ストローは、プラスチック製の3.71倍も二酸化炭素排出量が高いよ!

 

これは、ステンレスの原料となる鉄やクロムなどの金属は、鉱石の採掘や製錬など、製造の各段階でかなりのエネルギーコストを必要とし、直接的にも間接的にも二酸化炭素を排出するからだよ。

 

また、鉱石の採掘はしばしば森林伐採、地形浸食、有毒物の排出など、追加の環境負荷をもたらすことから、実はあんまり良い選択肢とは言えないよ。

 

そうなってくると、プラスチックのように水に強くてある程度硬く、かつ製造や廃棄での環境負荷が少ない、生分解性な材料が注目されることになるよ。

 

例えば生分解性プラスチックとして長年知られているポリ乳酸は有力候補だよ。ただこれはコストが高い割に耐久性が低く、温かい飲み物には融けてしまうという欠点があるよ。

 

その他の物質も、どうしてもどこかしらの性能に大きな欠点があり、だからこそ今までプラスチック以外の原料が使われず、また今現在も置き換えられない、とも言えるんだよ。

 

材料単体の欠点を補って誕生した「E-SCL」と「E-PCL」

E-SCL&E-PCLの合成方法1

リグニン、ジャガイモでんぷん、ポリビニルアルコールは、それぞれが生物由来で合成コストが低い物質でできているけど、それぞれには難点があるよ。これらをクエン酸で結びつけると、優れた材料である「E-SCL」や「E-PCL」ができるよ! (ストローの画像引用元: プレスリリース)

 

仁荷大学校のDickens O. Agumba氏、Duc Hoa Pham氏、Jaehwan Kim氏の3人は、この悩みにかなり大きな解決策を提示したよ!それは、互いの材料の合わせ技だよ。

 

今回の研究で使用した材料は、前提として他の物質の製造過程で得られる入手や製造コストの低いもので、かつ環境で簡単に分解されるものを使ったよ。

 

今回の研究では、「リグニン」に「ジャガイモでんぷん」または「ポリビニルアルコール」を加え、それぞれを繋げる物質として「クエン酸」を添加したものだよ。

 

まずリグニンは、植物が骨もないのに硬くなっている理由となっている分子で、紙やバイオエタノールなど、植物由来の物質の製造過程で得られる副産物だよ。

 

リグニンは硬い物質なので、プラスチックの代替としてずっと注目されてきたけど、化学的に扱うのが難しい高分子で、水に溶けにくい性質から、製造工程に回すことが難しいという問題があるよ。

 

よって、今まではリグニンはもっぱら燃料として燃やされる運命にあるよ。そういう意味で、入手コストは非常に安いという利点があるよ。

 

ジャガイモでんぷんは文字通りジャガイモから、ポリビニルアルコールはエチレンなどから製造されるもので、どちらも低コストで環境負荷が少なく、その使用の歴史はかなり長いよ。

 

ただ、これらはどちらも水に溶けやすく、強度も高くないという欠点があり、それ単独でストローを作ってもすぐに崩れてしまうよ。

 

硬いけど水に溶けず形成もしにくいリグニンと、水に溶けやすいけど強度が低いでんぷんやポリビニルアルコール。この両者をつなげるのがクエン酸だよ。

 

クエン酸は植物由来の糖を微生物が発酵させる過程で大量に生産できるので、これも入手コストはかなり低い、という利点があるんだよ。

 

そしてクエン酸は、化学的に取り扱いの難しいリグニンを、でんぷんやポリビニルアルコールとうまく結合させてくれるという橋渡し役をしてくれるよ。

 

E-SCL&E-PCLの合成方法2

E-SCLやE-PCLは、それぞれの原料を混合し、熱をかけて乾燥するだけでできるよ! (ストローの画像引用元: 原著論文Fig2)

 

今回の研究では、リグニンとクエン酸に加えてジャガイモでんぷんでできたフィルムを「E-SCL」、でんぷんではなくポリビニルアルコールを加えてできたフィルムを「E-PCL」と名付けたよ。

 

作り方は割と簡単で、必要な原料を水と共に混ぜ、平らなガラス面に薄く広げ、熱を加えて乾燥させるよ。これにより、それぞれの分子が結合し、硬いフィルムが形成されるよ。

 

今回は代替物質によるストローなので、フィルムを円筒状に丸めることで実験を行ったよ。面白いのは、原料同士の結合が丸める過程でも使えるという点だよ。

 

完全に乾燥しきる前に、のりしろ部分でフィルムをくっつけると、接着剤もなしにフィルムがくっつくよ!これはフィルムが作られる過程と同じ化学反応が接着部で起こるからだよ。

 

E-SCLやE-PCLのスゴい性能

E-SCL&E-PCLの利点1

E-SCLやE-PCLは、熱や強度が強く、炭酸飲料もOKだよ!唯一強度が勝るリグノセルロースは、合成面に課題があるよ。 (炭酸飲料の部分の画像引用元: 原著論文Fig5)

 

さて、E-SCLやE-PCLでできたストローは、他の材料でできたストローと比べてどのような性能を持っているんだろうね?

 

例えば、いわゆるプラスチック製ストローである従来のポリプロピレンと比較すると、E-SCLは3.6倍、E-PCLは5.2倍も曲げに対する強度が強いことが分かったよ!

 

この強度は、同じくプラスチックに代わる物質として検討されている焼成セルロースリグニンや、セルロースナノファイバーよりもずっと高い値でもあるよ!

 

唯一、この系統で負けているのはリグノセルロースのみだけど、これは長い処理時間と有害な原材料を必要とする点で、E-SCLやE-PCLより難点が多い材料とも言えるよ。

 

また、ストローという役割の上では、水に対する強度は重要だよ。水や熱湯に24時間浸しても、E-SCLやE-PCLはほとんど水を吸収せず、結合部が剥がれず、炭酸飲料に対しても気泡を発生させなかったよ。

 

また、熱を加えた時の劣化が始まるのは、E-SCLでは202.3℃、E-PCLでは189.1℃であることから、熱湯でも十分に耐久性を持つことが分かるね!

 

更に、E-SCLやE-PCLは見た目が暗褐色だけど、これは見た目だけでなく、リグニンの優れた紫外線遮断を補ってくれるよ。特にUV-Bはほぼ100%を吸収してくれることから、紫外線遮断にもとても役立つよ!

 

E-SCL&E-PCLの利点2

E-SCLやE-PCLは、土の上に置かれると約2ヶ月で砕けるように分解するよ! (画像引用元: 原著論文Fig6)

 

また、最も肝心な自然での分解についても良い評価が得られたよ、対照実験としてポリプロピレン製ストローと共に、E-SCLやE-PCLで作ったストローを土の表面に置いてみたよ。

 

すると、ポリプロピレンは2ヶ月の間で変化がなかったのに対し、E-SCLやE-PCLは1ヶ月で明らかな変色が発生し、2ヶ月で破片へと分解したことが分かったよ。

 

もちろんその辺にポイ捨てはしない方がいいけども、E-SCLやE-PCLは環境に放たれても短期間で生分解することがこの実験から分かるね!

 

用途はもちろんストロー以外にも

こんな感じで、E-SCLやE-PCLは環境にやさしいストローの材料としてうってつけだけど、もちろん用途はストローという狭いものに留まらないよ。

 

水や湿気を吸わずに遮断し、曲げに対する強さがあることは、まさにプラスチックの利点と共通するところだから、例えば大量に使われている食品保存などの分野で応用される期待がすごくあるよ!

 

あるいは、優れた紫外線遮断能力は、車のボディなどの外部に晒される部材のコーティング、あるいは博物館の収蔵品など貴重な資料の保護にも役立つ性質だよ!

 

そして、単に生分解性であるだけでなく、原料や製造面でも環境に有害だったり負荷の強い材料を使用していないところが、これまでのプラスチック代替物と比べても優れている点だよ!

 

今回製造されたE-SCLやE-PCLは、そういう意味でプラスチックに代わるスゴい材料になってくれるかもしれないよ!これからが楽しみだね!

文献情報

[原著論文]

  • Dickens O. Agumba, Duc Hoa Pham & Jaehwan Kim. "Ultrastrong, Hydrostable, and Degradable Straws Derived from Microplastic-Free Thermoset Films for Sustainable Development". ACS Omega, 2023; 8 (8) 7968-7977. DOI: 10.1021/acsomega.2c07797

 

[参考文献]

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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