ローマンコンクリートは自己修復する!?ローマ帝国の建物が堅牢な理由を解明

2023.01.13

みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説は、2000年も持つローマンコンクリートの堅牢さの秘密に迫った研究だよ!

 

ローマ帝国の遺跡が現代に残っているように、その時代の建物を築いたローマンコンクリートは非常に長持ちするけど、この理由は現在でも不明だよ。

 

ところが今回の研究により、ローマンコンクリートの推定材料が変わったこと、そして自己修復コンクリートであったことが明らかになったんだよ!

ローマンコンクリートの自己修復 サムネ

 

2000年も持つローマンコンクリート!

コンクリートは現代の建築に欠かせない材料だけど、製造過程で大量の二酸化炭素を放出するという難題を抱えているよ。全世界の二酸化炭素排出量の8%を占めるとすら言われているよ!

 

コンクリート製造における二酸化炭素の放出は、セメントの原料である石灰岩などを高温で焼く過程、および材料を混合する過程でその大部分が放出されていると言われているよ。

 

そこで、コンクリートの耐久性を少しでも長くし、コンクリートの製造自体を少なくすることで、二酸化炭素の放出を抑えようとする研究が進められているよ。

 

パンテオン

パンテオンは、ローマンコンクリートが使用された建築物の代表的な存在。現在残されているものは西暦128年に建築されたものだよ。 (画像引用元: Flickr / Autor: dorfun (Public Domain) )

 

そこで注目されているのは、ローマ帝国時代に作られていた「ローマンコンクリート」だよ。長い年月を経ても、当時の建物や水道橋が使用可能なくらい状態が良いよ。

 

2000年近い年月の間、地震や海水に晒されてもなお状態を維持していることは、現代のコンクリートが状態が良くても数十年しか持たないことと比較してとてつもない堅牢さだよね!

 

ただ、ローマンコンクリートの製造はローマ帝国が滅びた後に終了したことから、正確な製造法が伝わっていないというロストテクノロジーであることが問題になるよ。

 

最も、当時のローマ人が原料や製造法を記してくれたおかげで、多くの部分は判明しているよ。ただ、細かい部分に謎があり、ローマンコンクリートの耐久性の理解を阻んでいるよ。

 

ところで、現代のコンクリートの作り方はみんな知っているかな?ローマンコンクリートの作り方も合わせて軽く説明するね。

 

現代のコンクリートは、メインとなるポルトランドセメント、強度を補強する骨材となる小石や砂利、そしてポルトランドセメントを固めるを混ぜることで作られるよ。

 

ポルトランドセメントはクリンカーに石膏を混ぜたものでできていて、クリンカーは石灰岩、粘土、珪石、酸化鉄を高温で焼いて作ったカルシウム・ケイ素・鉄などが混ざった物質[注1]だよ。

 

クリンカーは理想的には、水と反応するとケイ酸カルシウムの結晶を作るけど、大抵は消石灰 (水酸化カルシウム) も余剰に生成されてコンクリートの内部に残るよ。

 

これは大気中の二酸化炭素を吸収し、徐々に炭酸カルシウムとなって安定化するよ。この中和化と呼ばれる反応が、徐々に起こるコンクリートの劣化につながるよ。

 

現代のコンクリートは強度を上げるために鉄筋を入れているけど、中和化が起こると鉄筋が腐食し、堆積が膨張することでひび割れと強度低下につながるんだよ。

 

穴がたくさんあり、二酸化炭素は空気中にあることから、コンクリートの中和化は避けがたいもので、鉄筋コンクリートを長持ちさせる課題ともいえるんだよ。

 

一方でローマンコンクリートの場合、セメントと骨材と水を混ぜて作る点は変わらないものの、多くの部分で異なる点が存在するよ。

 

まずセメントで石膏に加えるのが消石灰という点が違うよ。これはまず、石灰岩 (炭酸カルシウム) を加熱して生石灰 (酸化カルシウム) とし、これと水を混ぜて作るものだよ。

 

また、骨材として混ぜるのは砂に加え、周辺地域で採れた火山灰や凝灰岩という違いがあるよ。ローマンコンクリートの研究では、火山灰が堅牢さのカギであると長年考えられてきたよ。

 

火山灰の粒子と生石灰が反応すると、周辺にケイ酸カルシウムの微細な層[注2]が形成されるよ。これは骨材である火山灰とセメント部分の結合を強化するよ。だから、堅朗さのカギと見られていたわけ。

 

ローマンコンクリートの生石灰塊

ローマンコンクリートを調べてみると、生石灰の小さな塊がしばしば見つかるよ。これは製造時に反応せずに残った、いわば不純物であるというのが従来の見解だったよ。 (画像引用元: プレスリリース原著論文Fig4)

 

ところが、実際のローマンコンクリートを調べてみると、ミリメートルサイズの生石灰の粒である「生石灰塊 (Lime crust)」がしばしば観察されるよ。

 

石灰岩から生石灰を作り、生石灰から消石灰を作るという反応経路からすると、生石灰塊はこの製造過程で生まれた未反応物・不純物である、というのが従来の考え方だったよ。

 

コンクリートを製造する過程は、高い粘度となる液体のかき混ぜだから、混合不十分で生き残る生石灰が残る、と推定したわけだよ。

 

生石灰塊の真の役割とは?

ところが、マサチューセッツ工科大学などの研究チームは、この従来の考え方に疑問を持ったよ。それはローマンコンクリートが何世紀にもわたって製造されたという事実からだよ。

 

つまり、何百年も製造が続けられ、改良の余地があるにも関わらず、一見粗雑な製造方法で生石灰塊が残ってしまう状態を放置している、というのはどうにも納得がいかなかったんだよ。

 

そこで研究チームは、プリヴェルヌム (現在のプリヴェルノ) の都市の壁に使われていたローマンコンクリートのサンプルを詳しく分析し、生石灰塊の存在理由を調べたよ。

 

まず、生石灰は水や二酸化炭素に対して不安定だから、表面が炭酸カルシウムの薄い殻に覆われているよ。炭酸カルシウムの結晶構造は、生成された環境によって変化することが分かっているよ。

 

生石灰塊の炭酸カルシウム殻を調べてみると、その生成温度がかなり高いことが判明したんだよ。これは従来推定されていたローマンコンクリートの製造法とは若干異なるものだよ。

 

これまで、ローマンコンクリートは消石灰を作ってから骨材や水と混合して作られているという推定だったけど、この場合、混合した時の温度はそこまで高くならないよ。

 

今回の計測結果からすると、混合時に消石灰の一部あるいは全部が生石灰として投入され、温度は周辺温度より60℃程度加熱され、局所的には200℃程度になったことを示唆しているよ。

 

ローマンコンクリートの製法

今回の研究で推定されたローマンコンクリートの製造法。従来は消石灰を火山灰および水と混合し作ると考えられてきたけど、生石灰塊の存在から、実際には消石灰の一部ないし全部が生石灰として混合されたと推定されるよ。このため、混合時には発熱反応が起きるよ。 (画像引用元: ローマンコンクリート、その他はPublic Domain (石灰岩生石灰消石灰火山灰) )

 

コンクリート製造中の発熱は、強アルカリの液体が沸騰するという危険はあるものの、利点もあるよ。まず、ローマンコンクリートの硬化が促進されるという点だよ。

 

現代のコンクリートがローマンコンクリートに取って変わられた理由の1つは、ローマンコンクリートの硬化がかなり遅いという難点があったからだよ。

 

混合時に生石灰を使うことで高温となる場合、ローマンコンクリートの硬化速度が従来の推定より速くなり、利便性が増すことを意味しているよ。

 

また高温になることによって、低温では生成しにくいケイ酸カルシウムの結晶が生じ、セメントと骨材の結合力を強化することで、全体的な強度を高めるんだよ。

 

また、生石灰塊の表面はナノメートルスケールの微細な凹凸があり、脆い上に表面積が大きいよ。これは別の利点を生み出すと研究チームは考えているよ。

 

コンクリートの劣化で一番深刻なのは亀裂だよ。亀裂は最初は目に見えないほど小さいけど、それが広がればやがてコンクリート全体の損壊につながるよ。

 

亀裂が広がる主な原因は水だよ。凍結で体積が膨張し、亀裂を広げる原因となるよ。つまり、亀裂が生じても、これを埋める手段があればそれ以上広がるリスクは小さくなるよ。

 

ローマンコンクリートの自己修復の詳細

ローマンコンクリートを混合した時、未反応で残った生石灰=酸化カルシウムは、水の作用で表面に水酸化カルシウム、次いで炭酸カルシウムの薄い殻ができる。これに亀裂が走ると容易に割れ、水との反応により亀裂を炭酸カルシウムとして埋める反応が進行するよ。また、溶け出したカルシウムイオンは火山灰の粒子と反応し、C-A-S-H (カルシウム・アルミニウム・ケイ素・水素で構成されたケイ酸カルシウムの鉱物) を生成し、結合を強化するよ。 (画像引用元: 原著論文Fig6)

 

生石灰塊の表面が脆いことは、優先的に亀裂が走ることにつながるよ。すると、炭酸カルシウム殻に覆われた生石灰塊の内部が露出し、今まで保護されていた生石灰の部分が剥き出しになるよ。

 

そこに水が入り込むと、生石灰が水に溶けると同時に反応が進み、隙間を埋めるように炭酸カルシウムが成長することになるよ。これにより、亀裂が埋まることになるよ。

 

これは、ローマンコンクリートが「自己修復コンクリート」であることを示す証拠ということになるよ!自己修復コンクリートは、まさに今開発が進められている注目の材料だよ。

 

ローマンコンクリートの自己修復の再現実験

ローマンコンクリートと同じものを作って、亀裂を生じさせる実験を行ったよ。その結果、2週間で炭酸カルシウムが成長し亀裂を埋めたよ。隙間はほとんどなく、水も漏らさないほどだよ! (画像引用元: 原著論文Fig5)

 

実際、ローマンコンクリートを再現した実験では、0.5mm幅で2つに分割したコンクリートの隙間が2週間で埋まり、水が通らなくなるほどの修復力を持つことが実証されたよ!

 

ただ、これまで作られてきた自己修復コンクリートは、様々な点で課題があるよ[注3]。ローマンコンクリートの自己修復も、水がないと進まないという点は難点だよ。

 

ただし利点として、生石灰塊は2000年経った現在でも観察可能という点があるよ。つまりローマンコンクリートは半永久的に自己修復機能を持つことを意味するんだよ!

 

また、亀裂を生めなかった部分についても、溶けだしたカルシウムイオンに富む流体が火山灰主体の骨材と反応し、ケイ酸カルシウムの結晶を作ることも合わせて分かったよ。

 

これはコンクリートが固まるときにおこる反応の再現で、これも自己修復プロセスの一部を担っていると推定されているよ。

 

ローマ人の知恵を現代に生かす

今回の研究により、生石灰塊がローマンコンクリートの堅牢さのカギであると分かったことは、今後コンクリートを長持ちさせる研究で行かされる可能性があるよ。

 

ローマンコンクリートには硬化が遅いことや、同じ形で比べると強度が低いなど、現代のコンクリートと比べての難点が存在することも確かだよ。

 

また、海水に触れる場で使われるローマンコンクリートの製法は、それ以外で使われるローマンコンクリートと製法が違うらしいこともわかっているけど、詳細は未だに明らかになっていないよ。

 

ただ、2000年前のローマ人の知恵から生まれたローマンコンクリート、現代の私たちが模倣し、改良する余地がたくさんあるという点で、とても魅力的な建材だよ!

 

ローマンコンクリートに関する研究が進むことで、次世代のコンクリートはずっと長持ちになるかもしれないよ!

 

文献情報

[原著論文]

  • Linda M. Seymour, Janille Maragh, Paolo Sabatini, Michel Di Tommaso, James C. Weaver & Admir Masic. "Hot mixing: Mechanistic insights into the durability of ancient Roman concrete". Science Advances, 2023; 9, 1. DOI: 10.1126/sciadv.add1602

 

[参考文献]

注釈

[注1] クリンカーの組成 ↩︎
クリンカーは概ねカルシウムのケイ酸塩あるいはアルミノケイ酸塩、および酸化鉄の混合物であり、化学量論的には酸化カルシウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄の混合物としてあらわされる。ただし今回は簡単のため、また物質としての生石灰などとの混同を避けるため、化学量論的な説明を省いた。

[注2] ケイ酸カルシウムの微細な層 ↩︎
様々な鉱物の混ざりである火山灰や凝灰岩に由来するため、組成は一定しない。これはポゾラン反応と呼ばれ、ケイ酸カルシウムには大抵水和物が含まれている。トベルモリー石 (海水との反応で生じる) やエトリング石 (硫黄を含んでいる) のような組成の鉱物は、特にローマンコンクリートの強度に関わっていると言われており、正確な配合の研究が進められている。

[注3] 自己修復コンクリートの課題 ↩︎
亀裂を埋める方法の違いが自己修復コンクリートの種類を分けている。反応の発生に水分が必要な場合、混合する物質が高価であったりリサイクルに適さない物質である場合、強度を低下させる問題が解決できていない場合など、さまざまである。

 

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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