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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回のお話は、ファージ核と呼ばれるウイルスがDNAを保護する "盾" を構成する、新種のタンパク質を特定したというニュースだよ。
一部のウイルスは、細菌細胞の中でファージ核と呼ばれる独特の殻を形成するんだけど、これの詳しい仕組みはまだよくわかっていなかったよ。
今回は、ファージ核がチマリンと呼ばれるタンパク質でできている事、その構造が独特であったというのを解明した研究だよ!
CONTENTS
自然界には様々なウイルスがいて、様々な生き物に感染するよね。それは私たちのような目に見える大きさの生物の事もあれば、細菌が感染相手なウイルスもいるよ。
ウイルスに感染した細菌は、最終的に細胞が壊れ溶けてしまう事から、細菌 (Bacteria) を "食べる (φαγεῖν)" ように見える事からバクテリオファージ、あるいは縮めてファージと呼ばれるよ。
もちろん、細菌もそのまま感染を黙って見ている訳ではなく、感染してきたファージに対抗するよ。と言っても、それは例えば私たちが免疫系で対抗するのとはだいぶ違うよ。
ファージは感染した時、自身のDNAを細菌の細胞内に送り込み、増殖システムを乗っ取ろうとするよ。細菌は感染防御に侵入してきたファージのDNAを攻撃するよ。
攻撃は制限修飾系[注1]と呼ばれる酵素によるものや、CRISPR–Cas[注2]というシステムによるものがあるけど、いずれもDNAを切断して機能しなくなるようにするのを目的としているよ。
ただし、ファージもその細菌の対抗システムに対抗するシステムを構築し、 "軍拡競争" [注3]と比喩されるシステム同士の戦いがあるよ。
(画像引用元: University of California San Diego)
2017年に、そのような軍拡競争に新たなシステムが見つかったよ。このシステムはジャンボファージと呼ばれる、ファージの中でも特別に大きなファージに見つかったよ。
その戦略はかなり驚きだよ。ジャンボファージは細菌に感染し、DNAを送り込むところまでは同じだけど、その後、細菌の中にファージ核と呼ばれるタンパク質の殻を作るんだよ。
ファージ核はタンパク質でできた殻であり、中にジャンボファージのDNAが入っているよ。そしてファージ核は制限修飾系やCRISPR-Casと言った感染対抗システムを通さないよ!
ファージ核は、まるで真核生物[注4]の細胞がDNAを収容している細胞核のようにも思える驚きのシステムで、細菌には細胞核が存在しない点から見ても非常に興味深いよ!
ただ、このファージ核のシステムは2017年に発見されたばかりで、その機能が2019年から少しずつ解明されてきた、という感じだよ。
加えて、ジャンボファージもまだ見つかったばかりであり、分類や名前すら十分についてないくらいの、まだまだ研究が進んでいないよ。
ファージ核に関する大きな謎の1つは、いったいどんなタンパク質でできているかだよ。PhuZやRecAといったタンパク質がファージ核で発見されているけど、これは構造とは無関係みたいだよ。
カリフォルニア大学サンディエゴ校などの研究チームは、このファージ核がいったい何でできているのか、という謎の解明に取り組んだよ。
実験に使った細菌はシュードモナス・クロロラフィス200-B (Pseudomonas chlororaphis 200-B)、そしてジャンボファージは201φ2-1という名前がついているウイルスだよ。
201φ2-1に感染したシュードモナス・クロロラフィスは、大体感染後90分で細胞が壊れて死んでしまうよ。今回は、感染後の50分から60分くらいの状態を調べたよ。
クライオ電子線トモグラフィーという特殊な電子顕微鏡での観察手段を使って、201φ2-1が作ったファージ核の詳細な構造や、何でできているのかを調べたよ。
その結果、ファージ核は厚さが約6nmのタンパク質でできていて、リボソーム[注5]は存在しなかったよ。更によく調べると、ファージ核の構成タンパク質はたった1種類だと分かったよ!
研究チームは、この新発見のタンパク質を、古代アステカの戦士が持つ盾チマリ (Chīmalli) に因んで、このタンパク質をチマリン (Chimallin / ChmA) と名付けたよ!
(画像引用元: 原著論文 Fig 1, 2, 5, University of California San Diego)
チマリンは631個のアミノ酸がつながった分子量69.5kDaのタンパク質だよ。これは集合すると約6×6×7.5nmの塊となるよ。そしてこの繋がり方が独特だよ。
チマリンが4個で1つのセットになると、厚さ約6nmで一辺が約11.5nmの正方形の "盾" ができるよ。この複合体がひたすら並んだものがファージ核となるんだよ。
チマリンは隙間の少ないファージ核の壁として機能し、制限修飾系やCRISPR-Casと言ったDNA破壊システムを通さなくなってしまうよ。
これはまるで、真核生物の細胞核が、ほとんどのタンパク質を通さないシステムとよく似ていて、収斂進化[注6]の1つの状況を観ているようにも思えるよ。
また、チマリンは少しカールしたような構造を持っていて、これが方向を変えて4つ並ぶことで正方形の複合体を作るという、単純だけど洗練されたシステムを持っているよ。
実際、人工的な培養環境でチマリンを集合させてみると、1つの面に4個、6面で24個が集合したチマリンのサイコロができるよ。
たった1種類のチマリンがファージ核という大きな構造を作るのは大変と思えるかもしれないけど、実際には化学的にかなり洗練されているようだね!
(画像引用元: University of California San Diego)
そしてチマリンが独特なのは、作る基本形が正方形という点だよ。これは自然界には結構少ない形という点がユニークだよ。
ハチの巣のように、自然界で見かける壁のシステムは、基本形を正六角形か、あるいは正六角形を更に分けた正三角形である場合がほとんどだよ。
これは、最小の資源で最大限の強さを生み出したり、平面を隙間なく埋められる形であるからで、実際に正六角形が並んだハニカム構造は工学的に応用されているよ。
これに対して201φ2-1が作ったチマリンは正方形が基本形だよ。確かに平面を埋められる形ではあるけど、さっきのような理由で正六角形や正三角形が優先される結果、あまり見かけない形だよ。
どうしてチマリンは正方形を基本形としたのか、というのはこれからの研究で明らかにしたい謎の1つでもあるよ!
今回の研究では、ファージ核という独特の構造が、チマリンと呼ばれる新種のタンパク質で構成されているという、とても興味深い結果が現れたよ。
ただ、チマリンを生み出す具体的なシステムや、どのようにチマリンを制御してファージ核に仕上げるのか、と言った多くの点はまだ未解明だよ。
また、細胞核のない細菌の中で、細胞ですらないウイルスが、まるで細胞核を真似たかのようなシステムを作る事は非常に興味深く、進化の過程を観るのも面白い事が分かりそうだよ!
ファージと細菌の戦いは、例えば有益な細菌を保護するためとか、有害な細菌を抗生物質に頼らずに除去するなど、私たちの身近な問題にも関わってくるよ。
ジャンボファージが細菌の感染排除に抵抗するシステムを解明する事は、こういった細菌やファージの有用な利用法の開発にも繋がるか、とても大事な研究だよ!
[注1] 制限修飾系
制限酵素と呼ばれるタンパク質を使い、ウイルスのDNAを切断して機能を失わせる方法だよ。基本的には全てのDNAを切断するようにできているけど、自分自身のDNAを誤って切断しないようにする機能も合わせて持っているよ。
[注2] CRISPR-Cas
制限酵素と違い、非常に短いゲノム配列で対応するシステムだよ。この配列がある領域で、ウイルスのDNAの特定の部位を切断して機能を失わせるよ。近年この機能を応用し、狙った部位のDNAを切断した上、指定のゲノム配列を埋め込むというゲノム編集技術が開発されたよ。
[注3] "軍拡競争"
いくつかのウイルスは、CRISPR-CasによるDNA切断を回避する「アンチCRISPR」と呼ばれるシステムを回避したよ。ところが細菌もこれに対抗し、アンチCRISPRを見抜いて切断する「アンチ-アンチCRISPR」と呼ばれるシステムを回避したよ。 "軍拡競争" は、このようなウイルスと細菌のいたちごっこの様を比喩した言葉だよ。
[注4] 真核生物
細胞内にDNAを収めた細胞核を持つ生物を真核生物と呼ぶよ。ヒトを初め、目に見える大きさの生物は大体真核生物と言えるよ。一方で細菌には細胞核が無いため、これは原核生物と呼ばれるよ。
[注5] リボソーム
数本のRNAと50種類以上のタンパク質で構成された細胞内小器官で、真核生物では細胞核の外側に見られるよ。
[注6] 収斂進化
全く無関係な生物同士が、進化の過程で同じような機能を獲得する事。鳥類とコウモリはその一例と言えるよ。
[原著論文]
[参考文献]