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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回のお話は、宇宙空間で見つかるかもしれないイオン化したフラーレンのお話だよ。
宇宙で見つかる最も複雑な分子はフラーレンだよ。今回は、実際に存在するかもしれない、高度にイオン化したフラーレンを計算科学的に研究したよ。
すると、これまで謎だったあるデータについて、説明がつくかもしれない、という面白い結果が得られたんだよ!それは何かな、と言うのを解説するね!
CONTENTS
炭素は原子の繋がり方によって、黒鉛、ダイヤモンド、カーボンナノチューブなど、色んな形態を取るよね。中でも特徴的なのがフラーレンだよ。
フラーレンは炭素原子が球体を構成した分子だよ。フラーレンにはいくつか種類があるけど[注1]、最も有名なのがバックミンスターフラーレンとも呼ばれるC60だね。
C60は炭素原子60個で構成された、最も一般的なフラーレンだよ。
C60は、炭素原子が60個繋がった球体分子で、五角形と六角形の環の組み合わせで構成された、ちょうどサッカーボールと同じ構造を持っているよ。
C60は非常に対称性が高く構造も丈夫なので、天然でも見つかっているよ。地球でもシュンガ石[注2]という炭素の塊の中に見つかっている他、宇宙空間でも見つかっているよ。
C60は、別のフラーレンであるC70の次に原子数・質量数共に大きな星間分子で、これの次に小さな分子は原子数19・質量数153のシアノナフタレンと大きく下がるよ!
ところで、宇宙空間は高真空・超低温・高紫外線の環境だから、分子にとっては過酷な環境であるとともに、極端な化学の実験室であるとも言えるよ。
高エネルギーの紫外線は分子をイオン化[注3]したり、時にはバラバラにしてしまうけど、C60は頑丈な分子なので、イオン化はされても、分解されずにそのまま残ると考えられるよ。
また、空気中では分子に満ちていて、こういったイオンは不安定ですぐ中性化されるけど、物質に乏しい宇宙空間では、めったに他の分子と出会わず、中性化されにくいよ。
だから、C60は、イオン化してプラスの電気を帯びた炭素原子の数が増え、それらが電気的に反発しバラバラになるまで、炭素原子の数だけ何段階もイオン化される可能性があるよ。
イオン化と言うのは、宇宙空間に存在する分子を調べる時にとても大事な要素だよ。分子はその分子固有の波長の赤外線[注4]を放出するんだけど、これが重要だよ。
分子に固有の波長の赤外線を捉えられれば、そこにある分子の組成を推定する事が可能だけど、ただ波長が似ている分子があると、重なってしまってどれがどれだか分からなくなるよ。
イオン化された分子があると、この赤外線波長がずれてくるので、区別できる可能性があるよ。イオン化された分子があるなら、中性の分子もありそうだと類推できるからね。
C60の場合、イオン化の各段数に応じたバージョンがたくさんあるから、それだけ様々な赤外線波長を占めている可能性があるんだよ。
香港大学などの研究チームは、様々な段階までイオン化されたC60から放出される赤外線の波長に焦点を当てて研究したよ。
と言うのは、宇宙から観測される赤外線の中には、その正体が不明な未確認赤外線放射 (Unidentified Infrared Emmision) が存在していて、それの正体の一部がC60ではないかと踏んだんだよ。
各段階のイオン化されたC60は、中性のC60とは異なる赤外線を放出するはずで、そのいくつかは他の分子と区別できる可能性があるし、未確認赤外線放射の正体である可能性もあるよ。
未確認赤外線放射は、かなり複雑な炭化水素分子が正体かもしれないけれど、だとしても候補は無数にあり、観測誤差も含めるとその正体を確定させるのは困難だよ。
今回の論文ではまず、前年の研究を振り返ったよ。この研究では、C60は自分自身の電気的反発で崩壊するまでに、最大でC6026+までイオン化できる事を計算科学的に突き止めたよ。
宇宙で実際に発見されているイオン化されたC60はC60+[注5]だけで、それと比べると25段階もイオン化が進んでいるけど、これも宇宙空間では可能だと突き止めたよ。
例えば、誕生したばかりの原始星や、軽い恒星の最期に生成される白色矮星からは強力な紫外線が放出され、C60をC6016+までイオン化する事が可能だと推定したよ。
これが更に高エネルギーで、X線が放出されているような環境の場合、限界値であるC6026+まで到達する事も可能だと理論的に示したんだよ。
イオン化したC60の赤外線波長は、中性のC60と比べて大きくずれている事から、観測で見つかりやすいかもしれないよ! (画像引用元: 原著論文Fig10)
前年の研究で、宇宙には最高でC6026+まであり得る、と分かったところで、今回の論文では別の研究を行ったよ。
その内容は、高度にイオン化されたC60がある場合、どういった赤外線放射があるのかを、第一原理量子化学計算と呼ばれる計算科学的な手法で推定した、という者だよ。
その結果、面白い事が分かったんだよ。いくつかのイオン化されたC60は、11.21μm、16.40μm、20μmから21μmの波長の赤外線を放出すると判明したよ。
これは、未確認赤外線放射として見つかっている波長のいくつかと一致しているから、正体がイオン化されたC60である事を示唆しているんだよ!
これらの波長の未確認赤外線放射は、中性のC60が存在している事が分かっている6つの天体からも見つかるから、これはかなり有力な候補だよ!
また、C60+からC606+までの比較的低度にイオン化されたC60は、他の炭化水素分子が放つ6.2μmの波長から外れた位置に固有の波長を持つと分かった事から、実際に観測できる可能性があるよ!
更に、いくつかの高度にイオン化されたC60は、中性のC60が放つ17.4μmと18.9μmとよく似た波長の赤外線を放つ事から、C60全体の発見を手助けしてくれるかもしれないと分かったよ。
大きな分子であるC60が宇宙でどのように生成されるのか、分解するとどんな分子ができるのかは全くの謎。だからこそこれからの研究が楽しみだよ!
これらの結果は、まだ観測的に確かめられたわけじゃないけど、既に候補があるように、これからチェックする事で正しいかどうかを判断できるようになるはずだよ。
C60は観ての通り複雑な分子であると共に、水素を全く含んでいないという点で、どのようにして水素を何個か持っている炭化水素から合成されたのか、は興味深い質問だよ。
逆に、C60が分解されれば、多くの炭素を含む複雑な炭化水素分子ができるかもしれないから、宇宙では珍しい複雑な分子はC60から生まれたのかもしれないよ。
そして、C60は内部の空洞に別の原子を入れられる事も合わせると、複雑な分子の合成にC60が関わっている可能性は大いにあるんだよ!
イオン化されたC60が存在する場所と量が分かれば、宇宙空間で起こる複雑な化学反応に対する理解が進んで、生命の素になったかもしれない分子の起源に迫る事ができるかもしれないよ!
つまりこの研究は、巡り巡っては私たちや地球の生命がどのように誕生したのか、宇宙からの有機分子はどの程度関与しているのか、と言う疑問の答えに近づくかもしれないよ!
[注1] フラーレンの種類
構造が安定している最小の炭素数のフラーレンがC60であり、最初に発見されたフラーレンでもあるよ。次に一般的なのはC70で、C60と共に宇宙空間で見つかっているよ。それより大きなフラーレンは、C72、C76、C84、C180、C240、C540などという巨大なものが合成されているよ。逆にこれより小さなものとして最小でC20というのも合成されているけど、小さいフラーレンは不安定だよ。
[注2] シュンガ石
ロシアのシュンガ村で採れるガラス状の炭素の塊だよ。わずかながらC60が含まれている事が確認されているよ。
[注3] イオン化
普通の分子は、原子の外側にあり、マイナスの電気を帯びている電子の数と、原子の中心にあり、プラスの電気を帯びている陽子の数が同じで、電気的には中性だよ。外部からエネルギーを受けるなどして電子が弾かれると、電子が減った分だけ分子全体がプラスの電気を帯びた状態になるよ。
[注4] 分子固有の波長の赤外線
分子はその構造、含まれる元素の種類、イオン化しているかどうかの違いを反映し、固有の波長の電磁波を放出、吸収、あるいは反射するよ。今回の研究では赤外線の領域で、その波長からC60のイオン化のレベルを測れないか、という研究だよ。
[注5] C60+
ここでの右上のプラス付き数字 (1は省略) は、イオン化の度合いを表すよ。C60+は電子1個が飛び出してプラスの方向に1だけ電気を帯びた方向にイオン化している事を表しているよ。今回の研究では最高でC6026+、つまり電子が26個飛び出したものまでが存在すると仮定しているよ。ちなみに中性のC60では数字が省略されているけど、あえて書くならC600となるよ。
[原著論文]
[参考文献]