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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回のお話は、冬眠前後で極端にミトコンドリアを増減させる昆虫のお話だよ!
冬眠時にはなるべくエネルギーを節約したいから、ミトコンドリアを減らす事自体は知られていたけど、今回調べたコロラドハムシは非常に極端だよ!
そしてこの研究は、ただスゴい昆虫がいる事に留まらず、もしかするとミトコンドリア関連の病気の人々を救う道筋になるかもしれないよ!
CONTENTS
人間のような細胞に核を持つ真核生物には、細胞の中にミトコンドリアと呼ばれる細胞内小器官[注1]が存在するよ。
ミトコンドリアの機能の1つとして、細胞がエネルギー源として使うATP[注2]という分子を合成する事ができるよ。
ATPは細胞が利用可能なエネルギー源で、色んな所で使われるけど、例えばそれは、筋肉を縮める時のような状況で使われるんだよ。
逆に筋肉をあまり使わないような状況、例えば宇宙飛行士が宇宙に長期滞在している時には、無重量状態で身体を支える必要がないため、ミトコンドリアはあまり必要なくなるよ。
この時、ミトコンドリア自体が消費するエネルギーを節約するために、身体の中ではマイトファジー[注3]と呼ばれる仕組みで、ミトコンドリアを分解する作用が働くよ。
宇宙飛行士が運動する理由は、筋肉をあまり使わない事から筋肉量が減る、というだけじゃなくて、マイトファジーで減ったミトコンドリアを増やすための刺激を与える意味もあるんだよ。
さて、人間が宇宙で無重量状態を経験するような、長期間筋肉を使わないという状況は、他の生物にも時々見られるよ。それは冬眠と呼ばれるよ。
寒くて餌が乏しくなる冬を過ごすために、色んな生物が冬眠をするよ。冬眠を無事生き残るには、秋までに貯えた脂肪などで飲まず食わずの期間を過ごさないといけないよ。
冬眠をする生物は、少しでも生き残る確率を上げるために、代謝量を低くして消費エネルギーを少なくするよ。この中にはマイトファジーも含まれるよ。
過去の研究から、多くの冬眠する動物は、冬に代謝量を低くしており、細胞内のミトコンドリアをマイトファジーで減らしている事が観察されているよ。
コロラドハムシは、ジャガイモなどの葉を食害する事から、一般的には害虫として知られているよ。
(画像引用元: Western University, Jackie Lebenzon撮影)
ウェスタン大学の研究チームは、動物の冬眠とミトコンドリアの関係に関する研究を行っている中で、面白い事例を発見したんだよ。
研究対象としたのはコロラドハムシ (Leptinotarsa decemlineata) と呼ばれる、ハムシ科に属する、体長12mmくらいの丸っこい形の昆虫だよ。
英語名をColorado potato beetleと言うように、ジャガイモの葉を食害する昆虫だよ。名前にコロラドと付くけど、元々の生息地は南米で、北米や欧州では外来種だよ。
コロラドハムシはジャガイモや、それに近いトマトやナスなども食べるけど、特にジャガイモに対する被害は深刻で、定着していない地ではとても危険視されている害虫の1つでもあるよ。
さて、コロラドハムシは越冬する昆虫、つまり冬眠をする昆虫だから、他の動物と同じように、ミトコンドリアを減らして代謝量を低くしている、と推定されたよ。
そこで、冬眠状態のコロラドハムシの細胞の中で、翅を動かすのに必要な飛翔筋に含まれるミトコンドリアの代謝量を測定する事にしたよ。
冬眠中は動かないけど、特に不要なのが飛翔筋と考えられるから、冬眠による代謝の低下をよく調べる事ができると考えられたからだよ。
冬眠前のコロラドハムシからはミトコンドリアがほとんど見つからず、当初は実験手法を間違えたと疑ったくらいだよ。
(画像引用元: Western University, Brent Sinclair撮影)
ところが実験をしてみると、予想外な結果に困惑したよ。飛翔筋におけるミトコンドリアの代謝量はほぼゼロだったんだよ!
あまりにも少なすぎるので、最初は計測機器の故障か、筋細胞を採集するときに誤ってダメージを与えた可能性を検討したんだけど、検証の結果そうではないと分かったよ。
最終的に電子顕微鏡で筋細胞を観察したところ、細胞内のミトコンドリアがほぼ全て無くなっていたと分かり、とても驚いたわけ!
冬眠を通じて、コロラドハムシは代謝率を90%も下げる事が観察されていたけど、今回の研究の結果、代謝率の低下と飛翔筋のミトコンドリアが失われるのと一致する事が分かったよ。
コロラドハムシの冬眠前後に働く遺伝子を調べる事で、ミトコンドリアを極端に減らしたり、ミトコンドリアを刺激なしに増やす機構が判明したよ!
(画像引用元: Western University, Brent Sinclair撮影)
遺伝子の発現を調べてみると、冬眠前にはParkinとATG5という、マイトファジーに関連すると分かっている遺伝子が働いている事が分かったよ。
そこでParkinの遺伝子をノックアウト[注4]してみると、ミトコンドリアの破壊が抑えられ、代謝の抑制がある程度減少したよ。
更に興味深い事に、冬眠から目覚める時には、特に動く事もないのに、ミトコンドリアの量が回復している事が分かったんだよ!
これまでの動物の観察では、病気などの理由でマイトファジーが暴走し、ミトコンドリアが減って回復しない、というのは観察されていたから、これは驚異の回復力だよ!
調べてみると、冬眠明け直前のコロラドハムシはマイトファジーを逆転させ、ミトコンドリアを増やす遺伝子であるPGC1αとNRF1が活性化しているのを突き止めたよ!
更に、このミトコンドリアを増やす生理反応は、冬眠が終わるのを見越して働き、外部刺激なしに発現するとも分かったんだよ!
今回の研究では、あくまでもコロラドハムシを対象に研究をしたから、他の越冬昆虫や冬眠する動物でも同じことが働いているかは不明だよ。
もしかするとミトコンドリア再生能力は昆虫で一般的かもしれないし、逆にコロラドハムシ特有の非常に珍しい能力かもしれないよ。
でも、このミトコンドリアを刺激なしに増やすという生理反応は非常に興味深くて、深掘りすると更に色々分かるかもしれないよ!
さっき少し述べたように、ミトコンドリアが異常に減ってしまう病気は、ミトコンドリアを再生しない事から、とても重篤になるよ。
コロラドハムシのミトコンドリア再生能力が判明すれば、このようなミトコンドリア関連の病気に苦しんでいる人を治療する方法や薬が開発されるかもしれないよ!
コロラドハムシは農業にとっては非常に危険な存在だけど、もしかするとミトコンドリア関連の病気に苦しんでいる人にとっては救世主となるかもしれないんだよ!
何の研究が世の中のためになるのか予測がつかない、だから一見役に立ちそうにない研究も大切にし、生物多様性はしっかり守っていくのが肝心なのかもしれないね。
細胞の中で明確に役割を持った小さな器官のこと。オルガネラとも。ミトコンドリアを初め、細胞核、ゴルジ体、葉緑素などがある。
[注2] ATP
アデノシン三リン酸のこと。細胞の様々なエネルギー源として利用される分子で、その代表例が筋肉の収縮に使われる。
[注3] マイトファジー
細胞内のタンパク質を分解する機構であるオートファジーのうち、ミトコンドリアを分解する機構を指す。通常はATPを生産しなくなった老化したミトコンドリアを分解するが、状況によっては正常なミトコンドリアも分解できる。
[注4] ノックアウト
特定の遺伝子を働かせないように遺伝子操作すること。機能を調べたい遺伝子が働かない状況を人工的に生み出し、役割などを調べる。
[原著論文]
[参考文献]