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皆さん、こんにちは!フリーランスの俳優・サイエンスコミュニケーターの佐伯恵太です。
今回は、記念すべき一人目のゲスト、マンボウ博士こと澤井悦郎先生と一緒にお届けいたします!
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この連載企画では、フリーランスとして活動している俳優・サイエンスコミュニケーターの佐伯恵太が、「独立系研究者」からフリーランスとしての生き方を学び、皆さまにシェアします!
◎佐伯恵太プロフィール▶︎https://keitasaiki.info/official
◎twitter▶︎https://twitter.com/Keita_Saiki_
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CONTENTS
澤井悦郎 / マンボウ研究者
広島大学大学院生物圏科学研究科 博士課程後期修了
博士(農学)/ マンボウなんでも博物館主
著書:『マンボウのひみつ』『マンボウは上を向いてねむるのか』
◎twitter
https://twitter.com/manboumuseum
マンボウ博士から、一体どんなフリーランス処世術が学べるのでしょうか!?
というわけで取材当日。マンボウ博士オススメの場所があるとのこと。指定された集合場所でお待ちしていると......
澤井:こんにちは~。早速ですけど、行きましょうか!
佐伯:え・・動物園で取材ですか??
澤井:座れるところもありますし、動物も見られて一石二鳥じゃないですか?
(そうかもしれないけど、その発想は無かった・・)
こうして、マンボウ博士の上野動物園でのインタビューを敢行したのでした。
上野動物園で撮影したブラッザグエノン。「世界で最も美しいサル」とも言われています
佐伯:では早速ですが、先生の研究内容と、独立系研究者になるまでの経緯を教えていただけますか?
澤井:広島大学で博士号を取得して、その後一年間同大学のポスドクを経て、フリーランスになりました。
現在はマンボウに関する研究を行いながら「マンボウなんでも博物館」というネット上の博物館の館主として、マンボウ類に関する様々な情報の収集や蓄積、発信を行っています。フリーランスというと聞こえが良いんですけど......実際無職なんですよね。
佐伯:えっと、この連載の先行きが不安になりました......
澤井:ははは(笑) もちろん、あくまでも私の場合です。フリーになってマンボウ研究以外の仕事をしていた時期もありました。私はマンボウが大好きで、とにかくマンボウ研究ができる道を選んだ、ということです。
動物園でマンボウ(干物)を取り出し解説する澤井先生
つまり・・独立系研究者になったのは理屈ではなく・・マンボウ愛!
佐伯:マンボウへのただならぬ愛を感じます!マンボウ研究が自分の使命だという想いもあるのでしょうか?
澤井:そうですね。というのも、マンボウはまだまだ基礎的な部分もわかっていないことが多いんです。
例えば、マンボウ科は現在5種が見つかっているのですが、そのうち「カクレマンボウ」と「ウシマンボウ」の和名は、私が名付けました。
佐伯:それってマンボウ研究への凄まじい貢献ですよね!?「うちで一生マンボウを研究してください!」っていうくらいのオファーがあっても良いのにと思ってしまいます......
澤井:まぁそうなんですが、残念なことに生物系は社会的な需要が少ないんです。例えばここ、「動物園」や水族館など以外で、生物の研究をやっている企業・・と聞かれてパッと思い浮かぶところはないと思います。
一方、フリーは自由に好きなだけ研究できる良さがあります。
実は、マンボウ研究に関連して、世界最重量硬骨魚を決定する調査をかれこれ14年ほど続けてきたのですが、最近ようやく論文として発表することができました!世界最重量硬骨魚はウシマンボウでした。
佐伯:ものすごく大きく変わりましたね。
今までマンボウの分類が正しくわかっていなかったから、重さの記録に関しても、種が混ざって記載されていたのでしょうか?
澤井:そうですね。種の混同と言えば他にも良くないことがあって、マンボウは現在IUCNレッドリストで絶滅危惧種に指定されているのですが、この発表があった2015年当時、カクレマンボウやウシマンボウはマンボウと混同されていまして、純粋なマンボウのデータだけで示された判断ではなかったのです。現在、私はマンボウ類のIUCNレッドリストの評価者もやっているので、今年進展した評価が発表されると思います。
実はカクレマンボウが絶滅寸前の数まで減っていた、なんてこともあるかもしれないわけですね。まさに、マンボウ界の救世主です!
佐伯:研究を続けていく上で、収入を確保することはとても大切だと思います。澤井先生の場合はどのような収入源があるのでしょうか?
澤井:月額制の支援サイト「ファンティア」で、マンボウに関するコンテンツを発信しているのが主な収入源です。イラストレーターやコスプレイヤーなどのクリエイターが主に利用しているサイトなのですが、"別に研究者がやってもいいだろう"と思ってやってみています。
月額課金型は安定した収入になるのがメリットですが、まだまだ有料会員は少なく、試行錯誤しているところです。
あとはテレビや講演などの出演料、出版した本の印税、他には、同人誌やグッズを作ってオンライン販売したりもしています。
マンボウパーカー、マンボウマグカップ、マンボウ(まん防)トート
佐伯:どれも素敵です!研究もしながらのグッズ制作は、イラストレーターさんとのやりとりだったり、色々と大変ではないでしょうか?
澤井:イラストレーター......グッズのイラストのことですか?これは全部自分で描いています。
佐伯:え、そうなんですか!?それすごいですよ!
澤井:研究成果を伝える上で、普段からマンボウのイラストを描いたりしていたので、特にすごいとは意識してなかったですね。私が参加しているコミケや博物ふぇすてぃばるなどは、それこそすごいクリエイターさんの巣窟みたいな場所なので、行ってみると面白いと思いますよ。
マンボウ博士 is クリエイター でした。
佐伯:グッズもさることながら、マンボウ博士をレンタルしてマンボウの知識を独り占めできるという「レンタル博士」という活動もやっているのだとか。その内容も、気になっています!
澤井:最近、レンタル彼氏だったりレンタル◯◯というのが流行っていて、研究成果がtwitterでバズったことがきっかけで"レンタル博士"の依頼を初めていただき、それから計5件依頼をやりました。
皆さんとても勉強熱心で、マンボウの生態や都市伝説の真偽について質問攻めにあったり、一緒に水族館に行って解説したりもしました。私の知識や研究成果で目の前の人が喜んでくれるのはとても嬉しいです。
佐伯:お仕事と研究のアウトリーチを兼ねた活動、素晴らしいですね!今までの依頼以外にも頼めることはあるのですか?
澤井:コロナ禍でオンラインに皆さん慣れてきたと思うので、オンラインで好きなだけ質問していただくというプランもいいかもしれませんね。私が調査に行く時なら調査についてきていただくこともできるかもしれません。
佐伯:色んな可能性がありますね!僕もやってみようかなぁ、レンタル俳優。笑
澤井:それ良いじゃないですか!依頼主さんとドラマを全話語り尽くすとか、映画を一緒に観た後に俳優目線で解説するとか、演技指導じゃなくて、逆に佐伯さんが依頼主さんに指定された演技をするとかも面白そうですね!
佐伯:(しまった!これは完全にやる流れに......)やります!やってみます!
※研究者の前で冗談を言うのは気をつけましょう
佐伯:お話を聞けば聞くほど澤井先生の研究を応援したくなりました!最後に先生の夢、これからの目標を教えていただけますか?
澤井:マンボウ研究といっても、分類学、形態学、歴史学、生物地理学、民俗学、行動学、生態学など様々な分野がありますし、一生研究テーマは尽きません。地味な基礎固めをしっかりして、マンボウ類の知見を広げていきたいですね。
私が働いていた時の話ですが、大学の先生を退職された方が「30年前のデータを使って論文書かなきゃ!データ溜めすぎて生きてるうちに書ききれない!」と言っていたことがすごく印象に残っていて。・・・コロナ禍でも強く思いましたが、人間いつ死ぬかわかりません。寿命とのせめぎ合いになる前に、早いうちから論文化に着手して、残せるデータは残して未来につなぎたいですね。自分で取ったデータは自分にしかわからないので、それが論文にならないまま消えていったらもったいないじゃないですか。
マンボウの次に鳥が好きなマンボウ博士
そのためにも、できるだけ若いうちに拠点となるマンボウの博物館のようなお店を作りたいと考えています。マンボウの標本や資料などの学術的なものだけではなくて、マンボウのグッズが買えて、漫画やアニメも観られるようにしたいです。マンボウだけを扱ったお店は世界的にもまだないですし、マンボウのことを好きになってもらうきっかけになったり、もっと気軽にマンボウを知れる場所になれたら嬉しいです。
佐伯:マンボウなんでも博物館がリアル博物館(類似施設)になるわけですね。マンボウ研究者やマンボウ好きの集合場所になったらとても素敵ですね!
澤井:それで安定した収入が得られれば、真の意味で研究に集中できますね。最終的には、今よりもっとマンボウまみれの生活を送ることが夢であり理想です。個人でも企業でも依頼や支援、コラボ大募集中です!
佐伯:澤井先生、たくさんお話いただき、ありがとうございました!!
澤井:こちらこそ。ありがとうございました。
これからもマンボウ研究、頑張ります。
マンボウについて語る時は終始笑顔のマンボウ博士。仕事に情熱を注ぎ、様々な困難にも立ち向かうための力の源は、好きという気持ちなのだということを、改めて感じました。
一方、マンボウ博士の様々なチャレンジに目を向けると、同人活動の祭典であるコミケにてマンボウの同人誌を販売、コスプレイヤーが利用するオンラインプラットフォームでマンボウのコンテンツを発信、またレンタル彼氏から着想を得てレンタル博士を始めるなど、広くアンテナを張りつつ常識に縛られずにチャレンジを続けるイノベーターとしての側面も垣間見えます。
今年4月から「海とくらしの史料館」の特任マンボウ研究員として任命されていますが、肩書きだけで"無職"に変わりはないそうで、厳しいフリー研究者の現状を赤裸々に語って頂きました。世界に向けてマンボウを研究し、正しい知識を広めるというミッションは、まさにマンボウ博士にピッタリだと感じました。
私も俳優・サイエンスコミュニケーターとしての活動で、地道な努力は重ねつつも、新しいことを考え、挑戦する精神は持ち続けていたいと思いました。というわけで……最後になりましたが私佐伯は「レンタル博士」をお手本にしたサービス「レンタル☆俳優」を開始します!ご興味ある方はぜひ一度特設サイトをご覧ください。(今後、レンタル俳優として使っていただいた結果も記事にさせていただくかもしれません!)
佐伯恵太 × マンボウ博士 → "レンタル俳優"
これからも独立系研究者の皆さま、そして私と共に、フリーランスの未来を切り開いてまいりましょう!ではまた次回!今度はどんなお話が聞けるのでしょうか!?乞うご期待!!