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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、「キンメモドキ (Parapriacanthus ransonneti)」の全ゲノムの解読に成功したというお話だよ。キンメモドキは「盗タンパク質 (Kleptoprotein)」という機能が唯一確認されている生物で、その珍しい生態からゲノムの解読が進められていたのよね。
他の生物の機能によって、自分に足りない機能を補うというのは生物でよくみられるものだけど、タンパク質を使うパターンはキンメモドキしか確認されてない、ってことで本当に盗タンパク質という生態があるの? という疑いを晴らすためにも、このゲノム解読は望まれていたのよね。
まだ、この先の研究にゆだねるところだけど、盗タンパク質の機能に関わる遺伝子を見つけることができたら、もしかするとインスリン注射やがん治療のような、タンパク質を使う医薬品を注射針なしで投与できるような未来が実現するかもしれないよ!
CONTENTS

図1: 遺伝子は生物の設計図ともたとえられるので、遺伝子を見ればその生物の全てがわかると思うかもしれないけど、実際には他の生物の機能に強く依存している生物はいくつかいるのよね。 (画像引用元番号④⑤⑥)
「遺伝子」は全ての生物がもっており、しばしばその生物の設計図にたとえられるよね。その理由は、生物の形や行動といった特徴を制御・決定するための情報源として遺伝子が働いているからなのよ。なので原則論で言えば、その生物の特徴を全て知るには、ゲノムを読んで遺伝子を特定すればいいということになるんだよね。
ただ、その生物が持つ遺伝子だけで、全ての特徴が決まっているとは限らないことも分かっているのよ。例えば一部の昆虫に見られる体内の細菌を調べると、昆虫と細菌の双方が、それぞれ持っていない遺伝子による機能を補い合って生存している、強い共生関係があることが知られているのよね。
他の例として、いくつかのウミウシは、食べた獲物から細胞小器官を“盗んで”、自分の機能として取り込むことが観察されているよ。例えばイソギンチャクを食べて刺胞細胞を取り込み、自分を守る毒針とするウミウシとか、藻類を食べて葉緑体を取り込み、光合成をするウミウシなんかはよく知られているのよね。

図2: キンメモドキという魚は腹部が光るけど、この光の下となるタンパク質をキンメモドキは作っておらず、捕食しているウミホタルから“盗んで”いるらしいのよね。これを「盗タンパク質」と呼ぶんだけど、異論がなかったわけでもないのよ。 (画像引用元番号①②③)
今回取り上げる魚「キンメモドキ」も、自分自身は持たない機能を他の生物から盗むかのような行動をする生物として知られているのよ。ただ、その仕組みがだいぶ違うのよね。キンメモドキはお腹側が発光する魚なんだけど、これは捕食者を欺くために発光させている「カウンターイルミネーション」だと考えられているのよ。
月のような薄明かりがある夜に、キンメモドキを下側から見ると、頭や内臓のような部位が光を遮るので、捕食者に位置がバレてしまう恐れがあるのよね。キンメモドキのお腹が光るのは、薄明かりで影を打ち消し、捕食者から見えにくくする工夫だと考えられているのよね。
光る魚といえば普通は、自分から光る物質を作るか、光る物質を作る細菌を体内に共生させている例を思い浮かべるかもしれない。ところがキンメモドキの光る物質はそのどちらでもなく、食料として食べているウミホタルの1種「キュプリディナ・ノクティルカ (Cypridina noctiluca)」が持つ物質で光っているのよ!
キンメモドキは、このウミホタルを食べた時に、酸化反応で光る物質 (ルシフェリン) と、その反応を手助けするタンパク質 (ルシフェラーゼ) の両方を取り込み、何ヶ月も光らせられるほど保持するのよね。実際、ウミホタルが含まれない餌を与えると、キンメモドキはだんだん光らなくなることが観察されているんだよね。
このようなタンパク質を盗む現象は「盗タンパク質 (Kleptoprotein)」と呼ばれていて、今のところキンメモドキでしか報告されていない極めて稀な生態になるよ! ただ、本当にそんな現象が起きるのかについて、異論がなかったわけではなかったのよ。
私たちが肉を消化できるように、タンパク質は普通なら、消化管を通るとアミノ酸に分解されてしまうので、食べた獲物のタンパク質をそのまま体内に取り込むなんて芸当は想定しないのよね。それができるなら、誰でもクモを食べれば自在に糸を出せる超人になれるはずだもの。
ウミウシの場合、刺胞や葉緑体のように、タンパク質と比べたら大きなモノを取り込んでいるので、消化や輸送の選択制というのはある程度分かるのよ。ところがキンメモドキがやっているのはタンパク質なので、どうして消化せずにタンパク質を体内に取り込めるのか、ここが謎って分け。
なのでキンメモドキの場合、発光タンパク質を自力で合成でき、それを私たちが知らないだけだと考えることもできるのよね。この辺を確定させるには、キンメモドキの全ゲノムを解読し、本当に発光を手助けするタンパク質を合成するための遺伝子を持っていないことを証明する必要があるのよ。
東北大学学際科学フロンティア研究所の別所-上原学氏などの研究チームは、キンメモドキは本当に発光を手助けするタンパク質を持っていないのかを知るため、全ゲノムを解読し、配列データから発光を手助けするタンパク質を作るための遺伝子を持っていないのかを調べてみたのよ。
今回の研究では、PacBio HiFiというロングリードシーケンス技術を使い、全長が6億2500万塩基対におよぶ高精度な塩基対データを得たのよね。このゲノム配列データから、発光を手助けするタンパク質を作るための遺伝子がないかどうかを徹底的に調べたのよ。
徹底的に調べるというのは本当に徹底的で、遺伝子があると推定される領域だけでなく、遺伝子がないと推定される領域、さらにはゲノム配列の元となる生データまで調べたのよ。ゲノム配列を構築するには、分析で得られた生データの繋ぎ合わせが必要だけど、その繋ぎ合わせがマズい可能性も無きにしも非ずだからね。
このようにして徹底的にゲノム配列を探索したんだけど、結局のところはキンメモドキのゲノムに、発光を手助けするタンパク質を作るような遺伝子は見つからなかったのよね。また、ウミホタルから遺伝子そのものをコピーして取り込んでいる「水平伝播」可能性も検討したんだけど、そちらの証拠も見つからなかったのよ。
これにより、キンメモドキは本当に自力では光ることができず、ウミホタルのタンパク質と発光物質を使って光る生物であることが分かったのよ! このことから、キンメモドキの生態として予想された盗タンパク質は、本当に存在する機能だと証明されたわけ!
今回の研究で、キンメモドキは盗タンパク質によって発光できることが証明されたわけだけど、今度はこの盗タンパク質自体が謎となってくるよ。この機能を持つには、発光に関わるタンパク質を消化せずに保持する仕組みや、外から来たタンパク質を特定の器官に輸送する仕組みが、キンメモドキの体内に備わっているはずだからね。
口から消化管を通過するタンパク質は、消化酵素によってアミノ酸まで分解され、機能を失うはず。また、本来は自分自身のタンパク質でないものは異物として免疫系に検知されるはず。盗タンパク質を実現するには、何らかの方法で消化や免疫系を回避する必要があるのよね。
どのようにして回避しているのか? についてはこれから調べる必要があるよ。キンメモドキの全ゲノムという設計図は手に入ったので、答えはそこに書かれているはずだからね。もちろん、書いてある量が膨大過ぎて調べるのは大変なんだけど、それをするだけの価値があると言えるよ。
例えば、糖尿病治療のためのインスリンや、がん治療のための抗体医薬品は、現状では注射や点滴など、痛みを伴う方法で血管から入れる必要があるのよね。こうするのは、インスリンや抗体はタンパク質なので、口から入れると消化されて意味がなくなってしまうからなのよ。
もし、キンメモドキの盗タンパク質の仕組みが理解され、人間の医学領域に応用できるならば、これは中々にスゴい発見になるよ。今まで針を刺すしかなかった医薬品を飲み薬に変えることで、患者の苦痛を減らすことができるわけだからね。QOL (生活の質) 向上に直接寄与することになるわけよ。
こういう医療関係以外にも、例えば畜産養殖でも生かせる道があるかもしれないよ。特定の機能を持たせたタンパク質を餌に混ぜて届けることで、肉質の改善などに繋がるかもしれないからね。キンメモドキの盗む性質から、何か面白い波及効果が生まれるかもしれないよ!
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<原著論文>
<参考文献>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)