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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!
今回の解説の主題は、生後1日未満のヒヨコにも「ブーバ/キキ効果」が見られるかもしれないというお話だよ。これは「尖っている図形と丸い図形を示され、どっちが「ブーバ」でどっちが「キキ」か」と問われた時、年齢や言語に左右されずに答えが一致する傾向にあることを示した心理学の用語になるよ。
ただ、ヒトというのはどうしても学習の背景を完全に排除することができないから、これは先天的な生理的反応なのかは議論の余地があったのよね。ということでこの研究では、限りなく背景の知識が無垢な状況を作りやすいヒヨコで実験をしてみたというわけ!理由はそれだけじゃないけど、メインの理由はこれになるよ。
実験の結果、ごく最低限の学習をしただけの生後1日未満のヒヨコでも、ブーバ/キキ効果があるかもしれないことが示唆されたのよね!まだこの研究だけでは結論を出せないものの、音声と形状の結びつけはかなり生理的なものであり、動物の進化のかなり根っこの部分に起源があるかもしれないという点でかなり興味深いよ!
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図1: 尖っている図形と丸い図形を示し、どっちが「ブーバ」でどっちが「キキ」だと思うか?と尋ねると、ほとんどの人の答えが同じになる、というのが「ブーバ/キキ効果」というものだよ。これは様々な言語や、生後4ヶ月の乳児でも確認されていると言われているんだけど、果たしてどこまでが先天的な生理反応なのかに疑問が集まっていたのよね。 (画像引用元番号②)
まずは上の図を見てみて。2つの図形が描かれているよね?この2つの図形に、どちらかが「ブーバ」でどちらかを「キキ」と名付けるとしたら、みんなはどっちをブーバでどっちをキキと名付けるかな?たぶんあなたは「 (反転してみて→) 丸い方をブーバ、尖っている方をキキと名付ける」と思ったんじゃないかな?
もちろん、これは100%完璧じゃなく、反対だと考えた人もいると思うよ。でも実際に研究を行ってみると、これが面白いことに、ほとんどの人の答えが一致しているのよね。実はこのブーバとキキは、図形に対する言葉としては意味を持たないように意図された単語なので、それでも答えが一致するというのは中々面白いよね。
驚きなのは、答えが一致する傾向は、年齢や言語に左右されないという点よ。例えば年齢では、言葉を喋らない生後4ヵ月の乳児でもその傾向が見られたのよ!言語では、答えの一致率は様々ではあるんだけど[注1]、一般的には偶然を超えて答えが一致している傾向にあるのよね!ちなみに日本語は、答えの一致率が高い言語になるよ。
図形に割り当てる単語が、背景事情に寄らず一致している傾向は、心理学の分野で「ブーバ/キキ効果」と名付けられているのよね。ブーバ/キキ効果それ自体は2001年に出てきた名前だけど[注2]、単語の音声と図形の形状は何かしらの関連性があることを示す研究は、遅くとも1924年には論文が出ているくらい、古くから研究されているのよね。
一連の研究では、細かい部分では意見が一致しなかったり、傾向が小さいとされることがあるんだけど、それでもおおむね「ヒトは先天的に、特定の音にとがった/丸い図形を割り当てる傾向にあるらしい」ということが示唆されているのよ。ヒトという動物の根源的な部分に関わっているかもしれないというのは興味深いよね!
ただ、本当にそうなのかと言われると、これがまた難しくて議論されているところなのよね。例えば、生後4ヶ月の乳児でもブーバ/キキ効果が見られたといっても、乳児は学習力がめっちゃ高いし、親や背景音から何かを学んだかもしれないからね。背景知識が無垢であるかまでは保証できず、本当に根源的な反応なのかを保証できないのよ。
それならばということじゃないけど、どこまで根源的な反応なのかを知るため、ヒト以外の動物で同じような実験を行ってみた研究がいくつかあるのよね。といっても、それはブーバ/キキ効果ではなく、「音のピッチ (高さ) と色の輝度」とか「音のピッチと円盤の大きさ」みたいな感じの実験をやっているのよね。
これまでにチンパンジー、イヌ、カメなどで実験した結果が論文として書かれており、「音のピッチが高いほど、白っぽい色や小さいサイズを選ぶ傾向にある」ということが示唆されているのよね。これはヒトと同じ傾向であることから、ヒト以外の動物でもヒトと同じ傾向がみられるというのは興味深いよね。
「哺乳類」と「鳥類を含む爬虫類」は、おおよそ3億年前に共通した祖先から分化したと考えられていることを合わせると、聴覚と視覚の結びつけは、動物の進化における、かなり根源的なところに根差している可能性が十分に考えられるのよね。もちろん、そんな主張は大げさかもしれないから、未だに研究が続いている感じでもあるのよ。
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今回、パドヴァ大学のMaria Loconsole氏、Silvia Benavides-Varela氏、そしてLucia Regolin氏の3氏の研究チームが発表した研究は、動物で直接的にブーバ/キキ効果を検証すると同時に、ブーバ/キキ効果は学習ではなく、先天的に起こるものであることを証明する内容になるのよ。
先ほど書いた通り、ブーバ/キキ効果が先天的なものであるかどうかを、ヒトで証明するのは難しいのよね。理由の1つは、背景的な知識が限りなく無垢な状態を設定するのが難しいからなのよね。一方で動物ならば、ある程度の倫理的な点を守りさえすれば、そこら辺の検証を行うことができるのよね。
今回3氏が用意したのはヒヨコ!もちろん飼育されたニワトリ (Gallus gallus) の雛のことよ。ヒヨコは生まれてすぐに歩き出すし、視覚や聴覚、その基盤となる脳や中枢神経の発達が、ヒトの乳児ととても似ていることが示されているのよね。このことから、ブーバ/キキ効果のような視覚と聴覚を伴う実験に最適なモデルとなるのよ。
ヒヨコはたくさん飼育されているし、生後数日以内ならば背景知識も限りなくゼロの状態が作り出せるよね。そして、鳥類は哺乳類とは3億年前に共通祖先から分化したと言われているのよ。こう考えると、ヒヨコでブーバ/キキ効果が示されれば、ブーバ/キキ効果は根源的で先天的な生理反応である可能性が出てくるというわけだよ。
今回の実験では、養鶏場から入手した、孵化する前の鶏卵を入手し、研究室で孵化したヒヨコを対象に実験を行ったんだよね。倫理基準を満たしながら、ヒヨコは仲間の鳴き声と最低限の背景音以外の音を聞かない状態においたので、限りなく学習機会がなく、背景知識が無垢な状況で実験を行えるようにセッティングを行ったよ。
この状態で、まずは生後3日のヒヨコに対し、以下のような実験を行ったよ。ちなみに、図形そのものは3氏とは別の研究チームが行い、2022年に掲載された論文の中のものから使われたけど、ヒヨコの関心を引きやすくするようにオレンジ色に塗られたという違いがあるよ。
[実験1]
実験では、パネルの左右配置、および背景音でどちらの音を流すのかは、全く同じ条件が2回連続で発生しないように擬似ランダム化されていたのよね。実験は1羽のヒヨコに対して24回行われ、25羽のオスと17羽のメスで実施されたのよ。ちなみに、実験後のヒヨコは地元の農家に寄付されたのよ。
もし全くの無作為なら、ヒヨコが図形に向かう確率は五分五分だけど、実験の結果、有意に図形を選ぶ傾向に差があることがわかったよ!若干丸い図形を好む傾向こそあったものの、ブーバを流している時に丸い図形に向かうヒヨコの割合は66%、キキを流している時に尖っている図形に向かうヒヨコの割合は56%となったのよね。
プレプリントの段階ではこの実験だけが載っているんだけど、Science誌に掲載された論文では追加実験が行われているよ。今度はなんと生後1日未満のヒヨコで、しかも事前の学習は最小限にするという、これ以上ないほど知識的に無垢な状態で、以下の実験を行ったのよね。
[実験2]
オスメスちょうど20羽ずつで実験した結果、ブーバを流している時に最初に丸い図形に向かったヒヨコは80%、キキを流している時に最初に尖っている図形に向かったヒヨコは75%に達したよ!また、ブーバを流している時は丸い図形を、キキを流している時は尖っている図形を探索する時間が長く、ここにも有意差が認められたのよね!
なお、過去の似たような研究では、実験を繰り返すうちに確率が五分五分に近づくという傾向があったのよね。今回の実験ではここら辺にも配慮し、途中で休憩や再学習の機会を設けたのよね。例えば最初の実験の場合、餌がないということで意欲が低下するのを避けるため、途中で再学習をさせたのよ。
このような工夫のおかげか、実験の後半でもヒヨコの選択は五分五分へと低下するような傾向を見せなかったのよね。このことから、実験結果はヒヨコを飽きさせたりガッカリさせたりせず、純粋に先天的な生理反応をうまくとらえているのではないか、と研究チームは考えているのよ。

図5: ブーバ/キキ効果を直接調べたわけじゃないものの、他の哺乳類や爬虫類でも、音とモノの大きさや色が結びつけられているのを示唆する研究がいくつかあるんだよね。鳥類を含む爬虫類と哺乳類は3億年前の共通祖先から分化したことを考えると、進化の根っこあたりから共通する性質である可能性もあるのよね。
今回の研究結果は、背景となる知識や学習結果がないような状況へとコントロールしても、ブーバ/キキ効果は見られるらしいということが示されているのよね。しかも、ヒトから遠く離れた生物であり、言語体系やコミュニケーション手段も全く異なるニワトリでそれが見られたというのは、かなり興味深い結果だよね!
今回はあくまで、ニワトリでもブーバ/キキ効果が見られるということだけを示した研究なので、それ以上のところは予想になってしまうよ。3億年前の共通祖先のころから共有しているかもしれない先天的な生理反応だとしたら、それはとても面白いけど、今回の研究だけで結論を出すことはできないからね。
ヒトも含めて、動物というのは音と形をマッチングさせるような脳内の仕組みがあるのか?あるとしたらそれはいつ頃から備わった能力なのか?共通祖先が持っていたのを引き継いだのか、あるいは独自に進化で身に付けた能力なのか?色々と疑問は尽きないけど、これ以上のところは予想や想像となっちゃうのよね。
ただ、聴覚情報と視覚情報に関連付けをすることは、他の例からある程度考えられるんだよね。例えば過去の研究では、音のピッチが高いとサイズが小さい円盤を選ぶという傾向がチンパンジーやカメで示されているけど、これは身体のサイズが小さい動物なほど、発する鳴き声のピッチが高いことと関連しているかもしれないからね。
あるいは、捕食者や危険な動物を見つけた際、仲間に警告を発する動物は珍しく、これは単に鳴き声に種類があるだけでないかもしれないのよね。声の高さや音の種類は、こうした先天的に感じる内容に基づいて決定している可能性があるわけだからね。
いずれにしても、もっと動物の種類を広げたり、他の実験を行うことで、この辺の謎を根気強く解いていくしかないと思うのよ。その時、ヒヨコのような生物は、研究の助けになると思うのよね。
[注1] 言語では、答えの一致率は様々
2022年に出版された研究 (Link) の場合、全25言語中、3言語が一致率が50%を下回っていました。この理由について論文ではいくつかの考察をしていますが、その中の1つとして、意味を持つ似たような発音の単語が存在することを挙げています。例えば最も一致率の悪かったルーマニア語では、「傷」を意味する単語として「bubă」が存在します。 本文に戻る
[注2] ブーバ/キキ効果それ自体は2001年に出てきた名前
例えば1929年の著書には、2つの図形を示し、どちらの単語が当てはまるかという、ブーバ/キキ効果と似たような質問をする実験が紹介されています。ここで尋ねられた単語は「タケテ (takete)」と「マルマ (maluma)」であったため、ブーバ/キキ効果の別名として「タケテ/マルマ効果」と呼ぶ場合もあります。 本文に戻る
[注3] ヒヨコがパネルを選択したとみなす基準
実際の論文では、ヒヨコが選択せんたくしたかどうかについて、もう少し細かい基準を設けています。パネルの後ろ側に回り込むといっても、たまたま移動先がパネルの後ろ側になっている場合を除外するため、頭と身体の少なくとも3分の2を使って回り込むことが確認されないとカウントしない、といった基準を設けています。 本文に戻る
<原著論文>
<参考文献>
<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)