世界最古級の陸棲脊椎草食動物を発見! 3億700万年前の“耕す暴君”

2026.02.20

Tyrannoroter heberti サムネ

(画像引用元番号①)

 

みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!

 

今回の解説の主題は、世界最古級の陸棲脊椎草食動物を見つけたというお話だよ。なんか属性モリモリだけど、今回重要なのは「草食」という部分。今まで昆虫や小動物を食べていたであろう脊椎動物、それも陸に住むモノが、初めて植物を食べるようになった時期を知る上で重要な発見なのよね。
発見者と身体の特徴から“ハーバートの耕す暴君”と言う意味の「ティラノロテル・ハーバートイ (Tyrannoroter heberti)」と名付けられたこの生物。かなーり遠いとはいえ、私たちを含めた哺乳類や爬虫類の遠い遠い祖先と言えなくもないから、現代において支配的な動物の進化を考える上でも重要な発見になるのよ!

 

今回の研究のポイント
  • 陸地に棲む脊椎動物がいつ草食になったのかは、これまで約3億年前だと言われていたよ。
  • 今回、3億700万年前の陸棲脊椎草食動物が見つかり、「ティラノロテル・ハーバートイ」と名付けられたよ。
  • 哺乳類や爬虫類 (+鳥類) を含めた、現生生物で支配的な動物の1つである有羊膜類の進化を考える上で重要な発見になるよ!

 

    危険と隣り合わせの場所で化石を採集

    古生代における植物と動物の進化

    図1: 古生代は生物が陸地へと進出した重要な時期だけど、では私たちにも繋がりがある陸棲の脊椎動物が、いつ頃から植物を食べるようになったのかは、注目されるポイントの1つになっているよ。

     

    それまで水中にしかいなかった植物が陸地へと生息域を広げたのは、今から約4億7500万年前だと考えられているのよ。一方、脊椎動物が陸上に上がったのは約3億8000万年前ごろと考えられていて、実に植物から出遅れること1億年後に、ようやく陸地へと生息域を拡大したと言えるのよね。

     

    では、陸地に上がった脊椎動物は何を食べていたのかというと、最初は昆虫などの自分より小さな動物だと考えられているのよね。これは歯の特徴などから推定されるもので、陸地に上がったばかりの時代では、草食の脊椎動物はいなかったというのが定説なのよね。では、脊椎動物はいつ頃から植物を食べるようになったんだろうね?

     

    これまでの化石記録から、陸棲草食脊椎動物が出現したのはちょうど3億年前ごろ、石炭紀後期からペルム紀にかけてであると推定されてきたのよね。つまり、脊椎動物が陸上進出をした後、植物を食べるまでには数千万年くらいの時間差があるということになるよ。ただ、不安定な化石記録でこの推定を行っている以上、常に覆される可能性はあるのよ。

     

    ここでフィールド自然史博物館のArjan Mannアルジャン・マン氏とカールトン大学のZifang Xiongツーファン・シォン氏を筆頭とする研究チームは、カナダ東部のケープ・ブレトン島で見つかった、3億700万年前の動物化石に着目したよ。化石の発見場所は崩れやすい海岸沿いの崖、おまけに世界一潮位変動が激しいエリアにあたることから、発掘が難しい場所になるよ。

     

    今回主題の化石は、論文著者に名を連ねているカールトン大学のHillary C. Maddinヒラリー・C・マディン氏を筆頭とした発掘チームが発見したんだけど、直接この幸運を射止めたのは、地元の愛好家であるBrian Hebert氏。後で説明するけど、化石の名前にもなったんだよね!

     

    化石は木の切り株の中にあり、頭だけしかなかったものの、先端が細くて奥に進むほど幅広くなる、ハート型をした特徴あるものだったんだよね。専門家であるMann氏はその特徴から、5秒も見ないうちにこの時代の陸棲脊椎動物であることを見抜いたのよね。

     

    世界最古級の陸棲脊椎草食動物を発見!

    Tyrannoroter hebertiの化石と復元模型

    図2: パッと見では石の塊にしかみえないけど、その特徴的な形から初期の有羊膜類であることが分かったよ。そしてCTスキャンにより、化石を壊さずに歯の形やキズまでもが見れるんだよね! (画像引用元番号②③)

     

    この化石はパンティルス科 (Pantylidae) という脊椎動物で、陸棲脊椎動物の進化の歴史を探る上でとても重要な位置にあるよ。というのは、これが出現するより前の陸棲脊椎動物は、現代の両生類のように、一生を陸地で過ごしていたわけじゃないらしいのよね。

     

    一方、パンティルス科やそれに近い仲間は、完全に一生を陸地で過ごすようになったのよね。このような脊椎動物の最大の特徴は、陸地で産んでも中身が乾燥しない、ある程度厚くて硬い殻を持つ卵を産むように進化したという点が挙げられるのよ。

     

    このような特徴を持つ動物のグループは「有羊膜類ゆうようまくるい (Amniota)」と呼ばれており、「(鳥類を含む) 爬虫類」と「哺乳類」を含んだ広いグループになるのよね。もちろんヒトも有羊膜類に分類されていることから、とてつもなく遠い祖先に近い生物を見ているような感じになるのよ。

     

    パンティルス科は、有羊膜類がまだ爬虫類と哺乳類に分割される前の、非常に古い形態を残していると言われているのよね。そして、現代の有羊膜類にも草食動物がいるならば、初期の有羊膜類はいつごろ草食の食性を獲得したのか?というのが大きな疑問となるのよ。

     

    今回見つかったパンティルス科の化石は、パッと見た感じ石の塊にしか見えないけど、これは専門家から見ても同じ。頭蓋骨の形こそ分かるけど、口は堅く閉ざされており、その内部構造を窺い知ることはできなかったのよね。

     

    そこで研究チームは、化石をCTスキャンにかけ、その内部構造を探ったのよね。この方法ならば、化石を壊すことなく中身を見ることができる上に、きちんとデータ処理を行えば、歯の形だけでなく、歯についたキズを見ることすら可能なのよね!

     

    さて、今回のスキャンの結果、見事、歯の形を捉えることができたのよね。この歯を見ると、しっかりと上下が噛み合わさっている上に、現代の草食動物の葉に見られる、植物を切ったりすり潰すために付いたのと同じキズが付いているのを確認したのよ!

     

    Tyrannoroter heberti

    図3: 新種は「ティラノロテル・ハーバートイ」と名付けられたよ。体長30cmほどの生物になるね。 (画像引用元番号①)

     

    これらの証拠から、この化石は3億700万年前に生息していた、世界最古に匹敵する陸棲草食脊椎動物であることが分かったのよ。この化石は新属新種として、学名を「ティラノロテル・ハーバートイ (Tyrannoroter heberti)」とすることが提案されたよ!

     

    属名は、歯が尖っていることと、おそらくは鼻先で穴を掘ることもあると推定されたことから「耕す暴君」を意味するギリシャ語、種小名は発見者のBrian Hebertブライアン・ハーバート氏に対する献名になるのよ。推定体長は約30cmであり、アメリカンフットボールサイズだと喩えられているね。

     

    ちなみに、ティラノロテルそのものは3億700万年前の動物にはなるけど、近い仲間のパンティルス科の化石と比べて考えてみると、この系統に陸生植物脊椎動物が出現したのは3億1800万年前 (石炭紀バシキーリアン) と推定されるのよ。

     

    私たちのとても遠い祖先の進化を探る上で重要な発見!

    Tyrannoroter hebertiの発見の重要性

    図4: 今回の発見は、単に新しい生物を見つけただけでなく、脊椎動物の進化に対する考察や、食物連鎖のステップを省略することによる環境の影響も考える上で重要な発見になってくるよ! (画像引用元番号①)

     

    ところで、ティラノロテル・ハーバートイは陸生植物脊椎動物だと説明はしたものの、とはいえ植物だけしか食べていたわけじゃないと思われるのよ。これは単純な話、現代の草食動物であっても、多かれ少なかれ動物性タンパク質を食べているからね。

     

    ティラノロテルの場合も、おそらくは昆虫などの小動物を食べていたと推定されるのよ。これは草食動物の出現を考える上でも大事なこと。硬い昆虫を食べるために歯や顎が発達した結果、同じく硬い植物も食べられるように進化したと考えられるのよね。

     

    そして、昆虫から草食動物に切り替わったという点は、生態系を考える上でも重要になってくるよ。昆虫は脊椎動物より先に陸上進出を果たし、植物を食べていたはずなのよね。このため、脊椎動物はその後を追って陸上進出を果たしたと見ることができるのよね。

     

    そして、脊椎動物が昆虫ではなく植物を食べるようになったということは、食物連鎖のステップを省略していることになるよね。食物連鎖の変化は、環境にも影響を与えるはずなので、これは結構重要!なのでティラノロテルの発見はとても重要なのよね。

     

    今回のティラノロテルの研究により、陸棲脊椎動物は思ったよりも早く草食動物になったらしいことが示唆されたことで、遠くは私たちにも繋がる有羊膜類の進化にも影響を及ぼすかもしれないのよ!これからも楽しみな研究になるのよ。

    文献情報

    <原著論文>

    • Arjan Mann, Zifang Xiong, et al.“Carboniferous recumbirostran elucidates the origins of terrestrial herbivory”. Nature Ecology & Evolution, 2026; 10 (2) 193-202. DOI: 10.1038/s41559-025-02929-8

     

    <参考文献>

     

    <画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)

    1. ティラノロテル・ハーバートイの復元図: フィールド博物館のプレスリリースより
    2. ティラノロテル・ハーバートイの頭骨化石: フィールド博物館のプレスリリースより
    3. ティラノロテル・ハーバートイの頭骨の3Dプリンターモデル: フィールド博物館のプレスリリースより
      いらすとやより使用 (ワラビ / シミ)

     

    彩恵 りり(さいえ りり)

    「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
    本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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