ダイヤモンドに封印されたマントルの熱源!新鉱物「毛河光石」を発見!

2021.12.14

みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!

今回の解説は、ダイヤモンドに閉じ込められた新種の鉱物、毛河光石 (もうかこう-せき / Davemaoite / CaSiO3に関するお話だよ!

新種の鉱物の発見だけなら世界中で毎年数十例もあるけど、毛河光石の発見はScience誌に掲載されるほどのインパクトがあったよ!それはなんでかな、という部分を解説するね!ちなみに、地球の3%は毛河光石でできている事になるよ!

毛河光石の由来

毛河光石は、下部マントルからやってきた新鉱物だよ!

毛河光石の由来は、高圧科学技術先端研究センター (北京高压科学研究中心) を設立し、上海支部の所長でもあり、なにより高圧科学の世界的権威、毛河光に因む名前だよ!

毛河光は、ダイヤモンドアンビルセルという、物質を超高圧にかける装置で、ピーター・M・ベルと共に世界で初めて100GPa (1000億Pa / 100万気圧) の圧力を達成したという成果を持っているんだよ。これは地球惑星科学において重要な一里塚であり、だからこその命名という訳だね。

地球の内部はよくわかんない

私たちの住む地球の内部構造は、簡単に言えば卵で表す事ができるよ。一番外側の殻は地球の表面を作っている地殻で、内部には白身に当たるマントルと、黄身に当たる核が存在するよ。マントルはもう少し細かく区分ができて、その中で深さ660kmから2890kmのところを下部マントルと言うよ。

この下部マントルは、ケイ素と酸素が結びついたケイ酸に、カルシウムやマグネシウム、その他の元素が結びついたケイ酸塩化合物が主体で、物凄くざっくり言えば全体的には普通の石と言えるよ。ただし、下部マントルではものすごい高温高圧の環境下だから、結晶構造はそれに合わせて変化するよ。

下部マントルで主体になると観られている重要な結晶構造はペロブスカイト構造と呼ばれるもので、下部マントルより上の環境では生成しない元素の組み合わせでペロブスカイト構造が現れると考えられているよ。

ペロブスカイト構造は、マントルでは一番普通に観られる結晶構造と考えられているよ!

下部マントルの鉱物の種類を知る事が重要なのは、地球の内部構造を知る事と深い関わりがあるからだよ。

下部マントルは地球で最も体積が大きいから、そこに含まれる鉱物の種類・割合・性質は、地球の大部分の組成に関わるし、マントルから地表へと送られる物質がどの程度存在するかを考える大切な指標だからだよ!

ただ、現在のボーリング技術は、たった数十kmの厚さの地殻すら貫く事ができないから、下部マントルの物質を直接採集する事はできないよ。

このため、下部マントルの物質の状態を推定するには、下部マントル由来と観られる岩石の組成の分析、実験室での高圧実験による人工合成、衝突時に高圧を受けた隕石の分析を組み合わせる事で推定されてきたよ。

ダイヤモンドに封印されたマントル物質!

毛河光石が発見されたダイヤモンド結晶の写真だよ。結晶中にある黒い点の大部分が毛河光石だよ。 画像引用元: Alexandra Witze. (Nov 11, 2021) "Diamond delivers long-sought mineral from the deep Earth". Nature. DOI: 10.1038/d41586-021-03409-2 (画像リンク)

今回、ネバダ大学ラスベガス校などの研究チームが報告したのは、ペロブスカイト構造を持つカルシウムケイ酸塩鉱物の毛河光石だよ!

組成こそとてもシンプルだけど、この組成は地殻のような圧力の低い場所では珪灰石 (Wollastonite) という別の結晶構造の鉱物になっちゃうよ。

毛河光石が発見されたのはボツワナのオラパ鉱山にあるAK-8坑から採集されたキンバリー岩中のダイヤモンド (ロサンゼルス自然史博物館、標本番号74541) の中に存在していたよ。

ダイヤモンドの中に見える黒い粒をシンクロトロンX線回折装置で分析したところ、そのほとんどが<strong<ケイ酸カルシウムの化学組成と、ペロブスカイト構造の結晶構造を持つ物質で、これが新鉱物となったよ。

この、ダイヤモンド結晶中に含まれているというのが発見のカギでもあるよ。毛河光石は高温高圧環境でのみ安定な鉱物だから、地表の低温低圧環境まで移動すると変質してしまい、実物の発見とはならないよ。

ところがダイヤモンド結晶の中にあると、この高温高圧の結晶構造のまま封印される事から、下部マントルの結晶構造を保っているという、とても貴重な試料となるんだよ!

ただし、鉱物そのものは数マイクロメートルととても小さくて、その詳しい性質を調べるには強力なシンクロトロンX線回折装置が必要だし、かといってそのような強力なX線を当てると結晶構造自体を壊す可能性もあるから、短時間で高精細なデータを取れる環境じゃないと分析できないよ。

だから、このダイヤモンドそのものは1987年に購入されたものだけど、その数十年後にようやく発見されたという形なんだよ。

実は、この毛河光石と同じ組成と結晶構造を持つ鉱物は、2018年にパドヴァ大学などの研究チームによって、南アフリカ共和国のカリナン鉱山で採掘されたキンバリー岩中のダイヤモンドから発見されていたんだけど、この時には、鉱物の命名権を管轄する国際鉱物学連合に新鉱物の発見や命名の申請が出されていなかったよ。

そこで研究チームは、毛河光石の命名の由来となった毛河光に連絡を取り、命名権の承諾を得た、という経緯があるんだよ。

毛河光石の発見の重要性

毛河光石の発見は、地球内部にある放射性元素の動きや安定保持について重要なデータとなるよ!

さて、この毛河光石の発見は、単に新鉱物の発見というだけに留まらず、地球内部の熱の発生源について考える時にも関わってくるよ。

地球内部の熱は、地球誕生時に生成されてた余熱と、放射性物質の崩壊による加熱が組み合わさったもので、半分以上は崩壊熱によるものと考えられているよ。

そして、その放射性物質はカリウム・トリウム・ウランの3元素でほぼ占められているよ。さて、毛河光石は下部マントルを構成する主要な3つの鉱物の1つと考えられていて、ブリッジマン石 (Bridgmanite) 、鉄ペリクレース (Ferropericlase) の次に多く、下部マントルの5%から7%を占めていると考えられているよ。

単純計算すれば、 地球の3%は毛河光石でできている 事になるよ!

そして今回、天然の毛河光石の分析で、カリウムを含んでいる事が判明したよ!また、既に合成実験ではトリウムとウランを含む事が可能な鉱物は、3つの中で毛河光石だけだと判明しているよ。

カリウム・トリウム・ウランは、どれも原子のイオン半径が大きくて、結晶構造に比較的余裕のある毛河光石しか含みえない事が推定されていたけど、今回それが天然物でも証明された形だよ。

結晶構造に安定して放射性元素を取り込める鉱物が実際に存在する事は、下部マントルの環境や、地球全体の熱収支・熱対流を考える上でとても重要な発見だよ。

下部マントルの中で、どのような形で放射性元素が存在しているかというのは、地球全体の熱源がどのように存在し、どの程度の速度で動くのかを考える上で重要な指標だからね!

今回の毛河光石の発見は、地球内部の環境だけでなく、その熱の流れでプレートテクトニクスが起きている地球表面にも関わる事柄で、更に言えば地球を含め、岩石惑星の進化を考える上でとても重要な地位を占めているものだよ!この研究をもっと進めなきゃだけど、そのヒントは既に分かっているよ。

今回発見された毛河光石はカリウムを含んでいるけど、これはキンバリー岩全体に言える事だから、他のカリウムが豊富な岩石のダイヤモンドを調べれば、毛河光石を含むマントルの鉱物が更に発見され、研究が進む可能性があるんだよ!

また、下部マントルの鉱物を含むダイヤモンドの発見自体、ダイヤモンドがこれまでの予想よりも深い場所でも存在する証拠でもあるから、他のダイヤモンドの分析で、マントルに関する更なる情報が分かるかもしれないよ!

 

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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