回転域に合わせ極数変換(8極→2極など)も可能な永久磁石モータ

2024.08.08 By 東洋大学

機械工学

技術概要

機器定数が可変で、かつ、回転域に合わせ極数変換(8極→2極など)も可能な永久磁石モータを実現でき、それによって広い回転域での運転が可能である

用途・応用

モーター、風力発電、電気自動車

背景

 世界的なエネルギー消費量の増加に伴い、省エネルギー化が求められている。ハイブリ
ッド自動車、電車、エレベータ、家電機器では高出力、高効率を得るために永久磁石モー
タが適用されている。しかし、永久磁石モータは可変速運転では中速から高速回転域で過
大な誘導電圧が発生して駆動不可能になる。そこで、この過大な誘導電圧を抑制するため
に弱め磁束制御が研究開発され実用化された。しかし、弱め磁束制御に要する電流は銅損と高周波鉄損を増加するので中速から高速域にかけて効率が大きく低下し、電源電圧制限下では広い可変速範囲の運転が困難などの問題がある。そこで、永久磁石の磁力を不可逆的に変化させて駆動する新概念のいわゆる可変磁力モータやメモリモータが提案されている 。

 このような可変磁力モータやメモリモータに対して、さらに省エネルギー、小型・高出
力の理想的な可変速モータドライブシステムを得るには運転状態に応じてモータの機器定
数や極数を可変にすることが鍵となる。
【先行技術文献】
【特許文献】

【特許文献1】特開2009−72021号公報
【特許文献2】特開2009−201300号公報
【特許文献3】特開2010−004673号公報
【非特許文献】

【非特許文献1】K.Sakai,T.Takahashi,Eshimomura,M
.Arata,Y.Nakazawa and T.Tajima: ” Development of permanent magnet reluctance motorsuitable for variable−speed drive for e
lectric vehicle ” ,T.IEE Japan,Vol.123−D,N
o.6,681−688ページ(2003年).
【非特許文献2】K.Sakai,K.Hagiwara and Y.Hirano,
” High−power and high−efficiency permanen
t magnet reluctance motor for hybrid ele
ctric vehicle ” ,TOSHIBA REVIEW,Vol.60,No.11,41−44ページ(2005年).
【非特許文献3】K.Sakai,K.Yuki,Y.Hashiba,N.Takah
ashi,K.Yasui and L.Kovudhikulrungsri:“Pr
inciple and Basic Characteristics of Var
iable−Magnetic−Force Memory Motors ” ,IEEJ
 Trans. IA,Vol.131,No.1,53−60ページ(2011年).
【非特許文献4】K.Sakai,K.Yuki,D.Misu,N.Takahash
i,Y.Hashiba,Y.Matsuoka and Y.Otsubo: ” Variable−magnetic−force motor assisted by r
eluctance torque ” ,2010 National Convention Record,IEEJ,5−012(2010年).
【非特許文献5】V.Ostovic, “Memory motors ” ,IEEEIndustry Applications Magazine,Jan/Feb.,52−61ページ(2003年).
【非特許文献6】V.Ostovic,“Pole−changing permane
nt−magnet machines ” ,IEEE Transactions on
 Industry Applications,Vol.38,No.6,1493−
1499ページ(2002年).
【非特許文献7】橋本尚宜・倉持暁・堺和人:「3種トルク発生と極数変換を可能とする新規永久磁石モータの原理」,平成23年電気学会産業応用部門大会 Y−112(20
11年)

課題

本発明は、このような技術的な要望に鑑みてなされたもので、機器定数が可変で、かつ、極数変換も可能な永久磁石モータ(以下、「PC−VM−PMモータ」と称す。)とその運転方法を提供することを目的とする。

手段

 本発明の1つの特徴は、回転子鉄心内に複数L個(Lは整数)の固定磁力磁石を円周方
向に等間隔で、かつ、回転子の外周に現れる磁極が全周で同極となる向きに埋め込み、か
つ、磁化方向が前記固定磁力磁石と同じとする複数L個の可変磁力磁石を、前記隣り合う
固定磁力磁石の間各々に埋め込んだ回転子と、極数切替にて電機子巻線の結線を2L極と4L極の間で切替ができる固定子とを備え、前記電機子巻線の結線を2L極にして所定の短時間だけ通常の運転時の電流よりも大きい第1の磁化電流を流すことによって発生する磁界により前記L個の可変磁力磁石それぞれを隣り合う固定磁力磁石と同一方向に不可逆的に磁化させ、前記可変磁力磁石と固定磁力磁石はN極S極のいずれか同極に揃え、隣り合う可変磁力磁石と固定磁力磁石との間の凸鉄心部に前記隣り合う可変磁力磁石及び固定磁力磁石の磁極とは反対の磁極のイメージポールを形成することにより磁石トルク主体の4L極PMモード状態とし、前記電機子巻線を2L極にして所定の短時間だけ前記第1の磁化電流とは逆の方向の第2の磁化電流を流すことによって発生する磁界により前記L個の可変磁力磁石を隣り合う前記固定磁力磁石とは逆方向に不可逆的に磁化させて磁石トルクとリラクタンストルクの両方で動作する2L極IPMモード状態とし、前記4L極PMモード状態と2L極IPMモード状態との間で相互にモード状態を切り替えて4L極PMモードと2L極IPMモードとのいずれでも運転できるようにした永久磁石モータである。

 本発明の別の特徴は、回転子鉄心内に複数L個(Lは整数)の固定磁力磁石を円周方向
に等間隔で、かつ、回転子の外周に現れる磁極が全周で同極となる向きに埋め込み、かつ
、磁化方向が前記固定磁力磁石と同じとする複数L個の可変磁力磁石を、前記隣り合う固
定磁力磁石の間各々に埋め込んだ回転子と、極数切替にて電機子巻線の結線を2L極と4
L極の間で極数切替ができる固定子とを備えた永久磁石モータの運転方法であって、低速
回転(大トルク)域では、前記電機子巻線の結線を2L極にして所定の短時間だけ通常の
運転時の電流よりも大きい第1の磁化電流を流すことによって発生する磁界により前記L
個の可変磁力磁石それぞれを隣り合う固定磁力磁石と同一方向に不可逆的に磁化させ、前
記可変磁力磁石と固定磁力磁石はN極S極いずれかの同極に揃え、隣り合う可変磁力磁石
と固定磁力磁石との間の凸鉄心部に前記隣り合う可変磁力磁石と固定磁力磁石の磁極とは
反対の磁極のイメージポールを形成することにより磁石トルク主体の4L極PMモード状
態にして運転し、中速及び高速回転域では、前記電機子巻線を2L極にして所定の短時間
だけ前記第1の磁化電流とは逆の方向の第2の磁化電流を流すことによって発生する磁界
により前記L個の可変磁力磁石を隣り合う前記固定磁力磁石とは逆方向に不可逆的に磁化
させて磁石トルクとリラクタンストルクの両方で動作する2L極IPMモード状態にして
運転する永久磁石モータの運転方法である。

 本発明のまた別の特徴は、回転子鉄心内に複数L(Lは整数)の可変磁力磁石を円周方
向に等間隔で、かつ、回転子の外周に現れる磁極が全周で周期的にNS極の対になるよう
に埋め込んだ回転子と、各電機子コイルまたは複数の電機子コイル毎にパワー素子が接続
され、前記各パワー素子をスイッチング切替することにより電機子巻線が形成する回転磁
界が任意の極数になるように切替できる固定子とを備え、前記電機子コイルに接続された
パワー素子のスイッチングを任意の極数M(Mは整数)になるように切り替え、所定の短時間だけ通常の運転時の電流よりも大きい第1の磁化電流を流すことによって発生する磁界により前記複数Lの可変磁力磁石うちの円周方向に等間隔ずつ離れたそれよりも少ない複数K(K<L)の可変磁力磁石の磁化方向を逆向きに不可逆的に磁化して磁極数を変化させて第1の磁極数モードにし、前記電機子コイルに接続されたパワー素子のスイッチングを切替えて所定の短時間だけ前記第1の磁化電流とは逆向きの第2の磁化電流を流すことによって発生する磁界により前記不可逆的に磁化方向を逆向きに変えた複数Kの可変磁力磁石を元の磁化方向にして磁極数を元に戻して第2の磁極数モードにし、前記第1の磁極数モードと第2の磁極数モードとの間で相互に磁極数モード状態を切り替えていずれの磁極数モードでも運転できるようにした永久磁石モータである。

 本発明のさらに別の特徴は、回転子鉄心内に複数L(Lは整数)の可変磁力磁石を円周
方向に等間隔で、かつ、回転子の外周に現れる磁極が全周で周期的にNS極の対になるよ
うに埋め込んだ回転子と、各電機子コイルまたは複数の電機子コイル毎にパワー素子が接
続され、前記各パワー素子をスイッチング切替することにより電機子巻線が形成する回転
磁界が任意の極数になるように切替できる固定子とを備えた永久磁石モータの運転方法で
あって、低速回転(大トルク)域では、前記電機子コイルに接続されたパワー素子のスイ
ッチングを任意の極数M(Mは整数)になるように切り替え、所定の短時間だけ通常の運
転時の電流よりも大きい第1の磁化電流を流すことによって発生する磁界により前記複数
Lの可変磁力磁石うちの円周方向に等間隔ずつ離れたそれよりも少ない複数K(K<L)
の可変磁力磁石の磁化方向を逆向きに不可逆的に磁化して磁極数を変化させて第1の磁極
数モードにし、中速及び高速回転域では、前記電機子コイルに接続されたパワー素子のス
イッチングを切替えて前記電機子巻線の結線を前記第1の磁極数モードにしたときと同様
の結線にし、所定の短時間だけ前記第1の磁化電流とは逆向きの第2の磁化電流を流すこ
とによって発生する磁界により前記不可逆的に磁化方向を逆向きに変えた複数Kの可変磁
力磁石を元の磁化方向にして磁極数を元に戻して第2の磁極数モードにし、前記第1の磁
極数モードと第2の磁極数モードとの間で相互に磁極数モード状態を切り替えて運転する
永久磁石モータの運転方法である。

 本発明のさらに別の特徴は、回転子鉄心内に複数L(Lは整数)の可変磁力磁石と複数
M(MはLの2倍)の固定磁力磁石とを、1個の可変磁力磁石と2個の固定磁力磁石とを
1組とし、回転子鉄心の全周に渡り、固定磁力磁石N極、可変磁力磁石、固定磁力磁石N
極の順の配列の組と、固定磁力磁石S極、可変磁力磁石、固定磁力磁石S極の順の配列の
組にして等間隔に埋め込んだ回転子と、極数切替にて電機子巻線の結線をL極とL+M極
との間で切替できる固定子とを備え、前記電機子巻線の結線を前記L極に切り替え、所定
の短時間だけ通常の運転時の電流よりも大きい第1の磁化電流を流すことによって発生す
る磁界により前記L個の可変磁力磁石の磁化方向を隣り合う固定磁力磁石とは逆向きに不
可逆的に磁化してL+M極の磁極数の第1の磁極数モードにし、前記電機子巻線の結線を
前記第1の磁極数モードにしたときと同様の結線にし、所定の短時間だけ前記第1の磁化
電流とは逆向きの第2の磁化電流を流すことによって発生する磁界により前記不可逆的に
磁化方向を逆向きに変えた前記複数Lの可変磁力磁石を元の磁化方向に戻して磁極数を元
のL極に戻して第2の磁極数モードにし、前記電機子巻線の結線を前記第1の磁極数モー
ドにしたときと同様の結線にし、所定の短時間だけ前記第1の磁化電流を流すことによっ
て発生する磁界により前記不可逆的に磁化方向を逆向きに変えた複数L個の可変磁力磁石
を元の磁化方向にして磁極数を元のL+M極の前記第1の磁極数モードに戻し、前記第1
の磁極数モードと第2の磁極数モードとの間で相互に磁極数モード状態を切り替えていず
れの磁極数モードでも運転できるようにした永久磁石モータである。

 本発明のさらに別の特徴は、回転子鉄心内に複数L(Lは整数)の可変磁力磁石と複数
M(MはLの2倍)の固定磁力磁石とを、1個の可変磁力磁石と2個の固定磁力磁石とを
1組とし、回転子鉄心の全周に渡り、固定磁力磁石N極、可変磁力磁石、固定磁力磁石の
順の配列の組と、固定磁力磁石S極、可変磁力磁石、固定磁力磁石S極の順の配列の組に
して等間隔に埋め込んだ回転子と、極数切替にて電機子巻線の結線をL極とL+M極との
間で切替できる固定子とを備え永久磁石モータの運転方法であって、低速回転(大トルク
)域では、前記電機子巻線の結線を前記L極に切り替え、所定の短時間だけ通常の運転時
の電流よりも大きい第1の磁化電流を流すことによって発生する磁界により前記Lの可変
磁力磁石の磁化方向を隣り合う固定磁力磁石とは逆向きに不可逆的に磁化してL+M極の磁極数の第1の磁極数モードにし、前記低速回転(大トルク)域から中速及び高速回転域
に移るときには、前記電機子巻線の結線を前記第1の磁極数モードにしたときと同様の結
線にし、所定の短時間だけ前記第1の磁化電流とは逆向きの第2の磁化電流を流すことに
よって発生する磁界により前記複数Lの可変磁力磁石の磁化方向を不可逆的に逆向きに変
えてL極の磁極数の第2の磁極数モードにし、前記中速及び高速回転域から低速回転(大トルク)域に移るときには、前記電機子巻線の結線を前記第1の磁極数モードにしたときと同様の結線にし、所定の短時間だけ前記第1の磁化電流を流すことによって発生する磁界により前記不可逆的に磁化方向を逆向きに変えた複数L個の可変磁力磁石を元の磁化方向にして磁極数を元のL+M極の第1の磁極数モードに戻し、前記第1の磁極数モードと第2の磁極数モードとの間で相互に磁極数モード状態を切り替えていずれの磁極数モードでも運転できる永久磁石モータの運転方法である。

効果

本発明によれば、機器定数が可変で、かつ、極数変換も可能な永久磁石モータを実現でき、それによって広い回転域での運転が可能である。

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特許情報

特許第5971841号

JPB 005971841-000000