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電気化学法による水素同位体ガスの濃縮分離装置です。室温で水素(H2)と重水素(D2)を効率よく、低コストで分離できます。また、固体電解質膜利用のためハンドリングが容易です。
水素同位体ガスの濃縮分離
天然に存在する水や水素ガス等を構成する水素の安定同位体として、質量数が1である
(原子核が1個の陽子のみからなる)水素 1 H(以下、H)と、質量数が2である(原子
核が1個の陽子と1個の中性子からなる)重水素 2 H(以下、D)があり、Dの存在比率
はHに比べて圧倒的に小さい。H、Dの化学的性質はほぼ同様であるが、原子力分野や半
導体製造分野においては、Dが特に有効となる用途が知られている。このため、HとDが
混在する水や水素ガスの中から特にDを選択的に抽出する(分離する)技術が求められて
いる。ただし、HとDを瞬時に完全に分離することは実質的には不可能であるため、実際
にはこれらが混在する物質(水、水素ガス等)に対して、いずれか一方(特にD)の濃度
が高くなるような処理が分離のために行われる。
HとDの化学的性質はほぼ同様であるため、化学的な手法では一般的には両者は容易に
は分離されず、その特性、例えば沸点や蒸気圧の違いを用いて両者を分離する技術が知ら
れている。しかしながら、このような技術においては高温や極低温、複雑なプロセス、高
価な化学物質等が必要となり、Dを安価に得ることは困難である。また、HとDの零点振
動エネルギーや原子サイズの違いを用いてこれらを分離する技術も知られているが、この
場合においても極低温の環境が要求されるため、同様にDを安価に得ることは困難である
。
また、非特許文献1に記載されるように、水素を透過させる金属(Pd等)中のHとD
の拡散係数が異なることを利用して、これらの分離を行う技術も知られている。この方法
は前記の化学的な手法等に比べれば単純な構成で容易に実現することが可能であるが、使
用される金属が水素によって脆化するという問題が存在する。脆化の影響を低減するため
には、例えば金属(Pd等)を厚くすることが有効であり、その厚さは例えば数百nm〜
数十μmとされる。また、この金属を他の金属(Ag等)との合金として用いることも有
効である。ただし、これらの場合には、この金属材料が高価となる、あるいは分離効率が
低下する等の問題がある。また、この処理を高温で行うことも有効であるが、これによっ
て装置構成が複雑となる。更に、水素をこの金属中において透過させるためには、この金
属を挟んだ上流側と下流側で圧力差を設けることも必要であり、このためには複雑な装置
構成も必要となる。
これに対して、特許文献1には、燃料電池として機能する膜電極集合体(MEA:Me
mbrane Electrode Assembly)を用いてHとDの分離を行う技術が記載されている。このMEAにおいては、電極(陽極、陰極)間にプロトン伝導体が
挟まれ、陽極側にHとDが含まれる水素ガスが、陰極側に酸素ガス(大気)が供給される
。この場合、陽極側から供給されてプロトン伝導体を通過した正のHイオン又はDイオン
が陰極側で酸素と反応して水が生成されると共に、陽極・陰極間に起電力が発生するとい
う、水の電気分解と逆の作用が発現する。プロトン伝導体としては、ナフィオン(Naf
ion:登録商標)等が用いられる。ここで陽極側に供給される水素ガス中には、正確に
は H 2 、HD、D 2 が存在し、陰極側で生成される水は正確にはH 2 O、HDO等の混合
物となる。この際、HイオンとDイオンのプロトン伝導体中の伝導の状況や反応速度の違
いの違いに起因して、陰極側ではH 2 OよりもDが含まれるHDOが生成されやすくなる
ため、陰極側ではD成分が陽極側よりも増加する。
ここで、陽極側では酸化反応、陰極側では還元反応が発生し、陽極、陰極を構成する材
料は、これらの反応を促進する触媒として機能する材料で構成される。このような材料と
して、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)等の貴金属等が用いられる。ただし、燃料電池
においては、この電極全体を例えば緻密にPtで構成するよりも、Pt微粒子を分散させ
て構成した方が、触媒反応に供するPtの表面積を増大させることができ、かつプロトン
伝導体中にHイオン、Dイオンを輸送しやすくなるために、より高効率となる。このため
、この場合の電極としては、非特許文献2等に記載されるように、陽極、陰極として、P
t微粒子がカーボン(C)シートに分散された構成のPt/C電極が特に好ましく用いら
れる。この装置によれば、非特許文献1に記載の装置を用いた場合よりも、安価に重水素
を濃縮することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【非特許文献1】鈴木康夫、木村尚史、「パラジウム合金膜を用いるトリチウムを含む水
素同位体の分離に関する研究」、生産研究、第36巻6号293頁(1983年6月)
【非特許文献2】深沢大志、梅武、鈴木直俊、「燃料電池向け触媒層の省白金化技術」、
東芝レビュー、第68巻4号54頁(2013年)
【特許文献】
【特許文献1】国際公開第2018/049343号
特許文献1や非特許文献2に記載の技術においては、濃縮(分離)によって得られるの
はHDO等の液体であり、気体の状態のD(HD、D 2 等)を得ることは困難であった。
更に、非特許文献1に記載の技術や特許文献1に記載の技術においては、HとDの分離効
率は低いため、更に安価にDを得ることができる技術が求められた。
このため、水素(H)と重水素の混合ガスから気体状態の重水素を安価に得るための技
術が求められた。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提
供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の水素同位体濃縮装置は、水素( 1 H)と、前記水素の同位体である水素同位体
とが混在した入力ガス中の前記水素同位体の前記水素に対する濃度を高めた出力ガスを出
力する水素同位体濃縮装置であって、水素の正イオンを伝導させるプロトン伝導体で構成 され、対向する2つの主面を具備するプロトン伝導層と、パラジウム(Pd)、バナジウ
ム(V)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)のいずれかである水素透過金属の薄膜で構
成され、前記プロトン伝導層の一方の主面において形成された第1電極と、前記プロトン
伝導層の他方の主面において形成された第2電極と、を有する膜電極集合体を具備し、前
記膜電極集合体において、前記第1電極と前記第2電極の間に直流電圧が印加され、前記
第1電極、前記第2電極のうち陽極とされた一方の側と接する前記入力ガス中の前記水素
及び前記水素同位体が前記第1電極と前記第2電極との間を流れ、前記第1電極、前記第
2電極のうち陰極とされた他方の側で生成ガスを発生させた後で、前記生成ガスを生成す
るために前記水素及び前記水素同位体が消費された後の前記入力ガスである排出ガス、前
記生成ガス、のうち前記水素同位体の濃度が高くなった側の一方が前記出力ガスとして取
り出されることを特徴とする。
本発明の水素同位体濃縮装置において、前記第2電極は白金(Pt)粒子を含み、前記
第1電極における前記水素透過金属は、前記第2電極における白金よりも緻密な構造を具
備することを特徴とする。
本発明の水素同位体濃縮装置において、前記第2電極は、前記水素透過金属の薄膜で構
成されたことを特徴とする。
本発明の水素同位体濃縮装置において、前記薄膜は前記水素透過金属の蒸着膜であるこ
とを特徴とする。
本発明の水素同位体濃縮装置において、前記第1電極に正側、前記第2電極に負側の電
位が印加され、前記排出ガスが前記出力ガスとされたことを特徴とする。
本発明の水素同位体濃縮装置において、前記第2電極に正側、前記第1電極に負側の電
位が印加され、前記生成ガスが前記出力ガスとされたことを特徴とする。
本発明の水素同位体濃縮装置は、単原子層グラフェンを介して前記第1電極と前記プロ
トン伝導層とが接することを特徴とする。
本発明の水素同位体濃縮装置において、前記入力ガスが入力されてから前記出力ガスが
出力されるまでに複数の前記膜電極集合体が段階的に用いられ、前段の前記膜電極集合体
からの前記出力ガスが、隣接する後段の前記膜電極集合体に対する前記入力ガスとして用
いられることを特徴とする。
本発明の水素同位体濃縮装置において、一つの前記膜電極集合体における、前記排出ガ
ス、前記生成ガスのうち前記出力ガスとされなかった一方が、当該一つの前記膜電極集合
体よりも前側の段の前記膜電極集合体に対する前記入力ガスとして用いられることを特徴
とする。
本発明の水素同位体濃縮装置は、前記第1電極、前記第2電極、及び前記プロトン伝導
層を具備する膜電極集合体母材が用いられ、前記複数の前記膜電極集合体の各々は、単一
の前記膜電極集合体母材における面内の異なる領域として形成されたことを特徴とする。
本発明の水素同位体濃縮装置において、前記水素同位体は二重水素( 2 HあるいはD)
、又は三重水素( 3 HあるいはT)であることを特徴とする。
本発明は以上のように構成されているので、水素(H)と重水素の混合ガスから気体状
態の重水素を安価に得ることができる。
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