天然物由来新規細胞溶解活性物質の農薬・医療への応用

2022.09.27 By 東洋大学

材料工学

技術概要

血球溶血活性および細胞毒性を有するツノロウムシ由来のポリペプチドの提供および、農薬・医療・診断への応用。天然物由来新規農薬開発、循環器系医療関係、食品加工用添加物、細胞内容物抽出用試薬

用途・応用

新規製薬開発、循環器系医療関係

背景

 溶血剤は、赤血球の細胞膜を破壊して原形質を漏出させる物質である。溶血剤は、ヘモグ ロ ビ ン 量 の 測 定 や 、 赤 血 球 の 除 去 お よ び 白 血 球 の 分 類 な ど に 用 い ら れ る 。 溶 血 剤 は さ ら に 、 種 々 の 疾 患 の 検 査 ・ 診 断 に も 使 用 さ れ 得 、 例 え ば 血栓関連疾患等における治療的応用の可能性も考えられる。

 溶血は様々な方法で達成され得る。例えば、赤血球を機械的に損傷させたり、低張液に晒したりすることにより、物理的に溶血が達成される。また、有機溶媒や界面活性剤により化学的に溶血を誘導することもできる。

 生物学的な溶血の例としては、赤血球に対する抗体を介した生体内での溶血現象が知られている。また、レンサ球菌等の細菌が溶血活性を有する因子(溶血素)を産生することが知られている。さらに、ナマコ類の動物やキノコに由来するレクチン(糖結合タンパク質 ) に も 溶 血 活 性 を 有 す る も の が 存 在 す る こ と が 知 ら れ て い る  。 し か しながら、生物由来の溶血素はその実体が詳細に理解されていないことが多く、産業的な利用例はまだ乏しい。

課題

 上記のように、溶血剤には多様な応用可能性が存在し、新規な溶血剤に対するニーズが存在し続けている。特に、安価な材料から簡便に入手できる溶血剤に対するニーズが存在する。特に、生物由来、とりわけポリペプチドに基づく溶血剤は、多様な生化学的および遺伝子工学的技術の適用による開発も可能であり、臨床分野その他において新たなツールとして高い有用性を提供することが期待される。

 

手段・効果

カイガラムシは、カメムシ目ヨコバイ亜目カイガラムシ上科に属する昆虫である。本発明 に お い て は 、 ツ ノ ロ ウ ム シ ( 角 蝋 虫 ) ( ツ ノ ロ ウ カ イ ガ ラ ム シ と も い う 。 学 名 Ceroplastes ceriferus) と い う カ イ ガ ラ ム シ が 溶 血 剤 の 供 給 源 と し て 利 用 さ れ る 。

ツ ノ ロ ウ ム シ は 、 体 長 6~ 9ミ リ メ ー ト ル で 、 大 き な 蝋 殻 を 有 し て 厚 み が あ り 、 淡 紅 色 をわ ず か に 帯 び た 灰 白 色 の 昆 虫 で あ る ( 図 1 ) 。 成 熟 し た 殻 は ド ー ム 状 に 丸 く な る 。 ツ ノ ロウ ム シ は 、 年 1回 発 生 し 、 越 冬 成 虫 は 5月 に 産 卵 し 、 6月 中 旬 か ら 下 旬 に か け て 幼 虫 が 孵 化し 、 9~ 10月 に 成 虫 と な る 。 ツ ノ ロ ウ ム シ は 、 ミ カ ン 、 チ ャ 、 ツ バ キ 、 ケ ヤ キ な ど 、 多 くの植物に寄生し、すす病を引き起こして大害を与える。ツノロウムシは、本州の宮城県・山形県以南の日本全土および世界各地に分布する。

 ツ ノ ロ ウ ム シ の 蝋 殻 の 内 部 は 赤 色 で あ り ( 図 1) 、 こ の 赤 色 色 素 の コ チ ニ ー ル が 食 品 添加物として利用されている。また、ロウの部分は、床のワックスやコーティング剤として使用されている。このように、広く生息しかつ駆除対象となる害虫であるツノロウムシから、有用な物質を採取して活用することは、産業的観点から非常に有意義かつ効率的である 。

 本発明者らは、驚くべきことに、ツノロウムシが産生するポリペプチドの中に溶血活性を有するものが存在することを発見し、そのポリペプチドを単離することに成功した。本発明者らはさらに、そのポリペプチドが、非赤血球細胞に対する細胞毒性を有することを発見した。本発明はこれらの発見に基づいて完成された。

 従って、本発明は以下の側面を含む。
[1]配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む、ツノロウムシ由来のポリペプチド。
[2]前記[1]に記載のポリペプチドを含む、溶血剤組成物。
[3]赤血球を含む液体試料に、前記[1]に記載のポリペプチドまたは前記[2]に記
載の組成物を接触させることを含む、溶血方法。
[4]前記液体試料が血液を含む、[3]に記載の溶血方法。
[5]前記[1]に記載のポリペプチドを含む、細胞毒性組成物。
[6]前記[1]に記載のポリペプチドを含む、抗腫瘍組成物。

 

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特許情報

特許第6512681号

JPB 006512681-000000