磁性複合体

2022.09.09 By 筑波大学

材料工学

技術概要

大きな負の一軸磁気異方性を発現することができる磁性複合体を提供することを目的とする。

用途・応用

磁性体材料

背景

 磁性材料は、種々の磁気応用製品に用いられている。特に、絶縁性を有する磁性セラミックスであるフェライトは、高周波利用の機器に適した材料として注目が集まっている。
 フェライトの高周波環境下での使用態様は、集積回路のインダクタンス素子、高周波ノイズを除去する電波吸収体等、多岐に渡っている。

 高周波デバイスに用いられる磁性材料は、種々のものが知られている。
 例えば、特許文献1には、六方晶マグネトプラムバイト型結晶構造を基本構造とする酸化物系イオン結晶磁性体が記載されている。
 また例えば、特許文献2には、Co-Feフェライト材料が記載されている。さらに、磁性粒子と樹脂との混合体を所定の形状にすることにより、磁性材料のエネルギー損失(磁気損失)を抑制できる高周波磁性材料が記載されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2001-39717号公報
【特許文献2】国際公開第2011/078044号

課題

 しかしながら、特許文献1及び特許文献2等に記載された磁性体材料を用いても、数百MHz~GHz帯における高周波領域では、十分な磁性特性を得ることができないという問題があった。

 フェライトは、高周波まで一定の透磁率と低い磁気損失を維持することができるが、特定の周波数付近で透磁率(μ)が急減してしまう。この急減する周波数が、磁性体として実用可能な限界の周波数であり、スニークの限界と呼ばれている。

 透磁率の急減は、磁気共鳴現象(自然共鳴)によって生じる。磁気共鳴現象とは、磁性体の磁気モーメントの歳差運動の周波数と印加した電磁場の周波数とが一致し、共鳴する現象を意味する。共鳴周波数を大きくするためには、磁気モーメントの歳差運動の周波数を変更する必要がある。歳差運動の周波数は、磁性体が有する磁気異方性定数に大きな影響を受ける。すなわち、自然共鳴の共鳴点をより高周波側に伸ばすためには異方性定数を高めることが求められている。

 本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、大きな負の一軸異方性を有する磁性複合体を提供することを目的とする。

手段

 本発明者らは、鋭意検討の結果、基板上に積層するフェライトに圧縮歪を与えることで、フェライトの結晶構造をc軸方向に伸ばし、大きな負の一軸異方性を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
 本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。

(1)本発明の一態様にかかる磁性複合体は、基本構造として立方晶構造を有する基板と、前記基板上に積層され立方晶フェライト構造を有する磁性体膜と、を備え、前記磁性体膜のc軸方向の格子定数がa軸方向の格子定数より大きい。

(2)上記(1)に記載の磁性複合体において、前記磁性体膜が、スピネルフェライト構造を有していてもよい。

(3)上記(1)または(2)のいずれかに記載の磁性複合体において、前記磁性体膜が、コバルトフェライトであってもよい。

(4)上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の磁性複合体において、前記磁性体膜の膜厚が、10~200nmであってもよい。

(5)本発明の一態様にかかる高周波デバイスは、上記(1)~(4)のいずれか一つに記載の磁性複合体を備える。

効果

 本発明の一態様にかかる磁性複合体を用いることで、大きな負の垂直磁気異方性を得ることができる。その結果、自然共鳴の共鳴周波数を大きくすることができる。すなわち、共鳴周波数以下の領域で好適に駆動することができる高周波デバイスを得ることができる。また共鳴周波数では電磁波を吸収するため、より高周波数域の電磁波を遮断することができる高周波フィルターを得ることができる。

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特許情報

特許第6713659号

JPB 006713659-000000