軽くて錆びないチタン製刃物の製造方法

2022.08.02 By 日本原子力研究開発機構

材料工学

技術概要

チタンと鋼のクラッド材です。 銅合金等の中間層を介在させ、素材の内部の酸素除去を行うことにより層間剥離の起こりにくいチタンクラッド刃物を製作しました。

用途・応用

錆びずに軽量な刃物

背景

 現在、錆びずに軽量な刃物としてチタン合金やセラミックの刃物が市販されている。チタン合金刃物は刃先の硬度が低いため切れ味が悪く、またセラミック刃物は硬度は高いが、欠けや割れに弱く、これらは使い難い刃物である。
 
 そこで切刃には硬度の高いステンレス刃物鋼、それ以外のところには軽量性と耐食性に優れたチタン系材料で構成した使い易い刃物が使われている。
 
 しかし、ただ単にチタン系材料とステンレス刃物鋼を直接クラッド接合したのでは熱間圧延時に硬くて脆い金属間化合物がクラッド接合境界部に生じ、接合部分より剥離を起こしてしまう問題がある。
 
 そこで金属間化合物の生成を防ぐために、接合部にNbやTa等の金属薄層を挿入すればチタンクラッド刃物鋼を製造する事が出来るが、切刃にステンレス刃物鋼を使用している為、このチタンクラッド刃物鋼を刃物として使用するためには1000℃以上の高温での焼き入れ硬化等の熱処理が必要である。この高温の熱処理によりステンレス刃物鋼とチタン系材料の接合境界部に硬質で脆弱な金属間化合物が生じ易くなることから、焼き入れ硬化処理を短時間に行なう必要があるが、時間が長くなると接合部より剥離を起こす為、今までは熱処理が非常に難しかった。例えば特許文献1ではNbとNiを金属薄層とするチタンクラッド鋼材の製造方法を述べており、焼き入れ時の炭素拡散を防止し、さらに金属間化合物の生成も防いでいる。また、特許文献2では上記文献1を基に製作した刃物材について述べている。しかし、焼鈍及び焼き入れ工程の各処理温度が低く、その処理時間も短いことから刃物としての充分な硬度が得られにくい。さらに、熱間圧延前に真空脱気による酸素の除去(層間剥離の防止)処理はなされていない。また特許文献3では軽量で、耐食性と強度に富み、切れ味に優れたチタン合金を刃材とした純チタン-チタン合金クラッド刃物の製造について述べており、軽量で折損無く金属イオンに起因したアレルギー弊害の無い刃物が得られ、錆の発生が無く衛生的で人体にも優しいが、刃物表面硬度はかなり低い。

課題

 本発明は、前記従来のチタンクラッド刃物鋼の問題を解決するためになされた発明であり、刃物として使用するために焼き入れ硬化処理を行っても、クラッド接合部から層間剥離を起こさない軽量性と耐食性に優れたチタン材料で構成した、使い易いチタンクラッド刃物鋼を実現することにある。

手段

 そこで本発明は、ステンレス刃物鋼材と、チタン系材料で構成する刃物外皮材と、前記ステンレス刃物鋼材と前記刃物外皮材との間に、ステンレス刃物鋼材ならびに刃物外皮材とは異なる複数の材料を重ね合わせたクラッド材を加工したチタンクラッド鋼刃物であって、前記ステンレス刃物鋼材ならびに刃物外皮材とは異なる複数の材料は、ステンレス刃物 鋼 材 側 か ら 、 銅 合 金 、 元 素 周 期 表 第 VI族 元 素 金 属 の 一 つ で あ る M o 、 元 素 周 期 表 第 V 族元素金属の順に重ね合わせた構成とするものである。

 更に、前記銅合金は白銅であり、前記V族元素金属は、Ta、V(バナジウム)、Nbのいずれかで構成するチタンクラッド鋼刃物とするものである。

効果

 本発明のチタンクラッド鋼刃物およびその製造方法によれば、つぎの効果を得ることができる。
 ステンレス刃物鋼とTiとの間の金属中間層として、白銅-Mo-Ta、白銅-Mo-Nb、あるいは、白銅-Mo-Vの組合せとすることで、白銅は、ステンレス刃物鋼からの炭素の拡散を防止し、Ta、Nb、Vは、ステンレス刃物鋼とTiとの間の金属間化合物の生成を抑制することができる。
 また、金属中間層の白銅は、Moの熱間加工性の不良による層切れを回避して、ステンレス刃物鋼とTiとの直接の接触を防ぐことにより、脆い金属間化合物の形成によるチタンクラッド刃物鋼の材質劣化、層間剥離を防止することができる。

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特許情報

特許第5354202号
特許第5858398号
いずれも共願:武生特殊鋼材㈱

JPB 005386741-000000