「食物繊維」が第6の"栄養素”に?

2026.02.05

管理栄養士の栄 養太郎です。
年が明け、穏やかに過ごせるかと思っていたところ、全国各地で大雪に見舞われ、北海道、特に札幌では交通含めて大混乱。大変な気候になってしまいました。

 

さて、皆さんは、「食物繊維」を意識して摂っているでしょうか?
基本的に食物繊維は、野菜、きのこ、海藻のような植物を食べないと摂取することができません。この「食物繊維」にニュースが舞い込んできました。

「食物繊維」が第6の栄養素になるかもしれない?というニュースについてコラムを書いてみたいと思います。

はじめに: 生命を支える「栄養」

私たちは毎日、食事をしています。
「食事」をとる、意味は様々ありますが、最も重要なことは食品に含まれる栄養素や栄養成分を体内に取り入れる、ということです。
これは、「栄養」の定義から読み取ることができます。

栄養の定義: 食事を摂取して、その成分を消化吸収し、代謝することで、生命を維持し、成長・発達していくこと

栄養士会HPを参考

 

英語では、「Nutrition」ですが、日本語では「栄養」となります。
この「栄養」という言葉は、日本の栄養学の研究組織である、国立栄養研究所 (現: 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所) の創設者である佐伯矩博士が、「栄養」という漢字の使用を提唱したことで、現在の表記が定着したと言われています。

余談ではありますが、生命維持に必要なものを栄養素 (たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)、それ以外を非栄養素 (栄養成分ということもある) と分けて考えることもあります。

 

三大栄養素と五大栄養素

「三大栄養素」や「五大栄養素」という言葉に聞き馴染みがあると思いますが、これらは日本独特の呼び方です。
世界共通の呼び方は、以下の通りです。

●三大栄養素 → マクロニュートリエント (マクロ栄養素): たんぱく質、脂質、炭水化物
●三大栄養素以外 → マイクロニュートリエント (マイクロ栄養素): ビタミン、ミネラル

現時点の栄養学では、「食物繊維」は独立した栄養素、として取り扱われていません。

「食物繊維」は、炭水化物の一種として、栄養素に加わっています。

炭水化物: 糖質 (ブドウ糖、果糖、ショ糖、グリコーゲンなど) +食物繊維

栄養学の科学的な歩みは、18世紀後半のフランスの科学者ラボアジエから始まるとされます。ラボアジエは呼吸を「体内の燃焼(酸化)」として捉え、栄養学にも導入しました。

その後、19世紀に入ると、科学的な分析技術が進歩し、たんぱく質、脂質、炭水化物の三大栄養素 (マクロニュートリエント) の概念が確立されました。
そして、20世紀前半にかけて、微量ながら生命維持に不可欠なビタミンや、骨の構築、赤血球の原料となる鉄などのミネラル(無機質)が次々と発見されました。これにより、三大栄養素にマイクロニュートリエントを加えた「五大栄養素」という概念が、栄養学の基礎として定着してきました。

 

食物繊維の基本

ここで、本題の食物繊維の基本についてまとめてみたいと思います。
食物繊維は、かつては「体のエネルギーにならない食べ物の残渣 (カス)」として軽視されていました。
しかし現在では、「ヒトの消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義され、ヒトの健康を守る重要な要素として広く認められています。

食物繊維には大きく分けて2つの種類があります。

 

 

どのような栄養素をどれくらい摂取した方が良いか、を示している「日本人の食事摂取基準(2025年版)」を見てみると、食物繊維は重要な栄養素として位置付けられています。
食物繊維は、生活習慣病の発症予防を目的、とした摂取量が設定されています (目標量という)。

<食物繊維の1日の目標量>
18~29歳 [男] 20g以上、[女] 18g以上
30~64歳 [男] 22g以上、[女] 18g以上
65~74歳 [男] 21g以上、[女] 18g以上
75歳以上 [男] 20g以上、[女] 17g以上

 

「第6の栄養素」への昇格?

長らく「五大栄養素」という概念が継続してきましたが、最近発表された論文において、「第6の栄養素」として正式に定義されるべきでは?という議論が提起されました。
先述している通り、食物繊維は、様々な疾患の発症リスクを低下させるだけでなく、死亡率を下げることにも寄与することが明らかになっています。

このことから、食物繊維は、必須栄養素 (★) として認められる条件である「健康に有益である」「体内で合成できない」「不足により健康障害が生じる」 を全て満たしており、ビタミン、ミネラルなどに並ぶ既存の栄養素と同じに扱うべきだと主張されています。

★必須栄養素: 体内で合成できない、あるいは必要量を十分に合成できないため、必ず食事から摂取しなければならない栄養素と定義され、日本で言う五大栄養素の一部と考えて良い。

今後、この議論が進み、まとめられていくことによって、食物繊維が炭水化物から独立して第6の栄養素として認められる日が来るかもしれません。
もし、栄養素として認められるとなると、50年以上ぶりの新しい栄養素ということになります。

栄養学を学んできた栄養太郎としては、かなり胸が熱い出来事になるかもしれません。
ただし、一般の皆様にとっては、あまり特別なニュースにならないかもしれませんが...

 

まとめ

食物繊維を摂取する意義や第6の栄養素になるかもしれない?というニュースに触れてきました。
食物繊維が「第6の栄養素」になるか否かは、管理栄養士として大変興味深く、今後の議論・研究報告を注視していきたいと思っています。
もし、「第6の栄養素」となれば、栄養学の新しい1ページになると言っても過言ではないでしょう。

食物繊維を十分に摂取することは、私たちの健康づくりの鍵となります。したがって、 毎日の食事で、穀類、野菜、果物、豆類、きのこ、海藻を意識的に取り入れることが重要です。

本コラムをきっかけに、少しでも食物繊維に興味を持っていただければ嬉しいです。

 

 

 

参考資料

EurekAlert!: Otago experts propose fiber as first new essential nutrient in 50 years

Mayo Clinic: Dietary fiber Essential for a healthy diet

University of Dundee: Dietary fibre should be classed “essential nutrient” for good health 

厚生労働省: 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書

厚生労働省 健康日本21アクション支援システム Webサイト:食物繊維

西南女学院大学:栄養学史

楽しくわかる栄養学 第2版、中村丁次、羊土社、2025年、ISBN 978-4-7581-2182-8

健康づくりの栄養学 第4版、[編] 小林修平、建白社、2025年、ISBN 978-4-7679-0768-0

 

参考文献

1)Reynolds, Andrew N., et al. "Dietary fibre as an essential nutrient." Nature Food (2026): 1-2.
2)鈴江緑衣郎. "栄養学の過去と未来." 栄養学雑誌 31.6 (1973): 219-220.
3)大礒敏雄. "日本における最近の国民栄養の動向と栄養改善行政の貢献." 栄養学雑誌 24.5-6 (1966): 205-207.

 

 

 

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【著者紹介】栄 養太郎

管理栄養士、公認スポーツ栄養士。
専門分野は、スポーツ栄養、健康科学、学位 [博士 (学術)] 取得後、栄養系の大学教員になりました。
現在は、ジュニアアスリートを中心に、スポーツ栄養教育の実施と選手から得られたデータを評価・分析する研究を行っています。
スポーツ栄養に関する情報を様々な形で発信したいと思い、活動しています。