世界はクルクル回ってる!? 地動説はどう証明された?

2024.02.19

今日も今日とて、東の空から日が昇り、西の空へと沈んでいく。46億年前から1日として変わったことのない、地球の日常だ。地球自身が回ることで一日が作られ、地球が太陽の周りを周回することで1年ができる。現代では当然の知識だが、これを提唱した人物がいる。15世紀の天文学者コペルニクスだ。そんな彼の生誕日にちなんで、毎年2月19日は『天地の日』とされている。

 

技術の発達した現在では、地球は広大な宇宙に漂っている惑星の一つだという事はよく知られている。しかしながら、コペルニクスの活躍した16世紀はまだ、地球の外に出た人類は一人もいなかった。それにもかかわらず、地球が公転していると証明されたのはどうしてだろう? そこで今回は、地動説がどのように証明されたのかについて解説していく。

 

 

少し詳しく 〜地動説とガリレオ衛星〜

 コペルニクスが地動説を提唱したのは1543年のことだったが、その後も天動説は支持され続けていた[注1]。しかしながら1610年、イタリアの天文学者ガリレオがある天体を発見したことによって、地動説証明への第一歩が開けた。

 

 突然だがここで問題だ!! ガリレオの発見したある天体とは一体なんだろう? 次の中から考えてほしい。

 

 ①恒星 ②惑星 ③衛星 ④彗星 ⑤その他の天体

 

 


  • 天動説の基本的な考え方は「全ての天体は地球を中心に公転している」というものだ。この前提を覆すには、どんな天体が見つかれば良いだろう?

 

考えはまとまっただろうか? それでは正解を発表しよう。

正解は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

③衛星」だ。

 

 ガリレオが発見したのは、木星の表面を移動する、奇妙な4つの光だ。光は木星の前を右から左に横切り、左の端まで行くと消える。しかしながら、数日経つと光は右の端から再び現れて、そして同じように左へと移動していくのだ。

 

 これはつまり、「何か」が木星の表面を右から左に移動し、その後木星の裏面を左から右に移動しているという事に他ならない。これこそ、世界で最初に発見された衛星だ[注2]

 

 ガリレオ衛星と言われる4つの衛星の発見によって、天動説の基本原則であった「全ての天体が地球を中心に公転している」という前提が覆される[注3]。これによって、地動説証明の第一歩が刻まれる。

 

 ガリレオ衛星の発見によって、宇宙の中心が地球ではないらしいという事は分かった。しかしながらこれでは衛星を持つ天体を発見しただけで、実際に地球自身が公転しているとは言いがたい。それでは、どうしたら地球が公転していると言えるだろう?

 

 続いて、地球が公転しているのを確かめる方法について解説していく。

 

 

さらに掘り下げ 〜地動説と年周視差〜

 部屋の中央に透明なボールを一直線に並べて、こんなことをしてほしい。

 

 並べたボールの最後方に立ち、ボールの列に対して左右に同じ歩数分だけ歩くのだ。当然、右に動けばボールの右の面が、左に動けばボールの左の面が見える。ここまでは大丈夫だろう。

 

 それでは続いて、同じように左右に動きながら、レーザーポインターでそれぞれのボールに光を当ててほしい。ボールは透明なため、光はボールを通過して壁に当たることになる。

 

 この時、壁に光が当たった位置を記録するとどうなるだろう?

 

 すると、手前にあるボールで記録した位置は離れて、遠くにあるボールで記録した位置は近くにあることが分かるだろう。

 

 それではボールではなく天体の場合はどうだろう?

 

 目標となる天体と基準になる天体の位置関係を、半年かけて観察する。基準となる星が固定されるように観察すると、どうなるだろうか[注4]

 

 実はこの時、地球に近い天体は大きく、地球から遠い天体は小さく動いて見える。そう、ボールと同じく天体もまた、地球との距離によって位置が変化するのだ[注5]

 

 このように、地球が移動することによって天体が動いて見える様子を視差という。地球は一年周期で同じ軌道を公転しているため、視差も周期的に動いて見える。この周期的な移動を年周視差という。

 

 年周視差を観測することによって、地球と天体の位置関係が確かに変化していることが分かった。年周視差の観測は、公転証明の直接的な手掛かりだ。しかしながら捻くれるとこんな考え方も出来る。年周視差は地球の方の位置変化ではなく、天体の方の位置変化によって生じるという可能性だ。

 

 なぜ、地球の方が動いていると言えるのだろう?続いて、地球と天体のどちらが動いているかを確かめた原理について解説していく。

 

 

もっと専門的に 〜地動説と年周光行差〜

 紙と長さの違うペン2本を使って、こんなことをしてほしい。

 

 ペン先を紙の上に垂直に立て、上端を指で固定する。この状態のまま、紙を左右に動かすのだ。さて、どんな線が引けるだろう?

 

 恐らくは二重になった全く同じ線が引けていることだろう。引ける線はペンの長さに関わらず、紙をどのように動かしたかのみで決まるためだ。

 

 この事が、地球が動いていることを確かめるのにどう役立つのだろう?

 

 普段生活している中で私たちは普通、天体の浮かぶ空を空間としては捉えていない。もちろん上下左右前後のある空間という知識は知ってはいるが、多くの人は映画のスクリーンのような面だと捉えている事だろう。葉月も面だと捉えている。あまりにも距離が離れすぎているためだ。

 

 空は面として捉えられているわけだから、地球から天体までの距離に関係なく、天体同士の見かけ上の位置関係は固定されている。

 

 そのため、地表で一定期間を観察した時、私たちからは天体までの距離に関わらず天体が一定の幅で周期的に移動しているようにも見える。公転によって、空の面を見る位置が変化するためだ。

 ペンを短く持とうが、長く持とうが、空というキャンパス自体が動いてしまえば引ける線は同じなのと一緒だ。

 

 この時、地表から見える星までの角度と、実際の星までの角度には差が生じる。この現象を、光行差といい、公転によって生じる光行差を特に年周光行差という[注6]

 

 年周視差と年周光行差の発見によって、コペルニクスが提唱してから3世紀以上かけてついに地動説は証明された[注7]今日こんにちでは、誰もが地球が太陽の周りを公転していることを知っている。

 

 ここまで、地動説がどのように証明されたのかについて解説してきたが、いかがだっただろうか? 今回紹介させていただいたのは、地動説証明に至る大きな柱だ。実際にはケプラーによる惑星運動の法則や、ニュートンによる万有引力の発見など、地動説の証明には数多くの発見が必要だったという経緯がある。ご興味のある方は、ぜひそれらの資料についても目を通してみてほしい。

 

 最後に、記事の趣旨からは少し外れるが天体観測に関する研究について2つ紹介して、記事を締めさせていただく。

 

 

ちょっとはみ出し 〜天体観測の今〜

オンラインで星空を見る

 夜は誰にも平等に訪れるが、観測できる星の様子が誰にも同じというわけではない。その時の天気や周囲の光量、そして緯度の違いなど、同じ星空を見るためにクリアするべき条件は少なくない。

 

 しかしながら、同じ星空を眺め、感動や発見を共有したいという願いは決して特殊な願望ではないだろう。

 

 望遠鏡とカメラを組み合わせて、オンラインで天体観測の様子を共有しようという試みがある。望遠鏡がとらえた天体の様子をオンラインツールで共有することで、授業やイベントに活用しようという試みだ。時差のある場所や、夜間の安全の確保が難しい場所でも、安全かつ快適に星空を眺めることが可能になる訳だが、大きさの感覚や現実感が損なわれるという課題もあるようだ。

 

 

生命のいる星を探す

「宇宙人は存在するか?」という題目に対して一度も誰かと議論したことのない人はいないだろう。いる派であれ、いない派であれ、自分なりの根拠を持って意見を交わした筈だ。宇宙人の存在はなぜ人々の心を揺さぶるのだろう? 宇宙人という存在が分かりやすくかつ、未発見だからだ。

 

 けれども近い将来、この議論に決着がつくかもしれない。

 

 JASMINE(ジャスミン)プロジェクトという、2028年打ち上げ予定の人工衛星の計画がある。このプロジェクトの大きな目標の一つが、地球外生命の探査候補となる恒星に対して、生命が存在する可能性のある条件が揃っているのかを観測するというものだ。私たちは広大な宇宙に独りぼっちなのか、それともありふれた存在なのか、その答えが出る日は案外近いかもしれない。

 

 

参考文献

  • 数研出版編集部. 『新課程 視覚でとらえるフォトサイエンス 地学図録』. 数研出版.

  • アダム・ハート=デイヴィス 総監修、日暮雅道 監訳. 『サイエンス大図鑑【コンパクト版】』. 河出書房新社.

  • 国立天文台(https://www.nao.ac.jp/

  • 小山慶太. 『科学史年表 増補版』. 中公新書.

  • 半田 利弘. 『基礎からわかる天文学』 誠文堂新光社.

  • 上西園 武良. 『光行差の解説 -ブラッドリーの計算値の再現-』. 新潟国際情報大学経営情報学部紀要 6, 1-16, 2023-04-01.

  • 原 正. 『学校の天体観測を変える天体望遠鏡用 CMOSカメラ』. 東洋大学教職センター紀要 4 23-30, 2022-03

  • 郷田 直輝. 『JASMINE: 赤外線位置・測光天文観測衛星』. 天文月報 = The astronomical herald 116 (7), 350-359, 2023-07.

脚注

[注1] 「地動説は科学的、天動説は宗教的」という観点の違いだと考える方もおられるかもしれない。しかしながら実は、天動説もまた、プトレマイオスが天体の運行を合理的に説明しようと、観察と実証、計算に基づいて導いた学説の1つでしかない。 (本文へ戻る)

[注2] 「世界で最初に発見された衛星は月では?」と思われるかもしれない。しかしながら、天動説の宇宙観では地球は惑星ではなかった。そのため、地球に衛星は存在しないとされており、月も衛星とは考えられていなかったのだ。 (本文へ戻る)

[注3] この「全ての天体」とは、地球からすぐそばにある月も、地球からずっと離れた未発見の星も、という意味だ。「これらの星が同じように24時間周期で夜空に回っているとしたら、移動速度の差が不自然じゃないか?」というのがコペルニクスが地動説を考えるに至った経緯だとされている。 (本文へ戻る)

[注4] 半年程度とサラリと言ったが、冷静に考えると実験を1回するのに半年かかるわけだ。葉月は分子生物学の研究室にいたので、準備を適切にしておけば1日1回の実験を行なう事が出来た。1回の実験に必要な時間って分野や内容によって様々だな、という当たり前のことを今しみじみと感じている。 (本文へ戻る)

[注5] とはいえ、これはあくまでも理屈上の話だ。実際にこの方法で位置関係の変化を見ようと思っても、家庭用の望遠鏡程度では、変化量が小さすぎて観測できない事はご理解していただきたい。 (本文へ戻る)

[注6] 「年周光行差が見つかったなら、年周視差は要らないんじゃないの?」と思われるかもしれない。しかしながら年周光行差だけでは、地球が固定されていて遠い天体が超長距離を移動している可能性を否定しきれないのだ。そのため、遠い天体ほど年周視差が小さい事を明らかにする必要があったのだ。 (本文へ戻る)

[注7] ちなみに、世界で最初に地動説を提唱したと言われているのは、コペルニクスではなく、ギリシャはサモス島のアリスタルコスだと言われている。なんとコペルニクスに先立つ事、1800年前! (本文へ戻る)

 

【著者紹介】葉月 弐斗一

「サイエンスライター」兼「サイエンスイラストレーター」を自称する理科オタクのカッパ。「身近な疑問を科学で解き明かす」をモットーに、日々の生活の「ちょっと不思議」をすこしずつ深掘りしながら解説していきます。

【主な活動場所】 Twitter Pixiv

このライターの記事一覧