催眠研究の今|催眠のかかりやすさについて(Nature Mental Health 1月号掲載論文)

2024.02.22

今日はこの紹介の後に、もう一編論文を紹介する。というのも、これから紹介する催眠のかかりやすさに関する論文があまりに短いので、紹介した気にならないからで、貧乏性と言えばそれまでだ。

 

本日紹介する論文

とはいえ、今日紹介するスタンフォード大学からの論文は、短くても面白く、今も催眠の医療応用の可能性が続けられていることがよくわかった。

 

タイトルは「Stanford Hypnosis Integrated with Functional Connectivity-targeted Transcranial Stimulation (SHIFT): a preregistered randomized controlled trial(スタンフォード催眠術と機能的脳結合を標的にした経頭蓋脳刺激(SHIFT): 前もって登録した無作為対照試験)」だ。

 

解説と考察

つい先日、いつも世話になっている整体師さんに施術を行ってもらっているとき、整体師さんが「最近は催眠術の話をほとんど聞かないが、催眠術は利用されているのですか?」と聞かれ、答えに困った。

 

何十年も前、テレビでも盛んに催眠術が紹介されていたように思うが、確かに最近はあまり耳にしないし、私が在籍した医学部で催眠術を利用しているのを見たこともなかった。

 

しかし調べてみると、最近では脳イメージや、脳操作を加えた研究が進んでおり、痛みの軽減や、リラクゼーションとして利用が模索されているようだ。

 

そんなときこの論文に出会った。この論文はスタンフォード大学で催眠を研究しているグループからの研究で、特に催眠のかかりやすさをスコア化し、催眠のかかりやすさが前帯状皮質と結合が強い左背外側前頭前野の活動と相関することを明らかにしていた。

 

そこで、前帯状皮質と結合の強い左背外側前頭前野をMRIで選んで、この領域にゆっくりしたθ波長で磁場による刺激を行い、この領域の活動を抑えることが催眠のかかりやすさに影響するかどうかを調べている。

 

結果だが、個人のバラつきは大きいものの、TMS処理後すぐに催眠のかかりやすさを調べると、多くの人でかかりやすさが上昇している。また、その効果は1時間で減少していくが、それでも傾向は残っていることがわかった。

 

まとめと感想

結果はこれだけで、催眠を使うための努力が続けられていること、また脳イメージングを用いてこの研究が行われていること、そして催眠のかかりやすさの回路が明らかになったことなど、催眠研究の現状がよくわかった。次回の整体では是非この話をしたいと思っている。

 

(もう一編の論文も予定しています。)

著者紹介:西川 伸一

京都大学名誉教授。医学博士であり、熊本大学教授、京都大学教授、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長などを歴任した生命科学分野の第一人者である。現在はNPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン (AASJ) 代表理事を務めながら、1日1報、最新の専門論文を紹介する「論文ウォッチ」を連載している。

【主な活動場所】 AASJ(オールアバウトサイエンスジャパン)
オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。

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