目撃情報の確度を高める技術(10月2日 米国アカデミー紀 要掲載論文)

2023.10.17

現在は監視カメラの数が増えたおかげで、目撃による犯人捜しの役割は減ってきたのではと想像する。というのも、目撃者がしばしば当てにならないことは明確で、実際それまで見たこともない顔を覚えることは簡単ではない。

 

本日紹介する論文

今日紹介する英国バーミンガム大学を中心とする国際共同研究は、目撃者情報の確度を高める小さなトリックについて調べた研究で、10月2日米国アカデミー紀要に掲載された。

 

タイトルは「Enabling witnesses to actively explore faces and reinstate study-test pose during a lineup increases discriminability(目撃者が写真を操作して顔の方向を変化させながら積極的に検証することで、個人特定の率を高めることが出来る)」だ。

 

解説と考察

刑事ドラマで目撃者に犯人を特定してもらうとき、取り調べの様子を他の部屋から見せるというシーンがよくあるが、この場合犯人へと誘導するバイアスがかかる心配がある。代わりに、何枚かの写真の中に犯人の写真を混ぜて提示し、その中から犯人を特定してもらうことが行われているようだ。

 

我が国の状況は知らないが、写真の提示方法についてはこれまでも様々な研究があるようで、一枚ずつ順番に提示するのではなく、同時に何枚かを提示して特定してもらうほうが正確なことがわかっているらしい。

 

この研究では、最近検討が始まった新しい方法、すなわち同時に提示された顔写真の画面を目撃者が自由に操作して顔の方向を変えたりしながら以前目撃した犯人を特定する方法を、これまで主に行われている前向き写真の表示による特定と比較した研究だ。

 

結果は、モニター上で見る方向を変えたり、自由に他の顔と比べることが出来る提示の方法を使った相互作用型が、前を向いた写真の中から選ぶ方法、あるいは画面に順番に顔写真が出てくる方法を凌駕していることが確認された。

 

まとめと感想

結果はこれだけで、例えばアイトラッキングを組みあわせたり、あるいは脳の活動をモニターすると言った手法は全く取り入れられておらず、少しでも多くの情報を十分時間をかけて与えることが正確な目撃情報につながっていると結論している。

 

脳科学の裏付けがないとはいえ、犯罪捜査の心理学を科学的に前に進める努力が行われているのに感心した。

著者紹介:西川 伸一

京都大学名誉教授。医学博士であり、熊本大学教授、京都大学教授、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長などを歴任した生命科学分野の第一人者である。現在はNPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン (AASJ) 代表理事を務めながら、1日1報、最新の専門論文を紹介する「論文ウォッチ」を連載している。

【主な活動場所】 AASJ(オールアバウトサイエンスジャパン)
オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。

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