宇宙からの贈り物?! 隕石はどう来るの!?

2023.09.12

 1992年9月12日の日本時間23時23分、アメリカ合衆国はケネディ宇宙センターから一機のスペースシャトルが打ち上げられた。エンデバー号と名付けられたその機体は、一般公募により選ばれた日本人宇宙飛行士・毛利衛まもる氏を乗せて同月20日までのミッションを完遂した。これを記念して毎年9月12日は「宇宙の日」だ。

 宇宙飛行士のように地球の外に行く人もいれば、反対に地球にやってくる存在もいる。ご存知、隕石だ。広い空から突如として降ってくる隕石は、時に幻想的に、時に驚異的に語られる。それにしても、まるで地球を目標にしているかのように降ってくる隕石は、よくよく考えると不思議な存在だ。そこで今回は、流星や隕石がどのように地球に降ってくるのかについて、解説していく。

 

 

少し詳しく 〜隕石とうちゅうじん〜

 突然だが、流星や隕石の飛来に「うちゅうじん」が関与していると知ったら、あなたならどうしたいだろうか?

 対話交渉? 断言できるが、不可能だろう。地球上のあらゆる生物のコミュニケーション手段が、通じないからだ。

 技術学習? これも無意味だろう。技術レベルに差がありすぎるからだ。

 国際機関による正式発表? 実はこれは既に行われている。「うちゅうじん」の存在は、その分野の研究者であれば初学者ですら知るものだ。

 それでは、流星や隕石の飛来に関与する「うちゅうじん」とは一体なんなのだろう? 答えは漢字に変換すると一発だ。「うちゅうじん」とは「宇宙塵」、すなわち宇宙空間を漂う1 mm程度の小さな塵ちりのことだ。

 ただの塵なのだから、コミュニケーションが取れるわけがないし、なんらかの技術を持っているわけもない。また、宇宙空間に塵が漂っているのは周知の事実、というわけだ。

 宇宙空間は、広大な完全なる真空空間、つまり無の空間が広がっている。と、思われがちだ。

 だが実際には、大きいものでは恒星、小さいものは宇宙塵など、大小様々な物体が漂っている。恒星や惑星などの天体と違い、宇宙塵はそこかしこに普遍的に漂っている。そのため、宇宙は完全な真空にならない。完全真空に近そうで近くない超高真空空間、こそが宇宙という空間だ[注1][注2]。

 宇宙塵はありふれた存在のため、地球の公転で巻き込むことがある。巻き込まれた宇宙塵は、大気に触れて発光する。これが流星だ[注3]。

 一方で、宇宙塵ではなく塊が落下して来るケースもある。すなわち隕石だ。

 とはいえ、隕石の落下にも宇宙塵が関与している。隕石の元となる小惑星は本来、決まった軌道で動いている。しかしながら、光や熱の働きや衝撃などで崩れると、宇宙塵を作りながら小さな塊に別れ軌道を変化させる事がある。この軌道上にたまたま地球の軌道がぶつかると、隕石となって地球に落下するというわけだ。

 小惑星の軌道と地球の軌道が交わる時に、隕石が降ることはわかった。しかしながら小惑星の数は、発見されているものだけで80万個を超えており、それらがすべて地球に落ちていては、地表は今頃クレーターだらけの筈だ。それでは地球に落下する石と落下しない石の差は一体なんなのだろうか?

 続いて、小惑星の軌道について解説していく。

 

 

さらに掘り下げ 〜隕石と平山族〜

 私たちの住む地球は、太陽の周りを公転している。夜空に浮かぶ月は、地球の周りを公転している。どちらもよく知られた周知の事実だろう。

 地球に限らず、火星には火星の、土星には土星のといった具合に惑星ごとに固有の軌道がある。これは月のような衛星も同様だ。

 それでは小惑星の軌道はどうだろう? 膨大な数の小惑星はそれぞれが固有の軌道で、法則性なしに公転しているのだろうか。それとも、何か一定のルールのもとで公転しているのだろうか。

 少し考えてみてほしい。

  • 星はいくつかの小天体が衝突することで形成される。一方で、衝突の衝撃により崩壊してしまう天体も存在する。崩壊してしまった天体はどうなるのだろうか……。

 

 この問題に答えを出したのは、なんと日本人である。宮城県出身の天文学者・平山清次きよつぐ(1874 – 1943年)だ。平山は、火星-木星間の重力の影響を受ける小惑星の軌道を計算した。

この計算結果が、先の問いの答えになるわけだ。

 それでは平山は、どのような結果を導いたのだろうか。平山は小惑星の軌道を「平山族」と呼ばれる、いくつかのグループに分類可能なことを示した。つまり、小惑星は各々が独自ルールで動いているわけではないのである[注4]。

 平山族は、元々一つの天体であった存在が何らかの要因で破壊された後も、元の天体と同じ軌道を描き続けていることを示している。

 すなわち、現在見つかっている80万個超の小惑星のうち、実際に地球へと落下する可能性のある小惑星の数はグループによってかなり絞られるということだ。

 

 元の天体の軌道が地球への落下に重要だということがわかった。軌道変化の際に運良く(運悪く?)地球の重力に吸い寄せられた小惑星は、猛烈な熱と光を発しながら燃えるように地表へと落ちてくる。その中で地表到達まで燃え尽きずに残ったものが、隕石となるわけだ。ここで一つの疑問が浮かぶ。隕石はなぜ、燃えるように降ってくるのだろうか?

 続いて隕石の大気圏内での振る舞いについて解説する。

 

 

もっと専門的に 〜隕石と断熱圧縮〜

 突然だがあなたは今、数年間手付かずの部屋にいる。床には均一に埃がたまっており、あなたの手にはちりとりが握られている。

 少し行儀が悪いが、ちりとりを床に当て、ガーッと前進するとどうなるだろう? 線を引いたように埃のない部分ができる筈だ。なお、言うまでもないことだが、ちゃんとした掃除の時は箒と雑巾も使ってほしい。今回は頭の中で出来事なので。

 話を隕石に戻そう。

 

 隕石は超高速で落下する物体だ。大気圏への突入速度は、遅いものでも約11 km/秒に達する。時速にすれば約4万 km/時だ[注5]。隕石がそれだけの速度で落下するということは、私たちの住む地球を取り囲む大気の分子も、同じ速度で隕石にぶつかるということになる。とはいえ、大気と隕石の接触による摩擦が、燃えるように落下する原因ではない。それでは何が原因なのだろう?

 超高速で落下する隕石の進行方向の空気の分子の数は、落下に伴って増えていく。逃げられなかった分子に加え、進行方向にいた分子も、隕石の進路に巻き込まれるからだ。ちりとりで床を走らせた時に、進むにつれてちりとりに溜まる埃の量が増えていくのと同じようなものだと、イメージしてもらえればよい。

 同じ体積あたりの分子の数が増える(すなわち圧力が上がる)と、熱が発生する。分子が自由に身動き出来なくなり、自由に動くために使われていたエネルギーが外に逃げていくためだ。このように多数の分子をギュッと小さく固めることによって生じる温度の上昇を、断熱圧縮という[注6][注7]。

 断熱圧縮によって生じた熱は、隕石の表面を融かすまでに上昇する[注8]。温められた物体は、電磁波(ここでは光)を発しながらエネルギーを放出するため、隕石はさながら燃えるように落下するというわけだ。

 

 ここまで、隕石がどこからどのように降ってくるのかについて解説してきたが、いかがだっただろうか? 「しぶんぎ座流星群」「ペルセウス座流星群」「ふたご座流星群」の三大流星群の他にも[流星群 一覧]などのように調べてみると、見られる時期や場所、方角がまとめられている。秋の夜長に流れ星を眺めながら過ごすのも良いかもしれない。

 最後に、記事の趣旨からは少し外れるが小惑星の観測に関する研究について2つ紹介して、記事を締めさせていただく。

 

 

ちょっとはみ出し 〜小惑星を調べる〜

スペースガード

 1998年に公開されたハリウッド映画『アルマゲドン』という映画をご存知だろうか? 巨大な小惑星の地球への衝突を回避するため、宇宙飛行士たちが小惑星の破壊のため宇宙に旅立つという物語だ。果たして地球の、そしてクルーたちの運命やいかに!? という内容なのだが、葉月は観ていない。オチは知っているけど。

 宇宙まで行って小惑星を爆破、とだけ聞くと荒唐無稽で現実感のない話に聞こえる。しかしながら、観測技術の進歩は、衝突可能性があり、自然災害を引き起こすような大きさの小惑星が少なくとも1万個以上あることを明らかにした。宇宙からの大災害に立ち向かうため、大気圏突入時の軌道計算や、小惑星の公転軌道そのものを逸らす方法が世界中で研究されている。スペースガードという活動だ。

はやぶさ2拡張ミッション

 日本で最も有名な小惑星探査機と言えば「はやぶさ」そしてその後継機「はやぶさ2」だろう。小惑星「イトカワ」のサンプルを回収し、幾多のトラブルに見舞われながらも帰還した「はやぶさ」の雄姿ももう10年以上前になる。「はやぶさ2」が回収した小惑星「リュウグウ」のサンプルも、JAXAで厳重に保管され、様々な観点で分析されている。

 ところで「はやぶさ2」は「リュウグウ」サンプルを地球に届けた後どうなったのだろうか? 前任機「はやぶさ」は地球に投下されたが、「はやぶさ2」はそうではない。サンプルを地球に投下後、別の小惑星に向けて旅立った。その名も「1998 KY26」。水の存在が示唆されている星で、2036年頃到達の見込みだ。生命の起源を求める宇宙の旅は終わらない。

参考文献

  • 数研出版編集部. 『新課程 視覚でとらえるフォトサイエンス 地学図録』. 数研出版.

  • 半田 利弘. 『基礎からわかる天文学』 誠文堂新光社.

  • 宇宙航空研究開発機構JAXA HP

  • 丸山 諒, 孫 明宇.『小隕石突入時における誘起衝撃波圧の数値解析』. 理論応用力学講演会 講演論文集2014年 63 巻 OS12-01-02.

  • 横尾 広光. 『 理研〔理化学研究所〕での小惑星衝突実験と鈴木清太郎--平山族の成因をしらべる1930年代の室内実験 』. 天文月報 = The astronomical herald 90 (6), 273-276, 1997-06.

  • 宮原 正明. 『TEMで解き明かす隕石中の高圧鉱物と衝突過程』. 高圧力の科学と技術2021年 31 巻 3 号 157-165.

  • 岡林 識起.『地球外物質の無機元素分析及び同位体分析』. ぶんせき / 日本分析化学会 編 2021 (6), 259-265, 2021-06.
  • 伊藤 孝士.『小惑星の族』. 天文月報 = The astronomical herald 112 (9), 596-600, 2019-09.
  • 吉川 真, 山口 智宏. 『「スペースガード 」とは何か (特集「チェリャビンスクイベントと天体衝突リスク」)』. 日本惑星科学会誌遊星人 2013年 22 巻 4 号 214-221.
  • 嶌生 有理, はやぶさ2拡張ミッションチーム. 『火の鳥 「はやぶさ 」未来編 その 25 〜はやぶさ2拡張ミッション〜』. 日本惑星科学会誌遊星人 2021年 30 巻 4 号 169-172.

脚注

[注1] 宇宙空間とされる高度1,000 kmの気圧は7.51 × 10-11 hPaであり、真空に限りなく近いが0気圧ではないことが分かっている。とはいえ、地球で作り出せる真空よりも真空度が高いことは間違いないらしい。 (本文へ戻る)

[注2] 今回の記事の内容と全然一切1ミリも関係ないけど、10年くらい前に食べるラー油って流行ったよね。結局いまだに食べたことはないのだけど、美味しいのかな? 辛さ控えめでオススメあれば教えて。 (本文へ戻る)

[注3]彗星と呼ばれる氷と塵の塊は、太陽付近を通過する際に「尾」と呼ばれる宇宙塵の軌跡を残す。ここを地球が通過する際に見られる無数の流星が、流星群と呼ばれるものだ。 (本文へ戻る)

[注4] 平山族は、小惑星の軌道をコンピュータで計算をする現代においても、計算の基盤になっている。平山が見つけたのは5組だったが、現在では30以上のグループが見つかっている。 (本文へ戻る)

[注5] 例えば2013年にロシアに落下した隕石は、約19 km/秒だったと推定されている。拳銃の弾丸が約0.3 km/秒であることを考えると、どれだけ速いかご理解いただけるだろうか? (本文へ戻る)

[注6]アウトドアをされる方なら、ファイヤーピストンという火起こしグッズをご存知かもしれない。筒の中に火種を入れて棒をグッと押し込むと、着火するというものなのだが、隕石の発熱と原理的には同じだ。 (本文へ戻る)

[注7] 反対にバッと広げることで温度の低下が生じるのだが、これは断熱膨張と呼ばれている。エアコンが温めたり冷やしたりする仕組みにも利用されていたりする。 (本文へ戻る)

[注8] 適切な比較ではないが、宇宙から帰還する宇宙船は『無操作状態では』1万 ℃にも達するらしい。当然、中の乗員を守るため、宇宙船は減速操作しながら帰還するのだとか。隕石は自由落下だけどね。 (本文へ戻る)

 

【著者紹介】葉月 弐斗一

「サイエンスライター」兼「サイエンスイラストレーター」を自称する理科オタクのカッパ。「身近な疑問を科学で解き明かす」をモットーに、日々の生活の「ちょっと不思議」をすこしずつ深掘りしながら解説していきます。

【主な活動場所】 Twitter Pixiv

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