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みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の彩恵りりだよ!
今回の解説は、地球史上最も重かったかもしれない絶滅したクジラの仲間「ペルセトゥス・コロッスス」の発見についてだよ!
絶滅した動物も含め、地球の歴史上最も体重が重たい動物は190トンのシロナガスクジラだと言われているけど、ペルセトゥス・コロッススはこれに匹敵する推定体重180トンで、最大推定値は340トンにもなるよ!
ペルセトゥス・コロッススがシロナガスクジラの記録を上回るかはちょうど微妙なラインだけど、現生の海棲哺乳類 (クジラ) と中生代の陸棲爬虫類 (恐竜) 以外でこれほど重い動物が見つかったのは初めてのことだよ!
ペルセトゥス・コロッススの発見は、単に巨大な動物を発見しただけに留まらず、なぜ他の時代には観られない巨大な海の動物が現代に現れたのかを解明する手掛かりになるかもしれないよ!

(画像引用元: 原著論文 Extended Data Fig. 10)
CONTENTS
最も大きな動物は何か?という質問に答えるには、どういう条件と数値で比べるのか、というのに限定しないといけないよ。では、体重という項目に照らして、最も大きな動物は何だろうね?
現在の地球を見渡してみると、最も重い動物は「シロナガスクジラ (Balaenoptera musculus)」であると言われているよ。測定されたことのある最大個体は190トン、科学的推定では200トンにも達すると言われているよ![注1]
では、絶滅種も含めて地球史上最も重い動物は何か?これも実はシロナガスクジラだと言われているよ!あれ?恐竜や魚竜とかは?と思うかもしれないけど、今のところシロナガスクジラが記録保持者に君臨しているよ。
絶滅した動物は化石で体重を推定するしかないけど、多くの場合で一部しか見つからないので、近い仲間と思われる化石と比較し、全身骨格を予想し、更に肉付けも推定しなければならないので、この推定は結構大変だよ。
特に古い記録の場合、骨1本や足跡からサイズを推定した例[注2]もしばしばあるし、最近発見された化石だったり、新しい復元図による推定体重の更新を反映していなかったりするので、何かと問題があるよ。
シロナガスクジラに匹敵するサイズを持つとされる生物で推定も最もらしいのは、白亜紀後期に生息していた「ブルハトカヨサウルス・マトゥレイイ (Bruhathkayosaurus matleyi)」という恐竜とされているよ。
2023年の最新の推定では、体重は110トンから180トンの範囲内が推定されるものの、場合によっては最大240トンだったかもしれないという推定結果があり、この場合シロナガスクジラを超えるよ!
ただ、ブルハトカヨサウルスは他の巨大な恐竜と同じく身体の一部しか産出しておらず、しかもその唯一の標本が風雨によって浸食され失われてしまったことから、スケッチ以外の研究資料が残されていないよ。
しかも、240トンというのはかなり疑わしい数値であり、この推定を行った研究者自身も、ブルハトカヨサウルスは実際には130トンを超えないんじゃないか、と考えているよ。
よって、もしブルハトカヨサウルスがシロナガスクジラを上回る体重を持っていたとしても、新たな化石が見つからない限りはそれを証明することは困難な状態だよ。

地球にいる最も体重の重い動物は、絶滅したものも含めてシロナガスクジラだと言われていたよ。それと争えそうな動物はこれまでブルハトカヨサウルスだけだったけど、今回ペルセトゥス・コロッススが新たにランクインしたよ! (画像引用元: 原著論文 Extended Data Fig. 10 (ペルセトゥス・コロッスス) / WikiMedia Commons ( (Autor: Ansh Saxena 7163) ブルハトカヨサウルス) )
そんな中でピサ大学のGiovanni Bianucci氏などの研究チームは、もしかするとシロナガスクジラに匹敵するか、それを超えるかもしれない非常に巨大な動物の化石の発見を報告したよ!
その化石はペルーのイカ砂漠にある3800万年前の地層で発見されたよ。あまりにも巨大すぎて、最初は化石なのか岩石なのかすら分からず、顕微鏡で観察することで初めて骨だと確認できたくらいだよ。
20回の調査で椎骨が13本、肋骨が4本、そして骨盤の一部が発見されたよ。椎骨は1本が100kgを超えており、あまりにも巨大すぎて1回の調査で2本ずつしか運べなかったくらいだよ。
骨格の形状から、この化石は「バシロサウルス科 (Basilosauridae)」[注3]の新種ではないかと推定されたよ。バシロサウルス科は全て絶滅しており、完全に海中生活に適応した初めてのクジラの仲間だとされているよ。
他のバシロサウルス科から推定すると、この骨の持ち主の体長は17.0mから20.1m、推定体重は180トンで、85トンから340トンまでの推定幅があるよ。体重はシロナガスクジラに匹敵するか、それを超えることになるね!
体長こそ超えないものの、体重は王座を争えるかもしれない巨大さから、「巨像のようなペルーのクジラ」を意味する「ペルセトゥス・コロッスス (Perucetus colossus)」と名付けられたよ。
| 種名 (†=絶滅) | 最大個体の体重 | 推定幅 & 分類 | 備考 |
| シロナガスクジラ Balaenoptera musculus |
190 t (最大推定値 200 t) |
80 - 150 t 海棲哺乳類 |
190tは実測された最大値。 最大推定値200tは最長個体からの推定。 |
| †ペルセトゥス・コロッスス †Perucetus colossus |
180 t (最大推定値 340 t) |
85 - 340 t 海棲哺乳類 |
最も確からしい推定値が180t。 |
| †ブルハトカヨサウルス †Bruhathkayosaurus matleyi |
130 t (最大推定値 240 t) |
110 - 180 t 陸棲爬虫類 |
恐らく130t以上にはならない。 化石は失われている。 |
| †マラアプニサウルス †Amphicoelias fragillimus |
120 t (最大推定値 150 t) |
80 - 120 t 陸棲爬虫類 |
不完全な椎骨1本のみからの推定。 化石は失われている。 |
| セミクジラ Eubalaena japonica |
120 t | 45 - 60 t 海棲哺乳類 |
|
| ナガスクジラ Balaenoptera physalus |
120 t | 63 t 海棲哺乳類 |
|
| ミナミセミクジラ Eubalaena australis |
110 t | 60 t 海棲哺乳類 |
|
| タイセイヨウセミクジラ Eubalaena glacialis |
106 t | 40 - 70 t 海棲哺乳類 |
|
| †アルゼンチノサウルス †Argentinosaurus huinculensis |
100 t | 75 - 80 t 陸棲爬虫類 |
ペルセトゥス・コロッススの特徴として、骨が高密度でかなり重いという点が挙げられるよ。骨だけで体重が5.3トンから7.6トンもあるとされ、サイズが大きいにしてもかなりの重さになっているよ。
骨の重さは、体長25mのシロナガスクジラの2~3倍も重く、巨大な割に骨が軽いクジラとは真逆の特徴であると言えるよ。絶滅したクジラで比較しても、これほど高密度なものは見つかっていないよ。
骨の高密度化は徹底しており、他の動物にみられる髄腔[注4]が存在しないくらいだよ。このため、ペルセトゥス・コロッススは骨を重くすることで、身体が海底に沈むようにしたと考えられるよ。
その代償として、他のクジラとは異なり、ペルセトゥス・コロッススは海中を自由に泳ぐことはできず、海底を動き回っていたと考えられるし、だから外海を泳がず、陸地に近い浅瀬に生息していたとも考えられるよ。
現生のクジラは、深海に潜る時に肺の空気を完全に無くして浮力を消しているけど、ペルセトゥス・コロッススは肺に空気を貯めたまま海底に沈んでバランスを維持していた、という真逆の戦略をとってたわけだね。
むしろ、この高密度な骨の特徴はクジラとはかなり異なる系統であるジュゴンやマナティーにそっくりであることから、これは海棲哺乳類で共通した戦略が発生している収斂進化[注5]の一例であるとも考えられるよ。

ペルセトゥス・コロッススの骨は、単にサイズが大きいだけでなく高密度であるという特徴があるよ。これは身体を海底に沈めるための工夫と思われるけど、なぜなのかはよくわからないよ。特に肺や脂肪が占める割合は、推定体重が大幅に変動する原因となる重要なファクターだよ! (画像引用元: 原著論文 Extended Data Fig. 10 (ペルセトゥス・コロッススの想像図) / Nature News (ペルセトゥス・コロッススの骨とその対応位置) )
そして後で述べる通り、完全に海で暮らすようになった初めてのクジラの系統であるバシロサウルス科の仲間がこれほど巨大化するというのは、クジラの進化を考える上での重要な発見であると言えるよ。
ただ、なぜ海底を這っていたのかは謎だよ。ペルセトゥス・コロッススは海底にいる何かを食べていたとも考えられるけど、頭蓋骨が発見されていないため、どういうのを食べているのかは不明だよ。
バシロサウルス科は立派な歯を持っているので軟体動物や沈んだ動物の死骸を食べていたとも考えられるし、微生物を濾過していたかもしれないし、あるいは海藻などを食べていたかもだけど、詳細は不明だよ。
ただし、ペルセトゥス・コロッススがシロナガスクジラに匹敵する重さの動物であることに異論は少ないけど、シロナガスクジラを超えるかどうかは議論する余地があるよ。
ペルセトゥス・コロッススの化石は一部しか見つかっていない上に、体重を推定するには筋肉や脂肪といった化石として残らない軟組織の重量を推定しなければならず、これが極めて難しいよ。
現生のクジラはかなり太い身体をしているけど、ペルセトゥス・コロッススの仲間であるバシロサウルス科には、少なくとも1種類はかなり細身であることが推定されているので、必ずしも当てはまらないよ。
また、ペルセトゥス・コロッススと似た生態かもしれないジュゴンやマナティーはかなりの細身だよ。脂肪のような低密度の体組織は浮力を生むという点でも、単純にクジラの体つきを当てはめられないともいえるよ。
ただしこれは逆も言えて、脂肪を大量に蓄えることに特化し、それによる浮力を骨の重さで相殺した、とも考えられるよ。いずれにしても、一部の化石しかない動物の復元というのは本当に難しいよ。
結局のところペルセトゥス・コロッススの推定体重は、ジュゴンやマナティーと似ているとする場合の85トンから、クジラの骨と体重の比率を適用した場合の340トンまでの間になると考えられるよ。

ペルセトゥス・コロッススの本当の体重を推定するのは難しいよ。骨の特徴が似ているジュゴンやマナティーのような身体だとすると体重は85トンとなる一方で、骨と肉の重量比率がクジラと同じなら340トンという数値になるよ!研究チームはその間の180トンが最も正しいだろう数値だと推定していて、その場合はシロナガスクジラの最重量記録をわずかに下回ることになるよ。 (画像引用元: 原著論文 Extended Data Fig. 10 (ペルセトゥス・コロッスス) )
そして研究チームは、これらを総合的に見た場合の最も可能性の高い推定体重として180トンという推定を与えているよ。これが正しい場合、シロナガスクジラに次いで史上2番目に体重が重い動物であることになるよ。
例えペルセトゥス・コロッススがシロナガスクジラの王座を奪えなかったとしても、これほど巨大な生物が3800万年前の海に生息していたということは、その海が豊かであった1つの証拠であるともいえるよ。
ランキングを観てみると、これまで重い体重の動物の座を争ってきたのは、海に棲む現生のクジラと、陸地に棲む中生代の恐竜だけで、どちらにも当てはまらないペルセトゥス・コロッススのランクインは異質だと言えるよ。
重力がモロにかかる陸地はともかくとして、重い体重を支える浮力がある海でさえ、古い時代を見渡してみると、体重が100トンに達するような動物は今のところ見つかっていないよ。
その点で、100トンを超えるクジラがうようよいる現代の海は不思議とも思えるので、ペルセトゥス・コロッススは海に棲む巨大動物として現代のクジラに先んじて現れた可能性があるという点でとても興味深いよ!
このため、ペルセトゥス・コロッススは現代のクジラの進化を考える上でも重要な位置にあるよ。これからの発掘調査でさらに化石が見つかれば、これらの謎もよりはっきりするようになるかもしれないよ!
[注1] シロナガスクジラの体重 ↩︎
最も確からしいと認められている体重の最高記録は、1947年にサウスジョージア島近海で捕獲されたメスの個体の190トンである。また、体重が正確に測定されたわけではないものの、体長が正確に測定されたもので、かつ流体力学的に生存可能な身体の容積を算出したものによれば、200トンという数値が最も確からしい推定値とされている。シロナガスクジラを含め、クジラ類の体重を一度に計測できる方法は存在せず、部位ごとに測定された合計値で算出されるため、誤差が大きくなる。また、捕鯨時には海中で尾の先端が切り落とされたり、血液や内臓の中身が取り除かれるため、これらも正確な体重や体調の測定を困難にしている。更に、主に身体の脂肪分の変動が大きく、最大で50%もの変化が測定されている種もあることも、正確な推定を困難にしている。
[注2] 骨1本や足跡からサイズを推定した例 ↩︎
マラアプニサウルス・フラギリムス (Amphicoelias fragillimus) は、1878年に部分的な椎骨1本から全長と体重が推定された恐竜の1つである。元々の記載では150トンとされているが、より現代的な推定では80トンから120トンとされている。ただし、化石は早い段階で失われていて再調査はできず、骨1本からの解釈であるために不確かさは大きい。これとは別の研究で、足跡から200トンを超える恐竜の存在が推定されたこともあるが、足跡という生痕化石での推測はより不確かさが大きくなる。
[注3] バシロサウルス科 ↩︎
クジラの仲間の祖先は陸棲、あるいは半陸棲であったとされており、バシロサウルス科は初めて完全な水棲となった初めてのクジラの仲間とされている。バシロサウルス科は全て絶滅しているが、現生のクジラとバシロサウルス科の間には共通祖先があると見られている。
[注4] 髄腔 ↩︎
骨の中心部にある骨髄が入っている空洞。骨髄は赤血球や白血球といった血液に含まれる赤色骨髄と、その機能を失った黄色骨髄に分かれる。
[注5] 収斂進化 ↩︎
系統的に離れている生物同士が似たような機能を持つように進化していること。鳥類とコウモリは系統的に離れているが、どちらも飛行能力を持つのが典型的な例。
<原著論文>
<参考文献>
<関連研究>