ウシマンボウ博士の食レポ! 大洗名物あんこう鍋とどぶ汁を食べてみた!

2023.01.27

 冬の大洗名物と言えば、あんこうである!今までマンボウ研究で大洗に来たことは何度かあったが、いつも調査が終わるとすぐに帰っていたため、一度も名物を食べたことがなかった。2022年12月、大洗に滞在する機会があり、季節もちょうどあんこうの季節!これは是が非でもあんこうを食べるしかない!そこで今回は大洗のあんこう料理の食レポを行いたいと思う。

大洗のあんこう料理

 大洗駅のパンフレットコーナーを物色していると……やはりあったあんこう料理のチラシ。



 チラシには「西のふぐ、東のあんこう」と呼ばれるくらい茨城の冬(11月~2月)の味覚を代表する料理になっていると書かれている。インターネットで事前に調べてみると、どうやらあんこう料理は大別して「あんこう鍋」と「どぶ汁」の2種類があるらしい。元々、漁師が船の上で作っていたあんこう料理が発祥で、水を使わずあんこう自体の水分で作った鍋がどぶ汁。あんこうの肝を鍋で炒ると出てくる肝油が、濁酒のようにオレンジ色に濁っていたことからどぶ汁と呼ばれていたとのことだ。このどぶ汁をベースに商品化しようと開発したのがあんこう鍋で、スープに直接あんこうや野菜などの具材を入れることで、時間が掛かるあんこうから水分を出す過程を省いた料理になっている。あんこう鍋よりどぶ汁の方が手間暇がかかるため、提供している店も少ないらしい。となれば、どぶ汁は絶対この機に食べなければならない!

 しかし、ここで一つ問題が……どぶ汁の提供している多くの店が二人前からで、私単独で食べるには量も値段も多い……困った時に頼るのがTwitter民である。どぶ汁を一人前で食べられる店がないかヘルプを願ったところ、「潮騒の湯」で一人前のどぶ汁が食べられるとの情報を頂いた! 確認すると、量も値段もちょうどいい感じ。銭湯ではあるが、レストランだけの利用も可能とのことだった。持つべきものはTwitter民である。大洗駅に着いたら、早速、レンタルサイクルで潮騒の湯に向かった。

「潮騒の湯」で、どぶ汁定食

 潮騒の湯に到着してドキドキしながらどぶ汁定食を注文する(刺し身も食べたかったので)。どぶ汁は作り方があり、店員の方から説明を受ける。まず火の付いた鍋が来たら蓋の穴から湯気が出るまで待つ→ 湯気が出たら蓋を取って焦げないようによく掻き混ぜる→ 蓋を閉めて再び、蓋の穴から湯気が出るまで待つ……これを3回繰り返せば完成だ。こちらが運ばれてきた、まだ混ぜる前の状態。これに蓋をして、湯気が出てくるのを待つ。


↓1回目の湯気が出て混ぜた状態。美味しそうな肝が潰れて少し残念な気持ちになる。



↓2回目の湯気が出て混ぜた状態。肝は大分バラバラになり、黄色く濁った汁がよく出ている。



3回目の湯気が出て混ぜた状態。嗚呼……何もかも混ざりまくっている。

最後に蓋を閉め、少し待っていると……あっ、火が消えた! どぶ汁の完成だ!

 とても美味しそうである。

あんこうの七つ道具

 ところでどぶ汁やあんこう鍋には「あんこうの七つ道具」と呼ばれる7つの体のパーツ[筋肉(身)、皮、胃(水袋)、肝臓(肝)、卵巣(ヌノ)、えらひれ(トモ)]が入っているらしい。あんこうの解剖はしたことはないが、マンボウ以外の魚もいくつか捌いたことはあるので、鍋に入っている状態でも何となく体のパーツは分かると思った。食べながら実際にあんこうの七つ道具を探してみた。
 一番わかりやすいのは肝臓だ。肝臓は小さく潰れていても十分に濃厚な味がする。料理の仕方かもしれないが、マンボウの肝臓より臭みが無い印象だった。あんこうの肝臓は海のフォアグラとも呼ばれ、それ単体で蒸しポン酢で食べる食べ方もある。



 筋肉もわかりやすい。あんこうの白身は食べるとほろほろと崩れていき、この食感はフグの筋肉と似ていると思った。しかし、筋肉の食感はマンボウとは似ていない。あんこうの肉は、骨の周りに付いているものがブツ切りでそのまま入っているものもあった。



 皮は外側が黒く内側が半透明、ぷるぷるとした食感なのでこれもわかる。

 鰭は細かい鰭条きじょうが付いているのでこれも分かるだろう。皮と同じくぷるぷるとした食感だ。鰭条も食べられるのかな?と思って挑戦したが、硬いので食べるのを諦めた。多分鰭条は食べる部位ではない。

 粒々しているように見えるので、これがおそらく卵巣だろう。プチプチとはしておらず、弾力がある。

 くにゅくにゅとした弾力のある食感がおそらく胃。

 卵巣と胃は自信がないが、たぶん合っていると思う。鰓はどれか分からなかった。もしかしたら、最初から入っていなかったのかもしれない。

どぶ汁番外編~脊椎骨と軟骨~

 番外編として脊椎骨も食べてみた。というのも、子供の頃、アニメ『南国少年パプワ君』で「あんこうは骨まで食べられる」という話を見て以来、異様に記憶に残っていた。実際に骨も食べられるのか挑戦してみたら……結構もさもさしている。頑張れば食べられるが美味しくはない。この脊椎骨の透明感ともさもさ具合はマンボウの脊椎骨と似ている。やはり魚の中でも水分が多い魚種は、骨がスカスカな感じになるのだろうか。

 番外編その2は軟骨だ。軟骨は皮と似て半透明だが、こちらは骨に付随していて、食べるとコリコリした食感だ。



 肝と味噌が良い味を出していて濃厚で美味しかった。どぶ汁は美味い! ご飯がめっちゃすすむ! 全部食べ終えた鍋はこんな感じ。結構浅い。混ぜる時こぼれないか緊張した。こぼれると勿体ない。食べながら魚のどの部位を食べているのか確かめたくなるのは、ある種の職業病かもしれない。どぶ汁を食べて思ったのだが、マンボウも水分が多く、肝臓もデカいので、同じような料理を作れるのではないかと感じた。いや、味付け次第ではできると思う。マンボウのどぶ汁はうまくいけば特産品として売り出せるかもしれない。

夜はあんこう鍋

 続いて夜は、よくある居酒屋的な店であんこう鍋の方を食べた。あんこう鍋はスープに色々入っているので、普通に鍋である。昼間にどぶ汁を食べたせいで、あんこう鍋は味が薄く少し物足りなさを感じてしまった。あんこう鍋の方も鰓のパーツは入っていないようだった。今回は鰓と認識して食べた記憶がないので、一体どんな食感なのか気になるところではある。またいつかあんこう料理を食べる機会があったら、次こそはあんこうの七つ道具の最後・鰓を食べてみたい。

 夕食前、自転車で大洗の魚屋をあちこち回ってみた。あんこうは切り身にされて売られているものが多かった。あんこうの切り身セットには鰓も見られるので、やはり鰓も食べるのが普通らしい。

 ところで、大洗で食べている「あんこう」という魚。実はアンコウではなくほとんどキアンコウらしい。魚体丸ごと売っている魚屋にアンコウとキアンコウどっちなのか?と聞いたところ、キアンコウとの答えが返ってきた。だから、厳密には大洗で食べているどぶ汁やあんこう鍋の魚はキアンコウを食べていることになる。口の中を開いて模様を確認することでアンコウかキアンコウかを同定できるようなのだが……さすがに歯も鋭いし、売り物に手を付ける訳にもいかなかったので、どちらだったのかは明確に確認できなかったが、この写真の個体もキアンコウだったのではないかと推測する。ヤリマンボウをマンボウとして売っているような感覚で、アンコウ型の魚は総称的にあんこうとして昔から売られているのだろう。



 伝統的な食文化を知ることも研究には欠かせない。あんこうとマンボウの思わぬ共通点も発見でき、美味しくも奥深い郷土料理であった。


 大洗
  あんこう鍋や
   どぶ汁の
    食べてる魚
     キアンコウなり

参考文献

小菅桂子.1992.クジラとマンボウとアンコウと――長い海岸線のめぐみ.In 水戸黄門の食卓 元禄の食事情(中央新書1059).中央公論社,東京,138-145.

星野尚重・市毛清記・鈴木正伸・山口安男・豊島征司.2006.キアンコウの飼育試験及び栽培漁業対象種としての検討.茨城県水産試験場研究報告,40: 11-28.

 

【著者情報】澤井 悦郎

海とくらしの史料館の「特任マンボウ研究員」である牛マンボウ博士。この連載は、マンボウ類だけを研究し続けていつまで生きられるかを問うた男の、マンボウへの愛を綴る科学エッセイである。

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