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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回のお話は、新しい血液型「Er式血液型」の確立に関する研究報告だよ!
世界で初めて発見されたABO式血液型から数えて44種類目となるこの新しい血液型は、根拠となる抗原の発見から40年目にして、遺伝子を調べる技術の向上で確立したよ!
このような血液型の確立は、医療の現場では非常に重要で、注目される研究だよ!
CONTENTS
血液型と聞いて、多くの人がパッと思いつくのはO型・A型・B型・AB型の4種類で表されるABO式血液型、次いでRh因子の種類によるRh式血液型だと思うんだよ。
血液型は、血液中で酸素を運ぶ細胞である赤血球の表面に存在する抗原[注1]と呼ばれる物質の違いで表されるもので、例えばABO式血液型は、A抗原とB抗原の有無で区別されるよ。
つまり、A型ならばA抗原のみを、B型ならばB抗原のみを持ち、AB型はその両方を持っている一方で、O型はその両方を持っていないよ。
血液型が異なる血液を混ぜることは、場合によっては溶血や凝集[注2]など致死的な問題が発生するから、輸血を取り扱う医療現場では非常に重大な関心事と言えるよ。
例えばA型の人はB抗原に対する抗B抗体を持ち、B型の血液を混ぜると溶血や凝集を起こすよ。B型の人はその逆、A抗原に対する抗A抗体を持つことから、A型の血液を混ぜられないよ[注3]。
ただ、抗原と言うのは相当な種類があるもので、その分だけ血液型とその候補は無数にあるよ。国際輸血学会に認められているものだけでも、血液型は43種類も存在するよ!
ただ、その43種類でも、それを決定する抗原は345種類、遺伝子も48種類にまたがるし、数千人に1人の稀な血液型もあれば、特定の民族や家系にのみ多くみられる血液型もあるよ。
なので、果たして血液型と言えるのか、という候補である抗原のタイプが何種類も存在し、現在でも正確な性質に関する研究が行われているよ。
ブリストル大学とイギリス国民保健サービスの研究チームは、そう言った研究中の血液型の候補の1つであり、実に40年も前に発見された抗原「Er」を調査したよ。
Er抗原はこれまでに「Era」「Erb」「Er3」の3種類が見つかっていたよ。1982年に初めてEraが見つかり、1990年には血液型の候補として認識されたよ。
ところが、Er抗原の臨床的な意味や、Er抗原の違いを決定する遺伝子が不明だったなど、様々な点が未解明だったことから、これまでその正確な重要性が分かっていなかったよ。
そこで研究チームは、全ての遺伝子について同時に分析するという、いわば総当たり方式の力業で、Er抗原を決定する遺伝子について探ったんだよ。
その結果、「PIEZO1」と呼ばれる、圧力を感じる受容体をコードしていることで知られる遺伝子のわずかな変異が、Er抗原の型を決定することを今回初めて突き止めたよ!
PIEZO1は2021年のノーベル生理学医学賞の対象研究にも名前が挙がっている遺伝子で、血管の新生や伸縮による血圧の調整、赤血球の体積維持などにも関わっていることが知られているよ。
Er抗原の種類にPIEZO1が関わっていることは、人工的に培養した細胞内でゲノム編集による遺伝子ノックアウトを実施し、その役割を突き止めたよ。
更に、「Era」「Erb」「Er3」の他に、今回の研究で今まで知られていなかった新しい型も2つ見つかり、「Er4」と「Er5」とそれぞれ名付けられたよ。
今回の研究で新しく見つかった2種類のEr抗原は、2件の胎児と新生児の致死的な溶血性疾患[注4]に関連していたことが発見されたことから、臨床的意義は非常に重要だよ。
今回の研究でEr抗原が特定されたことにより、新生児溶血性疾患を含む様々な点で研究と対策が打てるという、非常に重大な発見に繋がった点が、今回の重要なポイントだよ。
研究チームは、Er抗原による5種類の型は、44種類目となる新しい血液型であると報告しており、これの更なる正確な役割や分類、検出方法についての研究を進めていく方針だよ。
これまでの研究では、EraとEr3が全体の99%以上を占め、Erbは0.1%未満にしか存在しないこと、Er3抗原に対する抗体を持つ人はEr3の輸血が致死的な可能性があることが分かっているよ。
一方で、EraとErbは、互いの混合が特に臨床的な意味を持つ可能性が示されておらず、今のところ抗原の違い以上の意味は見つかっていないよ。
今回新たに見つかったEr4やEr5の全体に対する割合や、互いの反応がどうなのか、Er式血液型は今回の研究で分かった以上の正確な意義は未知数であり、更なる研究が待たれるところだよ。
また、先述の通りPIEZO1は血液やその他病気や健康に関する様々な関与が知られている遺伝子であることから、この観点からもEr抗原の性質が明らかになる可能性があるよ。
[注1] 抗原 ↩︎
抗体が結合する物質のこと。その種類はタンパク質、ペプチド、多糖類など幅広い。抗原によって結合する抗体は決まっており、抗体が抗原と結合することで免疫細胞がそれを狙って攻撃を行う標識となる。これは病原体などの異物を排除するためにできた生物学的システムである一方、基本的に自分自身以外の物質を攻撃するようにできているため、輸血された血液や胎児などでも反応してしまうことがある。血液においてそのような問題が発生するかどうかを見分ける区分が血液型である。
[注2] 溶血や凝集の発生 ↩︎
これらは異なる抗原を持つ血液を混ぜることで起きる拒絶反応の一種であり、免疫細胞が輸血した血液を異物と見なして攻撃してしまうことで起こる。拒絶反応の有無や軽重の程度は抗原の種類分だけ存在すると言える状態であり、だからこそ数十種類もの血液型が存在するのである。
[注3] ABO式血液型と輸血可否 ↩︎
ただし、A抗原やB抗原以外の存在や、ABO式に限っても簡易検査を誤認識させる稀な血液型の存在など、ABO式血液型のみでは輸血可否を判断できない場合があるため、これはあくまで原則論となる。実際の医療の現場では、緊急時を除き、同じ型の血液を輸血するのが原則となる。
[注4] (新生児) 溶血性疾患 ↩︎
胎児や新生児の血液と母親の抗体が反応してしまい、免疫によって赤血球が破壊された結果、溶結性貧血を招く疾患。ABO式やRh式など、従来からよく知られている血液型でも新生児溶結性疾患が報告されており、重症度も軽度から致死的なレベルまで様々である。
[原著論文]
[参考文献]