電気絶縁性を持つダイヤモンド状炭素(DLC)による小型コイルおよびモータ開発

2024.08.08 By 東京電機大学

材料工学

技術概要

環状のヨークと、このヨークから放射状に延在する複数のティース部を備えた積層鉄心に積層方向の両端面に炭素系硬質皮膜を形成するものである。この技術は、生産性を減ずることなく、摩擦係数が低減され、コイルの損傷防止が可能であり、且つ炭素系硬質皮膜による絶縁を含めた薄型化が可能な積層鉄心およびその積層鉄心の製造方法である。

用途・応用

・医療材料、デバイス

背景

 情報機器や産業機器などにおいては、例えば、ステータの外部にロータを配置した構造
を有するアウターロータ型またはステータの内部にロータを配置した構造を有するインナ
ーロータ型のブラシレスモータが使用されている。アウターインナーロータ型のブラシレ
スモータは、慣性モーメントが大きくなりやすいので、一定の回転速度を維持する用途に
使用される。インナーロータ型のブラシレスモータは、慣性モーメントが小さく制御しや
すいという利点がある。

 ブラシレスモータでは、鉄損を少なくするために、例えば特許文献2に記載されている
ように、透磁率の高い材料である電磁鋼板を軸方向に積層したステータコア(電機子鉄心
)を使用し、高出力化を図ることが行われている。

 さらに、コイルが巻回されるステータコアの絶縁性を高めてモータの小型化及び高出力
化を図るために、絶縁材として炭素系硬質膜であるダイヤモンドライクカーボン(DLC
)を使用することが提案されている。

特許文献1には、電磁鋼板の表面に絶縁膜を被覆し、DLC又はフラーレンの少なくとも
一つからなる絶縁膜が形成された電磁鋼板に打ち抜き加工を行い、その加工後の電磁鋼板
を積層することにより、電磁鋼板間に絶縁膜を形成することが記載されている。この構成
により、絶縁膜を低温で形成することが可能で、大型の設備が不要となり、また絶縁膜は
、炭素を主成分とするので、有害物質を含まず、環境負荷の点でも有利であるとされてい
る 。

 特許文献2には、ステータコアとそのスロットに挿入されるコイルとを絶縁するモータ
用絶縁材として、硬質炭素膜を使用すること、また硬質炭素膜としてDLC(膜厚が20
μm以上200μm以下である水素化アモルファスカーボン)を使用することが記載され
ている。これにより、コイルの放熱性を向上できるとともに、コイル挿入時のエナメル被膜の傷つきを防止できるとしている。

このほか積層コアでは無いが、特許文献3には、圧粉コアのうち巻線に対向する面の一部
(巻回面)には、無機系の耐熱絶縁皮膜、例えばDLC皮膜又はセラミック皮膜を形成す
ることが記載されている。この構成によれば、高耐熱化を図ることができ、特にDLC膜
の場合は、3次元形状への成膜性が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】

【特許文献1】特開2011−193622号公報
【特許文献2】特開2006−141130号公報
【特許文献3】特開2007−74851号公報

課題

しかし、特許文献1に記載のように積層する電磁鋼板それぞれにDLCを被覆する場合は
、生産性が低下し、それに伴いコストも高くなるという問題があった。またDLCも種々
の構造及び特性をもつので、モータ用コアに適用できるDLC被覆条件を選択することは
容易ではなかった。

特許文献2に記載のように20μm以上の膜厚を保証することは、実用に供されているD
LCの膜厚は0.1〜3μm程度であることから技術的に困難であるともに、生産性に悪
影響を及ぼす可能性がある。

 特許文献3に記載のステータコアは、圧粉コアを基体とするので、機械的強度がそれ程
高いとは言えず、また製造のために大掛かりな設備を必要とし、コストが増大するという
難点がある。

 前記課題を鑑み、本発明は、生産性を減ずることなく、摩擦係数が低減され、コイルの
損傷を防止することができ、且つ、炭素系硬質皮膜による絶縁を含めた薄型化が可能な積
層鉄心およびその積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。

手段

本発明に係わる積層鉄心は、環状のヨークと、前記ヨークから放射状に延在する複数の
ティース部を備えた積層鉄心であって、
積層方向の両端面に炭素系硬質皮膜が形成されていることを特徴とする。

 本発明に係わる積層鉄心は、前記ティースに、表面に炭素系硬質皮膜が形成された導線
を巻回することができる。

本発明に係る積層鉄心は、前記導線が、断面視矩形とすることができる。

本発明に係る積層鉄心の製造方法は、環状のヨークと、前記ヨークから放射状に延在する
複数のティースと、を備えた積層鉄心の製造方法であって、複数の電磁鋼板を打ち抜いて
前記ヨークと前記ティースが形成された加工体とする工程と、前記加工体を積み重ねてか
しめて一体化させて積層体とする工程と、前記積層体の積層方向の両端面に炭素系硬質皮
膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。

効果

本発明によれば、生産性を減ずることなく、摩擦係数が低減され、コイルの損傷を防止することができ、且つ、炭素系硬質皮膜による絶縁を含めた薄型化が可能な積層鉄心および
その積層鉄心の製造方法を提供することができる。

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特許情報

特願2019-204439

JPA 2021078281-000000