こんな違いがある!安全キャビネット、クリーンベンチ、ドラフトチャンバーについて【2026年最新版】

2026.08.19

 

安全キャビネット、クリーンベンチ、ドラフトチャンバーの違いを正しくご理解いただいておりますでしょうか?
検査室や実験室で広く使用されている大型機器3種類であり、外見はよく似ておりますがそれぞれ別の仕組みで気流を制御しており、使用用途が全く異なります。
今回は、これらの違いについてご説明させていただきます。

3機種の違いが一目でわかる比較表

まずは3機種の違いを一覧表で確認しましょう。詳細は各章で解説します。

 

安全キャビネットとは

安全キャビネット(バイオハザード対策用クラスⅡキャビネット)は感染症対策の一次封じ込め装置として世界的に広く使用されております。
HEPA(ULPA)フィルタを2種類搭載し、作業庫内の清浄性に加えて庫内で発生するエアロゾルの外部流出を封じ込める機能を持っております。
「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成16年4月1日)」(カルタヘナ法)や「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成19年6月1日)」(改正感染症法)にて設置が義務付けられております。

安全キャビネット参考画像

クラスⅡはさらにA1・A2・B1・B2の4タイプに分類される

安全キャビネットはⅠ型・Ⅱ型・Ⅲ型に大別され、実験室で最も多く使用されているのがクラスⅡ型です。クラスⅡ型はJIS K 3800(バイオハザード対策用クラスⅡキャビネット)に基づき、気流方式や循環気率の違いによって以下の4タイプに細分されます。

  • タイプA1:庫内空気の約70%を循環させる方式。生物材料・不揮発性の有害物質を取り扱える。
  • タイプA2:A1と同様の循環方式だが、より高い流入風速を確保。旧「タイプB3」はこのA2に統合された。
  • タイプB1:循環気率を約50%に抑え、屋外排気を前提とした方式。低濃度の揮発性物質にも対応。
  • タイプB2:循環させず庫内の空気を100%屋外へ排気する方式。揮発性の有害物質を扱う場合に選ばれる。

取り扱う病原体・試薬のリスクに応じて、必要なタイプを選定することが重要です。なお、JIS K 3800は2009年版からの改定を経て2021年に最新版(JIS K 3800:2021)が発行されており、キャビネットへの物理的な衝撃時にも風速を安定して供給できるかといった要求項目が追加されています。設備を選定・更新する際は、対応規格の版数もあわせて確認しましょう。

定期点検・法定検査について

安全キャビネットは、設置時だけでなく運用中も継続的に性能を維持することが求められます。一般的には年1回程度の定期点検(風速測定・フィルタリーク試験など)を専門業者に依頼し、記録を残しておくことが推奨されています。実験内容や社内規程によって頻度は異なるため、詳細は設置施設の安全管理規程やメーカーにご確認ください。

クリーンベンチとは

クリーンベンチはHEPA(ULPA)フィルタを1種類搭載し、作業庫内を清浄にする装置です。
安全キャビネットと異なり封じ込め機能は無いため感染性のある病原体等の取扱はできません。
バイオクリーンベンチという商品がございますが、こちらもクリーンベンチの一種であり、感染性のある検体等の取扱はできない機器となります。

クリーンベンチ参考画像

清浄度クラスと層流方式

一般的なクリーンベンチの清浄度は、国際規格ISO 14644-1に基づく「ISOクラス5」(旧規格の「クラス100」に相当)に対応する製品が主流です。細胞培養や微生物実験など幅広い用途で使用されますが、半導体・精密機器分野などではさらに高い清浄度が求められる場合もあります。

気流方式には、天面から作業台へ清浄空気を吹き下ろす「垂直層流方式」と、背面から水平に吹き出す「水平層流方式」があり、取り扱う試料や作業スタイルによって適したタイプが異なります。

バイオクリーンベンチとの違い

「バイオクリーンベンチ」という製品名を目にすることがありますが、これもクリーンベンチの一種であり、無菌操作に特化した機種です。ただし封じ込め機能を持たない点は標準的なクリーンベンチと同様であり、感染性のある検体等は取り扱えません。名称に「バイオ」とついていても、安全キャビネットの代替にはならない点に注意しましょう。

ドラフトチャンバーとは

ドラフトチャンバーは化学実験を行う際に使用する薬品等(酸、アルカリ、有機溶媒)を安全に取扱うための安全装置です。
安全キャビネットやクリーンベンチに搭載されているHEPA(ULPA)フィルタは無く、代わりにスクラバー(湿式、乾式)を搭載し、排気ファンの設置とダクト接続が必要となります。                              
労働安全衛生法(有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質等障害予防規則)にて設置が義務付けられる「局所排気装置」に該当します。

ドラフトチャンバー参考画像

排気方式の種類

ドラフトチャンバーの排気方式には、大きく分けて以下のタイプがあります。

  • ダクト式(屋外排気型):排気ファンとダクトで屋外へ直接排気する方式。処理能力が高く、多くの化学物質に対応可能。
  • ダクトレス式:内蔵の活性炭フィルタ等でガスを吸着処理し、屋内に還気する方式。ダクト工事が不要でレイアウトの自由度が高い一方、対象物質や使用量に制限があり、労働基準監督署の許可(発散防止抑制措置としての特例実施許可)が必要な場合があります。
  • プッシュプル型:補助給気と排気を組み合わせて有害物質を捕捉点へ導く方式。開口部の面速ではなく捕捉点の風速で管理されるため、少ない風量でも安定した捕捉性能を確保しやすいのが特徴です。

新規導入や更新の際は、扱う薬品の種類・使用量・設置スペース・省エネ性能などを踏まえて排気方式を選定することが重要です。

必要な機器はどれ?選び方のポイント

3機種の違いを踏まえ、実際に導入を検討する際は以下の観点で確認すると選定しやすくなります。

  1. 取り扱う対象物は何か:感染性の病原体・エアロゾルなら安全キャビネット、感染性のない試料の無菌操作ならクリーンベンチ、化学薬品ならドラフトチャンバーが基本の選択肢です。
  2. 必要なバイオセーフティレベル(BSL):病原体のリスクレベルに応じて、安全キャビネットの中でも適切なクラス・タイプ(A1/A2/B1/B2)を選びます。
  3. 設置スペースと排気設備の有無:ドラフトチャンバーやクラスB2の安全キャビネットは屋外排気のためのダクト工事が必要になる場合があるため、建物側の設備状況もあわせて確認します。
  4. 関連法令への適合:カルタヘナ法、感染症法、労働安全衛生法など、扱う対象物によって適用される法令が異なります。設置前に該当法令の要件を確認しましょう。
  5. 維持管理体制:フィルタ交換やスクラバーのメンテナンス、定期点検の頻度・費用も選定時に確認しておくと、導入後の運用がスムーズになります。

迷った場合は、機器メーカーや販売代理店に取り扱う対象物・作業内容を具体的に伝えたうえで相談することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q. 安全キャビネットとドラフトチャンバーを兼用することはできますか?

A. できません。安全キャビネットは病原体・エアロゾルの封じ込めを、ドラフトチャンバーは化学薬品の排気処理を目的としており、内部構造(フィルタの有無やスクラバーの搭載)が根本的に異なります。取り扱う対象物ごとに適切な機器を使い分ける必要があります。

Q. クリーンベンチで病原体を扱ってもよいですか?

A. 不可です。クリーンベンチには封じ込め機能がなく、庫内の空気が作業者側や室内に排出される構造のため、感染性のある病原体・検体の取扱いには安全キャビネットを使用してください。

Q. 安全キャビネットのクラスはどれを選べばよいですか?

A. 取り扱う病原体のバイオセーフティレベル(BSL)や、揮発性物質・放射性物質を扱うかどうかによって適したタイプ(A1/A2/B1/B2)が異なります。判断が難しい場合は、取扱物質の詳細をメーカーへ伝えて相談するのが確実です。

Q. ドラフトチャンバーはダクト工事なしでも設置できますか?

A. ダクトレスタイプであれば屋外排気のための工事は不要ですが、対応可能な物質・濃度に制限があり、場合によっては労働基準監督署への申請が必要です。使用する薬品の種類・量を踏まえて、ダクト式とダクトレス式のどちらが適切か確認しましょう。

まとめ

今回は見た目が似ている3種の大型機器、安全キャビネット・クリーンベンチ・ドラフトチャンバーの違いについて、最新の規格情報や選び方のポイントも交えてご説明しました。

  • 安全キャビネット:病原体・エアロゾルの封じ込めが目的。HEPA(ULPA)フィルタ2種搭載。カルタヘナ法・感染症法に基づき設置義務あり。
  • クリーンベンチ:試料の無菌操作が目的。HEPA(ULPA)フィルタ1種搭載。感染性物質は取扱い不可。
  • ドラフトチャンバー:化学薬品の安全な取扱いが目的。スクラバーで排気処理。労働安全衛生法上の局所排気装置に該当。

それぞれの目的・構造・関連法規を正しくご理解いただき、安全な実験環境の運用に役立てていただければ幸いです。

アズワンでは、安全キャビネット・クリーンベンチ・ドラフトチャンバーの販売だけでなく、各種法令に関するご説明や使用方法に関する説明会もご提供しております。導入・更新・関連法令についてご不明な点がございましたら、お気軽にアズワンまでお問い合わせください。