LINE公式アカウントから最新記事の情報を受け取ろう!
溶媒に単分散された単層カーボンナノチューブ( S W C NT ) を過飽和状態にすることにより、高純度で、且つ電子デバイスに応用できる十分な大きさのS W C N T の結晶を作製する方法を提供する
カーボンナノチューブ
半導体デバイス
最近、半導体メモリ素子の高集積化が進むにつれ、配線の線幅は狭くなり、単位面積当りの電流の量、すなわち、電流密度は高くなりつつある。従来の半導体素子には主に金属配線が使われているが、このような金属配線の線幅は70nmが限界で、金属配線の最大電流密度は約10 6A/cm 2が限界であることが知られている。半導体素子の高集積化のためには、配線の線幅の狭幅化と高電流密度化が必須であるが、前記のような理由によって、金属配線を使用する半導体素子は、その集積化が限界に到達すると予想され、金属配線に代わる材料の積極的な開発が進められてきている。
その中でもSWCNTは、形状異方性に起因する一次元電子的性質からバリスティク伝導によって電子が流れ、また、炭素原子同士の結合はダイヤモンドに似た非常に強い結合で、機械的強度が強く、その結果、大電流を流しても断線しにくく最大電流密度は1×109 A/cm 2 とCuよりも単位面積当たり1000倍以上の電流を流すことができるという特長を有することから、SWCNTを電子デバイスへ応用した研究が進められている。
カーボンナノチューブを電子デバイスに応用した例としては、電極の表面を多孔質状態に活性化させた活性層を形成し、反応炉内にメタン(CH 4)、アセチレン(C 2H 2) 、エチレン(C 2H 4)、エタン(C 2H 6)、一酸化炭素(CO)または二酸化炭素(CO 2)などの炭素含有ガスを供給することにより、前記活性層からカーボンナノチューブを成長させる方法、事前に分離・精製した半導体型カーボンナノチューブの溶液に平面基板を垂直に浸漬し、固相-液相-気相界面(コンタクトライン)に凹凸を形成し、溶媒を蒸発させることにより、コンタクトラインにナノチューブを自己凝集させる方法、シリコン基板上に触媒金属でパターンを作り、CVD法により前記パターン上にカーボンナノチューブを成長させる方法等が知られている。
ところで、上記したカーボンナノチューブを直接基板の上で成長させる方法には、真空装置と高温での処理が必要なため、プラスチック基板を用いることができず、また、製造コストが高くなるという問題がある。また、基板上でカーボンナノチューブを合成する場合、特定のカイラリティのみのカーボンナノチューブを合成することやカーボンナノチューブの配向を確実に制御することが困難であることから、作製した電子デバイスは、計算通りの性能を達成できていない。
一方、上記のように、カーボンナノチューブを直接基板の上で成長させるのではなく、別途合成したカーボンナノチューブをデバイス面に印刷・塗布する方法も知られている。一般的に入手できるカーボンナノチューブの長さは数μm程度であるため、電子デバイスを一本のカーボンナノチューブで構成する場合には、必然的にカーボンナノチューブより長いチャネルは構成できないため、素子サイズはカーボンナノチューブの長さで制限されていた。そのため、カーボンナノチューブを混合し印刷・塗布する方法を採用することにより、チャネル長をカーボンナノチューブ長より長くでき、微細な加工技術を必要とせず電子デバイスを製造することが可能となった。
電気特性面では、一本のカーボンナノチューブでチャネルを形成した場合、一本のカーボンナノチューブの特性が素子の特性を決定することになる。そのため、カーボンナノチューブの性質、例えば、長さ、直径、カイラリティ(グラフェンシートの巻き方すなわち構造の対称性)などの特性が異なると、それを組み込んだ素子の特性が異なることになる。カーボンナノチューブを印刷・塗布する方法では、容易に素子形成が可能であるが、カーボンナノチューブ薄膜で構成されたチャネルは、複数のカーボンナノチューブの平均的な性質が素子特性に反映され、カーボンナノチューブの特性にばらつきが生じてしまう。
すなわち、カーボンナノチューブを印刷・塗布する方法では、電子デバイス面に印刷・塗布されたカーボンナノチューブは同じ向きに配列されているのではなく、チューブ同士が複雑に絡みあってチャネルを構成することから、非常に大きい特性ばらつきを持ち、実際に作製した塗布膜カーボンナノチューブを用いた電界効果トランジスタ(FET)における特性ばらつきは、製造の条件によっては、対数で計算した平均値(いわゆる相乗平均に相当する)の100分の1から100倍以上という非常に大きな幅を持つことが知られている。
本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、溶媒に単分散された単層カーボンナノチューブを過飽和状態にすることにより、高純度で、一様な方向性を持ち、且つ電子デバイスに応用できる十分な大きさのSWCNT結晶を得ることができることを新たに見出した。本発明はこの新知見に基づいて成されたものである。
すなわち、本発明の目的は、溶媒に単分散された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を過飽和状態にすることにより、高純度で、且つ電子デバイスに応用できる十分な大きさのSWCNTの結晶を作製する方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、該方法により作製されたSWCNT結晶を提供することである。さらに、本発明の他の目的は、該SWCNT結晶を用いた電子デバイスを提供することである。
本発明は、以下に示す、単層カーボンナノチューブの結晶作製方法 に 関 する。
(1)溶媒に単分散された単層カーボンナノチューブを過飽和状態にすることにより、単層カーボンナノチューブを結晶化させることを特徴とする単層カーボンナノチューブの結晶作製方法。
(2)上記(1)に記載の単層カーボンナノチューブの結晶作製方法において、過飽和状態が、蒸気拡散法、バッチ法、透析法または自由界面拡散法から選ばれる方法により行われることを特徴とする単層カーボンナノチューブの結晶作製方法。
(3)上記(1)又は(2)に記載の単層カーボンナノチューブの結晶作製方法において、単層カーボンナノチューブが、カイラリティのそろったものであることを特徴とする単層カーボンナノチューブの結晶作製方法。
(4)上記(1)~(3)に記載の単層カーボンナノチューブの結晶作製方法において、溶媒に結晶化剤を添加することを特徴とする単層カーボンナノチューブの結晶作製方法。
(5)上記(4)に記載の単層カーボンナノチューブの結晶作製方法において、溶媒に更に緩衝剤を添加することを特徴とする単層カーボンナノチューブの結晶作製方法。
(6)上記(2)記載の単層カーボンナノチューブの結晶作製方法において、過飽和状態が上記蒸気拡散法により形成され、上記蒸気拡散法が、単層カーボンナノチューブを含むドロップ溶液と、結晶化剤及び/又は緩衝剤を含むリザーバー溶液とを用いて行われ、上記結晶化剤が、塩類、アルコール類、又はポリエチレングリコール類及びその誘導体であり、上記ドロップ溶液が、結晶化剤としての塩類を含む単層カーボンナノチューブの結晶作製方法。
(7)上記(2)記載の単層カーボンナノチューブの結晶作製方法において、過飽和状態が上記蒸気拡散法により形成され、上記蒸気拡散法が、単層カーボンナノチューブを含むドロップ溶液と、結晶化剤及び/又は緩衝剤を含むリザーバー溶液とを用いて行われ、上記結晶化剤が、塩類、アルコール類、又はポリエチレングリコール類及びその誘導体であり、上記ドロップ溶液が、結晶化剤としての塩類を含まないことを特徴とする単層カーボンナノチューブの結晶作製方法。
(8)上記(7)記載の単層カーボンナノチューブの結晶作製方法において、上記蒸気拡散法が、単層カーボンナノチューブを含むドロップ溶液と、結晶化剤及び/又は緩衝剤を含むリザーバー溶液とを用いて行われる、シッティングドロップ法であり、上記リザーバー溶液が上記結晶化剤を1.3モル/リットル以上10.0モル/リットル以下の濃度で含むことを特徴とする単層カーボンナノチューブの結晶作製方法。
(9)上記(7)記載の単層カーボンナノチューブの結晶作製方法において、上記蒸気拡散法が、単層カーボンナノチューブを含むドロップ溶液と、結晶化剤及び/又は緩衝剤を含むリザーバー溶液とを用いて行われる、ハンギングドロップ法であり、上記ドロップ溶液がアルコール類を溶液全体に対して1.5重量%以上含有し、上記リザーバー溶液が上記結晶化剤を0.1モル/リットル以上1.4モル/リットル以下の濃度で含むことを特徴とする単層カーボンナノチューブの結晶作製方法。
(10)上記(1)~(9)のいずれかに記載の方法により得られた単層カーボンナノチューブ結晶。
(11)上記(10)に記載の単層カーボンナノチューブ結晶を用いた電子デバイス。
(12)上記(11)記載の電子デバイスにおいて、単層カーボンナノチューブ結晶に金属を蒸着してなる電極を具備することを特徴とする電子デバイス。
本発明においては、溶媒に単分散された単層カーボンナノチューブを過飽和状態にすることにより、高純度で、電子デバイスに応用できる十分な大きさに成長したSWCNT結晶を得ることができる。また、SWCNT結晶作製の原料として、密度勾配法等により精製したSWCNTを使用することで、直径、カイラリティ等のそろった均一で高純度なSWCNT結晶を作製できる。そして、本発明により作製されるSWCNT結晶は一様な方向性を持ち、また、SWCNT結晶は一本一本取り扱いが可能であり、且つ、同じ電気的特性を示すことから、電気的特性を計算して一本単位で電子デバイスに組み込むことが可能であり、電子デバイス作製用の材料として好適である。
また、電子デバイスの製造工程面においても、電子デバイスとは別に作製されたSWCNT結晶を電子デバイスに組み込むことができるので、電子デバイス面に直接SWCNTを成長させる際に必要であった真空装置や高温での処理が不要になることから、プラスチック等の融点の低い材料を電子デバイスの基板として用いることができ、また、電子デバイスのコストダウンを図ることができる。さらに、SWCNT合成の為の触媒、電子デバイス面の事前処理が不要になることから、製造工程も簡単になる。
そして、電子デバイスの性能面においては、SWCNT結晶は、一様な方向性を持った結晶であることから、電子デバイス内でのSWCNTの配向制御が可能となり、論理的に予想される性能に近い電子デバイスを作製することができる。
特許情報詳細や資料のダウンロード等については無料会員登録後に閲覧していただけます。
本研究に関するご質問や、話を聞いてみたいなどご興味をお持ちになりましたら、是非お気軽に以下のフォームにお問い合わせください。