モノマー・重合のトータルデザインが導く機能高分子材料

2022.08.09 By 信州大学

化学

技術概要

アクリル酸エステルやアクリルアミドのα位に機能団を導入したモノマーでは、機能団とビニル基、カルボニル基の協働効果による特殊な反応性や性質が現れる。分解性、pH-温度応答性、熱硬化性などを有する新ポリマーを報告する。

用途・応用

アクリル樹脂

背景

 アクリル酸エステル類はラジカル重合およびアニオン重合に活性であり、エステル置換基に様々な機能性基を導入できることから、機能性モノマーとして種々の研究がされている 。
 一方で、アクリル酸エステルのα位を機能化した報告例は少ない。
 本発明者らは、α-(ハロメチル)アクリル酸エステルの求核的共役置換(S N2')反応が与える生成物が、さらにマイケル付加を受容することに注目し、ジチオールを求核モノマーとする重合方法について報告している(非特許文献1)。
求 核 的 共 役 置 換 ( S N2')反応は、化合物のオレフィン部分を求核攻撃する反応機構であり、室温、空気中で定量的に進行する。このため高分子合成分野ではα-機能化アクリルモノマーを得る反応として利用されてきた(非特許文献2参照)。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【非特許文献1】Y.Kohsaka et al.Polym.Chem.,2017,8,976.
【非特許文献2】Y.Kohsaka,Y.Matsum

課題

 求核的共役置換(S N2')反応は定量的に進行するものの、高分子化合物を与える重合反応には用いられていなかった。求核的共役置換(S N2')反応を用いた重合反応は、非特許文献1によって本発明者らによって初めて報告されたものである。

 非特許文献1に記載された重合反応は、室温、空気中で進行するため重縮合の素反応として利点がある。
 しかしながら、より効率的な反応とするためには改良の余地があった。非特許文献1に記載の重合反応は求核(S N2')反応とマイケル付加反応を連続的に実施しているため(換言すれば異なる反応を連続的に行うため)、溶媒等の重合条件に制約があるという課題があった。また、既存の求電子モノマーとの共重合ができないという課題があった。
 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、特殊な重合条件をすることなく、既存の求電子モノマーと共重合が可能である、α-(ハロメチル)アクリル化合物、該α-(ハロメチル)アクリル化合物を用いた重合体及び該重合体の製造方法を提供することを課題とする。

手段

 本発明は以下の[1]~[10]を提供する。(各一般式はダウンロード資料に記載)

[1]下記一般式(1)で表されるα(ハロメチル)アクリル化合物。

[一般式(1)中、R 1 、 R 2 はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はフェニル基である。Rはハロゲン原子、トシル基又はメシチル基である。Xはn価の連結基である
。nは2~4の自然数である。]
[2]下記一般式(1)-1で表されるα-(ハロメチル)アクリル化合物。
【化2】
[一般式(1)-1中、R 1 、 R 2 はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はフェニル基である。複数あるR 1 、 R 2 は同一であってもよく異なっていてもよい。Rはハロゲン原子、トシル基又はメシチル基である。X 1 は2価の連結基である。]
[3][1]又は[2]に記載のα-(ハロメチル)アクリル化合物と、求核モノマーとの重合体。
[4]前記求核モノマーが、ジチオール、ビスフェノール又は1級アミンからなる群より選ばれる1つ以上である、[3]に記載の重合体。
[5]機能性基を含む、[3]又は[4]に記載の重合体。
[6][1]又は[2]に記載のα-(ハロメチル)アクリル化合物と、求核モノマーとを S N2'反応により重合する重合工程を有する、重合体の製造方法。
[7][1]又は[2]に記載のα-(ハロメチル)アクリル化合物と、ジチオールとをS N2'反応により重合する重合工程と、重合末端保護工程とを有する、重合体の製造方法 。
[8]前記重合工程を、クロロホルムの存在下で行う、[6]又は[7]に記載の重合体の製造方法。
[9]さらに、機能性基を導入する工程を有する、[6]~[8]のいずれか1つに記載の重合体の製造方法。
[10][3]~[5]のいずれか1つに記載の重合体を硬化する工程を有する硬化物の製造方法。
[11][3]~[5]のいずれか1つに記載の重合体を硬化した硬化物。

効果

 本発明によれば、特殊な重合条件をすることなく、既存の求電子モノマーと共重合が可能である、α-(ハロメチル)アクリル化合物、該α-(ハロメチル)アクリル化合物を用いた重合体及び該重合体の製造方法を提供することができる。

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特許情報

特願2021-073805
特願2021-073806
特許7012329 (特願2017-034134)

JPB 007012329-000000