磁場を用いた投影オートラジオグラフィ技術

2022.08.03 By 日本原子力研究開発機構

物理学

技術概要

試料とイメージングプレート(IP)とを密着させずに非接触で撮像が可能です。投影像の拡大・縮小も可能です。

用途・応用

オートラジオグラフィ

背景

 体 内 の 元 素 や 分 子 の 動 態 を 調 べ る 方 法 と し て 、 ベ ー タ 線 を 放 出 す る 放 射 性 同 位 元 素 (RI)をトレーサーとして投与し、その分布を放射線に感度のある写真乾板やイメージングプレートなどに転写し、可視化する方法は広く利用されている。しかしながら、転写を行う際には、得られる画像のボケを抑えるため、被写体となる試料と転写を行う撮影面である写真乾板やイメージングプレートとを基本的に密着させる必要があるが、両者を密着させずに1:1の転写を行う方法としては、これまで特許文献1に記載の方法が知られているだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開平7-294655

課題

 上 述 の よ う に 、 1: 1の 転 写 で は 、 非 接 触 転 写 を 行 う 方 法 も 存 在 す る が 、 撮 影 面 に 入 射 するβ線を制限する方法であるので、感度が大きく低下する。また、試料にある凹凸が大きいと、撮影面との間に大きな隙間ができ、得られる画像が劣化してしまうという問題点があ る 。 さ ら に 、 実 物 の 1: 1の 転 写 で 画 像 を 得 る こ と か ら 拡 大 や 縮 小 し た 画 像 を 得 る こ と は原理的にできない。

 本発明の目的は、オートラジオグラフィ法において、被写体と撮影面が比較的離れている場合でも画像のボケが少ない画像を取得できる方法、さらに画像の拡大または縮小ができる方法を提供することにある。

手段

 本発明に係る方法では、オートラジオグラフィ法で被写体内のべータ線放出核種の分布を撮影する際、被写体と撮影面に磁場を印加することで、被写体から放出されるベータ線を撮影面に投影する。磁場がない場合には、ベータ線は単調に発散するが、磁場がある場合は、撮影面への距離には依存せず、ラーマー半径で決まる広がり以下で、撮影面までベータ線を誘導することが可能である。さらに磁力線の分布を適切な形状にすることで、被写体内のべータ線の分布を拡大または縮小して投影することも可能である。

 本発明は、具体的には、ベータ線を放射する被写体を転写する撮影面を、被写体と所定の間隔をおいて配置すると共に、被写体と撮影面との間に磁場を印加し、被写体から放出されるベータ線を撮影面に投影するように構成されている。 

効果

 本発明は、従来は被写体となる試料と撮影面を密着させることでしか、ボケの少ない画像を得ることが出来なかったオートラジオグラフィ法において、磁場によりベータ線を誘導することで、被写体と撮影面の間に比較的距離がある場合でもボケの少ない画像を取得することが出来ることが大きな特徴である。これは、生きた状態の生体試料などに強いストレスを加えることなく、生体内の元素や分子の分布や移行過程を撮影できる利点がある。

 さらには、今まで不可能であった拡大・縮小した画像の取得も可能である。トレーサー実験が盛んに行われている医学分野や植物分野などで、従来の手法では空間分解能が足りず、見ることが出来なった試料内のトレーサー分布を撮影することが出来る画期的な方法であり、その波及効果は大きい。

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特許情報

特開2020-165814

JPA 2020165814-000000