食品添加物からつくる環境負荷の低い新規腐食抑制剤

2024.08.08 By 日本原子力機構

材料工学

技術概要

排水基準に該当する成分を使わず環境負荷が低い防錆材です。約27 ppmの低い濃度(低添加量)でも防錆効果を発揮。金属イオンが防錆に関与するため放射線環境でも使用できます。

用途・応用

防錆剤

背景

炭素鋼等の金属管は、ボイラ、冷却・温調系の配管等に広く使用されている。このよう
な用途に用いられる金属管は、水溶液に接することにより腐食するため、一般に防食処理
が施される。防食処理は様々な方法で実施されるが、防食剤を水系に添加する方法が一般
的に行われている。

既 存 の 中 性 淡 水 環 境 中 の 炭 素 鋼 の 腐 食 を 抑 制 す る 防 食 剤 と し て モ リ ブ デ ン ( M o) 酸 ナ ト
リ ウ ム ( Na) や タ ン グ ス テ ン ( W) 酸 Naを 単 独 で 添 加 す る も の 、 二 リ ン 酸 亜 鉛 と M o酸 Naを
混 合 添 加 す る も の が 挙 げ ら れ る 。 M o酸 Na等 を 単 独 添 加 す る 場 合 は 1,000 ppmを 超 え る 非 常
に 高 濃 度 の M o酸 イ オ ン が 必 要 で 使 用 コ ス ト が 高 く 、 二 リ ン 酸 亜 鉛 と M o酸 Naを 混 合 添 加 す る
場 合 は 100 ppm程 度 の 濃 度 で も 効 果 を 発 揮 す る と 報 告 さ れ て い る が 二 リ ン 酸 イ オ ン 、 亜 鉛
イ オ ン 共 に 環 境 負 荷 が 大 き く 排 出 規 制 が 数 ppmと 排 水 の 水 処 理 に 高 い コ ス ト が か か る ( 非
特許文献1)。したがって、添加コストや排水の水処理コストが低い防食剤や防食方法が
求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】

【 非 特 許 文 献 1 】 金 子 ら 、 希 釈 人 工 海 水 中 に お け る PCV材 料 の 腐 食 に 及 ぼ す W酸 Naお よ び 亜
鉛 / M o酸 Na混 合 リ ン 酸 塩 の 影 響 評 価 、 第 62階 材 料 と 環 境 討 論 会 (2015) 9‑12

課題

 本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、添加コストや排水の水処理コストが低
い防食剤および防食方法を提供することを課題とする。

手段

 本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を行ったところ、これまでに防食剤として使
用 さ れ て 来 な か っ た 乳 酸 ア ル ミ ニ ウ ム ( Al) を 使 用 す る こ と で 、 Alイ オ ン と 無 機 酸 イ オ ン
お よ び / ま た は 有 機 酸 イ オ ン の 混 合 に よ っ て M o酸 イ オ ン や W酸 イ オ ン 単 独 よ り も 低 い 濃 度
で 腐 食 を 抑 制 す る 効 果 を 持 ち 、 さ ら に 、 環 境 負 荷 の 小 さ い 乳 酸 Alを 使 用 す る こ と で 排 水 の
水処理コストを低減し、既存の防食剤よりも添加コストおよび排水の水処理コストが低い
防食剤とすることができることを見出し、本発明を完成した。
 すなわち、本発明の要旨は以下に関する。

[1] 水系に防食剤を添加して、該水系における金属部材表面に初期防食皮膜を形成す
る工程を含む、水系における金属部材の防食方法であって、
 前記防食剤は、
( A) 乳 酸 ア ル ミ ニ ウ ム 、 お よ び
( B) 無 機 酸 塩 お よ び 有 機 酸 塩 か ら 選 ば れ る 1 種 ま た は 2 種 類 以 上 、
 を含有する、防食方法。
[ 2 ] 前 記 ( B) 成 分 の 無 機 酸 塩 お よ び 有 機 酸 塩 は 、 モ リ ブ デ ン 酸 塩 、 タ ン グ ス テ ン 酸
塩、ホウ酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、安息香酸塩
、およびケイ皮酸塩から選ばれる1種または2種類以上である、[1]に記載の防食方法
。
[ 3 ] 前 記 ( B) 成 分 の 無 機 酸 塩 お よ び 有 機 酸 塩 に お け る 塩 は 、 ナ ト リ ウ ム 塩 、 カ リ ウ
ム塩、およびアンモニウム塩から選ばれる1種または2種類以上である、[1]または[
2]に記載の防食方法。
[ 4 ] 前 記 ( B) 成 分 の 無 機 酸 塩 お よ び 有 機 酸 塩 は 、 モ リ ブ デ ン 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2M oO4
) 、 モ リ ブ デ ン 酸 カ リ ウ ム ( K2M oO4) 、 モ リ ブ デ ン 酸 ア ン モ ニ ウ ム ( (NH3 ) 2M oO4)、タン
グ ス テ ン 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2W O4) 、 タ ン グ ス テ ン 酸 カ リ ウ ム ( K2W O4)、ホウ酸ナトリウ
ム ( Na 2O・ xB2O5) ( xは Na 2Oに 対 応 す る 数 で あ る ) 、 ク ロ ム 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2CrO4) 、
二 ク ロ ム 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2Cr 2O7) 、 亜 硝 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2NO2)、リン酸ナトリウム(
Na 3PO4) 、 ケ イ 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2O・ xSiO2) ( xは Na 2Oに 対 応 す る 数 で あ る ) 、 安 息 香 酸
ナ ト リ ウ ム ( NaC6H5CO2) 、 お よ び ケ イ 皮 酸 ナ ト リ ウ ム ( NaC6H5CH=CHCO2)から選ばれる
1種または2種類以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の防食方法。
[5] 前記水系におけるアルミニウムイオンと、無機酸イオンおよび/または有機酸イ
オ ン と の 濃 度 比 が 、 ア ル ミ ニ ウ ム イ オ ン : 無 機 酸 イ オ ン お よ び / ま た は 有 機 酸 イ オ ン = 4
: 1~ 1:4( モ ル 濃 度 比 ) の 割 合 と な る よ う に 前 記 防 食 剤 を 添 加 す る 、 [ 1 ] ~ [ 4 ] の い
ずれかに記載の防食方法。
[6] 前記水系におけるアルミニウムイオン、ならびに無機酸イオンおよび/または有
機 酸 イ オ ン の 総 イ オ ン 濃 度 が 、 0.1~ 10.0 mMの 範 囲 と な る よ う に 前 記 防 食 剤 を 添 加 す る 、
[1]~[5]のいずれかに記載の防食方法。

[7] 前記無機酸イオンがモリブデン酸イオンであり、
前 記 水 系 に お け る ア ル ミ ニ ウ ム イ オ ン 濃 度 が 0.15~ 1.5 mM、 お よ び モ リ ブ デ ン 酸 イ オ ン
濃 度 が 0.15~ 1.5 mMの 範 囲 と な る よ う に 前 記 防 食 剤 を 添 加 す る 、 [ 1 ] ~ [ 6 ] の い ず れ
かに記載の防食方法。
[8] 前記無機酸イオンがタングステン酸イオンであり、
前 記 水 系 に お け る ア ル ミ ニ ウ ム イ オ ン 濃 度 が 0.05~ 5.0 mM、 お よ び タ ン グ ス テ ン 酸 イ オ
ン 濃 度 が 0.05~ 5.0 mMの 範 囲 と な る よ う に 前 記 防 食 剤 を 添 加 す る 、 [ 1 ] ~ [ 6 ] の い ず
れかに記載の防食方法。
[9] 前記無機酸イオンがモリブデン酸イオンおよびタングステン酸イオンであり、
前 記 水 系 に お け る ア ル ミ ニ ウ ム イ オ ン 濃 度 が 0.033~ 0.33 mM、 モ リ ブ デ ン 酸 イ オ ン 濃 度
が 0.033~ 0.33 mM、 お よ び タ ン グ ス テ ン 酸 イ オ ン 濃 度 が 0.033~ 0.33 mMの 範 囲 と な る よ う
に前記防食剤を添加する、[1]~[6]のいずれかに記載の防食方法。
[10] 前記金属部材が、炭素鋼である、[1]~[9]のいずれかに記載の防食方法
。
[ 1 1 ] 水 系 に 防 食 剤 を 添 加 し た 際 の 水 系 の pHが 4以 上 6未 満 で あ る 、 [ 1 ] ~ [ 1 0 ]
のいずれかに記載の防食方法。
[12] 前記初期防食皮膜を形成する工程後に、さらに、該初期防食皮膜を維持するた
めに前記水系に腐食防止剤を添加する工程、
 を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の防食方法。

[ 1 3 ] ( A) 乳 酸 ア ル ミ ニ ウ ム 、 お よ び
( B) 無 機 酸 塩 お よ び 有 機 酸 塩 か ら 選 ば れ る 1 種 ま た は 2 種 類 以 上 、
 を含有する、水系における金属部材の防食剤。
[ 1 4 ] 前 記 ( B) 成 分 の 無 機 酸 塩 お よ び 有 機 酸 塩 は 、 モ リ ブ デ ン 酸 塩 、 タ ン グ ス テ ン
酸塩、ホウ酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、安息香酸
塩、およびケイ皮酸塩から選ばれる1種または2種類以上である、[13]に記載の防食
剤 。
[ 1 5 ] 前 記 ( B) 成 分 の 無 機 酸 塩 お よ び 有 機 酸 塩 に お け る 塩 は 、 ナ ト リ ウ ム 塩 、 カ リ
ウム塩、およびアンモニウム塩から選ばれる1種または2種類以上である、[13]また
は[14]に記載の防食剤。
[ 1 6 ] 前 記 ( B) 成 分 の 無 機 酸 塩 お よ び 有 機 酸 塩 は 、 モ リ ブ デ ン 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2M o
O4) 、 モ リ ブ デ ン 酸 カ リ ウ ム ( K2M oO4) 、 モ リ ブ デ ン 酸 ア ン モ ニ ウ ム ( (NH3 ) 2M oO4)、タ
ン グ ス テ ン 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2W O4) 、 タ ン グ ス テ ン 酸 カ リ ウ ム ( K2W O4)、ホウ酸ナトリ
ウ ム ( Na 2O・ xB2O5) ( xは Na 2Oに 対 応 す る 数 で あ る ) 、 ク ロ ム 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2CrO4)
、 二 ク ロ ム 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2Cr 2O7) 、 亜 硝 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2NO2)、リン酸ナトリウム
( Na 3PO4) 、 ケ イ 酸 ナ ト リ ウ ム ( Na 2O・ xSiO2) ( xは Na 2Oに 対 応 す る 数 で あ る ) 、 安 息 香
酸 ナ ト リ ウ ム ( NaC6H5CO2) 、 お よ び ケ イ 皮 酸 ナ ト リ ウ ム ( NaC6H5CH=CHCO2)から選ばれ
る1種または2種類以上である、[13]~[15]のいずれかに記載の防食剤。
[17] 前記金属部材が、炭素鋼である、[13]~[16]のいずれかに記載の防食
剤 。

効果

本発明によれば、低濃度で腐食を抑制する効果を持ち、さらに、環境負荷の小さい防食
剤および防食方法を提供することができる。すなわち、本発明によれば、添加コストや排
水の水処理コストが低い防食剤および防食方法を提供することができる。

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特許情報

特許第6932409号

JPB 006932409-000000