ポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法、及びポリ(ジアシルヒドラジン)

2022.10.17 By 神奈川大学

材料工学

技術概要

機械的性質を悪化させることなく、構造家庭用漂白剤等への浸漬により、容易にモノマーへ分解が可能。熱硬化性樹脂を含めあらゆる樹脂への応用が可能。

用途・応用

サステナブルな分解性ポリマー

背景

 近年、環境保護の観点等から、廃棄しても自然に分解されるような、生分解性高分子や光分解性高分子に代表される分解性高分子材料の開発が盛んに行われている。しかし、生分解性高分子や光分解性高分子は、通常の使用環境において経時的な劣化を伴うことが問題となっている。

 このため、使用時に経時的に劣化することなく、廃棄時に速やかに分解可能なポリマーが求められており、廃棄時に酸化剤により容易に分解可能なポリマーとして、ジカルボン酸、又はその反応性誘導体(酸クロライドや活性エステル誘導体)と、ヒドラジン又ジカルボン酸のジヒドラジドとを重縮合させて得られるポリ(ジアシルヒドラジン)が数例提案されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2006-022315号公報

課題

 しかし、特許文献1に開示されるポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法は、複数のモノマーを使用する方法であるため、複数のモノマーの使用量のバランスを正確に調整する必要がある。このため、モノマーの計量作業が煩雑であることや、複数のモノマーの使用量のバランスが合っていない場合には重合度の高いポリマーを得にくいという問題がある。

 また、ヒドラジンをポリ(ジアシルヒドラジン)の原料として用いる場合、以下の(1)~(3)に記す問題がある。
(1)ヒドラジンは毒性と腐食性があること。
(2)無水ヒドラジンは爆発性を有し取り扱いが難しいこと。
(3)ヒドラジンは低沸点であり吸水性が高いため、ジカルボン酸、又はその反応性誘導体に対して等モルとなる量を正確に計量することが難しいこと。

 そして、ポリ(ジアシルヒドラジン)の原料として、ジカルボン酸のジヒドラジドを用いる場合、以下の(4)~(6)に記す問題がある。
(4)ジカルボン酸のジヒドラジとともに重縮合するモノマーとして、ジカルボン酸を用いた場合には、反応性が低く、重縮合反応が進行しない。
(5)ジカルボン酸のジヒドラジドとともに重縮合するモノマーとして、ジカルボン酸の酸クロリドを用いた場合には、酸クロリドの反応性が高すぎるため、激しい副反応が起こり、ポリマーは重合度が上がらず、ポリマーの収率も低い。
(6)ジカルボン酸のジヒドラジドとともに重縮合するモノマーとして、ジカルボン酸の活性エステル誘導体を用いる場合には、活性エステル誘導体の合成工程が必要となり、作業が煩雑となるとともに製造コストの点で問題がある。

 さらに、一般に高分子材料は、用途に応じて種々の特性が要求されるため多くの材料の中から選択して使用されるが、特許文献1に開示されるポリ(ジアシルヒドラジン)の合成例は僅かであるため、材料の選択肢の幅は非常に狭い。このため、種々の物性を有する新たなポリ(ジアシルヒドラジン)の開発が望まれている。

 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、毒性、爆発性等の問題がなく計量が容易なモノマーを使用でき、単一のモノマーを用いて高収率で重合度の高いポリマーを製造可能であるポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、種々の物性を有する新規なポリ(ジアシルヒドラジン)を提供することを目的とする。 

手段

 本発明者らは、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物を、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、及び硫酸カリウムの複塩、ジアセトキシヨードベンゼン、ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン、並びにヨードソベンゼンからなる群より選択される1種以上の酸化剤を用いて酸化重合することにより、単一のモノマーから、高収率で重合度の高いポリ(ジアシルヒドラジン)を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。

 (1) ジカルボン酸ジヒドラジド化合物を、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、及び硫酸カリウムの複塩、ジアセトキシヨードベンゼン、ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン、並びにヨードソベンゼンからなる群より選択される1種以上の酸化剤を用いて酸化重合するポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法。

 (2) 前記酸化重合を0~50℃で行う、(1)記載のポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法。

 (3) 非プロトン性極性溶媒を含む溶媒を用いる、(1)又は(2)記載のポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法。

 (4) 前記酸化剤が、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、及び硫酸カリウムの複塩である、(1)から(3)何れか記載のポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法。

 (5) 前記、過硫酸水素カリウム、硫酸水素カリウム、及び硫酸カリウムの複塩の使用量が、前記ジカルボン酸ジヒドラジド化合物1モルに対する、前記過硫酸水素カリウムの量が2~10モルとなる量である、(4)記載のポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法 。

 (6) 水、及び、非プロトン性極性溶媒を含む溶媒を用いる、(4)又は(5)記載のポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法。

 (7) (a)水、(b)アセトニトリル及び/又はN,N-ジメチルアセトアミド、及び(c)アセトニトリルとN,N-ジメチルアセトアミドとを除く非プロトン性極性溶媒を含む溶媒を用いる、(6)記載のポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法。

 (8) 前記、(c)アセトニトリルとN,N-ジメチルアセトアミドとを除く非プロトン性極性溶媒が、ホルムアミド、スルホラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチル-2-ピロリドン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンからなる群より選択される1種以上である、(7)記載のポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法。

 (9) 前記、(c)アセトニトリルとN,N-ジメチルアセトアミドとを除く非プロトン性極性溶媒が、N-メチル-2-ピロリドンである、(8)記載のポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法。

 (10) 前記、(a)水、(b)アセトニトリル及び/又はN,N-ジメチルアセトアミド、及び(c)アセトニトリルとN,N-ジメチルアセトアミドとを除く非プロトン性極性溶媒の、それぞれの使用量が、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物1質量部に対して0.5~20質量部である、(7)~(9)何れか記載のポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法。

 (11) 前記ジカルボン酸ジヒドラジド化合物が下式(1)(以下、式は詳細資料に記載)で表される化合物であり、前記ポリ(ジアシルヒドラジン)が下式(3)で表される繰り返し単位からなるものである、(1)から(10)何れか記載のポリ(ジアシルヒドラジン)の製造方法。

[式(1)中、R 1 は、単結合、置換基を有してもよいフェニレン基、置換基を有してもよいビフェニレン基、置換基を有してもよいナフタレンジイル基、下式(2)で表される基、及び、分岐を有してもよい炭素原子数1~20のアルキレン基からなる群より選択される基であり、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレンジイル基が有してもよい置換基は、分岐を有してもよい炭素原子数1~20のアルキル基、分岐を有してもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン、シアノ基、アミノ基、及びニトロ基からなる群より選択される基である。

式(2)中、R 2 は、-O-、-CO-、-SO 2 -、-NH-、-O-R 3 -O-、及び、分岐を有してもよい炭素原子数1~6のアルキレン基からなる群より選択される基であり、R 3 は分岐を有してもよい炭素原子数1~6のアルキレン基である。]

[式(3)中、R 1 は式(1)におけるR 1 の定義と同意である。]

 (12) 下式(A)又は(B)で表される繰り返し単位からなるポリ(ジアシルヒドラジン)。

[式(A)中Arは下式(4)又は(5)で表される基である。

式(4)中、R 4 は、分岐を有してもよい炭素原子1~20のアルコキシ基、又はフェニル基である。]

[式(B)中、nは1~8の整数である。]

効果

 本発明によれば、毒性、爆発性等の問題がなく計量が容易なジカルボン酸ジヒドラジド化合物を単一のモノマーとして使用して、高収率で重合度の高いポリ(ジアシルヒドラジン)を製造する方法を提供することができる。また、本発明によれば、種々の物性を有する新規なポリ(ジアシルヒドラジン)を提供することができる。

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特許情報

特開2011-052075

JPA 2011052075-000000