食べられる再帰性反射材による食の新たな演出方法

2022.10.13 By 群馬大学

材料工学

技術概要

再帰性反射材とは光源方向に光を反射するものであり、従来からある材料は、ガラスやプラスチック製で不可食であったが、本研究では、寒天を素材として、再帰性反射材を発明した。これより食素材の上でプロジェクションマッチングが出来るようになり、様々な食の演出が可能となる

用途・応用

・結婚式などでケーキへの映像投影による演出
・テーマパークのカフェテリアで,料理上にキャラクターを投影することによる演出
・胃や腸などの消化管内壁面に付与する医療用光学マーカー

背景

 近年、液体レンズに代表されるように、液体を利用した新しい光学デバイス形成技術が注目を集めている。液体は、可視光に対して透明なものが多く、またその界面はオングストロームの精度で滑らかである。そのため、適切に形成すると高精度の屈折面が実現でき、光学デバイスを実現するのに優れた素材であることがわかってきた。

 ところで、多くの食品の素材は液体である。代表的なものとしてゼリーを考えると、これは熱水に高分子である寒天や増粘多糖類、もしくはタンパク質からなるゼラチンを溶解させ、温度を下げてゲル化させたものである。ゼリーの主成分は水であり、可視光に対して高い透過性をもつ。また、型に入れて形成することもできるため、原理的にはその表面形状を制御することも容易である。これらの性質はすべて光学デバイス形成に必要とされるものであり、光学デバイスの素材として適しているといえる。

 このように、ある種の食品は、光学デバイス用素材として優れた性質を持っており、これまでレンズを飴で形成して光学教育に応用することを提案する論文などが報告されている。l

課題

 本発明者は、食品を利用した光学マーカー、特に再帰性反射材を対象として、食べることができる(このことをこの明細書では「可食性」と称することがある)再帰性反射材を種々試作して検討した。

 可食性の再帰性反射材の利点は主として二つ挙げられる。

 一つ目は、人が食べる料理などの上に直接光学デバイスを載せられるようになることである。例えば、料理の上に設置できればカメラから料理が認識しやすくなり、結婚式で運ばれてくるウェディングケーキの上にプロジェクションマッピングするなどの新たな演出が可能となると考えられる。しかし、従来の光学デバイスの多くは、ガラスやプラスチックなどの食べられない素材で作られている。そのため、料理の上に載せた場合は食べる前に取り除く必要があり、また素材に毒性がある危険性や、誤飲・誤食の危険性があった。食材で形成されている光学デバイスであれば、これらの問題はなく、料理の上に乗せても安心・安全である。

 二つ目は、可食性の再帰性反射材であれば、人の口腔内や消化管表面などに設置することに適する点である。消化管の上に再帰性反射材を設置できれば、手術ナビゲーションの基準点として機能すると考えられる、また光学計測への応用可能性もあるため、計測の高精度化等への寄与も期待できる。食材で形成されている光学デバイスであれば、人体への毒性や影響はほとんどないと考えられ、また、体内に留置しておいても自然と消化されるため、回収の手間がないという利点が想定される。

 本発明者らは、特に一つ目に挙げた、料理への応用を想定し、身近にある食材を利用して再帰性反射材を実現するための各種実験を行った。その結果、寒天を用いた場合に、特に再帰性反射性能が高いことを見出した。

 本発明は、前記した知見に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的の一つは、可食性でありながら高い再帰性反射性能を有する再帰性反射材を提供することである。本発明の他の目的は、そのような再帰性反射材の製造に適した製造方法を提供することである。 

手段

 前記した課題を解決する手段は、以下の項目のように記載できる。

 (項目1)
 光透過性を有する反射材本体を備えており、前記反射材本体は、寒天から構成されており、前記反射材本体の一面側は、入射光を前記反射材本体の内部に入射させる入射面とされており、前記反射材本体の他面側は、前記反射材本体の内部に入射した前記入射光を、入射方向とほぼ平行な方向に反射する再帰性反射面に形成されている再帰性反射材。

 (項目2)
 前記再帰性反射面は、コーナーキューブ型の再帰性反射面とされている項目1に記載の再帰性反射材。

 (項目3)
 前記反射材本体を構成する前記寒天には、前記反射材本体の屈折率を高める屈折率調整剤が添加されている項目1又は2に記載の再帰性反射材。

 (項目4)
 水に寒天素材を加えて加熱することにより、寒天溶液を得る工程と、コーナーキューブ型の再帰性反射面の形状を有する母材表面に前記寒天溶液を接触させることにより、前記寒天溶液に前記母材表面の形状を転写する工程と、前記母材表面に接触した状態の前記寒天溶液を凝固させることにより、再帰性反射面を有する再帰性反射材を形成する工程とを有する再帰性反射材の製造方法。 

効果

 本発明によれば、可食性でありながら高い再帰性反射性能を有する再帰性反射材を提供することが可能になる。また、そのような再帰性反射材の製造に適した製造方法を提供することが可能となる。

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特許情報

特許第6728086号

JPB 006728086-000000