ポリシルセスキオキサン液体、ガラスの製造方法

2022.09.16 By 東京都立大学

材料工学

技術概要

機能性材料として高い有用性が期待されるポリシルセスキオキサン液体およびポリシルセスキオキサンガラス並びにそれらを製造する簡易な方法を提供するとともに、波長2 3 0 ~ 8 5 0 n m の吸収係数が5 c m - 1 以下である紫外透明ポリシルセスキオキサンガラスを提供する

用途・応用

低融点封止剤
絶縁膜材料
コーティング材

背景

 ケイ素系有機-無機ハイブリッド材料は、骨格元素としてケイ素(Si)を含有する。ケイ素(Si)は、4本の結合手を有しており、結合する原子や官能基によって多様な性質を発現する。Siに結合する主な原子は酸素(O)及び炭素(C)である。酸素はSi-O-Si結合を形成することによってSi原子同士を架橋し、高分子を形成する。炭素はSi-O-Si結合の形成を抑制する作用がある。このようなケイ素系有機-無機ハイブリッド材料は、耐熱性、化学的耐久性、透明性、電気絶縁性等に優れていることから、光学材料や電子材料に用いられている。

 現在最も多用されているケイ素系有機-無機ハイブリッド材料は、2本のSi-O結合と2本のSi-C結合を有する一般式R 2 SiO 2 / 2 (Rは有機官能基)で示されるポリシロキサンである。ポリシロキサンは、Si原子1個あたり2本のSi-O結合を有するため直鎖状のSi-O-Si骨格を有しており、Si-O-Si鎖の長さによって液体から固体まで変化する。

 ポリシルセスキオキサンは、Si原子1個あたり1本のSi-C結合と3本のSi-O結合を有する一般式RSiO 3 / 2 (Rは有機官能基)で示されるシルセスキオキサン骨格からなる。ポリシルセスキオキサンは、ポリシロキサンよりSi原子1個あたりのSi-O結合の数が多く三次元的な架橋構造を形成するため、一般に室温で固体である。分子量が小さい籠型ポリシルセスキオキサンや梯子(ラダー)型ポリシルセスキオキサンのように構造が精密に制御されたポリシルセスキオキサンは液体として得られる場合があるが、それ以外のポリシルセスキオキサンを液体で得ることは難しい。一方で、ポリシルセスキオキサンはSi-C結合よりも安定なSi-O結合をポリシロキサンよりも多く含むため、ポリシロキサンよりも優れた機械的強度や化学的及び熱的安定性が期待でき、シルセスキオキサン系絶縁膜の製造方法(特許文献1)、光素子封止材としてのポリシルセスキオキサン化合物の使用(特許文献2及び3)、電気絶縁膜としての含硫黄有機-無機ハイブリッド材料の使用(特許文献4)などの提案がなされている。

 これら各種材料の原料として用いるためには、成膜、成形、他の試薬との均一混合などが容易な液体であることが望ましいが、これまでに提案されているポリシルセスキオキサンの製造方法は固体の製造方法もしくは有機溶媒を用いるポリシルセスキオキサンの製造方法(非特許文献1、特許文献1)もしくは煩雑な工程を必要とする籠型又は梯子型ポリシルセスキオキサンの製造方法(特許文献2、3、4、5)であって、精密に制御された構造をもたず、かつ液体であるポリシルセスキオキサンを簡易に製造する方法は提案されていない。

 また、ポリシルセスキオキサンガラスの製造方法に関しては、膜状のガラス及び構造が精密に制御された籠型もしくは梯子型構造のポリシルセスキオキサンを前駆体とするバルク状ガラスの製造方法が提案されている(特許文献3)が、バルク状のポリシルセスキオキサンガラスを簡易に製造する方法は提案されていない。特許文献3には、365nm、400nm、450nm、及び500nmの波長の光の透過率が改善された光素子用封止材が記載されているが、365nm未満の波長の光の透過率については記載されていない。一方、現在市販されているLED用封止材は、200~300nm範囲の波長の透過率が低い(図6参照)。発明者らの知る限りにおいて、これまで300nm以下の波長の紫外光に対する透過率が高いケイ素系有機-無機ハイブリッドガラス材料は提案されていない 。

【先行技術文献】
【特許文献】
【 特 許 文 献 1 】 特 開 2009‑60007号 公 報
【 特 許 文 献 2 】 特 開 2011‑202057号 公 報
【 特 許 文 献 3 】 特 開 2009‑030013号 公 報
【 特 許 文 献 4 】 特 開 2011‑052065号 公 報
【 特 許 文 献 5 】 特 開 2010‑083981号 公 報
【非特許文献】
【 非 特 許 文 献 1 】 K. M atsukawa, T. Fukuda, S. W atase, H. Goda, J. Photopolym. Sci.Technol. 23, 115 (2010)

課題

 本発明は、機能性材料として高い有用性が期待されるポリシルセスキオキサン液体およびポリシルセスキオキサンガラス並びにそれらを製造する簡易な方法を提供するとともに、波長230~850nmの吸収係数が5cm - 1 以下である紫外透明ポリシルセスキオキサンガラスを提供することを目的とする。

手段

 本発明によれば、ポリシルセスキオキサン液体及びポリシルセスキオキサンガラス並びにこれらを有機溶媒を使用せず簡易に製造する方法が提供される。
 本発明によれば、有機溶媒を用いずに、3官能ケイ素アルコキシドと水と酸触媒とからなる混合物を加水分解及び重縮合させた後、3官能ケイ素アルコキシドの加水分解によって生じるアルコールを除去することを含むポリシルセスキオキサン液体の製造方法が提供される。

 前記3官能ケイ素アルコキシドと水と酸触媒とは、3官能ケイ素アルコキシド1モルに対して、水1.5モル以上5モル以下、酸触媒0モルよりも多く0.01モル以下で混合することが好ましい。また、加水分解及び重縮合は好適には20~60℃の温度範囲で行うことができる。

効果

 本発明によれば、簡易な方法でポリシルセスキオキサン液体を製造することができる。従来の方法では、ポリシルセスキオキサンの合成には有機溶媒が必須とされていた。本発明によれば、有機溶媒を用いずに、3官能ケイ素アルコキシドと水と酸触媒とからなる混合物を加水分解及び重縮合した後、3官能ケイ素アルコキシドの加水分解によって生じるアルコールを除去するという簡易な方法で、光学材料や電子材料の原材料として有用なポリシルセスキオキサン液体を製造することができる。

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特許情報

特許6146856

特開2013-253223

JPB 006146856-000000